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平成23年度都道府県医師会
看護担当理事連絡協議会

小渡敬

副会長 小渡 敬

去る11 月30 日、日本医師会館においてみだし協議会が開催された。

協議会冒頭、日本医師会原中勝征会長から、 看護師の必要性を踏まえ日医として問題解決に 取り組んでいきたいとして、次のとおり挨拶が あった。

挨 拶

日本医師会原中勝征会長

本日全国都道府県医師会の看護師等に関連す る方々が本会議に出席いただき感謝申しあげ る。今、看護師を取り巻く環境は非常に変わり つつある。また、看護教育の内容が以前と変わ ってきている。医師会及び関係者がお互いの立 場を尊重して、日本の医療はどうあるべきか考 えていく。その尊重こそが日本の医療を向上さ せる原点だと考えている。

本日は、厚生労働省医政局看護課長岩澤和子 課長に出席いただいた。また、日本看護協会の 坂本すが会長はじめ関係者にもご出席いただき、 協議の場を持てることは有意義であると思う。

今、どの地域も看護師不足が叫ばれている。 看護師という職業がいかに患者さんにとって必 要かということを考えると、「数」と「質」の2 点について、今後ますます国・看護協会と一緒 になって向上させていかなくてはならないと常 日頃考えている。

今、看護師の制度がとりざたされているが、 いいものは賛成して伸ばしていかなくてはなら ない。看護師の数の問題も早く政府に要請して いかなくてはならない。残念ながら、ある県で は看護学校を4 箇所出願しているようだが、教 員がいないために実現していないとのことであ る。私が県医師会長をしていた頃から教員を増 やさないと看護師養成ができないと感じていた が、医師も看護師も自らの力を発展した医学を 患者さんに提供しなくてはならないことを考え ると、「数」の問題、「質」の問題を専門職の義 務として成し遂げなければならない。

本日、厚労省と看護協会のご参加を得て、協 議の場が持てたことは大変有意義なことである と考える。本日の協議会が、実りある、将来の看護問題の明るい見通しができるよう忌憚のな いご意見を賜りたい。

原中日医会長の挨拶に引き続き、日本看護協会坂本すが会長より次のとおり挨拶があった。

日本看護協会坂本すが会長

看護師の養成に関しましては、多大なご尽力 をいただき感謝申し上げます。都道府県医師会 の役員の皆様には、大変お世話になり感謝申し あげます。

3 月11 日の東日本大震災では、多くの医療関 係者が亡くなられました。今なお行方不明の方 もおられますが、心よりお悔やみ申しあげます。

震災から8 ヶ月が経過したが、なかなか地域 復興・生活再建が進まず厳しい状況が続いてい る。看護協会では、看護師をいかに岩手・福 島・宮城に集めるか苦戦している。医師会を中 心となって設置された被災者健康支援連絡協議 会にも参加させていただいたり、被災地域の病 院看護部長懇親会にもご尽力いただきながら第 1 回目を開催し、継続的に支援している。看護 師不足については、中央ナースセンターが大変 赤字で、1 年前には廃止にするかどうか理事会 でも検討していたが、今年の理事会で発展的に 解消し、人材派遣会社に頼らずに自分達の手で 集めて、病院・診療所で採用していただけるよ うにできないか、議論している。

被災地も含めて、なんとか全国から集めてナ ースセンターでやっていただけないかも検討し ているので、ご指導いただきたい。一日も早い 地域医療の復興に尽くしていきたい。

日本看護協会は、本年4 月より公益社団法人 となり、新たな一歩を踏み出した。使命は 「人々の健康生活の実現」で、職能団体として の目的だけでなく、国民のためにということを 掲げている。それを成し遂げるためには、質の 向上と専門職として看護師として働き続けられ る環境を大切にしたい。また、看護領域で新し いイノベーションを作っていけないかという3 つのことに取り組んでいる。

わが国が高齢社会のピークを迎える2025 年を 視野に、政府は社会保障の一体改革を開始しは じめた。病院病床の機能分化を進め、在宅医療 を強化していく医療政策の流れの中、多くの患 者は在宅で医療を受けながら住み慣れた地域で 最後を迎えたいと望んでいると聞いている。在 宅医療を支えていく職域団体同士が強い連携の もとに国民の多様なニーズに応え、新たな医療 体系を模索し、共通の目的に向かっていくこと が、日本の医療の発展につながっていくと確信 している。今後ともご指導いただきたい。

