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2. 介護保険対策協議会

副会長 安里 哲好

挨 拶

○宮崎県医師会立元祐保常任理事

介護保険制度も開始から12 年を過ぎ、いろ いろな制度上の問題が顕在化してきている。本 日は、10 題の協議題が提示されている。限ら れた時間ではあるが、最後まで活発なご議論を お願いしたい。

次いで、日本医師会の三上裕司常任理事より 挨拶が述べられた。

介護保険報酬改定から半年が経ち、様々な問 題が明らかになってきた。皆様と意見交換をさ せていただき、今後の会務に反映させていただ きたい。

協 議

(1)介護職の処遇改善対策について(沖縄県)

<提案要旨>

国策による医療・介護の「在宅」への流れは、 今年度の診療報酬及び介護報酬の同時改定の影 響でさらに加速し、介護福祉関連施設が急増し たことにより、多くの施設が慢性的な人員不足 に陥っている。

全国的にも産業別の新規求人状況のうち、社 会保険・社会福祉・介護事業の分野が最も伸び 率が高く、増加傾向が続いているため、今後ま すます人員不足に拍車がかかると予想される。

一昨年の「事業所における介護労働実態調査 (財団法人介護労働安定センターより)」による と、沖縄県の介護職員の離職率は23.6% と全 国の17.8% に比べ高い水準にあることが分か った。特に、非正規職員の離職率は30.6% と、 全国を11 ポイントも上回っている。

※ちなみに正職員の離職率は県内12.8% に対 し、全国が15.7% と全国が高い。

労働条件等への不満としては、「仕事内容の わりに賃金が低い」32.2% 等となっており、こ うした結果からも介護職の処遇改善は喫緊の課 題であると思われる。

さて、わが国では、十数年前から「世界に類 を見ない超高齢化社会をむかえる」等と叫ばれ、 それを見据えた対策や環境が整えられてきた。 その問題も数年後にはピークをむかえさらに介 護職の必要性は高まってくるが、現在の状況が 続けば、担い手のいない疲弊感漂う現場の姿が 想像できる。また政府が進める「在宅」への流 れにおいて介護・福祉関連施設は非常に大きな 役割を担うことは承知の事実である。

これからむかえる高齢社会において、良質で 安心・安全な介護サービスの提供ができる環境 を構築するためにも、人材確保は必須である。 そのためにも介護職の処遇改善対策は急務であ り、その実現に向けた対応を求める。

<各県回答>

各県ともに、介護職員の人材確保や職場定着 を重要な課題と位置づけており、そのためには、 キャリアアップの仕組みを各医療機関及び介護 事業所が確立していくとともに、処遇改善には 財源が必要であるため、介護報酬本体で評価す る等の抜本的な取り組みを申し入れていく必要 があるとの回答であった。

また大分県からは、介護職の勤務状態や収入 では、質の高い人から抜けていくという現状が あり、この仕事をやりたいという気持ちで職に 就いていただくためにも、それに応じた収入や、 やりがいを感じるための方策が喫緊の課題であ ると追加発言され、福岡県からも、給与面が最 大の問題であり、特に介護のスキルが身に付い た働き盛りの年代において離職の傾向があり、 介護に関わる知識や技術等が継承できないとい う事態が起こっており、今後の高齢化社会を担 う人材育成は緊要な課題であると意見された。

<日医コメント>

介護職員の人材確保は非常に大切だが、非常 に難しい状態ということが共通の認識だと思 う。介護職員の処遇改善については、平成21 年度に処遇改善交付金として2,300 億円が出さ れ、24 年度の改定の際にそれが報酬の中に入 り改善加算という形になった。しかし現状でも、 介護関係に関わらず、すべての医療職種の処遇 は厳しい状態にある。

全体的な介護報酬の引き上げが必要であり、 そのためには財源が必要である。日医として は、今後必要な財源がどれ位なのかあるべき姿 を示した上で訴えていきたい。また、消費税引 き上げのタイミングに応じて、社会保障に財源 が回ってくるよう交渉する必要があると考えて いる。

キャリアアップについては、介護福祉士会が 段位性を導入するということも案として出てい る。段をとれば給与を上げていくのかという問 題もある。医師会として注視していきたい。

