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第111回九州医師会総会・医学会及び関連行事

V.第111 回九州医師会連合会総会・医学会

  • 日 時:平成22 年11 月19 日(土) 午後4 時〜
  • 場 所:ホテルニューオータニ佐賀

九州医師会連合会会長挨拶 池田秀夫

ご案内のとおり九州医師会医学会は、1892 年 (明治25 年)の熊本大会以来、幾多の困難を乗 り越えて、今日まで連綿と受け継がれてきたと ころであり、日進月歩の医学を生涯教育を通し て日常診療に反映させることにより、国民医療 の質の向上と推進に大きく貢献して参った。

さて、今回の医学会は命を守ることを天命と して、日々全力を尽くしている我々医師全員に とって、忘れる事ができないものとなった。

去る3 月11 日に東日本大震災とこれに伴う 大津波、そして福島原発事故という未曾有の大 災害が発生し、多くの尊い命が失われた年の開 催となったからである。誠に無念な出来事で現 在も多くの被災者の皆様が日常生活を回復でき ない状況にあり、私どもは国民健康を預かる医 師の立場から被災地の一日も早い復旧復興を国 に求めていく責務がある。また同時に国民共通 の社会資本である我が国の国民皆保険制度を始 めとする社会保障制度の存在そのものが、被災 地の人身の安寧、社会の安定に大きな役割を果 たした事は間違いなく、私どもは、これらの更 なる強化を政府や国会に求めていかなければな らないと考えている。

特に1961 年(昭和36 年)の制度達成以来、 今年で50 年目を迎え、我が国の発展の大きな 基礎となった国民皆保険制度を将来に亘り形骸 化させることなく、堅持していくためには恒久 財源の確保が不可欠である。

本年6 月、政府与党にとって、社会保障と税の一体改革成案が取り纏められ、閣議報告され たが、医療・介護分野への一定規模の財源投入 等、評価できる部分がある一方、重点化と効率 化、患者負担強化等、我が国の宝とも言える国 民皆保険制度を危うくする財政主導の考え方も 多々含まれている。

私ども九州医師会連合会は、日本医師会は下 より全国医師会と連携を強化し、今後も国民皆 保険制度を堅持するための社会保障制度の充実 と恒久財源の確保に向け、一致団結して取り組 んでいなかければならないと考えている。

また、本日は、この後、医学会特別講演とし て二題の講演を予定している。医学の進歩は日 常診療に導入されてこそ真に価値あるものにな る。そして、医学の進歩を普遍する場が各種医 学会であり、それを地域医療の現場で患者に適 用する社会システムが国民皆保険制度であると 認識している。

その様な視点もあり本日の特別講演では、先 端医療と地域医療を念頭に置き検討し、第一席 は名古屋大学大学院教授の室原豊明先生に「血 管再生療法に関する基礎と臨床研修」と題し て、第二席は整形外科医としても高名な佐賀大 学学長の佛淵孝夫先生から「地域医療と大学の 役割」と題して、講演を伺うこととしている。 また、医学会第2 日目の明日は7 つの分科会と 5 つの記念行事を開催するので併せて多数参加 くださるようお願い申し上げる。

最後に、本総会医学会の開催にあたり、多大の ご支援とご協力を賜った来賓各位、九州各県会員 各位に対して、重ねてお礼申し上げ挨拶とする。

来賓祝辞

原中勝征日本医師会長

先ほど池田会長の挨拶にもあったとおり、 我々医師会は国民の健康守り、命を守る唯一の 職業である。生命倫理を基礎におき、活動しな ければならい。

私事で大変恐縮であるが、福島県第一・第二 原発の場所から20 キロ以内にある浪江町や双 葉町は私の生まれ育った町である。思い出のあ る町が一瞬にして、恐らく残りの人生で訪れる ことすらできないだろうと覚悟している。本当 に寂しいことである。

3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震 の際には、各県医師会の協力のもとJMAT を 結成し、多くの先生方がボランティアの精神 で、各被災地での災害医療、健康支援活動に馳 せ参じていただいたことに心から御礼申し上げ ると共に、日本の医師が国民の命を守ろうとい う精神が健在であることに喜びを感じた。

