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我が家の新参者

上江洲徹

牧港中央病院 心臓血管外科
上江洲 徹

ある調査によると、現代の日本では2 人以 上の世帯で何らかのペットを飼っている割合は 48%にのぼるという報告もある。我が家にも1 年半ほど前に子猫がやってきた。とはいっても ペットショップで選んだわけで、自然に住みつ いたわけではない。ペットについて自分の歴史 をひも解くと、小学生の頃に犬を飼っていたが、 猫は祖父母宅で飼われていたことを思い出す。 自由に飼われていたその猫は、昼間は寝ている か、外を出歩いて何しているか分からない状態 であった。しかし、祖母が“猫まんま” を用意して名前を呼ぶと、どこからともなくとんでも ないスピードで走ってやってきた。今になって 調べてみると、猫は犬に比べて4 倍の聴力を持 っているらしい。なるほど納得である。

さて我が家にやってきた子猫は、生後3 カ月 の雄猫であった。いろいろ案が出たが(自分は 完全にまかせっきり)、名前は“あお” に決まっ た。品種がロシアンブルーであることから決ま ったらしい。なんとも短絡的な・・・と思ったが、 呼びやすいこともあり、しばらくすると馴染ん できた。この“あお” クン、初めは家にならす ことと、トイレを認識させるためケージの中で 過ごさせた。最初の2 〜 3 日は警戒していたが、 そのうち慣れてくると、ケージの外に出せとば かりにやたらアピールするようになった。2 週 間が過ぎ、いざケージを開けたらさすが猫であ る。ダーッと駆け出したかと思うと、家の中を 我が物顔で走りまわるようになった。子供たち も一緒になって遊ぶようになり、いい写真を撮 ろうとシャッターチャンスを狙ったりしていた。

実際に猫を飼ってみて驚かされることがいく つかあった。身体能力はさすがなもので、2 段 ベッドの梯子など、けっこう勾配が急でもすい すい登っていくし、走りながらのターンも素早 い。部屋のドアが少しでも開いていれば、前足 と顎を使って上手に開けて入っていく。特に我 が家は引き戸が多いため、1cm ほどの隙間があ ればそおーっと開けて入ってくるのである。こ れまで、四足動物が寝る時はうつ伏せになるか、 せいぜい横になるものだと思っていた。飼い猫 だから油断してそういうことをするのかわから ないが、なんと仰向け、しかも人間が朝目覚め た時に伸びをするような体勢で寝ていることが ある。その姿を見た時は、思わず“おまえ本当 に猫か?” と叫んでしまった。さらにその姿を よく目にするようになってくると、本来備わっ ていただろう野生の緊張感が完全に失われてし まったように感じて、“もうちょっと猫らしく したら?” なんて話しかけてしまう。

どの家庭でもそうだと思うが、ペットの食事 や排泄物の世話は、飼う前は子供たちが交代ですると宣言しても、いざ飼い始めるとその約束 はどこへやら・・・、だんだん世話をしなくな り、大人(完全に妻にお任せ・・・)の仕事に なる。しかし、ここは教育も兼ねて、できるだ け世話させるようにガミガミいうのが自分の役 割になっている。便はちゃんとトイレでするが、 尿はというとそうでもない。布団が大好きらし く、冬の間は油断するとやられてしまう!!  そのため各寝室はドアを閉めることとし、ひと り(一匹)では立ち入り禁止、必ず誰かが責任 もって監視することになった。しかし・・・、 やられてしまうのである。また、雄猫のため か時々凶暴になることもあり(本人は遊んでい るつもり?)、足などをなめていたかと思うと、 突然噛みついてくることもしばしばで、みんな 少しずつ咬傷ができてしまった。

なんだかんだいって、家族の一員となった“あ お” クン、一人前に健診も受けている。最近は ペットの医療保険もあり、予防接種から定期健 診まであるとのこと。10 年ほど前から動物病 院が増えてきた印象はあったが、こういうビジ ネスも充実しているせいだろうか。日本でのペ ット保有率が高いのもうなずける。しっかりし た健診のため、いやいや家族みんなの愛情のた め、子猫もすっかり大きくなった。けっして肥 満ではないが、今では体重が来た時の3 倍近く (約5kg)になり、体長は70cm 位あるだろうか、 後足で立ち、壁に前足をついた状態になると、 ドアノブに届きそうである。そのため、子供の 友達が遊びに来た時に出る言葉は、きまって“でかっ!” である。

野良猫が窓際にやってくることも多い。お互 いに鳴きあっている(話している?)が、しば らくすると離れていく。一緒に外に行きたい気 持ちはわかるが、ここは我慢してもらい、時々 2 階のベランダでストレスを発散させるように している。最近気になる言葉を妻がもらした。 “お隣のベランダあたりに野良猫がやってくる けど、白い子猫でかわいいの・・・” とのこと。“飼 うつもり?” とは聞けなかったが、こうして猫 の魅力に心が奪われ、気がつくと猫屋敷になっ ていくのかなと思ってしまった。我が家はどう なることやら・・・。