(2)認知症外来医療の評価方法は、認知症対策の推進に逆行しているのでは(大分県)

<提案要旨>

今後増加する認知症患者対策として、平成24 年度診療報酬改定で「認知症療養指導料350 点 (月1 回、6 か月まで)」が、紹介元のかかりつ け医に新設されたことは評価するが、紹介先の 専門医療機関が県内に1 か所しかない「認知症 疾患医療センター」に限定されることは認知症 対策の推進に逆行していると思われる。

平成23 年度までは、「認知症疾患医療センタ ー」に準ずる医療機関も算定要件を満たせば、 「認知症専門診断管理料」の該当医療機関とし て認められていたが、今回の改定でセンターの みと改定された。

かかりつけ医は近隣の該当医療機関に紹介を行 っていたが、今後は、要件を満たしていた紹介先 医療機関は、「認知症専門診断管理料」の請求は できなくなり、かかりつけ医も「認知症療養指導 料」を確保しようとすれば、遠距離の1 か所しか ない「認知症疾患医療センター」に紹介するしか なく、認知症患者や家族の負担になりかねない。

改善策としては、以前の通り、「認知症疾患 医療センター」に準ずる医療機関も「認知症専 門診断管理料」の該当医療機関として認めるか、 指定要件の見直し等を行い、熊本県のように「認 知症疾患医療センター」そのものを増やすしか ないと考える。

日医の見解及び各県のご意見を伺いたい。

<各県回答>

認知症疾患医療センターの設置状況について は、本県は平成24 年9 月時点で設置なしという 状況であるが、大分県では1 か所、長崎県では3 か所、熊本県では10 か所、福岡県では7 か所、 鹿児島県では4 か所、佐賀県では4 か所、宮崎 県では3 か所、設置されている状況であった。

提案要旨に示された、認知症専門診断管理料 や認知症療養指導料の算定については、各県とも に、認知症疾患医療センターとしての専門的な業 務運営は重要であると考えるが、今ある資源を効 率よく活用するためにも、加算の要件を限定的な ものにするのではなく、もっと柔軟なものにした 方が良いのではないかとの回答であった。

また熊本県からも、認知症疾患医療センター に機能を集中させたことで、センターで認知症を 診断するためには半年待ちという状況が起こっ ていると報告があり、従来通りの地域の精神科 や神経内科等でも療養指導料を算定できるよう な形が望ましいと考える旨の追加発言があった。

<日医コメント>

認知症疾患医療センターは、基本的には基幹 型と地域型があり、現在、全国に172 か所の認 知症疾患医療センターができている。数ヶ月前 に、厚労省の認知症PT(プロジェクトチーム)が、 身近型認知症疾患医療センターをつくるという ことを突然示した。基本的には、認知症疾患医 療センターは、専門診断やBPSD、合併症の対 応ができ、また研修等も行うということで施設 基準がかなりあり、そこで一旦確定診断を行い、 療養計画をきちっと立てるということで700 点 という高い点数がついた。それをかかりつけ医に 返すと、かかりつけ医は療養指導料で350 点が 6 か月間とれるという形になった。現在、身近に は精神科診療所等があり、そういったところと やりとりされているところがある。現在その場 合は、診療情報提供料250 点と認知症加算100 点、 この350 点でやりとしていただくということで、 専門診断管理料については、MRI やPET 等を使 用し確定診断を行い、家族に対して療養計画を 立てる等の機能を持ったところをセンターとい う名前をつけるということで特別にしている。

施設基準をどんどん緩めて、普通の精神科診 療等にセンターという名前を与え、やり取りをし やすい形にすると、かかりつけ医は療養指導料 350 点を半年とれるという形になるかもしれない が、センターという機能としては問題があると考 えている。日医としてはこの身近型については反 対の立場で交渉し、今回のオレンジプランの中に も出てきているが、いわゆる身近型については検 証するということで、検証して実際どうなのかを 確認していきたいと考えている。将来的には身近 型はいらないと考えている。日医は、施設基準を 下げ身近型をどんどんつくっていくということ については反対の立場を取っている。

中医協の中に、改定の結果の検証部会がある。 その中で、認知症の外来に係る診療状況の調査 項目が挙げられている。どのようなやり取りが されているのかを調べることになっている。そ の結果を見ながら次どうするかを決めていきた いと考えている。

