副会長 玉城 信光
去る5 月31 日(木)、県庁7 階第4 会議室 において標記連絡会議が行われたので以下のと おり報告する。(出席者は以下のとおり)
出席者: 崎山福祉保健部長、国吉保健衛生統括監、 里村参事、国吉健康増進課長、平医務課長(以上、県福祉保健部) 宮城会長、小生、安里副会長、宮里常任理事(以上、県医師会)
議 題
<提案要旨>
厚労省の人口動態統計特殊報告「肝疾患の都 道府県別年齢調整死亡率の年次比較」によると、 肝疾患による死亡率は全国的に年々減少傾向に ある。一方、沖縄県では男性1 位、女性2 位と いずれも高い死亡率となっており、急速な肝疾患対策が望まれる。
2011 年1 月に発行された「衛環研ニュース 第21 号」では、2009 年沖縄県の肝疾患死亡件 数男女(人口動態統計)が示され、男性では アルコール性肝疾患が51%、肝線維症及び肝 硬変が33%、女性では肝線維症及び肝硬変が 55%、アルコール性肝疾患が19%となってお り、アルコールの過剰摂取が多くみられる。
また、2007 年度に各市町村が実施した基本 健康診査においては、男女ともお酒を飲まない BMI25 以上の方が、肝機能検査値で異常割合 が高い状況にあり、特に男性の死亡率が高く増 加傾向にあるとの結果が出ている。
このような状況の中、沖縄県では、健康おき なわ21(アクションプラン)推進協議会にお いて、肝疾患対策におけるアルコールに関する 取り組みを強化するための啓発活動として、マ グネットシートの配布等が行われている。
今後、肝疾患対策を推進していく上で、1)アルコール過剰摂取の問題、2)お酒を飲まない方 の脂肪肝炎による劇症肝炎の問題等があげられ るが、沖縄県としての具体的な取り組みや対応 策についてお伺いしたい。
<県福祉保健部回答>
国吉健康増進課長より次のとおり回答があった。
ご指摘のとおり、本県の肝疾患の状況をみる と全国の傾向と異なって増加傾向にあり、男性 の増加傾向が特に大きくなっている。肝疾患に おけるアルコール性肝疾患の割合が多くなって いるが、一方で検診結果において男女ともお酒 を介さない肥満の方の肝機能異常の割合も高く なっている。
さらに、本県では、BMI25 以上の肥満者の 割合が男女とも全国平均を上回っており、特に 男性では20 代、30 代の若い世代からの肥満割 合が増加しており、アルコール及び肥満に対す る取り組みが必要となっている。
県では、「健康おきなわ21」のアルコール分 野において、「休肝日をつくろうお酒はほどほ どに 未成年や妊婦は飲みません・飲ませませ ん」を行動指針に設定し、節度ある適度な飲酒 等について広報誌、ホームページでの情報提供、 チラシの作成・配布などにより普及啓発を実施 している。
また、アルコール性肝疾患対策として、平 成23 年度は地域・職域連携推進事業において、 アルコールに関する正しい知識の普及活動の 強化を目的として、「沖縄県のアルコール性肝 疾患による死亡率は全国の約2 倍であること」 (2009 年値)を広く県民に訴えるマグネットシ ートを作成し、事業所、商工会議所、市町村 等に配布した。今年度も引き続きマグネット シートを作成し、職域を中心に配布を行う予 定である。
食生活・運動分野においては、「ちゃんと朝 食 あぶら控えめ おいしいごはん」「1 日1 回 体重測定」「頑張りすぎず適度な運動 今 より10 分(1,000 歩)多く歩こう!」を行動指針に設定し、健康的な食習慣や適度な運動 についてリーフレットの作成・配布及び食生 活改善地区組織を活用した肥満予防に取り組 んでいる。
さらに、飲食店等と連携し外食先でも健康づ くりを実践できる環境を整備するとともに、食 生活改善地区組織活動を通した県民の健康づく りを引き続き推進していく。
「健康おきなわ21」では、アルコール分野及 び食生活・運動分野の検討委員会を開催し対策 に取り組んでいるが、今年度は目標の達成状況 を確認するため中間評価を実施し、両分野の項 目指標の評価を行い、計画の後期5 年間で重点 的に取り組む対策等を検討する予定である。
○主な意見交換は以下の通り
○県医師会:健康おきなわ21 の見直しという のは、全体の健康状態がどのようになっている のかということが見える集計を出せるということか。