報 告

(1)報告看護職員を巡る最近の動向について
厚生労働省医政局看護課長 岩澤和子

「看護の質の向上と確保に向けての取組み」、 「看護基礎教育の充実」、「新人看護職員研修の 推進」、「24 年度看護職員関係予算(概算要 求)」の説明があった。

以下、概要。

1.看護の質の向上と確保に向けての取組み

◇看護職員就業者数の推移

平成21 年末の就業者数は、約143 万人。人 材確保法が平成4 年に出来て職員の数が伸びて きた。

◇看護に関する検討会の開催

看護職員の質の確保と数の確保は重要な課題 であり、厚労省では検討会を設けてこの10 年 間、様々な方からご意見をいただき、予算を確 保、施策を作り、教育内容の充実に努めてきた。

平成20 年度には、「看護の質の向上と確保に 関する検討会」が設置され、看護教育のあり 方・新人看護職員の質向上・人材確保・チーム 医療の推進ということについて、中間取り纏め がなされた。また、それを具体化するために平 成21 年度より文科省・厚労省でそれぞれ検討 会を設置し検討している。

2.看護基礎教育の充実

◇看護教育制度図

23 年度合格者数 (保健師12,792 人、助産師2,342 人、看護師49,688 人)

  • 1)高校卒業後、4 年制大学卒が1 9 3 校、15,504 人(大学での保健師・助産師教育の保健師&助産師合格者含む)
  • 2)高校卒業後、3 年の短大・養成所卒が541校、27,134 人。
  • 3)中学卒業後、5 年一貫校(高校+ 高校専攻科)卒が74 校、3,765 人
  • 4)中学卒業後、准看養成所および高校卒が260 校、11,933 人で、内2 年の短大・高校専攻科・養成所卒が223 校、12,599 人。
    また、保健師・助産師は、それぞれ2)3)4) の後、1 年以上の保健師学校養成所卒が33 校、1,405 人。同じく1 年以上の助産師学 校養成所卒が、77 校、1,568 人。

◇看護師等学校養成所の施設数の推移

平成22 年の施設数は、看護師(3 年課程)510 校、准看護師260 校である。

◇設置主体別施設数

  • 1)保健師学校養成所:学校法人立が55 %、 国公立および独立行政法人が19 %である。
  • 2)助産師学校養成所:学校法人立が35 %、 続いて国公立が27 %、独立行政法人立が 23 %とつづく。医師会立は3 %。
  • 3)看護師学校養成所: 3 年課程では学校法人 立32 %、国公立が24 %、医師会立は7 % となっている。2 年課程では医師会立が 39 %を占め、国公立が20 %、学校法人立 19 %となっている。また、看護師学校 (高校・専攻科5 年一貫校)では、学校法 人が64 %、国公立が36 %である。
  • 4)准看護師学校:医師会立が77 %を占める。

◇看護師学校養成所の1 学年定員数・入学者数の推移・競争率の推移。

  • 1)1学年定員数:看護師3 年課程(養成所)は25,000 人。この5 年間増えている。
  • 2)入学者数の推移:看護師3 年課程(養成所)は25,000 人。この5 年間増えている。
  • 3)競争率:看護師3 年課程(養成所)は3.6倍。平成18 年〜 21 年まで下がり3.0 倍であったが、平成22 年は高くなった。
    大学の看護3 年課程は4.6 倍。
    助産師については、3.7 倍

◇看護教育の内容と方法に関する検討会報告書の概要

◇看護師教育の基本的考え方

看護師等養成所の運営に関する指導要領(医政局長通知)

◇看護師に求められる実践能力と卒業時の到達

目標〜看護師等養成所の運営に関する手引き(看護課長通知)〜を定めた。

なお、臨時実習について、「実践活動を行う場で行うもの」としていたが、但し書きとして 「実践活動以外の学習時間を含めて構わない」とした。

◇国家試験受験者・合格者及び合格率の推移(第90 回〜第94 回)

  • 1)保健師:この5 年間で100 %から90 %以下に下がってきた。
  • 2)助産師: 93 回だけ80 %まで下がったが、94 回には100 %近くまで上がってきた。
  • 3)看護師: 90 数%でほぼ保っている。