療養指導料が6 か月しかとれない。6 か月で 良くなるとは思えない。これは財源の問題とな っており、次回は1 年等、もう少し伸ばすよう な交渉をしていきたいと考えている。

(3)介護施設における協力医の問題(長崎県)

<提案要旨>

介護報酬上の運営基準では、介護老人保健施 設と介護老人福祉施設では病院が、介護付有料 老人ホーム、グループホーム、小規模多機能型 居宅介護では医療機関が協力医療機関になるこ とが義務づけられている。

かかりつけの患者だけならまだしも、患者情 報もないままに時間外救急対応を求められるケ ースもあり、診療側には責任だけが重くのしか かることになっている。また、病院においては 診療所における時間外対応加算すら算定できな い状況もある。

対策案として、先ず、協力医療機関側が日頃 から対象となる施設の患者の医療情報を把握し ておくことが必要であり、診療報酬を付けた形 の何らかの制度の導入が望ましいと思われるが、 各県及び日医としてはいかがお考えでしょうか。

<各県回答>

各県ともに、協力医療機関が施設の利用者の 医療情報を把握することは望ましい形としつつ も、熊本県や大分県より、個人情報保護の問題 もあり困難ではないかとする意見や、診療報酬 上での評価は難しいのではないかとする意見が 示されるとともに、鹿児島県からは、施設にお ける外付けサービスや居住系施設における協力 医療機関と在支診・在支病、かかりつけ医の訪 問診療や訪問介護等の連携をより評価・充実さ せるべきであるとした意見が示された。

<日医コメント>

協力医療機関等に入所者の医療情報が適切に 伝わることは良いと考えるが、診療報酬ではな く体制に関する評価等、別の形の手当てが必要 と考える。

宅老所のような全く配置医師がおらず、突然 悪くなって救急で来られる場合には、一般の救 急患者と同じような対応しか無理ではないかと 考える。医療保険と介護保険、どちらでみるの かということも含め今後検討したいと考える。

通院できないような方については、当然、居 住系施設の中であれば、在支診等そういう形で診 療報酬上の評価はできると思うが、有料老人ホ ーム等については、比較的元気な方々が入られ る可能性もある。在宅医療の対象にならない方々 については、通院されている医療機関のかかり つけ医から情報をいただくことが大切である。

鹿児島県の回答のように、在支診や在支病の 評価を広げていくことにより、そういった方た ちの安全が守られるのではないかと考える。

(4)地域包括ケア体制(特に地域ケア会議)について、県医及び地域医師会の対応をどうするか?(熊本県)

<提案要旨>

今回、地域包括ケア支援センターの機能強化 が強く打ち出された。

特に、「地域ケア会議」を設置し、多職種が 一堂に会し、ケア方針の検討・決定等を行うも のであり、医師の出席も求められるであろう。

また、在宅医療を推進する方向からも、医 師会として連携体制を積極的に求められると 考える。

各県及び日医として、この「地域ケア会議」 に対する関与をどのように考えているかお聞き したい。

(5)地域包括ケアシステムの推進に向けた取り組みについて(福岡県)

<提案要旨>

2025 年には団塊の世代が75 歳以上に達し、 高齢者人口がピークを迎える。これに伴い、高 齢者ケアのニーズ増大並びに単独世帯の増大、 認知症を有する者の増加が想定されている。

国においては、これらの課題を解決するため に、医療・介護・予防・住まい・生活支援が日 常生活圏域で用意され、包括的・継続的に提供 できる体制「地域包括ケアシステム」の実現に 向けた取り組みを進めるよう介護保険法等が改 正された(平成24 年4 月1 日施行)。

福岡県では、医師会としての地域包括ケアシ ステム構築の方向性を検討し、各地域に情報等 を発信することを目的として「福岡県医師会地 域包括ケアシステム構築検討委員会」を設置す ることとなった。

各県の取り組み状況並びに日医の見解をお伺 いしたい。

(6)地域包括ケアシステム構築に関する具体策について(鹿児島県)