いま中央では、政府と共に被災地における医療 再興に向けて、医療機関が中心となった町造りが 展開できないか考えている。住民にとっては医療 機関や介護機関が町の中心にあることで、初めて 気持ちの安寧が得られるのではないかと考えてい るが、二重ローンの問題等もあり救済に向けた諸 課題解決について政府と話し合っていきたい。

被災された方々が一日でも早く、明るい気持 ちが芽生えるよう支援していかなければ、今 後、精神的な側面から自殺者が増加するのでは と心配している。

現在、JMAT Uとして小児検診や予防接種、 健康診断、心のケアなどの支援活動を各地で行 っている。その他、福島県のように、原発の問 題で人口が分散してしまった地域の再興は大変 難しい側面があるが、被災された方々が安定し た平和な社会が実現できるよう、今後とも先生 方からのご協力をお願いしたい。

その他、生涯教育の問題に関して、総合医認 定制度の創設に向けて、日本医学会と検討を行 っている。

国民のための高い医療、安全な医療、先端技 術の入った医療を施せるような体制をつくろう と思い、日々努力している。今後とも先生方の ご協力ご指導をお願いしたい。

続いて、来賓祝辞として古川康佐賀県知事よ り歓迎の挨拶があり、その後、来賓として参加 された諸先生方の紹介が行なわれた。

宣言・決議

慣例により議長に池田秀夫九州医師会連合会長が選任され、池田議長進行のもと、国民皆保 険制度の堅持・強化と、そのための恒久財源確 保の実現を表明した宣言(案)ならびに、政府 に対して、別紙九項目の実現を強く要求する決 議(案)が、九州医師会連合会総会の総意の 下、満場一致で採択された。

なお、宣言・決議の送付先等については九州医師会連合会長に一任された。

宣 言

我が国は経済の低迷、財政の逼迫、急速な少子高齢 化の進展等で、近年、社会保障制度を支える財政基盤 が弱体化し、その大きな柱である公的医療保険制度に ついても、持続性の確保を理由とした厳しい医療費抑 制策と規制緩和策の導入が企図されてきた。又、これ を支える医療提供体制についても、医師や看護師等医 療従事者の不足・偏在、患者の受診行動の変化等で綻 びが生じ、国民の安心、安全の礎である国民皆保険制 度はこの2 つの面から崩壊の危機に立ち至っているとい っても過言でない。このような中、原発事故を伴う未曾 有の東日本大震災が発生したが、我が国の国民皆保険 制度をはじめとする社会保障制度の存在そのものが、被 災地の人心の安寧、社会の安定に大きな役割を果たし たことは間違いない。

この国民共通の社会資本である国民皆保険制度を将 来に亘って堅持し、更に強化していくためには恒久財源 の確保が不可欠で、自公政権末期から本格化し、現在 の民主党政権で継続されている社会保障と税制の抜本 改革議論の行方は極めて重要である。一日も早く社会 保障強化策とその財源確保策の具体的な姿を確定し、 国民に理解を求め、それを実現化していくことこそ、現 下の政府の最大の政策課題である。

我々九州医師会連合会は、国民皆保険制度の堅持・ 強化と、そのための恒久財源確保の実現に向け、政府 はもとより関係方面に一致団結して働きかけていくこと を、ここに宣言する。

平成23年11月19日 第111回九州医師会連合会総会

次期開催県会長挨拶 宮崎県医師会長 稲倉正孝

来年度の合同協議会、総会、医学会、分科 会、記念行事の開催期日は、平成24 年11 月 23 日(金)から25 日(日)の3 日間、宮崎市 のフェニックス・シーガイア・リゾートを中心 に開催するので、多くの先生方の参加をお待ち している。

