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沖縄県福祉保健部健康増進課長 国吉 秀樹 先生

国吉秀樹先生

沖縄県福祉保健部健康増進課長 国吉 秀樹 先生

まさに、貴会は医師という 職能を通して、沖縄県の公 衆衛生の向上を図る最大の パートナーであると認識し ています。

Q1.今年度の4 月に中央保健所から本庁へ異 動され、健康増進課長にご就任されてから そろそろ1 年が経過いたしますが、いかがで しょうか。

私は内科臨床研修後、平成4 年に宮古保健所 で公衆衛生医師として勤務をはじめましたが、 以後ずっと保健所という出先機関での仕事をし ていました。昨年4 月からは、課長としてだけ でなく、県庁内で初めて仕事をすることになり ましたので戸惑うことが多いのは当然ですが、 これまで3 回の県議会対応も経験し、やっと慣 れてきたところです。

保健所もそうなのですが、様々な事業を企 画、予算化、実施していくには担当のがんばり →班長の精査・チェック→課長のチェック・指 導と進んでいくタテの流れと、班単位の横のチ ームワークがあります。大きい政策だと部長を 支えて福祉保健部の9 課が力を合わせます。こ の仕組みが乱れると県民全体にご迷惑をおかけ しますので、間違えてはいけないと言う重圧感 が常々あります。

また、課員はみな課長の顔を見ながら一生懸 命仕事をしておりますので、ていねいに仕事を チェックするのはもちろんですが、他部局(課) や県庁外部からの要望・調整等に無定見に同調 する(=負ける?)と士気に影響するという、 これまたプレッシャーもあるわけです(笑)。 おかげで?かなり太りました。

Q2.健康おきなわ21、健やか親子おきなわ 2010 等、県民の健康保持に向けた様々な対 策がなされておりますが、その具体的な内 容をお聞かせください。

具体的と言われると少し困りますが、健康お きなわ21 は生活習慣病対策を中心とした健康 長寿県再生への県民運動で、健やか親子おきな わ2010 は沖縄県のすべての親と子が健やかで たくましく成長するための母子保健計画です。

まず健康おきなわ21 ですが、近年ハイリス ク者が多く死亡率も高くなっている成年層(20 から64 歳)の死亡率を改善させて全国並みと し、さらに改善することを目標に、毎年点検し ながら食生活や運動、タバコや多量飲酒など健 康づくりの分野ごとに個別の目標を設定して取 り組んでいます。県民ひとりひとりの日々の生 活習慣そのものに直接関わることなので、リス クを持つ方への重点的な取り組みである特定健 診・保健指導と、リスクが無い、あるいは広く リスクを共有する県民各層への呼びかけという 健康情報の発信がバランスよく行われなければ なりません。健康づくりに振り向けられる資源 は限られていますので、例えば職場など、効果の見込める集団を想定しての戦略も必要になり ます。医療費や扶助費の増加など、目に見える 県民負担の現状を理解してもらうことも、辛い ことですが大事になっています。

健やか親子おきなわ2010 では、乳児死亡率 の高さなど20 世紀的な課題が改善された今日、 引き続いての問題である低出生体重児の割合の 低減やより21 世紀的な課題である虐待など育 児不安・子どものこころの健康、子どもの生活 習慣の改善、さらに思春期保健の充実に向け て、周産期医療の基盤整備や子育てネットワー クづくり、教育機関と連携した取り組みなど幅 広い活動を展開しています。沖縄県は全国一位 の出生率を維持しており、県民生活の活力のも とになると同時に、未来に向けて必要な人材育 成の前提にもなっていることから、具体的には 乳幼児医療費助成制度の対象年齢拡大やこども 未来センターの設置を進めているところです。

Q3.また、県民の健康保持に向けた様々な取 り組みに於いては、保健所や市町村の役割 が重要であり、地域によって温度差がある かと思いますが、ご苦労されている事、ま た今後の課題等についてお聞かせください。

私は八重山以外5 つの保健所勤務を経験しま したが、同じ沖縄でもやはりそれぞれ地域の特 徴というか強み弱みはあるものです。例えば北 部や宮古では地域の課題というのがはっきりし ていますので、独立した環境で少ない資源をい かに効率的に動かすかという医療連携が強く求 められます。保健所はその専門性(所長が医 師)と公共的な性格を持つことから、病院や医 師会、市町村など行政機関、消防防災、福祉、 教育機関などを含む地域の連携体制をつくって いくのに非常に適しています。積極的に地域で 役割を取っていくことが必要です。

