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沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 院長 我那覇 仁 先生

我那覇 仁 先生

こどもから大人まで、沖縄 県の医療に貢献する、より良 い病院を創って行きたいと思 います。

Q1. 県立南部医療センター・こども医療セン ター院長就任、誠におめでとうございます。 就任されて約6 カ月が過ぎましたが、ご感 想と今後の抱負をお聞かせいただけますで しょうか。

今年4 月、県立南部医療センター・こども医 療センターの4 代目の病院長を拝命し、早くも 半年が経過しました。私はこれまでの35 年間、 殆どを臨床医として過ごしてきましたが、院長 就任後今までと全く異なった経験をする事にな りました。改めて人と人が実際に対話する事が 大切な事、常に相手の立場に立って物を考える 事がいかに重要であるかを痛感しています。人 口約70 万人の、南部医療圏の医療を担う基幹 病院として、今後の役割や抱負について述べた いと思います。

1. 初めに、南部医療圏において、こどもから 大人までの総合医療センターとして、私達 が掲げた理念と基本方針を遵守し、高度多 機能な、地域に開かれた頼れる病院、信頼 される病院を目指します。

2. 南部医療圏における救命救急センターの役 割を維持します。救急医療は医療の原点で す。当院は卒後臨床研修施設として、全国 から多くの若い研修医がcommon disease, primary care を学ぶために当院を志望しま す。この役割を果たす為にも、2 次〜 3 次 救急医療を中心に行いますが、1 次救急患 者の受診を拒否するべきではないと考えま す。しかし今年初め、救急室専従医が大幅 に減少し、特に内科部門において準夜、深 夜の過重負担があります。救急医の確保は 急務ですが、他医療機関との連携やシステ ムの構築も必要となります。内科系や外科 系の成人部門を如何にして層を厚くし、強 化する事ができるか、今後の課題です。

3. 県が政策医療として求めていた、身体合併 症を持つ精神疾患病棟は長い間休床が続い ていましたが、今年10 月、ついに14 床 が開床しました。全国でも少ないリエゾン 型の精神疾患治療施設として、医療関係者 や県民から期待されています。

4. 小児部門は、これまで慢性的に病床が足り ず、専門的な治療の延期を余儀なくされる 事や、救急室から年間800 人もの小児が、 他院に紹介されていました。今回病棟を再 編し、小児20 床を新たに確保する事によ り、より良い小児医療を提供する事ができ ると思います。

5. 教育、研修を大事にします。卒後臨床研修 に関しては当院の大きな軸であり、今後と も研修医を確保していく事は病院の将来像 に大きく影響します。研修医にとって魅力 のある研修病院とは何なのか、研修終了後 のアウトカムをどのように設定するかが各 科に求められ、より良い研修施設を目指し たいと思います。また今年、病院事業局、 中部病院の協力を得て、来年度より当院研 修医もハワイ大学関連病院での研修医派遣 の選考に加わる事になりました。

6. 県立病院間や琉球大学との交流、コラボレ ーションは将来沖縄県の人材確保に大変重 要です。琉球大学医学生のクラークシップ や、初期研修医の受け入れを開始します。

7. ‘病院を出よう’ を合い言葉に、今年地域 住民の皆様と実際にふれあう医療、地域に 根ざした病院を目指し、気軽に相談でき る出前講座を開始しました。病院ホームペ ージには自由に選べる多彩な項目がありま す。一部地域からのスタートですが、今後 対象地域や出前講座を拡大する事ができれ ば、沖縄県全体の健康保健や医療に関する 意識の向上に繋がると考えます。

Q2. 県立病院が病院事業局を中心に、平成21 年度から3 年間の経営再建計画で積年の課題 であった赤字体質を県立病院のスタッフ並び に関係各位のご努力により改善されておりま すが、今後の継続的な経営の健全化また公的 医療機関としての役割等について、先生のお 考えをお聞かせください。

