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「こどもの予防接種週間(3/1 〜 3/7)」に因んで

安慶田英樹

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
安慶田 英樹

はじめに

この数年間、我が国に新しいワクチンが導入 されました。2008 年にインフルエンザ菌b 型 (以下Hib と略)ワクチン、2009 年にヒトパピ ローマ(以下HPV と略)ワクチン、2010 年に 7 価肺炎球菌結合型ワクチン(以下PCV7 と 略)の接種が始まり、さらに2011 年の年末に ヒトロタウイルス(以下HRV と略)ワクチン が導入されました。それに伴う話題について紹 介します。

一つは接種開始時期が生後2 ヶ月と早くなっ たことです。従来はDPT が始まる生後3 ヶ月 がワクチンデビューの時期でした。保護者への 啓発が求められており、今まで以上に産科と小 児科の連携を強化する必要があると考えます。

二つ目は同時接種のことです。ワクチンの種 類が増え、乳児早期から接種スケジュールが過 密になっています。そのために、一日に3 〜 4 本のワクチンを接種する同時接種が普及してき ました。同時接種がグローバルスタンダードで あることと同時接種に対する小児科学会の考え 方を紹介します。

三つ目は、公費助成制度です。Hib、PCV7、 HPV のワクチンは昨年から公費助成制度が行 われています。期限は本年の3 月までですが、 国は制度の延長を計画しています。将来、定期 接種化されることを希望しますが、現時点では 不透明です。公費助成制度が継続されている間 に、対象者に積極的に接種を行い、接種率を上 げ疾患を制御していくことが望まれています。

こどもの予防接種週間で、忘れてはならない のは麻疹の排除です。我が国は2012 年度まで の国内からの麻疹の排除を目標としてきまし た。麻疹の現状と課題について紹介します。

ワクチンデビュー

「ワクチンデビューは生後2 ヶ月」が我が国 における新しい接種スケジュールの合言葉にな っています。これは生後3 〜 4 ヶ月児のHib ・ 肺炎球菌による髄膜炎・菌血症の発症例が確認 されているためです。生後2 ヶ月から両ワクチ ンを接種し、6 ヶ月までに初期接種を完了する ことが望まれます。また、HRV ワクチンは生 後6 週から接種可能です。米国では、この3 種 類に加えB 型肝炎、不活化ポリオワクチン、 DPT を含めた6 種類のワクチンを2 ヶ月児に接 種しています。

今後、母親学級、妊婦健診、乳児健診など 種々の機会を活用して保護者への啓発に努める とともに、産科から小児科への切れ目のない連 携体制を構築することが要望されています。

同時接種

厚労省は2 0 0 5 年の予防接種実施要領で 「・・同時接種は医師が・・必要と認めた場合 に行うことができる」と規定しており実施に際 し支障はありません。WHO、CDC、米国小児 科学会がともに同時接種を認め、積極的に実施 しています。CDC は「同時接種を行っても、 個別接種と免疫原生は変わらず、副反応の増加 もない。小児を含め、ヒトの免疫力には余裕が あり、一度に多くの抗原が入っても対応する能 力がある」としています。日本小児科学会は同 時接種に対する考え方をホームページ上に掲載 し、明らかになったこととして、1)同時接種に よりワクチン間の干渉を生じない、2)有害事象・副反応の頻度は上がらない、3)接種数の制 限はない、とし、さらに同時接種の利点として1)接種率が向上する、2)乳児早期より疾患から 守られる、3)保護者の時間的・経済的負担が軽 減すると述べています。県内の小児科医の間で は同時接種は既に定着しており、3 〜 4 本の同 時接種が行われています。

公費助成制度

昨年5 月より全県下で、Hib、PCV7、HPV の3 ワクチンの公費助成制度を利用できるよう になっています。一般に任意接種の接種率は全 国的に見ても30 〜 40 %に留まっており、平均 県民所得の少ない沖縄県は任意接種の接種率が 全国の最下位グループに位置すると報告されて います。メーカーの試算によると、公費助成の 導入以後、沖縄県の伸びは著しいものの、接種 率は約50 %と推定されています。定期化の予 定が立っていない現時点では、公費助成制度の 期間中に積極的に接種を進めていただきたいと 思います。

麻疹の排除

麻疹は世界中から根絶することが可能な疾患 です。一方、国・地域から対象疾患をなくすこ とを排除と呼んでいます。麻疹の排除を達成し た国・地域は南北アメリカ、フィンランド、韓 国など複数あります。我が国は、2012 年度の 国内からの麻疹排除を目標としてきました。排 除宣言には発生数が人口100 万人あたり1 人以 下、接種率95 %以上、全数把握制度の確立な どの条件があり、我が国は患者数と接種率が条 件に達しないため、2012 年の達成は懸念され ています。沖縄県内の発生は2010 年、2011 年 は幸いありませんでした。しかし、県の予防接 種率は目標に達しておらず、ウイルスが持ち込 まれれば、流行する可能性を残しています。ま た、MR ワクチンの3 期と4 期の追加接種の暫 定措置は2012 年度までとされています。是非、 ラストスパートで接種率を上げていただきたい と思います。

おわりに

予防接種に関連する話題を4 点に絞って紹介 しました。こどもの予防接種週間を契機に、各 種ワクチンの接種率が改善すること、VPD(vaccine preventable diseases =ワクチンで 予防可能な疾患)が減少すること、その他の諸 課題の改善が得られることが望まれています。 ご協力の程、よろしくお願いいたします。