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はしかから始まったVPD(ワクチンで防げる病気)制圧運動
 −はしか‘0’キャンペーン週間5/13 〜 5/19 に因んで−

具志一男

はしか‘0’プロジェクト委員会 副委員長
ぐし こども クリニック 具志 一男

はじめに

沖縄県で2001 年から始まったはしか‘0’ キャンペーン週間も今年で12 年目を迎えます (日本医師会の予防接種週間は2004 年から)。 2003 年から全国に先駆けて行った麻疹患者の 全数把握とウイルス学的検査による検査診断、 接触者の追跡調査により県内 での麻疹ウイルスの伝搬は無 くなり、県外からの持ち込み による感染のみになっていま す。予防接種による感受性者 の減少と接触感受性者の追跡 調査と隔離が大きな力となり ました。

麻疹制圧へ、風疹は…

2006 年からは待望の麻疹ワ クチンの2 回接種が、MR(麻 しん風しん混合)ワクチンを 使って行われるようになり、 罹患しなくても確実な永続的 な抵抗力を獲得することが出 来るようになりました。全国 的にも2009 年からは患者数が 激減しており(図1)、国外か らの輸入例の割合が増えてい ます。沖縄県ではここ1 年以 上にわたって麻疹の患者発生 が見られませんが、全国でも 近い将来、麻疹の制圧が可能 になるであろうと思われます。

図1.

図1.週別麻疹患者報告数の推移,2008 〜 2011 年

また、同時に接種することになった風疹の予防接種率も向上し、患者の発 生と共に先天性風疹症候群の児も減らすことが 出来ていました(図2)。しかし、2011 年は、 風疹の予防接種を受けていない20 歳以上の男 性の風疹患者が増加し、予防接種を受けてい る者と受けていない者の差が明らかとなりました。20 才代以降の風疹ウイルス感受性者に対 する予防接種が課題となっています。

図2.

図2.週別風疹患者報告数の推移,2008 年第1 週〜 2011 年第30 週

沖縄県のMR ワクチン接種率は、まだまだ、 目標の95%に達していません。特に、キャッ チアップで行われている3 期(中学1 年生)と 4 期(高校3 年生)の接種率は、75 〜 80%と 低迷しています。現在、県内では麻疹や風疹の 発生は見られませんが、今後未接種者を中心と した流行から、0 歳児や妊婦への感染が懸念さ れます。

VPD 制圧運動

この予防接種による効果は他の疾患の予防に も向けられ、日本でもここ2 〜 3 年の予防接種 導入に拍車がかかっています。昨年からは、ヒ ブワクチン(米国では20 年前から導入)、小 児用肺炎球菌ワクチン(同10 年前)、ヒトパ ピローマウイルスワクチン(子宮頸がん予防: 同8 年前)の定期接種率化に向けての接種費用 の助成が行われています。今年は、ロタウイル スワクチンの発売が始まり、不活化ポリオワク チンの導入も予定されています。平成25 年度に向けての水痘、おたふく、B 型肝炎、大人用 肺炎球菌ワクチンの定期接種化など、先進国か ら20 年遅れた日本の予防接種行政が変わろう としています。その原点となった沖縄県はしか ‘0’プロジェクト委員会の活動の一環として、 はしか‘0’キャンペーン週間が、今年も5 月 13 日から行われます。5 月13 日には県庁前広 場で、イベントなども行われます。御参加いた だければ幸いです。

おわりに

この時期に限らず、一年中、いつでもVPD を減らす活動にご協力をお願い致します。いつ、 病気に罹るかわかりません。接種可能なときに タイミングを逃さず、必要な予防接種を可能な 限り同時に行うことが肝心です。別々に接種し たときに、後に回した疾患に罹患し、死亡した り障害を残したときには悔やんでも悔やみきれ ません。何故、一緒にできると説明してくれな かったのかと責められます。充分な説明をして、 同時接種を薦めることが肝要です。