今年から繰入金がこれまでの85 億円から59 億円に縮小されました。病院事業局は、過去3 年間の再建計画の結果を基に、今後4 年間を ‘県立病院経営安定化計画’ として、1. 経常収支 の黒字維持、2. 手元流動性の確保、3. 約70 億 円の長期債務の返済の3 つを目標として取り組 む事を発表しました。先日開催された県立病院 経営再建検証委員会において、病院事業局から 現在の繰入金を維持すると想定した場合、今後 10 年間、経常収支の黒字化が予想されるとの 試算がありました。特に‘持続的な経営健全化 が達成される見込みがあるか’ については、今 年11 月の検証委員会で最終的な報告が出る予 定ですが、持続的な経常収支の黒字の維持に は、定数増員や看護師の確保、診療報酬改定、 DPC へ実務的な取り組みなど、さらなる県立 病院の努力が必要と考えます。近い将来、地方 公営企業法全部適応でいくか、地方独立行政法 人に移行するのか、最終的な局面を迎える事に なりますが、全国の事例から見ても、都市部と、 離島医療圏を持つ地域では経営形態に対する考 え方が異なります。しかし、沖縄県の選択がい ずれの場合になろうとも、公的医療機関のミッ ションである‘すべての県民に対し、良質な医 療を提供する’ と言う本質的な医療政策が変 わってはならない事は言うまでもありません。

Q3. 県立南部医療センター・こども医療センタ ーは全国でも数少ないこども病院を併設した 総合病院ですが、その特徴と今後どのような 医療展開を目指しておられるのかお聞かせく ださい。

全県を対象とする総合周産期母子センター、 こども病院として位置づけられ、小児疾患の最 終病院としての役割があります。当院は全国の こども病院と異なり、同一の病院にこどもと成 人を対象とした医療を行うユニークな総合病院 です。来年度、こころの診療科を再開する事や、 今後はadult congenital heart disease を代表と する、成人期に達した様々な疾病を、如何に小 児部門と成人部門が協力して治療する事ができ るか、体制作りや多角的な検討が必要となりま す。また沖縄県で最初のPICU を開設した事に より、小児の重症例の救命率が飛躍的に向上し た事は県内外から高く評価されています。厚労 省は8 床以上のPICU に診療報酬加算を決定 し、今後PICU を全国的に展開して行く事を 示しました。当院も現在の6 床ではベッドが足 りず、沖縄全県の重症疾患児に対応する事が困 難な状況にあり、現在県に対し、早急にPICU を拡張すべく強力に働きかけています。

Q4. 県医師会に対するご要望等がございました らお聞かせ下さい。

県医師会の多方面にわたる活動には常に敬服 しています。しかし、残念な事に県医師会と公 務員医師会との交流が十分でなく、目に見えに くい所がある様に感じます。救急室のコンビニ 受診については、特に診療所を主体に診療時間 のシフトを検討する事、県立病院が急性期を過 ぎた多くの患者様の後方病院を必要としている 事、また現在多数の離島の診療所、病院が医師、 看護師確保に奔走していますが、今後とも非常 時には人的な応援、協力を頂きたいと思います。

Q5. 大変ご多忙の身でありますが、ご趣味等が ございましたらお聞かせください。

外国を旅行する事が一番の楽しみです。数年 前に妻と一緒にヨーロッパ旅行に行ったのがそ のきっかけですが、その時、自分自身の視野の 狭さを感じました。同じ地球に住み、他の国の 人々の生活や文化を知る事は大変重要です。歴 史、市街地を散策した時の色彩や香り、言語、 音楽、絵画などの文化と触れ合い、さらに料理 やお酒と旅行には楽しい事が一杯です。今年も 残り少なくなりましたが、また旅行に行ければ 最高です。


この度はお忙しい中、ご回答頂きまして、誠 に有難うございました。

インタビューアー 広報委員 金城 正高