決 議

我々九州医師会連合会は、政府に対し、次の事項を強く要求する。

一、東日本大震災による被災地の早期復興と地域医療提供体制の再生

一、国民の安心・安全の礎である国民皆保険制度の堅持・強化

一、社会保障を充実させ医療・介護の質を高めるための恒久財源確保

一、過重な患者一部負担の軽減と受診時定額負担、保険免責制導入の阻止

一、株式会社参入、混合診療解禁、医療ツーリズムなど医療への市場原理主義導入と医療の営利産業化の阻止

一、新医師臨床研修制度の改善、勤務医・女性医師の支援強化等による医師の不足・偏在の解消

一、医業経営を安定的に継続するための診療報酬の全体的底上げ

一、医療の公共性にふさわしい医業税制の確立と控除対象外消費税の解消

一、准看護師養成制度・三層構造の堅持と養成機関への公的助成の拡大

以上、決議する。

平成23年11月19日 第111回九州医師会連合会総会

第111回九州医師会医学会

去る11 月19 日(土)14 : 00 より、ホテル ニューオータニ佐賀中2 階「鶴の間」において 第111 回九州医師会医学会が開催されたので、 その概要を報告する。

特別講演Tは、佐賀県立病院好生館館長並び に佐賀県医師会常任理事である樗木等先生の座 長のもと、名古屋大学大学院医学系研究科 病 態内科学講座 循環器内科学教授の室原豊明 先生より、「血管再生療法に関する基礎と臨床 研究」と題して概ね次のとおり講演があった。

「血管再生療法」とは、主に米国から来てお り1990 年代から研究や臨床がスタートし、循環器内科・外科領域では以前から、血管内カテ ーテル治療(血管形成術)やバイパス手術など の通常の治療がもはや不可能な重症動脈硬化病 変を有する患者(末期虚血性心疾患や重症下肢 虚血患者)に対する、毛細血管新生療法として 発展してきた。この最初の概念は、1970 年代 のFGF、1980 年代のVEGF などの発見同定 に拠るところが大きい。すなわち、これらの細 胞成長因子を虚血組織に投与することにより、 いわゆる毛細血管のバイパス血管を形成させ、 動脈本幹の再建が無くとも虚血組織を保護しよ うという試みから生まれた。例えば、下肢の動 脈が閉塞してしまい、切断しかないといういわ ゆる他に治療法のない方に対して、VEGF と いう遺伝子を導入し、組織の細胞に取り込まれ ると蛋白を形成する。このVEGF 蛋白は強力 な因子であり、これが毛細血管を作る。

こういうアイディアを最初に考えたのは留学 先の恩師であるリスナー先生である。1990 年 代にb F G F によるイヌ心筋梗塞の治療、 VEGF によるウサギ下肢虚血モデルへの血管 新生療法などが相次いで報告された。その後、 これらの治療は臨床研究にまで発展したが、最 近のプラセボ対象の2 重盲検による臨床研究で はあまりよい結果は示されていない。

一方で、我々を含めたいくつかのグループが、 1990 年代後半から、ヒトの末梢血液や臍帯血 中には、内皮細胞に分化できるいわゆる内皮前 駆細胞(EPC)が存在することを報告してき た。これらの細胞は血液細胞と初期分化段階を 共有しており、このため成人では骨髄に由来す ることが確認された。我々はこの点に着目し、 既に臨床で行われているように、フレッシュな 自己骨髄単核球細胞を採取し、重症下肢虚血領 域に細胞移植することで血管再生が誘導可能で あることを動物実験で確認し、2000 年から臨 床応用を開始している。効果は良好であり、特 にBurger 病などの他に治療法の少ない難治性 疾患に有効であることも確認されている。

最近では、骨髄細胞のみならず、間葉系幹細 胞等を用いた自己細胞治療の臨床応用もすでに 開始されている。一方、基礎研究面では、iPS 細胞の開発や心筋幹細胞の発見などのブレイク スルーも数多く報告されており、今後これらの 細胞を使った心血管系再生医療研究が盛んにな っていくものと思われる。

【質疑応答】

●先生のご講演の中で、「血管再生」、又は「血管 新生」とおっしゃっているが何か区別はあるか。

室原豊明先生:厳密な意味を言うと、血管発 生型の血管新生と、元々言われている血管新生 というのは今ある内皮細胞が分かれ、せまい意 味での血管新生であるが、こういうのを合わせ て血管再生であると考える。我々が話す時は、 ほぼ同義語で話している。