◆県福祉保健部:先ず、平成22 年度に行われ ている栄養調査にて、これまで設定した目標に 達しているのか達していないのかを確認する。 その後、力を入れるべきところが見つかれば新 たに必要な対策を考えたいと思っている。
○県医師会:那覇市医師会が取り組んでいる「健 康ウォーキング」は参加者数が増えていってい る。また、浦添市が行っている3kg 減量運動等 の集計も見ながら、指針を出すと良いのではな いかと考える。
◆県福祉保健部:色々な指針が出されているが、単純明快な方向で努力していきたい。
○県医師会:肝疾患に対して色々なことを色々 な場所で行われているが、総体的にマネジメン トするところはあるか。
◆県福祉保健部:肝疾患に特化したものはない が、健康おきなわを進める中で、分野別検討委 員会というものがある。当委員会の中にアルコ ール、こころと健康というものがあり、その中 で肝疾患等の問題を重点的に取り上げるということがある。
○県医師会:原因をはっきりさせ、対策をしっ かり立てることが必要であると考える。医師 会もその辺りを取り組んでいかなければいけない。
<提案要旨>
沖縄県地域医療再生計画(一次)では、沖縄 県病院事業局と北部地区医師会が実施主体とな り、「IT を活用した地域医療連携システムの構 築事業」が計画されている(事業期間:平成 26 年3 月31 日迄、当初予算額:3 億7,500 万円)
当該事業においては、宮古・八重山地区にお いても同様な事業が計画されているものの、事 業者に対する説明や情報提供が不足し、事業が なかなか進展しない状況にあった。
そのため、本会では、去る平成23 年10 月 27 日(木)に地域医療委員会を開催し、県の 担当者より今後の取り組み状況等について説明 いただく等、地区医師会や県立病院担当者等に よる情報共有の場を持った。
その中で、県立北部病院より、当初予算3 億 7,500 万円のうち、約2 億9,500 万円を電子カ ルテの導入に充当し、残りの約8,000 万円で、 地域の病院や診療所等における連携に充てたい との説明があった。
しかしながら、去る平成24 年3 月30 日(金) に行われた「沖縄県保健医療協議会」において は、沖縄県地域医療再生計画(一次)の軽微な 変更について報告が行われ、3 億7,500 万円確 保されていた予算が2 億9,500 万円に減額され る内容となっていた(その他の事業での増・減 額もあり)。
当該事業については、本来、地域の医療連携 を条件に県立病院への電子カルテが整備される ことになっていたと認識しているが、今回の減 額は地域医療連携体制に充当する予算がカット されたのかと危惧しているところである。
ついては、当該事業の減額の意図について、また、地域医療連携システムの今後の方針につ いて、ご説明願いたい。
なお、宮古・八重山地区における「IT を活 用した地域医療連携システムの構築事業」は減 額されず、当初予算のままとなっている。当 事業の今後の対応についてもご説明いただきたい。
<県福祉保健部回答>
沖縄県地域医療再生計画(一次)の見直しを 行う際に「IT 活用地域医療連携システム構築 事業」について北部地区では、北部病院電子カ ルテ整備後、約8,000 万円の執行残が見込まれた。
県病院事業局より、当該事業に係る追加事業 案として、北部病院の電子カルテ用自動精算機 整備があげられたが、必要性・優先度・熟度の 観点から他の一次計画の事業に充当することと した。
その他IT を活用した地域医療連携に係る事 業として、一次計画で「地域医療連携体制総合 調整事業(地域連携クリティカルパス)」を実 施している。
また、二次計画により、県全体を対象とした 「遠隔読影支援システム整備事業」も実施して いる。
これらの事業により、地域医療連携体制につ いて推進を図っているところである。
今後の地域医療再生計画の執行状況等から 「IT 活用地域医療連携システム構築事業(宮古・ 八重山)」についても、必要に応じて見直しを 行うこととしている。
○主な意見交換は以下の通り
○県医師会:当初、電子カルテの整備には地域 との連携を条件とし、北部の地域医療の充実を 図ることとしていたはずだが、その基礎構築が ないがしろにされている感がある。事業者(県 立病院事業局、北部地区医師会)とは事前に調 整したのか。