3.新人看護職員研修の推進

◇看護職員、学校養成所卒業者の就業場所

平成21 年看護職員就業者:
143 万人のうち、病院89 万人(62 %)、診療所30 万人(21 %)、介護施設等12.8 万人(9 %)他

学校養成所卒業者(平成22 年3 月):
6 万人のうち、病院4.7 万人(78 %)、診療所1,900 人(3%)、介護施設等570 人(1%)、その他1 万人(16 %)他

平成22 年新卒保健師・助産師就業状況:
保健師:市町村560 人(61 %)、病院150 人(16 %)、保健所100 人(11 %)他
助産師:病院1,400 人(96 %)、診療所60 人(4 %)他

平成22 年新卒看護師・准看護師就業状況
看護師:病院4.1 万人(97 %)、診療所673人(1 %)、介護施設298 人(1 %)他
准看護師:病院4,800 人(74 %)、診療所1,100 人(18 %)、介護施設270 人(4 %)他

◇保健師助産師看護師法等の改正

新人看護職員の臨床研修その他の研修等について定めた(22 年4 月1 日施行)

◇看護師等の人材確保の促進に関する法律

病院等の開設者等の責務:新人看護職員に対する臨床研修&その他の研修への配慮

看護職員の責務:
免許取得後も研修を受けるなど自ら進んで能力の開発・向上に努めること。

◇新人看護職員研修に関する検討会

臨床実践能力を高めるための新人看護職員研修ガイドラインの策定等

◇平成22 年度新人看護職員研修事業実施状況

新人看護職員研修事業:施設数2,032 施設、新人職員数34,120 人。

医療機関受入研修事業:受入施設数335 施設、受入人数2,259 人、
 都道府県実施事業: 50 事業。

◇第七次看護職員需給見通しに関する検討会報告書

概ね5 年ごとに策定。見通しを着実に実現す るためには、定着促進・養成促進・再就業支 援等一層の推進を図ることが不可欠。

第七次看護職員需給見通し:平成27 年に需 要見通し約150 万人、供給見通し148.6 万 人、その差15,000 人で供給見通し/需要見通 しは99 %

第七次看護職員需給見通し(助産師):平成 27 年に需要見通し約34,900 人、供給見通 34,400 人、その差500 人で供給見通し/需要 見通しは98.6 %

4.24 年度看護職員関係予算(概算要求)の概要(平成23 年9 月)

下記事業に関する予算を概算要求している。

1)看護職員の資質向上対策

チーム医療の総合的な推進・看護職員の資質向上推進事業・訪問看護の推進

2)看護職員の離職の防止・復職の支援対策

看護職員等の勤務環境の改善に向けた支援・看護職員確保対策の総合的推進・潜在看護職員の復職支援等

3)養成力(看護学生の育成)の確保対策(教員の通信教育e ラーニング)

看護師等養成所運営事業・看護教員等の養成支援(再掲)・看護教員養成支援事業(通信制教育)改善経費

4)その他

設備整備事業・施設整備事業・経済連携協定に伴う看護師等受入関連事業

(2)日本看護協会及び都道府県看護協会の准看護師を対象とした事業の展開について

日本看護協会洪常任理事より以下のとおり説明があった。

*目的は2 つ

1)知識・技術の習得により看護の質を向上する。
2)看護資格取得の動機づけを推進する。

※内容

1)研修:感染・医療安全・高齢者看護等
2)交流会・懇談会:仲間と将来の夢を語り合う・働き続ける職場作り等
3)進学説明・相談会:情報提供・奨学金制度・放送大学を利用した進学
4)就業支援:仕事を続けるための職場選びの支援・無料職業紹介事業(各都道府県のナースバンク事業)

参加者からは、新しい技術を習得することに より常に新しい知識が得られるとか、学習意欲 が刺激される、進学のための具体的な準備が始 められる、自分達の抱える問題を話しあえる、 看護師としてキャリアアップに繋がる等の意見 をいただいている。

47 都道府県で行っている研修は、平成23 年 度は平均65 コース(31 〜 121)を開催(准看 以外も含む)。平均5,900 名参加し、准看護師 の参加は2 %程度である。

各都道府県での研修を是非ご利用いただきたい。

(3)平成23 年医師会立助産師・看護師・准看護師学校養成所調査(中間集計・11 月11 日までの受付分)