また中部や南部、中央(那覇)など人口が多 く社会資源が揃っているところでは、沖縄全体 の課題に取り組む、あるいは都市部の大量、多 様化したニーズに対応しなければなりません。 エイズ・HIV 感染対策や自殺対策、予防接種の拡大なども今日的な課題です。都市部は町村部 と比べて基礎的自治体の力も備わっていますの で、保健所への要求も高度かつ多様で、より専 門的かつ細やかな対応が必要になります。勉強 不足の対応では信頼関係が悪化するでしょう。

特に付け加えておきたいのが人材育成の重要 性です。市町村等関係機関と連携、あるいは独 自に活動する専門職として県にも「保健師」が いますが、彼ら彼女ら技術職のスキルアップが 非常に重要です。技術行政職はもとよりその専 門性を発揮して様々な健康課題に対応しなけれ ばなりませんが、今日多くの専門職が地域にあ る状況で、なぜ行政でこのような職が必要かと いう総合力、説明力が求められています。これ は保健所が必要かという議論にも似ているとこ ろがありますし、医師とも伍して働けるよう、 能力を磨くことが大事です。

Q4.現在、沖縄県では津波、テロ、サイバー アタック、感染症等を含めた総合的な危機 管理を行うべく、総合的安全保障研究推進 事業における総合的危機管理検討委員会に おいて、本県における問題点と今後の課題、 対処策について検討が行われておりますが、 感染症への対策についてはどのようにお考 えでしょうか。

仲井真知事は基地を持つ特異な状況を有する 県としての危機対応に強い関心を持っておら れ、本県の危機管理に関する諸計画の評価を今 年度に行うべく総合的安全保障研究推進事業を 企画されました。宮城医師会長が委員長を務め られる委員会で私も感染症の担当課長としてメ ンバーに名を連ねていますが、日本有数の専門 家による評価と提言が今年度末にもなされると 思います。

感染症に関しては、今日までのはしかゼロ対 策や新型インフルエンザへの対応を通して沖縄 県の体制は全国に評価されているところです が、重装備の保健所、経験豊富かつ献身的な衛 生研究所、病院や医師会の積極的な姿勢、市町 村行政とのネットワークの強さがわが県の強みだと思います。全国の専門家との信頼関係も強 固ですので、これらを生かして今後はバイオデ ィフェンスの備わった地域をもっとアピール し、国際的地位の向上にも役立てるものと思います。

Q5.本会や日本医師会に対するご意見・ご要望がございましたら、お聞かせください。

医師会の先生方には、個人的にも保健所現場 の頃から大変お世話になり、特に印象に残った ことだけ数えてみても、宮古での「脳出血ゼロ 作戦」、中部での「中部地区健康おきなわ2010 推進大会」、北部での「糖尿病・CKD 地域医 療連携パス事業」、中央(那覇)での「健康な は21 計画推進」「新型インフルエンザ医療対 応」といった連携活動が思い出されます。いず れも圏域住民の健康づくりに欠かせない、その ときそのときの重要事項でした。

ときに医師法には、「第一条医師は、医療 及び保健指導を掌ることによつて 公衆衛生の向上及び増進に寄与し・・・・・・・・・・・・・・・ 、もつて国民の健康な生活 を確保するものとする。」とあります。まさに、 貴会は医師という職能を通して、沖縄県の公衆 衛生の向上を図る最大のパートナーであると認 識しています。最近は、大学や臨床研修等で一 緒だった先生と話し合う機会も多く、ますます 連携が取りやすくなっているところで感謝して います。

Q6.最後に日頃の健康法、趣味、座右の銘等がございましたら、是非お聞かせください。

趣味と言えるのは、他の出版物に書いたこと もありますが、男声合唱団に所属してバスパー トを歌っていることくらいです。若い頃はオペ ラのアリアなども歌い、コンサートで独唱した こともあります。最近筋力が低下したせいか声 が出にくくなっている上、団の練習にも参加で きる回数が減ってもどかしい思いをしておりま す。年に1 回は大きな発表の場もありますので、 今後とも長く続けていきたいと考えています。

笑われるような気もしますが、ダイエットも 趣味でした。「でした」と言ったのは、ここ1 年 ほどでかなりリバウンドしてしまったせいで、 プチストレスからくると思われる「食べすぎ飲 みすぎ」というのは恐ろしいものです。今年は 節酒、毎日体重測定、よく歩くことを心がけた いところです。

この度は、インタビューへご回答頂き、誠に有難うございました。

インタビューアー:広報委員 金城正高