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平成23年度第4回沖縄県・沖縄県医師会連絡会議

安里哲好

常任理事 安里 哲好

去る11 月21 日(月)、県庁3 階第1 会議室 において標記連絡会議が行われたので以下のと おり報告する。

冒頭、県福祉保健部事務局から、宮里部長が 欠席のため、本連絡会議の開催要領に基づき、 国吉保健衛生統括監が議長を務める旨説明があ り早速議事に入った。

議 題

1.県民救急・災害フォーラムに対する予算措置に関する要望(提案:沖縄県医師会)

<提案要旨>

平成17 年度から4 年間実施された県民救 急・災害フォーラムは、AED の普及啓発等も 含め、県民に対する救急医療や災害時医療の啓 発に有意義な試みであった。残念ながら平成 21 年度から予算化されず、ここ2 年間は当フォ ーラムの開催が見送られてきた。

しかし、本年3 月11 日に発生した東日本大 震災を踏まえ、災害時救急医療の必要性を広く県民に告知する必要があるとの意見が会員から 寄せられ、去る8 月28 日(日)「第5 回県民救 急・災害フォーラム」を有志の寄付金(92 万 円)をもって開催した。

今後もこの様な救急・災害フォーラムを継続 開催していくには、有志の寄付金に頼る運営 は、資金面で限界があり非常に不安定である。

この様な問題に関しては、県も積極的に関わ る姿勢を見せていただきたい。来年度も同フォ ーラムを開催することにしており、年間50 万 円程度の予算措置があればある程度の目途がつ くものと考えている。

是非とも当フォーラムへの予算組を復活頂け るよう強く要望する。

<福祉保健部回答>

県においては、平成18 年度から平成20 年度 までの3 年間、国庫補助事業を活用しAED 普 及事業等も含め、毎年1 〜 2 百万円程度の予算 を確保し、同実行委員会へ事業実施を委託して いた経緯がある。

今回、県医師会からの要望事項に関しては、 時宜を得た提案だと考えている。次年度の予算 化については、既存の予算の中で何とか支援で きるよう調整していきたい。

県としても当事業が引き続き継続できるよう考えていきたいので、ご協力方お願いしたい。

○主な意見交換は以下の通り。

●県福祉保健部:沖縄県保健医療福祉事業団 の資金も活用していけるよう調整を進めていきたい。

◇県医師会:県民健康フェア等も当該資金が活用できないか調整をお願いしたい。

◇県医師会:事業団の資金活用に関しては県か ら是非プッシュしていただきたい。会内に設置 されている運営委員会や理事会は、予算枠が既 に決まっており切り崩すのは難しい。

●県福祉保健部:財団は予算組が早く終了する ため早めに調整していきたい。県も数年前に、 特定健診事業で財団資金を活用したことがある が2 月〜 3 月で調整を済ませた。今回フェアの 相談があったのが6 月頃であったため、既に予 算の枠組みが決まっていたものと思う。

●県福祉保健部:県としても当事業の必要性は 感じているので、予算確保ができるよう積極的 に調整を進めていきたい。

2.救急医療に関する特例病床の増床と今後の二次保健医療圏における基準病床について(提案:沖縄県医師会)

<提案要旨>

県福祉保健部は救急医療に関する特例病床の 増床について検討中(沖縄タイムス: 2011 年 10 月6 日)とのことであるが、どの様な分析結 果と基準に基づいて増床する予定か、ご教示い ただきたい。

平成25 年度の県保健医療計画は、平成24 年 11 月頃までに見直されると思われるが、二次 保健医療圏の現状分析や5 〜 10 年後の医療需 要分析に基づいて、平均在院日数及び病床利用 率を加味した基準病床数(適正病床数)を早急 (来年早々)に検討することを要望する。

また、救急病院では、長期入院患者(寝たき り患者も含め)が20 %前後を占めていると言 われている。老人保健施設等の増をも含めた、 医療・介護施設等とのスムーズな連携について 思案があれば、お尋ねしたい。

<福祉保健部回答>

1.救急医療に関する特例病床の増床について

救急医療に関する特定病床については、救急 搬送件数の現状及び今後の推移予測、救急告示 病院の病床利用率や平均在院日数の状況等を把 握・分析しているところであり、各二次医療圏 の状況を踏まえて必要な病床数を検討していく こととしている。

今後、救急医療対策協議会等での協議を行い ながら、県医療審議会への諮問及び厚生労働省 との協議等、必要な作業を進めていくこととし ている。

2.沖縄県保健医療計画について

沖縄県保健医療計画については、平成24 年 度中に見直し作業を行い、平成25 年4 月から の施行を予定している。基準病床数について は、近々厚生労働省から算定方法が示されるも のと考えている。県としては医療機能調査を今 年度実施し、その算定方法等を踏まえ、病院種 別毎の平均在院日数や病床利用率等を把握し て、基準病床数を検討する予定である。

3.医療・介護施設等との連携について

県における高齢者福祉施設等の整備について は、市町村計画等を踏まえ、沖縄県高齢者保健 福祉計画を策定し、計画的に取り組んでいると ころである。特別養護老人ホームの待機者解消 のため、同計画の期間である平成23 年度まで に市町村と連携し、特別養護老人ホーム、地域密着型サービス施設等を1021 床整備すること としている。

