ちばなクリニック 仲田 清剛
何年か前のある日、unhappy な学生時代には 行けなかった香椎花園(かしいかえん、福岡市 在)を、淡い夢を辿るような気持ちで訪れた。 天気は良いのに平日のせいか入場者は2 〜 3 組 と少なく、華やかだったと思われる遊園地の中 を、夢が少しずつ霧散するような気で散策して いると、花壇のはずれの一角に花を見つけた。
中央に小さな中性花が200 個ぐらいあり、周 辺を包むように外側に大きな修飾花(両性花) の茎が細長く輪を保っているように見える花た ちの集団であった。
「この花はガク紫陽花よ」と伴侶が教えてくれた。
「いやこれは組織の花だ。中央の小さな中性 花は各部署を表し、細長い茎はBSC(バラン ストスコアカード)という糸で周りの大きな花 びらのような両性花(トップグループ)と結び 付いている」と自画自賛した。(BSC とは目標 達成のためのトップとフロントを結ぶマネジメ ントツール)
その後、組織のイメージ像としてガク紫陽花をパワーポイントで使った。
最近は、「組織が世紀を超えて存続するには どうしたら良いのか? 」という命題が大きく圧し掛かっている。
古典的には、組織は「相互に意思を伝達でき る人々が、行為を提供しようとする意欲を持っ て、共通の目的を達成しようとするときに成立 する」と言われている。
これを病院・クリニックに適用すると「全職 員で医療を提供するという使命をいかに成就す るか」という点に集約されるので、原点を絶え ず検証、再構築して行くことが求められる。
そして組織は有為転変して行くことから、存 在基盤である組織の目的により共同体組織と機 能体組織に分けられている。
構成員の満足を目的として能力よりも人柄を 重視する共同体では全員一丸となるが調和され るので到達レベルは平均とならざるを得ない。 外的目的を掲げその達成に努力する能力重視の 機能体は、絶えず目標達成して行くと戦略が進 化となり進化が戦略を生む正のスパイラルでハ イレベルへと到達しやすい。
病院という組織は本来、機能体であるがその ライフサイクルの中で共同体化して、内部環境 重視で競争のない、終身雇用に近い状態になれ ば突然変異は出てこないことは想像に難くな い。そして退化、消滅して行くだけである。機 能体は外的環境にさらされながら存続して行く ので突然変異が生まれやすく、絶えず変革して 行くことが予測される。
この両組織の差異を「個の情」対「組織の理」 の対立事項から、「仲良し軍団」と「梁山泊軍団」 に置換してみるとおもしろい。
テレビ番組の「カンブリア宮殿」に登場する 弁当販売の玉子屋は700 人の職員中、配達部 隊200 人で、朝注文を受け12 時までに毎日7 万食をオフィス街の5,000 社へ届けている。配 達部隊は21 の班組織で構成され、班長にはメ ンバーの給料から車両の融通、営業戦略まで決 定権を与えられている。12 時までに弁当を配 達するミッションを彼らに与え、その為には自 分たちで考えるシステムを造っていった玉子屋 はまさに機能体組織のトップランナーである。
さらに「組織はいつまで寿命があるのか? 」 という問いかけには、百年続く企業の条件分析 によれば、「日本には創業百年以上の老舗は2 万社あり、その強みは老舗のベンチャー精神」 にあるという解があった。
機能体組織に通ずるinnovation が百年企業の重要なkey であると思われる。
老舗が多い業種は清酒製造業、酒小売、呉服・ 服地小売、旅館・ホテル等の順で、業績をみると、 老舗企業の63,1%が年商3 億円未満で、家族 経営を脱し、エリアが全国的に展開されて来て いる姿が浮かび上がってくる。
次に組織の中で言われていることは「職員満 足度ES 無くして顧客満足度CS 無し」という 命題である。組織の推進力という点ではまさに そのとおりで否定はできない。
共同体組織は職員の和を求めるので職員満足 度が優先され、機能体組織では外部目的達成の ため顧客満足が優先される。しかし実際の組織 ではある部門では共同体化が進み、他部門では 機能体とmix した状態が多く見られる。
これらの関係をバランスよく取り入れた戦略 マネジメントツールがバランストスコアカード BSC である。
組織の事業計画を財務、顧客、業務(内部)、 学習と成長という四つの視点で経営指標を活用 し戦略テーマを決め、年度目標値のアクション プランを創りBSC が各部署で稼動していく。
坂の上にさらに坂が待っている時代の組織変革に必要なツールと思われ紹介しました。
(BSC については学会ホームページhttp://www.hbsc.jp/ をご参照下さい)