●素晴らしい治療をされているが、これは治療 にあたる時は混合診療となるか、また費用はど れ位かかるか。

室原豊明先生:我々は始め研究費でやってお り、だいたい1人80万円位の実費がかかると思う。

●まだ保険では認められていないのか。

室原豊明先生:高度先進医療が認められた病 院では保険適用であり、現在20 〜 30 ヶ所程度 はあると思う。

引き続き、特別講演Uは、佐賀県医師会池田 秀夫会長の座長のもと、佐賀大学佛淵孝夫学長 より、「地域医療と大学の役割」と題して概ね 次のとおり講演があった。

臨床研修の義務化などにより、地域医療は大 きな危機を迎えている。地方大学医学部では入 局者が減少し、地域医療はおろか大学本来の使 命である教育と研究も減退しつつある。一整形 外科医及び経営担当の副病院長として行ってき た取組と佐賀大学医学部附属病院の地域医療に おける最近の取組の一端を紹介する。

大学と大学病院の主な使命は、医師のみなら ず看護師などのコメディカルの教育を行う「医 療人の育成」、基礎医学の分野とも協力しなが ら病因病態の解明や新しい治療法の開発、臨床試験(治験)を行う「高度先進医療の開発」、 難治性の疾患、高額の医療機器や高度の技術を 必要とする疾患、経営上明らかに不採算となる 疾患などへの対応が求められている「最後の砦 機能」、医師会、県、市町村などと共に地域の 医療や保健、健康福祉などに取り組み、人材育 成を含む「地域医療の拠点」が考えられる。

一整形外科医としてのこれまでの取組は、昭 和54 年に九州大学を卒業以来、主に股関節外 科を中心に行ってきた。平成10 年9 月に当時 の佐賀医科大学整形外科教授に就任してから は、「思いやりのある効率的で質の高い医療」 を理念として「特化と標準化」、「自己完結型か ら地域完結型へ」を考えて実現してきた。この 理念の実現のため、毎年具体的なテーマを設け て教室を運営している。【2 0 0 0 年C P (Critical Path)、2001 年IT(Information Technology)、2002 年QOL(Quality of Life)、 2003 年EBM(Evidence-Baced Medicine)、 2004 年IC(Informed Consent)、2005 年 Clinical Governance、2006 年CP(Critical Path)、2007 年Globalization、2008 年 Innovation、2009 年Incentive】さらに、股関 節外科は年間500 件前後の手術件数を誇り、そ の数は全国第1 位となっている。股関節手術後 の患者さん宛に定期的に情報誌をお送りしてい る。患者中心の医療を実現するためにもこれら の情報誌を通して、患者と医療者との密接なコ ミュニケーションをはかっていきたいと考えて いる。これらの成果は、佐賀大学病院が「股関 節手術日本一」を全国のすべての病院のなかで 10 年程続いていることや、「佐賀地域の整形外 科のセンター化」などに繋がった。

副病院長などとしてのこれまでの取組は、医 学部の教授時代に病院の材料部長、医療情報部 長、経営担当副病院長を歴任し、これまで様々 な改革を断行してきた。これらの中で最も大きな 成果は「佐賀大学式病院管理会計システム “SagaCious”」である。当システムは、全国的に も類を見ないコスト分析に基づいた部門毎、疾 病毎の分析を可能としたシステムであり、分析結 果を毎月公表し、問題点を指摘することにより 診療の効率性の指標を示すことができた。また、 DPC(Diagnosis Procedure Combination)を導 入している病院では極めて簡便・迅速に経営分 析ができるため、有力な病院経営改善ツールと なっており、既に多くの病院で使用されている。

佐賀大学医学部の特長は、最後の新設医科大 学として昭和51 年に開学、同53 年から学生の 受け入れが始まり、同59 年に第一期生が卒業 している。この間、教育重視の学風で「良き医 療人の育成」を理念とし、チューター制度や PBL 教育を行ってきている。

佐賀大学医学部附属病院の理念は「患者・医 師に選ばれる病院」であり、高度先端医療と地 域医療(最後の砦)機能、遠隔医療などに取り 組んでいる。

【質疑応答】

●今般、全国において医師不足や医師の偏在が 問題となっている。国では、医師不足が深刻な 地域における医療の確保を目的とした医師派遣 等推進事業や緊急臨時的医師派遣事業の動きが あるが、佐賀大学ではどう考えるか。

