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定年退職後の選択

西平竹夫

嶺井第一病院 総合内科
西平 竹夫

私は平成20 年3 月31 日公務員医師を退職 した。その数ヶ月前に県庁主催のライフプラン セミナーで「実りある人生を送るために」「家 庭経済について」 「生きがい開発について」「沖 縄県職員の退職手当について」「共済年金につ いて」「ライフプランの必要性」「マネー新時代 の資産管理」等々の講義や質疑応答があった。 ライフマネジメントを必要とする背景として1) 社会の変化に対してどのように対処したらよい か2)自ら豊かな人生を築いていく心構え3)自分 はどのような生き方をしたいのか。ライフマネ ジメントに必要な3 つのプラン1)心身の健康管 理プラン2)生涯経済プラン〜これから必要なお 金の準備はできていますか3)生きがい開発プラ ン〜仕事以外にやっていることがありますか。 意識調査による月額生活費から夫婦の生活期間を今後22 年と試算してゆとりある生活に約7 千万円〜 1 億円前後必要であること。人生の長 期化で60 歳時点での平均寿命は男性で22.09 年、女性は27.6 年、健康寿命はそれから数年 差し引いた値になる。

以上を前置きにして私は、まずは80 歳健康 長寿を目指して仕事を週に2 〜 3 回、あとは自 由とする選択をした。現在、嶺井第一病院と、 総合保健協会で大変お世話になっているが、あ れから4 年間、夢のように過ぎ去り、健康は忍 び寄る老化現象で決して万全とはいえないが毎 年の人間ドックでチェック、修正に心がけ、増 えた自由な時間は先人の教えに学ぶべく適当に 読書人生を満喫している。これまでの現役時代 はなにかと時間に追われ体の悲鳴は薬で抑え込 む毎日であったが、それも解放されつつありス トレスに対する痛みの域値が上がったと解釈し ている。慢性頭痛の患者さんが外来にも見える が、ストレス多き現代生活では対応は一進一退 であり、定年後に痛みがやっと薄らぎ、深夜の 痛みから解放されている方もいる。

思えば我々の人生は中学生で将来の高校進学 選択を、高校生は大学進学、進路選択をしいら れ、大学では専門科目習得に努力し、医学部卒 業後は研修生、専門試験等々で、ただ一筋に専 門関連部門にまい進するのみで、65 歳でやっ と自由の身になれるのは人生の選択で最高の恩 典と考えたい。気力充実している方はさらに今 まで通り継続もまた選択肢の一つであろう。私 にとっては自由、適度の仕事、スローライフは 最高の第二の人生行路である。高齢者がかかえ る3K として1)誰もが抱える健康への不安2)経 済的不安3)孤独が挙げられているが社会との接 点を保つためにもパートの仕事は最適かと思われる。

男児志を立てて郷関を出ず、学もし成る無く んば復帰らず−立志の歌は若者には向いても老 齢期には受入れ難い。青春とは人生のある期間 ではなく心の持ち方をいう。年を重ねただけで は人は老いない、理想を失うとき初めて老いる。 楽天主義と思う節もあるが、ウルマンの一連の詩は単純な老齢賛歌ではなく死をどう見ていた かも識者はコメントしている。私が船出する時 嘆きの涙は 欲しくない−共に過ごした日々を 喜んでほしい、そしてこう言ってほしい「満ち 潮だ。よい船旅を」と結んでいる。老齢期は日 めくりカレンダーのごとく一刻一刻と足早に過 ぎ去っていく。心の底には生への畏敬か煩脳の なせる業か、もやもやとしたものが流れている。