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「世界結核デー(3/24)」に因んで
「世界結核デー」と日本の最近の結核対策

比嘉政昭

財団法人沖縄県総合保健協会 副理事長
比嘉 政昭

3 月24 日は「世界結核デー」である。1882 年ロベルト・コッホが結核菌の発見を学会で発 表した日を記念して世界保健機関が1997 年に 制定し、この日を中心に世界各国で結核への啓 発、結核対策の推進が行われている。日本で も、「2015 年までに結核の有病率及び死亡数を 半減させる」を含む、国連ミレニアム目標を達 成するため、Stop TB Partnership Japan(ス トップ結核パートナーシップ日本)を中心にし て、精力的に活動している。世界の結核は地域 格差は存在するものの、貧困、HIV、多剤耐性 結核等との闘いである。WHO のイニシアチブ の下、国際連携が益々重要になっている。これ まで日本では公益財団法人結核予防会結核研究 所とWHO が連携して数多くの、発展途上国の 結核対策医療従事者を養成し、世界の結核対策 に大きく貢献している。

さて、日本では、平成19 年に結核予防法は 廃止され新感染症法に統合され、BCG 接種も 予防接種法に組み込まれた。感染症対策とし て感染症法第11 条に総合的な予防の推進を図 る指針を作成公表することが規定されている。 平成23 年5 月16 日に、「結核に関する特定感 染症予防指針」が公布された。その内容とし て、有症状時に早期医療機関の受診を勧奨す ると共に、入院中の高齢者等が結核に感染し ている可能性を念頭に置く必要があることの 重要性が挙げられている。又、高齢者等につ いては必要に応じて、主治医に健診を委託す ることが重要としている。更に、初発患者を 含む疫学調査を法第15 条に基づく積極的疫学 調査に位置づけて実施して行く事とした。 BCG 接種については、小児結核の予防、粟粒 結核・髄膜炎の予防効果が高いことから引き 続き実施する事としている。医療の提供では、 潜在性結核感染性症治療を積極的に推進する 事が盛り込まれている。具体的目標として平 成27 年までに人口10 万対罹患率を15 以下に するとしている。

沖縄県では、沖縄県結核予防計画− STOP TB おきなわ−を平成22 年に改訂している。 内容は国の指針と変わらないが、これまでの保 健所を中心とした結核対策は、市町村、医師会 及び健診団体の役割が大きくなり、又、個人の 役割が重視されているので、各個人に対する啓 発、教育が益々重要となる。

県内では、結核検診は重点的に罹患率の高 い年齢層、集団施設、養護施設等を中心に行 われており、全体の受診率を把握するのは困 難となっている。むしろ、県民が医療機関を 受診する機会を捉えて、結核罹患の有無もチ ェックする事が重要であり、事実、新結核患 者の約9 割は有症状等で受診した際に発見さ れており、開業医等の役割が大きいものとな っている。予防接種であるBCG は予防接種法 の個別接種の推進勧奨から本県でも個別接種 の機会が徐々に多くなっている。又、小児科 医の同時接種の機運が高まり、国に対しても 予防接種法の改正を求める動きも高まりをみ せている。平成22 年度の本県のBCG 接種率 は95.5 %と高い水準にある。BCG の接種技 術の評価については表1、表2 のように那覇市 とうるま市で実施された結果である図1 からみ ると、いずれも良好な状況にあると思われる。

稿を終わるにあたり、皆様のご理解をお願いしたい。これまで県民に対する結核予 防啓発活動を大きく担ってきた複十字 シール運動が財団法人結核予防会から、 公益財団法人結核予防会への移行に伴 い、平成23 年度から公益財団法人結核 予防会本部の事業となった。従来は総 合保健協会では、職員を配置して取り 組んで来たが、募金等による健診機器 整備等も出来なくなり、県民にたいす る結核予防啓発に限定した活動になっ ている。財団法人総合保健協会として は、今後も、健康診断事業、BCG 予防 接種事業及び健康教育等を通して、全 国と歩調を合わせ、県民の結核予防活 動の推進及び健康の向上に皆様と共に 努めてまいりたいと考えている。引き 続きご支援をお願い致したい。