常任理事 稲田 隆司
去る9 月7 日(金)那覇新港9 号岸壁にて 海上自衛隊のヘリ搭載 護衛艦「ひゅうが」の 一般公開が行われた。今回の一般公開は、来る 9 月9 日(日)に実施が予定されている沖縄県 総合防災訓練において、「ひゅうが」を利用し た急患搬送訓練(被災地域で対応のできない負 傷者等を「ひゅうが」内の救護所へヘリ搬送す る)等のため、来港したものである。
当護衛艦は、病院船の機能を兼ね備える艦船 とのことであったため、本会関係者(医師4 名・ 事務局3 名)で見学を行った。
護衛艦「ひゅうが」の概要について以下に紹 介する。
護衛艦「ひゅうが」の主な特徴
●海上自衛隊初の全通飛行甲板を有するヘリ コプター搭載の護衛艦であり、航空機の 多数機運用能力を持つ艦船である。(全長 197m、全幅33m、定員約360 名、13,950 トン)
●ヘリコプターの搭載数は通常 3 〜 4 機だ が最大11 機まで搭載が可能となっており、 洋上における航空機整備能力を有する。
●艦内には、災害派遣時における対策 本部等の設置が可能な多目的スペース (100 名余)と「医務室」を有している。
●艦内医務室は、「病室2 部屋(8 名)」「集 中治療室(1 部屋)」「手術室(1 部屋)」 「歯科治療室(1 部屋)」を有する。
●通常は衛生員が乗員の健康管理を中心 に業務を実施しているが、医官が乗艦 すれば一般の診療所とほぼ同様の診療 が可能で「病院船」としての機能も有 している。
●災害時には被災地からの多数傷病者を 受け入れるべく、艦内格納庫エリアを 2 つに区分し、第1 格納庫エリアに、 1)救護指揮所、2) 1st トリアージスペ ース、3) 2nd トリアージスペース、中 等症処置エリアを設置。第2 格納庫に は、軽傷処置エリア、処置済待機エリ アを設置することが可能となっている。
●傷病者の搬送方法は、着艦したヘリか ら傷病者を降ろし、甲板に設置される エレベーターから艦内へ搬送される仕 様となっている。
護衛艦「ひゅうが」(全長197m、全幅33m、定員約360 名、13,950 トン)
防災ヘリが撮影した「被災地情報」等がリアルタイムで映し出される大型モニター複数完備
航空機搭載数最大11 機まで可能
見学会に参加した沖縄県医師会関係者
傷病者搬送は着艦後、甲板エレベーター利用
艦内「診察室」
艦内「手術室」
艦内格納庫エリア(救護指揮所)
艦内「手術室」
艦内格納庫エリア(中等症処置エリア)
艦内「病室」
印象記
常任理事 稲田 隆司
沖縄県医師会は、県福祉保健部との連絡会議や沖縄県メディカルアイランド構想で正式に病院 船建造を提案している。平時は離島の医病支援や人間ドックツアーを行い、非常時、災害時は被 災地支援へ向かう。
今回、一部医療機能を有する護衛艦「ひゅうが」を見学する機会を得て、その効率的な空間設 計、機能の多面性に触れ、病院船は、実現可能だと意を強くした。「ひゅうが」程大規模である必 要はなく、その軍事機能を医療に特化すれば充分にスペースを確保した病院船が完成する。既に 病院船を提言する超党派の議員連盟もでき、調査費もついた。病院船誘致に熱心な他県医師会も あると聞く。1 千ベッドのアメリカ海軍のマーシー級とまではいかずとも、堂々とした国際貢献 のできる病院船を造りたいものである。そしてその拠点は沖縄がふさわしい。南海トラフ関連の 地震を考えれば、「表日本」は港としてはリスクが高く、「裏日本」は機動性に難があると思われる。 沖縄なら「表」も「裏」へも出動し易く、台湾、アジアへの支援にも近接である。県選出の国会 議員にも議連に入って頂き声を上げて誘致活動をお願いしたい。病院船は夢ではない。実現可能 である。