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いつものやつ

花城清祥

医療法人 コザクリニック 神経内科
花城 清祥

店のドアが開き、L 字カウンターの一番奥へ 腰かけ、マスターと目が合うや「いつもの」。

少しだけ賑わっている店内。カウンターの隅 でマスターと思われる人と時折しゃべりながら 注文した一品をペロリと平らげ、グラスワイン をグイと飲み干すとものの30 分で店を後にし ていく…。

こんなドラマのワン・シーンのような情景に 数年前から憧れています。

レストランでもバーでもなんでもいい。いつ かお決まりの店でこの台詞を言うことが細やか な夢です。

ただ、私はこれといって好きな食べ物、飲み 物があるわけでもなく、休日も食べ歩くわけで もなし。家の事情もあり、そうそう夜遊びがで きるわけでもなく…。

でもこの情景への憧れは、夜遊びができないことが理由ではないようです。夜遊びができる 状況でも、特に何をするわけでもなくビール片 手にインターネットで車情報やYouTube をダ ラダラと見ているのが現状だからです。お酒も 量はあまり飲みませんが、ビールから焼酎、泡 盛、ワインなど何でも飲み、食べ物もヒージャ ー以外は一応何でも食べます。でも逆に「絶対 この料理でなきゃ!」といったこだわりもあり ません。「いつもの」一品で思い浮かべるものも、 あるときはドリア、あるときはビーフシチュー と決まっていませんし。でもなぜかお酒だけは 赤ワイン。詳しくはないため銘柄は不明。ただ、 あまり酸味は強くないというこれまた漠然とし たもの。お酒が赤ワインと決まっているので、 「一品」は中華や鮨ではなく洋食なのです。

ではなぜ、あのような情景に憧れるのか?

私が考える“いつものお店“とは、自宅から 歩いて通え(10 分以内)、値段も手ごろで味も さほどコッテリでなく(毎日通っても安心な)、 かつ、混んでいるわけではないがガラガラでも ない(つぶれない程度にそこそこ繁盛している) お店なのですが、あちらを立てればこちらが立 たずという条件を並べているので自分でもこん な店まずないよな〜と思ってしまいます。しか も、今挙げた条件には料理が入っていません。 料理はイタリア料理だろうがフランス料理だろ うが何だっていいのです。とにかく、いつも頼 める一品を何か。結局、漠然と雰囲気だけに憧 れているのでしょうか?居心地のいい場所・時 間に憧れているだけなのでしょうか?

自分なりにいろいろ考えてみましたが、どう もそうではないようです。優柔不断な性格のた め、“絶対この店!!” という店を絞りきれな いだけなのではないか?「いつものお店」は、 この性格から脱却したいという願望の現れなの ではないか?と最近考えるようになりました。

最近、お気に入りのカレー屋さんがあり、月1 回程度ですが、通うようになっています。時々 無性に食べたくなる味なのです、これが。でも 毎日食べたいわけではありません。せいぜい月 1 回です。沖縄そばも同様です。今日はカレー、 別の日は沖縄そばが食べたい…です。しかも今 日はあの店のカレー、別の日には違う店のカレ ー、です。絶対ココ!という店はありません。 決める必要もないか…というのが本音です。願 望はあるが、本気で考えているわけではない… やはり優柔不断です。性格はなかなか変えられ ません。でも想像(妄想?)するだけでも結構 楽しいものです。

ということで本日もビール片手にダラダラと インターネット。いつものお店がみつかるのは いつのことやら…。