◆県福祉保健部:病院事業局より具体的な事業計画が出されていない。今後、一次・二次とも に執行残等の見直しを行うので、新たな計画が あればご提示いただきたい。
○県医師会:現在、医療のクラウド化構想を描 いており、糖尿病や脳卒中のDB 化に加え、国 保連合会や社保からの特定健診結果をDB 化 し、オールおきなわの健康情報DB 化が出来な いか検討しているところである。
○県医師会:県から継続的な運用資金やDB 構 築資金の足りない部分を一括交付金から充てる ことはできないか。
○県医師会:地域医療再生基金は平成25 年度 までと期間が限られている。平成26 年度以降 の予算付けの可能性はあるか。
◆県福祉保健部:地域医療再生基金には見直し がある。また、一括交付金については、自由度 は高いが財務省への説明が必要になるので、き ちんとした説明のつく資料が作成できれば説得 は可能であると考える。
◆県福祉保健部:平成26 年度から一括交付金 を利用する予定であれば、来年の5 月には資料 を提出いただきたい。
○県医師会:そもそも地域医療再生基金は、医 療費抑制が続き地域医療が崩壊したため、本来、 診療報酬をあげることで地域医療の活性を図る べきところ、当該基金を創設し、その対応を図 っているところである。しかし、現況としては 全国的にも公立病院の赤字補填等に使われてい る。従って、県立病院の電子カルテを整備する ことは趣旨から外れているため、本来の趣旨に 基づいた地域連携を実施していただきたい。
<提案要旨>
地方分権一括法(地域の自主性及び自立性を 高めるための改革の推進を図るための関係法 律の整備に関する法律 平成23 年法律第205 号)により、これまで国の省令等により定めら れていた医療施設に係る下記の基準については、今後、都道府県等の条例により定めること とされた。
ただし、基準の性格として、
○従うべき基準(必ず適合しなければならない基準)
○参酌すべき基準(地域の実情により異なる内容を定めることを許容)
とあり、省令では
「従うべき基準」・・・・1)、2)及び3)の一部
「参酌すべき基準」・・・3)の一部及び4)
と示されている。
本課としては、「従うべき基準」及び「参 酌すべき基準」ともに、国の定める基準のと おり条例を定めていきたいと考えるが、貴会 のご意見を伺いたい。
○主な意見交換は以下の通り
◆県福祉保健部:今年度中に制定しなければな らない。条例の見直しは可能なので、パブコ メや医療審議会等を踏まえ、9 月議会への提出 に向け、国の基準に沿って作る事で進めていきたい。
○県医師会:沖縄は全国と比べ平均在院日数が 少なく、病床稼働率が非常に高いので、病床に 関しても慎重に検討いただきたい。
◆県福祉保健部:基準病床に関しては全国一律 で計算式に基づいて算出されるが、実状に合わ ない部分もある。救急病床数は人口当たりで少 なくなっており、現在議論が進められていると ころである。
○県医師会:貴課の提案によると、国の定める 基準のとおり条例を定めていくこととしている が、国の定める基準が本県の地域医療に支障を 来すことがないか等を踏まえ、慎重にご対応いただきたい。特に、参酌すべき基準については、 地域の実情により異なる内容を定めることが許 されているので、本県の地域医療の実情に即し た内容としていただきたい。いずれにせよ、条 例制定までの具体的なスケジュール等を提示い ただき、本会としても慎重に検討を行いたい。
<提案要旨>
地域主権戦略大綱(H22.6.22 閣議決定)を 踏まえ、「地域の自主性及び自立性を高めるた めの改革の推進を図るための関係法律の整備 に関する法律」(平成23 年法律第105 号)が 平成23 年8 月30 日に公布された。母子保健 法及び障害者自立支援法に基づく自立支援医療 (育成医療)の下記の事務について、都道府県 から市町村へ権限移譲されることになった。
施行期日:平成25 年4 月1 日
・母子保健法の移譲内容
1)低体重児の届出 2)未熟児の訪問指導 3)養育医療の給付
指定養育医療機関の指定については、県の業務
・育成医療の移譲内容