<提案要旨>

鹿児島県の第5 期介護保険事業計画では地域包 括ケアシステムの構築について項目を設けており、 人口5,000 人程度の中学校区レベルで地域の実情 に応じて地域包括ケア体制を整備するとしている。

しかし、行政の取り組みとしては、市町村で は、課題の把握、行動計画の作成・実施・確認、 県では、医療資源の情報収集、地域包括ケア体 制における課題把握、解決方策の検討、進捗状 況の評価などが記載されており、地域包括ケア システム構築のためには、医師会等との関連に ついて具体性にやや乏しいと感じているととも に、医師会としてどのように関与していくか検 討しているところである。

そこで、各県において地域包括ケアシステ ムの構築に対してどのように関与していく考 えかについて日医の見解及び各県のご意見を 伺いたい。

協議事項(4)(5)(6)は一括協議

<各県回答>

各県ともに、地域包括ケアシステムへの能動 的な関与の方策について検討を開始したところ であるが、具体的な施策として取り組んでいる ところは現時点ではないとする回答であった。 その中で、福岡県より「福岡県医師会地域包括 ケアシステム構築検討委員会」を設置し、地域 包括ケアシステムにおける問題点等を検討し、 郡市(地区)医師会の意見も反映させながら方 向性を固めていくこととしているとした報告が あり、各県ともに本事業を参考とした取り組み を行っていきたいとする意見があげられた。

また、大分県からは、地域包括ケアシステムを 効果的に推進していくためには、医師がリーダー となり多職種連携の中心的な役割を担う必要があ るとした意見があげられるとともに、佐賀県からも、 医師、行政、介護関係者が効果的にケアシステム を構築するためには顔の見える関係をつくること が大切であるとして、郡市(地区)医師会に積極 的に関与いただくための形を、県医師会として後 押ししているところであるとした報告があった。

<日医コメント>

サービス担当者会議と地域ケア会議の違いとし て、地域ケア会議は基本的には以前からあった。多 職種でカンファランスを行うということが、もと もと地域包括支援センターの事業の中に組み込ま れており、これに「地域ケア会議」という名前を 与えて、これから拡大していこうということである。

認知症対策の中のオレンジプランにも明記され ているが、一つは地域包括支援センターの総合相 談事業として認知症の短期支援チームをつくる。 もう一つは地域ケア会議を行うということで、そ こに予算を付ける。現在は、社会福祉士、主任ケ アマネ、保険師の3 人分とあまり予算が付いてい ないので、今後、そこに予算が付く可能性がある。 高齢者対策室が予算を取るために奔走している。

さらに、現在実施されている在宅医療連携拠 点事業と一体化の可能性がある。連携拠点につ いては、訪問看護ステーション、病院、医師会、 自治体等様々あるが、日医としては医師会が取 り組んでもらいたいと考えている。それぞれの 地域包括支援センターに地域の先生方が関わっ ていただき地域ケア会議にも出ていただく。地 域包括支援センターに医師会が関与し、それが 連携拠点になるということが2 つの事業として 重なれる可能性が高いと考えているので、是非 やっていただきたいと考えている。

我々としては地域包括支援センターを活性化 していただきたい。地域包括支援センターは全 国で4,000 か所位ある。それを活性化すること ができれば地域の隅々まで取り組める。地域の 医師会の先生方にご協力いただきたい。

(7)介護職員等によるたんの吸引等の実施のための研修事業の実施状況について(福岡県)

<提案要旨>

標記事業について、福岡県では昨年度は老施 協より6 名、今年度は福岡県医師会より介護保険 担当理事3 名、老施協・老健協・北九州高齢者 福祉事業より各1 名が指導者講習会に参加した。

今後、県としては今年度中に伝達講習会の実 施を考えており、各県での進捗状況についてご 教示いただきたい。

また、日医の見解をお伺いしたい。

<各県回答>

本県では、医師会枠3 名を含む合計10 名が指 導者講習会に出席し、現在、伝達講習会が企画 開催されているところである。長崎県、熊本県、 福岡県からも、本県と同様に、医師会から数名 の関係者を派遣しているとした回答が示された が、大分県、佐賀県、宮崎県からは、現状では 医師会としては特に関与はしていないとした回 答が示された。