現在、県としては次期計画策定に向けて、市 町村のニーズ把握に努めている状況であり、必 要な整備目標を定める予定である。

医療・介護施設等との連携については、次期 保健医療計画の中でも議論していくが、地域連 携クリティカルパスの運用等により、具体的な 対策が立てられるのかどうか、県医師会にも検 討をお願いしたいと考えている。

○主な意見交換は以下の通り

◇県医師会:おおよそ増床はどの程度となるか。

●県福祉保健部:厚生労働省と調整を行わない といけないので明確な数字は出せないが、10 年 間を見越していかないといけない。救急搬送件 数が10 年間でどれ位増えていくのか想定して、 10 年間救急医療に対してカバー出来る位増床 しないと安定化しないと考えている。

平成1 8 年度の救急搬送件数は年間で約 31,000 件であったが、平成22 年度で約36,600 件と約5,000 件程増えている。通常医療計画は 5 年であるが、平成32 年位まで今後2 回の医療 計画を作るにあたり、この2 つの医療計画をま たいで病床を整備しないと、その都度やってい たら大変な状況になる。

特例病床の設置というのは、作業が膨大であ る。中部医療圏、南部医療圏は人口も増え、救 急搬送件数も増えている。基本的には中部、南 部をできるような形で進めたい。

◇県医師会:平成20 年度の保健医療計画は19 年度に検討されているが、委員会で何ら十分に 検討されずに医療計画を作った背景があったの でよろしくお願いしたい。

老健施設については、まだまだニーズがある のではないか。次の次位の受け皿になるのでは と考える。足りないと言われながらも20 %前後 が長期入院患者である。その中の5 %でも10 % でも移すことができれば良いと考えている。

●県福祉保健部:県の計画については、市町村 の計画の数値を踏まえて計画を立てている。特 別養護老人ホーム、老人保健施設については整 備計画という形で計画を立てている。

現在、市町村のニーズ等を聴取している段 階。具体的にどの程度必要なのか市町村から状 況把握し、整理していきたいと思う。

◇県医師会:救急病床だけではなく、その後の 受け皿も増やしていただかないといけない。老 健が空いていれば老健に入れるが、空いていな ければ3 週間の在院日数が切れた場合、行く場 所が無い。新型老健に入れようと思っても、ベ ッドが空いていない。そうなると受入れたくて も受け入れられない。

救急病床を増やしていただくのは有難いが、 その後の受け皿も増やしていただきたい。療養 病床をしている病院が受入れやすくなるような 条件を整えて頂けたら、今の救急病院だけでも おそらく対応出来るのではないか。

◇県医師会:これは医療全体をどうするかとい うところに絡んでくる。気になるからといって ここだけ治しても解決にならない。いくら増や しても、医療の連携が取れていないとつまって しまう。ベッドを増やしても、その患者が1 %、 2 %増えたら一緒である。これは連携の流れが 出来ていないからである。例えば、療養病床の 中に医療区分など、色々なものを持ち込んで点 数化することがあげられる。医療機関は、経営 が成り立たないような患者様を入れると経営破 綻してしまう。そういう状況が全て重なり、今 の状況が出来ている。一部の問題だけ取り上げ て検討するのではなく、医師会もきちんと問 題、現況をはっきりさせた上でどうしたら良い かという提案をしないといけない。

●県福祉保健部:救急医療の議論の中で特例病 床というのは1 つの方法としか考えていない。 特例病床、看取りの問題、地域医療連携という 3 点で考えていかないと全て上手くいかないと思っている。

前回の医療計画から診療所の病床について規 制がかかるようになった。前回は十分な議論が されていなく、こういう診療所には病床を認め る等の要件は整理されていない。48 時間という 規制は取れたが、基準病床の中に組み込まれて いる。今のところは基準病床の中に入ってはい ないが次の医療計画はどうなるか分からない。

特例病床については早めに国とも協議をしな がら検討していきたいと考えているが、地域医 療連携、診療所の病床のあり方、看取りの問題 についても来年11 月頃に案が出てくると思う ので、それまでには議論を進めていきたい。

◇県医師会:救急病院で20 %位滞っている患 者を誰が受けるか。重傷の方が多いが、慢性期 の病院でそれを受けるところがあるのかどう か。そういう病床の質ということも考えていか ないと上手く回らないのではないか。

●県福祉保健部:全体的には県だけでは解決出 来ない部分がある。国には言うべきことを言っ ていかないといけないので診療報酬の問題等、 医療区分の話が出てきて色々な変化が出てきた と思う。

●県福祉保健部:スタンスは県も一緒である。 医療全体の問題を一緒になって解決していかな いといけない。救急医療に関しては、全国に比 べて沖縄は救急病床が少ない。根本的な解決は 全体的にやらなければいけないが、これは前倒 しで早めに検討が必要であるということでやっ ている。ただ特例病床についても国との協議に 入りたいが、特例病床については国は厳しいの で、こちらで何床と算定しても、国との調整は 時間等厳しい状況になると思う。その際は医師 会と調整させていただきご協力をお願いしたい。

