会長 宮城 信雄
去る6 月1 日(金)、ホテル日航福岡において、 九州各県保健医療福祉主管部長・九州各県医師 会長との合同会議が開催された。
当日は、まず、今回担当の福岡県医師会松田 会長より開会が宣言され、続いて、開催地の福 岡県小川洋知事(海老井副知事代読)、九州医 師会連合会稲倉正孝会長(宮崎県医師会長)の ご挨拶、九州厚生局朝浦幸男局長より来賓挨拶 が述べられた後、「看護教員養成講習会のe- ラ ーニング」について、「大規模災害時における 九州ブロックのJMAT 活動を認識した災害時 医療救護協定」についての2 つの議事について 協議が行われたので、その概要を報告する。
当協議会には、沖縄県行政からは崎山八郎福 祉保健部長が出席された。
挨 拶
1)福岡県知事 小川 洋(海老井副知事代読)
昨年3 月に発生した東日本大震災に際しては、各県医師会において、避難所での診療活動、 巡回診療、医療機関における支援等が行われた。 また、行政においても、人員の派遣、救援物資 の搬送、避難者の住居確保等、幅広い支援活動 に取り組まれたことに対し敬意を表する。
本県でも、震災直後から医師、保健婦等を派 遣し支援活動を行い、現在も、福島へ保健師を 長期派遣している。
また、福島原発の事故を受け、防災対策を充 実させる地域が10 q圏内から30 q圏内に拡 大され、本県では糸島市が該当することから、 現在、緊急被ばく医療対策について、関係者と 協議をしているところである。
さて、福岡県では、健康幸福度日本一を目指 し、本年3 月に指針となる計画を策定した。そ の計画の中で、医療分野については、救急医療 体制の充実、周産期医療の確保、在宅医療の推 進を掲げているので、皆様のご協力をお願いし たい。
今年4 月に、前福岡県医師会長の横倉先生が 日本医師会長にご就任された。地元行政として も心強く思っている。これを機に、九州が一体 となって医師会との連携がより一層深まるよう 期待している。
最後に、本日の会議が実り多い成果が収められるよう祈念する。
2)九州医師会連合会長 稲倉 正孝(宮崎県医師会長)
昨年は、東日本大震災という未曾有の災害が 発生した。その時、行政はDMAT が迅速に出 動し、医師会はJMAT という形で災害医療活 動を行った。このことは、国民からも高い評 価を受けていると思う。また、複数の県にま たがる原発事故や想定外のことが起こり、想 定外のことが至るところで起き、大きな反省 点も残した。
このようなことからも、机上の計画のみでは なく、予想外、想定外の対応についても、日頃 から関係者が連携を深め、行政、医師会、民間 機関等が垣根を越え、真の意味で国民、県民の ために何ができるのか、何をやらなければいけ ないかを考える必要があると思う。
大規模災害時の医療の確保、救急医療の確 保、へき地医療の確保は隣県同士の連携や機能 分担が非常に重要であると思う。このようなこ とを考える時、九州各県の保健医療福祉主管部 長と各県医師会長が一堂に会する機会は少ない ので、本日は貴重な会だと思っている。有意義 な会議になることを期待し挨拶とする。
来賓挨拶
九州厚生局長 朝浦 幸男
本日お集まりの皆様におかれては、平素より 厚生行政の推進にご支援、ご協力賜り感謝する。
昨年の東日本大震災に際し、医師会において は、医療関係者の被災地への派遣、医薬品の供 給など、多大なご支援を頂いたことに感謝申し 上げる。
また、保険医療機関の指導等に際しては、昨年度はほぼ計画通りに遂行できた。これに対し てもお礼申し上げる次第である。
今回の診療報酬改定は、介護報酬との同時改 定でもあり、改定の内容が多岐に亘っている。 当局では施設基準の届出の対応等を懸念してい たが、各県の事務所からは概ね順調に進んでい るとの報告を受けている。今後、改定内容につ いて疑義があれば、遠慮無く申し出ていただき たい。
九州・沖縄の人口は、この1 年間で約1 万9 千人減少し、約1,458 万人となっている。福岡、 沖縄は増加しているが、他の6 県は減少して いる。
このような人口減少という社会的状況を背景 にして、現在、国会では税と社会保障の一体改 革の議論が行われている。議論の行方は現時点 では不透明であるが、九州・沖縄の今後の医療 提供体制のあり方について、特に、離島が多い 九州・沖縄の特殊性を踏まえ、皆様と共に考え ていきたいと思っている。
本年は、電力需要が逼迫しており、九州でも 計画停電が発動される可能性がある。当局とし ては、皆さんと連携を取りながら医療提供体制 に混乱が生じないよう、必要な情報の収集・発 信に努めるので、ご協力をお願いしたい。
座長選出
座長に、福岡県医師会の松田会長を選出し、松田会長の進行で議事が進められた。
議 事
【提案要旨】
現在、九州管内における看護教員養成講習 会は、福岡県で毎年実施され、熊本県は、24・ 25 年実施予定、鹿児島県は26 年に実施予定で ある。
しかしながら、講習期間が8 カ月と長期にわ たり、県外に赴かなければならないこと等から、 受講者本人、養成所への負担は大きく、受講したくても受講しにくい状況にある。