<日医コメント>

たんの吸引については、日医としては、基本 的には介護福祉士が危険なことをすることには 反対という立場である。積極的に指導者講習会 をやって下さいということはない。各県にお任 せしたい。24 年度も各県から10 名程度参加さ れ国の指導で講習が行われている。今年度は受 講者が462 名。九州は66 名参加されている。

口腔内のたんの吸引については、簡単な研修 を受ければ問題なく、危険性も低いといことだ が、気管カニューレ内の吸引については、特養 の入所者にはほとんど対象症例がないというこ と、施行事例の結果を見ても基本的には看護師 を呼んで対処したという結果が多いということ 等から、リスクはあると認識している。気管カ ニューレまでやるということは必要ないのでは ないかと考えている。

(8)要介護度が改善した場合における介護報酬の経過措置について(鹿児島県)

<提案要旨>

介護保険事業所において、介護サービスの提 供を継続している利用者の要介護度が改善した 場合、現在の介護報酬制度では、介護報酬は減 少し、利用者のADL 改善に熱心に取り組めば 取り組むほど、事業所収入が少なくなる。

平成24 年度の診療報酬改定で、療養病棟に おける褥瘡の治療に関しては、褥瘡が治癒・軽 快後30 日間は医療区分2 を継続して算定可能 となった。

このように介護保険においても、要介護度が 改善した場合に、一定の期間は変更認定前の介 護報酬を算定できるようにする必要があると考 えるが、各県のご意見を伺いたい。

<各県回答>

各県ともに、要介護度が改善した場合につい て、成功報酬という考え方は難しいと考えるが、 改善後の一定期間は変更前の介護報酬を算定で きるとした形については検討の余地はあるので はないかとの回答が示された。

大分県からは、以前日医でも同様の議論があ ったと情報提供があり、その際は、介護保険の 場合、改善したかどうかは要介護度しかなく、 要介護認定は総合評価であり、どの部分が良く なったのか悪くなったのかを評価する仕組みに ないとして、成功報酬という考え方は難しいと した議論になったと説明があった。また、大分 県から、「よく頑張っているところは患者様や家 族等から評判となり、そう言われることが一番 の評価である。その方が我々医師としてはむし ろ良いのではないか。」との意見が述べられた。

<日医コメント>

大分県のご発言のとおりである。

基本的には、医療は直すことが当然。介護保 険制度の主旨も、高齢者が尊厳を保持しながら 有する能力に応じて自立できる生活ができるよ うにサービスを行うということであり、介護度 が良くなっていくということは介護保険の主旨 に合っている。医療保険とかわらない。そうい う意味で、良くなったからといってそこに評価 をするということはおかしいと考える。

(9)主治医意見書の記載内容の充実と様式について(佐賀県)

<提案要旨>

主治医意見書の記載内容の不備については、 各種協議会で何度も取り上げられてきた問題で ある。

主治医意見書の記載状況は、記載する医師に より差がある。主治医意見書の記載不備は、認 定審査の遅れにつながり、また、精度の高い認 定審査ができず、申請者に不利益を与える。

特に認知症に対する要介護度は、「特記すべ き事項」の欄の充実が重要となるが、本県で は、認知症の診断もあるのに認知症高齢者自立 度「自立」ランクと傷病経過や特記事項に内容 の記載がなく、中核症状の短期記憶にチェック があるだけの例などが見られる。

各県では、主治医意見書の記載内容充実のた めの対策として、リーフレットを作成し全会員 へ配布されたり、本人もしくは家族に対して、 質問事項に回答していただく「主治医意見書予 診票」を作成し、利用していただくなど、様々 な対策が行われているようである。

各県における意見書の記載の充実に係る取り 組みや、その取り組みの検証結果についてお伺 いしたい。

また、主治医意見書の様式については、調査 員での対応が可能と思われる項目もあるので、 日医には様式の簡素化を要望したい。

<各県回答>

各県ともに、主治医意見書の記載内容の不備 については、介護保険制度開始当初より大きな 課題の一つとして認識しているが、未だ効果的 な解決には至っていない旨の回答であった。

本県では、県担当課が実施予定としている主 治医意見書に係るアンケート調査の項目や調査 結果後の内容を基に議論することを予定してい る旨を回答し、熊本県からは、既に主治医意見 書作成のためのアンケートを実施したところで あり、当該内容を基にした方策について検討を 加えているところである旨の回答が示された。