○佐賀大学佛淵孝夫学長:実際に自治体病院 等に派遣する際に大学を離れることを嫌がる人 がすごく多い。地方だと、循環器や呼吸器の専 門家が必要なのではなく。全般的に診療できる 人が必要であるが大学にとっては非常に弊害が ある。県との協議の結果、総合医・総合内科医 を育てることになっている。支援センターはそ れまでのつなぎだと考えている。

●研修医をいかに大学に残すかという点についてはどう考えるか。

○佐賀大学佛淵孝夫学長:頭の痛いところでは あるが、やはり第一に都会への憧れというのが ある。次に、若い人は高度医療に興味を持って おり、最新の医療機器により、高度先進医療を やらない大学は評価が落ちている。最新の医療 機器を持つことは、単に地域住民への貢献だけ でなく、次に佐賀県でがんばろうとする人間を 確保するためにも必要であると考えている。

●大分県では、地元に残って医療を担う人材の 育成につなげたいという考えから、6 年生を対 象に、県内のへき地の病院や診療所で2 週間研 修する「地域医療実習」を導入している。佐賀 大学では、このような取り組みはしているか。

○佐賀大学佛淵孝夫学長:佐賀大学でも他施設 での研修を行っているが、最終的に入局する学 生は少ない。とにかく魅力を感じさせることが 重要である。さらに地域医療についてもう少し 詳しく説明する必要がある。

印象記

副会長 玉城 信光

平成23 年11 月19 日佐賀において開催された。九州各県からの質問事項に原中会長が答える形 で中央情勢の報告がなされた。

原中会長の講演は面白い内容であった。新しい執行部になり政府との話がしっかりと行われて いることがよく理解できる。東日本大震災では政府の要請がある前に、JMAT で日本医師会の会 員を中心に全国の多くの医師が被災地に駆けつけ、日医会員の姿を広く国民に示すことができた こと、政府もそれに対し感謝していることが述べられた。

このこともあり、政府の働きかけで「被災者健康支援連絡協議会」がつくられ、会長に原中会 長、事務局長に横倉副会長がついた。日本医師会や日本歯科医師会など34 の医療関係団体から構 成されている。今後官邸にある「被災者生活支援特別対策本部」と連携して被災者の医療支援を 行うようになった。

また国の「防災対策推進検討会議」が設置され、初めて日本医師会も委員に加わった。内閣官 房長官をはじめ関係大臣と有識者を含めた会議であるが、いわゆる有識者の発言に対し、現場を 把握しない“空論”的発言に対し、原中会長は12 名の学識経験者に「東北の震災現場を訪れたこ とのある人は何人いるかと」問うたようである。現場を訪れたのは12 名の委員の中で原中会長、 自衛隊に詳しい志方さん、NPO 法人の宗片さんの3 名であったとのこと。防災専門家の大学教授 はだれ一人として現場を訪れていない。これが国の有識者の姿であると喝破された。

駐日アメリカ大使との会談でも歯に衣着せぬ議論を展開しているようである。

日本の人口が減っており、子どもを産み育てやすい環境を作るために、「子ども手当」を進言したのは自分であると話された。

TTP に関して、これまで米国は2001 年小泉内閣に日本の医療に市場原理を導入することを要 求、2010 年鳩山内閣に日本の医療サービス市場を外国企業に解放することを要求してきた。TPP の流れがこのまま行くと公的医療保険がTPP の対象になり、医療の市場化が進む懸念があると 述べている。

総会では九州医師会の宣言、決議が採択された。

午後は特別講演Tで名古屋大学の室原先生が「血管再生療法に関する基礎と臨床研究」と題し てバージャー病などに血管を再生させ治療効果を上げていることが報告された。今後の再生医療 の可能性などが述べられた。

特別講演Uでは佐賀大学学長の佛淵先生が股関節外科の成績の報告と地域における疾患治療の 分担をはかり、多くの手術ができる専門医の育成につとめていること。副病院長時代には「佐賀 大学式病院管理会計システム」の開発や地域と大学を結ぶことなど種々の改革を行ってきたこと が報告された。

ひとつひとつ実績を積み重ねながら大きな夢に向かっていく先生方の姿を拝見し私たちの仕事も地道に実績を重ねる必要のあることがわかる。

佐賀の会議は初めてであったが、実りの大きな会議であった。