国は、平成24 年度予算において看護教員養 成講習会のe- ラーニング導入に向けての予算 を確保し、現在、検討会(e- ラーニングを導 入した看護師等養成所の専任教員養成講習会の 実施方法に関する検討会)の中で、その内容等 について検討されているところである。
ついては、受講しやすい環境作りの一助とし て、放送大学等を活用したe- ラーニング導入 の実現に向けて、さらなる働きかけをお願いし たい。
各県行政・医師会の意見
看護教員養成講習会のe- ラーニング導入に ついては、各県行政、医師会から賛成する意見 が示された。その中で行政側から、演習や臨地 実習等の実施方法等にも充分考慮した、教育効 果の高いe- ラーニングが実施できるようにす る必要があるとの意見があった。
【提案要旨】
平成7 年11 月8 日に「九州・山口9 県災害 時相互応援協定」、「同運営要領」、「同応援協定 に係る医療支援に関する実施細目」が定められている。
今回の東日本大震災を受けて、各県で地域防 災計画、災害マニュアルの見直しや災害時の対 応・体制の検討が行われているが、県域をまた ぐ災害医療への対応等、現状に即した体制の構 築が急務であり、行政を含めた九州ブロックと しての協力体制の構築が重要である。
平成24 年3 月21 日付、医政発0321 第2 号 の厚労省医政局長からの「災害時における医療 体制の充実強化について」の文書においても、 JMAT をはじめとする医療チーム等の派遣調整 を行う体制や情報の共有が必要であり、災害時 における医療体制の充実強化、広域応援体制の 整備としては、都道府県はブロック内の複数の県との締結が必要であると示されている。
また、DMAT の活動は48 〜 72 時間程度の 災害急性期医療を担うものであり、今回の東 日本大震災では、JMAT(日本医師会災害医療 チーム)が避難所等における医療や医療機関へ の支援と同時に避難所や在宅等の被災者の健康 管理、避難所等の生活環境の改善や被災地の医 療復興に大きく貢献したことは周知の事実であ り、JMAT は平成23 年7 月15 日の派遣終了 まで1,395 チームを派遣した。
しかしながら、行政のJMAT に対する認識 は低く、JMAT の公的な位置づけを強く要望い たしたく、今回の震災を契機とした協定の見直 しや新規締結において、医療の専門職としての 判断に基づくJMAT の派遣を事後で追認する みなし条項、日当と実費弁済そして二次災害時 には準公務員として補償する規程、都道府県圏 域を超えた活動を同等に扱う規定、条項全体を 毎年双方から見直す条項を加味した協定の締結 をお願いしたい。
各県行政・医師会の意見
各県行政側の意見としては、1)JMAT の位 置づけについては、国レベル(厚労省・日医) で調整すべき、2)JMAT の派遣後の追認並び に、3)日当と費用弁償、二次災害時の準公務員 扱いとすることについては、困難視する意見が 大方をしめた。
これに対し、佐賀県医師会の池田会長より以 下のとおり意見が述べられた。
昨年のこの会議においても、同じ問題が議論 されたが、全く前進していない。各県において は、地方防災計画などでは行政・医師会の調整 が上手くいき、追認や費用弁償の問題はクリア されているが、県域を超えた場合の問題は解決 されていない。
JMAT の位置づけ等の問題は、中央で厚労省 と日医が協議して決めれば良いことである。こ の会議では、1)県外派遣が可能となるために県 知事が医師会に派遣要請を行うとする条項を定めること。2)費用の実費弁償、二次災害時の準 公務員としての取扱を決めて頂くようお願いしたい。
そのことは、平成18 年に「九州・山口9 県 災害相互応援協定」改定の議論の際に長崎県の 行政から提案され、各県にも届いているはずで あり、その時、長崎県(行政)が提案された内 容をベースに検討を進め、早急に取り纏めて頂 きたい。
佐賀県医師会の池田会長の発言を受け、長崎 県福祉保健部の濱本部長より、当時私は関わっ ておらず内容は把握していないが、本県が提案 した内容のどこに問題や課題があって纏まらな かったのかを確認し、各県とも調整したいとの 意見があった。
今後の対応については、長崎県行政が平成 18 年度の提案内容を確認のうえ、各県行政と 調整すると共に、医師会は長崎県医師会を窓口 として、今回当番の福岡県医師会と連携し各県 医師会と調整を進めて行くことになった。
福岡県医師会の松田会長より、特養の医務室 が保険医療機関としての登録が可能となった。 これは二つの大きな問題がある。一つは、特養 の開設者。理事長は医師でなくても良い事にな っているが、果たしてこれで良いのか。又、医 療機関は税金を納めるが、特養は納めなくても 良いことになっている。このことは今後問題が 上がってくると思うので、念頭に置いて欲しい との情報提供があった。
時期開催地、当番の選出
これまでの開催地、当番の順番に倣い、次年 度は開催地は鹿児島県、当番は行政側が担当す ることに決定した。