また、福岡県からは、医師会が大きな病院に 出向き、病院の研修室等を使用して、勤務医や 研修医等の参加を促す研修会を企画開催してい るところである旨の報告があった。

<日医コメント>

主治医意見書の簡素化については、主治医意 見書は要介護認定において非常に役割が大きく、 クオリティを下げる訳にはいかない。簡単にす るということはクオリティも下がる可能性もあ り、その辺のところは少し難しいと考えるが、 基本的には、どう書いてよいか分からないとい うことがあるかと思うので、日医としては、平 成18 年度に主治医意見書の記入マニュアルを作 成するとともに、平成23 年度には「特記すべき 事項欄の記載の充実のための記載ガイドブック」 を作り会員に配布させていただいた。読んでい ただけるかどうかという問題はあるが、福岡の ように出向いて行って教えるということも必要 かとも考える。勤務医は関心が低いということ もあるため、今後とも考えていきたいと思う。

(10)訪問リハビリテーション指示医の受診要件の緩和について(宮崎県)

<提案要旨>

昨年の協議会で、訪問リハビリテーションを 行う際に、主治医の毎月の診察とは別にリハビ リテーション事業所で指示を行う医師の診察 も、毎月行うことが義務付けられていることへ の問題提起を行った。

今回の改定で、リハビリテーション事業所で 指示を行う医師の診察は3 か月に1 回で良いこ とになった。しかしながら、これまではほとん どの事業所の医師は、実際に診察を行うことな く、主治医の診療情報提供書を元に指示書を書 いていたのが現状であった。今回要件緩和の下 に、3 か月に1 回の診察がはっきりと明文化さ れたために、訪問診療を行っていないリハビリ テーション事業所の医療機関では、訪問リハビ リを取りやめたところもある。また患者さんサ イドからも、2 重受診を強いられることへの反 発の声が起きている。

同じ訪問リハビリでも、訪問看護ステーシ ョンが行う訪問リハビリに関しては、主治医 の訪問看護指示書のみで行われており、矛盾 がある。

このことについて次回の改定に向けて、各県の ご意見と日本医師会のご意見を再度お聞きしたい。

<各県回答>

訪問リハビリテーションを利用する方が、主 治医と訪問リハビリテーションを指示する医師 と、2 回の診察を受けることになる場合があると した本件については、本県、大分県、長崎県、佐 賀県、宮崎県では、要件の緩和について検討の余 地があるのではないかとした回答を示し、熊本県、 福岡県、鹿児島県では、訪問リハのスタッフが所 属している医療機関の医師が診察をきちんと行 いリハの指示を出すことが、医師の医療提供上の 立場を守ることにつながっており、リハビリテー ションを医療行為とする立場からは診察は仕方 がないのではないかとする回答が示された。

<日医コメント>

医療機関から行う訪問リハは訪問リハの報酬 だが、訪問看護ステーションから行う訪問リハ は訪問看護の報酬となる。そこは全く違ってお り、指示の出し方も当然違う。

かかりつけ医の医師が出す指示と、リハビリ 事業者の医師が出す指示は意味合いが違うため このような形になる。訪問看護ステーションが 行うリハよりは、訪問リハ事業所の訪問リハの 方が遥かに質が高いと考えているので、こうい う形で当然ではないかと考えている。

訪リハステーション等を認める方向にいくか どうか。被災地だけの特例で行っているが、これ は独立開業の方に流れるということで、日医と しては反対するということである。訪問看護の 中で実施していただきたいとして主張している。

基本的には、訪問看護、訪問リハもそうだが、 独立開業ということになると、現在は病院ある いは老健等のPT、OT がリハビリ事業所とし て行っているが、独立するとした場合、利用者 を引き連れて独立する可能性もある。そうなる と非常に問題である。リハステーションの人達 が医師を抱え込む等のことも起こりえるのでは ないかということもある。医師会としてはそう いう事態は避けたい。必ず医師が指示を行う。 その下でやるということが鉄則であり、独立開 業をなるべくさせないようにとやっている。独 立開業となるとチーム医療等も崩れる可能性も ある。私は反対の立場で主張している。