◇県医師会:特例病床については、沖縄は非常 におかしい決定をした過程がある。本来、特例 病床は、ある限られた病床を増やすのが通常で あるが、病院丸ごと認めたという経緯があり、 普通では考えられない。病院で不足している病 床をどのように増やせば良いのか現場と連携し ながらやっていかないと非常に難しい。

●県福祉保健部:今でも沖縄は救急車を断らな い割合が全国一であり、医療機関の努力もある と考える。しかし、以前は消防が医療機関に連 絡するとスムーズに受入れたのが、断る回数が 少し増えている。人口当たりの救急病床数は少 なく、外来患者数も少ない。糖尿病であると言 われても病院に行く方が少ない。

◇県医師会:沖縄県の救急が何故良いかという と、沖縄県の医師の数が他府県と比べても引け を取らないからである。その割りにクリニック が少なく、どこに医師がいるかというと救急に いるので稼動出来ている。全国はそうではな い。救急告知病院に医師が少なく、そのため上 手く稼動していない。そこが決定的である。沖 縄県の良いところを生かしながらやっていただ きたい。

県の管轄の限界はどこなのか、それをしっか り調べた方が良い。こういう議論をすると全て 国策になってくるので県で議論をしてもしょう がない。しかし、法律というのは細かいことを 見ていくと県の裁量権というのは必ずある。特 例病床は病床基準外であり、県知事の権限で出 来ると考える。

連携については、国の政策が関係する。老健 は、介護保険にかかり、保険者は地域である。 すると市町村の財源にかかり、市町村の了承は 得ることが出来ない。医療と全く違っている。 国、あるいは県が、財源的な処置をすれば別で あるが、中々出来ない。設置したのはいいが、 市の財政は悪くなる。そういう意味での介護保 険との連携は全く出来ていない。

●県福祉保健部:最終的には厚生労働大臣の同 意ということになっている。しかし県で資料を しっかりまとめて持っていかなければいけない。そこには、医師会等関係団体のある程度合 意が必要であるので調整をさせていただきたい と考えている。

県知事サイドで医療計画の中でできるのは診 療所の病床である。診療所の病床は規制がかか っている。ただ、医療審議会でいろいろ審議は しているが、糖尿病やがん等4 疾病の医療連携 の中で、どうしても在宅にもっていかないとい けない部分がある。その辺りの診療所の病床を どうしていくか。今回の医療機能調査で、診療 所でも有休となっているところがあるのではな いか。その辺りの議論もしながら出来るだけ診 療所の病床も活用出来るような方策を考えない といけないのではないかと考えている。

印象記

常任理事 安里 哲好

今回は当会から2 議題を提案した。

議題1.「県民救急・災害フォーラムに対する予算措置に関する要望」を当会より提案した。当 フォーラムは国庫補助事業を活用して、実行委員会に委託して平成18 年から3 年間行われていた が、補助が終了し、その後2 年間、フォーラムは見送られた。それに対して、NPO 法人が中心と なり、県民へもっと早く広報して欲しいとの要望もあった程充実した素晴らしい「第5 回県民救 急・災害フォーラム」が、有志の寄付を基に開催されたことを報告し、次年度の予算措置を要望 した。県としても当事業の必要性を感じているので、予算確保ができるよう積極的に調整してい きたいと述べていた。補助事業が数年間で予算執行を行い終わるものであれば良いが、そうでな いと事業の継続に要する収入を得る方法を模索するのに常時、頭や労力そして時間を要し難渋す る。昨今、県医師会は、県や国より5 〜 6 種類の補助を得て事業を実施しているが、その事業が 始まったときから補助が終了した時の継続はどうするかをいつも考えている。特に、人材をそれ なりに採用した時がそうである。医療保険や介護保険を対象としない事業はニーズや先が充分に 読めないから前途多難であるが、すべてが医療に直接的・間接的に関係する事業にて、前に進め そして発展させて行きたいものだ。

議題2.「救急医療に関する特例病床の増床と今後の二次保健医療圏における基準病床につい て」はその必要性と、地域医療支援病院・救急病院の現状について新聞紙上を賑わせていた点も あって提案した。前回の平成20 年度県保健医療計画を策定する際、年度のぎりぎりの時期に、厚 労省の計算式により算出した基準病床数を提示し、検討する間もなく承認されたきらいがあった 感がする。一方、現在の地域医療支援病院・救急病院の病床利用率はインフルエンザ流行の時期 でなくとも95 〜 104 %(全国平均: 81 %)と他府県に比べ著しく高く、平均在院日数も9 〜 14 日(全国平均17.2 日)と全国でトップクラスである。更に、沖縄県中南部二次保健医療圏におい ては、2025 年の医療・介護需要は1.3 倍強に増加するとの分析報告がある。その様な現実と5 〜 10 年先をも含めて鑑みると、特例病床の早急な増床、そして基準病床増に加え介護施設等の整備 は県民医療・介護領域において喫緊の課題と強く感じた。