1)育成医療に係る医療費の認定及び支給
指定医療機関の指定については、県の業務
*権限移譲に伴い、それぞれの市町村においては、公正中立な立場から医学的な判断を行う審査体制の整備を行う必要がある
医師会に於かれても、権限移譲について周知 を図っていただき市町村から審査会等へ協力を 求められた場合には、対応していただきたい。
県の取り組み
・平成24 年2 月 権限移譲についての取り組み状況調査
・平成24 年3 月16 日 全市町村対象に説明会実施
・平成24 年5 月8 日〜 31 日 保健所管内で第2 回説明会
・広報活動、指定医療機関への周知、審査支払い機関委託契約確認
・平成24 年12 月頃に市町村へ取り組み状況再調査
○主な意見交換は以下の通り。
○県医師会:県で行うのも大変である。所属する地区医師会に頼むしかないと考える。
◆県福祉保健部:小児保健協会等にも説明しているところである。
○県医師会:小児科医全体で行う必要があるのではないかと考える。
印象記
副会長 玉城 信光
今年度最初の会議なので部長始め担当役員の交代があり、自己紹介が行われた。
1.沖縄県における肝疾患対策について(医師会提案)
本対策については、県でも取り組んでいるが、糖尿病などと異なり特別な委員会をもって対策 をしているわけではないようである。肝疾患による死亡率の低下が必要なことは県も認識してお り、お酒の量や生活習慣の改善が今後必要であろう。
2.沖縄県地域医療再生計画(一次)における予算の減額について(医師会提案)
本予算については、病院事業局との調整はしているが、地区医師会などとの連携を完全に消失 していると思われる。地域医療再生基金の本来の目的は医療費を抑制したことにより地域医療が 崩壊の危機に瀕していることから、それを再生させるために有機的な医療の再生、人材の育成に 使われるべき資源として設立された。決して県立病院の事業再生のみのために使われる資金では ないことを再確認してもらった。県立病院とて地域の医療との連携なくして成り立つものではな い。今後の運用方法は地区医師会と議論の場を作るべきであると提言した。
3.地方分権一括法に基づく医療法等改正に係る医療施設の人員、設備等に関する基準について(医務課提案)
地方分権一括法により医療施設に係る下記の基準については、今後、都道府県等の条例により 定めることとされている。
1)既存病床数の補正の基準、2)専属薬剤師設置義務の基準、3)医療機関の人員基準(医師、歯科 医師を除く)、4)医療機関の「その他の施設(消毒施設、洗濯施設、談話室、食堂及び浴室)」に該 当する設備基準など、国の基準があり、簡単には変更できないこともあるようだが、県の判断で 変更できる箇所は県医師会と相談して沖縄県の実情に即した対応をとるべきであると申し入れた。
4.母子保健法及び自立支援医療(育成医療)の市町村への権限委譲について(健康増進課提案)
母子保健法及び障害者自立支援法に基づく自立支援医療(育成医療)の下記の事務について、都道府県から市町村へ権限移譲されることになった。
施行期日: 平成25 年4 月1 日
母子保健法の移譲内容として、1)低体重児の届出、2)未熟児の訪問指導、3)養育医療の給付が あり、指定養育医療機関の指定については、県の業務となっている。
育成医療の移譲内容として、育成医療に係る医療費の認定及び支給があり、指定医療機関の指 定については、県の業務となっている。
法律の改正により地区医師会にお願いされる業務が多くなると思われるが、地域医療推進のた めに地区医師会の先生方のご協力をお願いしたいと考える。
しかしながら、業務を引き受けるにあたっては十分に調整をして頂きたいと思う。学校医に関 する問題がいろいろ生じているが、医師会が学校医を引き受けているのは医師会の義務だと錯覚 している学校関係者が多いことが問題を引き起こしている。行政との関係でマンネリ化した関係 でいると、いつの間にか協力している関係が、やるべきであるという関係に置き換えられてしま う危惧がある。地区医師会としてしっかり調整して頂きたいと考える。
沖縄県との会議では地区で活動している先生方の疑問を解消したり、地域医療の取り組みに資 するところが多いのでぜひとも種々のご意見を寄せて頂きたいと思う。