藤川謙二日医常任理事より、調査結果につい て説明があった。

  • 調査対象:全国の各都道府県医師会
  • 調査校 : 170 校(准看護師課程91 校・看護 師2 年課程39 校・看護師3 年課程37 校・助産師課程3 校)
  • 調査時期:平成23 年10 月
  • 調査内容:1)平成23 年度入学状況2)平成22 年 度卒業状況3)社会人入試制度につい て4)運営状況(平成23 年度学生納付 金の状況・平成22 年度補助金の状 況・平成22 年度医師会会計からの 繰入金について)

1)平成23 年度入学状況:
准看護師課程3.0 倍、看護師2 年課程1.2 倍、3 年課程4.3 倍、助産師課程4.2 倍

各県からも意見にもあるが、社会人入学が出 てきて、年齢的な理由や家庭の問題などにより 進学が減っている。また、社会的な理由や経済 的な理由で進学できない人もいると考えられる。

2)平成22 年度卒業状況:
医師会立看護学校卒業生の県内への就業者数は約8 割、看護大学の看護課程では約5 割強である。医師会立看護学校が地域の看護職員の確保に貢献しているかがわかる。

3)社会人入試制度について

4)運営状況(平成23 年度学生納付金の状況・平成22 年度補助金の状況・平成22 年度医師会会計からの繰入金について)

医師会からの繰り入れが全くないところがあ る一方で、1 千万超える医師会もある。これに ついては、近隣の医師会や市町村から助成金が あるのか、精査する必要があると考えている。

(4)特定看護師(仮称)問題について

藤川常任理事より、日医の対応・考え方について説明があった。

チーム医療推進会議の中で出てきており、日 医としては一貫して特定看護師制度は必要ない と対応している。

去る11 月7 日、厚労省のチーム医療推進の ための看護業務検討ワーキンググループで始め て、具体的な「看護師特定能力認証制度骨子 案」が示された。保助看法を改正して、看護師 特定能力認証制度を設けて特定行為を省令で規 定し、その行為を実施する場合、認証ありの看 護師は医師の包括的指示で実施でき、一般の看 護師は具体的指示を受けて実施するというもの である。特定看護師になるものは、2 年間の大 学院修士課程あるいは8 ヶ月程度の研修を受け て国家試験を受けるというものである。これに ついて、厚労省は、来年の通常国会での法改正 を目指し、12 月1 日の社会保障審議会医療部 会にかけるという性急な動きを見せたので、1 月16 日の記者会見で日医としての見解を述べ た。特定看護師問題は、「チーム医療の推進」 とは名ばかりで、医師不足を補うために看護師 に医師の代わりをさせたいという一部の医師 と、「看護の自立、キャリアアップ」のために 特定看護師(仮称)が必要であると主張する一 部の看護師に端を発するものである。

現在、厚労省では、「特定看護師(仮称)養 成調査試行事業」と「特定看護師(仮称)業務 試行事業」が継続されて行われている。普通に 考えれば、試行事業の結果についてきちんと検 証を行い、その結果を踏まえて慎重に検討する のが筋である。しかし、厚生労働省は、制度の 大枠だけでも作らせてくれと議論を急いでいる。

特定看護師(仮称)創設は、国民の生命に関 わる重大な問題であり、関係者や国民の合意な きままに法制化を急ぐことは許されるものでは ない。社会保障と税とは一線を画し、時間をか けて慎重に検討すべきであると日医は主張して いる。

看護師が研修を積み資質の向上を図ることは 医療従事者として当然のことであるが、新たに特 定看護師(仮称)の制度をつくることは必要な いし、創設することで現場に混乱をもたらすことが懸念されている。今医療現場が求めて望んで いるのは、特定看護師(仮称)を作ることではな く、一般の看護師が診療の補助として実施でき る範囲を明らかにし、全体的なレベルアップと質 と数の確保であると認識している。看護師が安 全にできる行為を文書で通知するだけでも相当 量業務の拡大が進むはずである。平成14 年に静 脈注射を許可したが、現実的には大病院でもま だ行われていない実態がある。業務拡大をしても やらない場合がある。勤務医の対策として、でき るだけ安全な行為は診療の補助として協力して いただくのはやぶさかではないが、患者に侵襲を 伴うものは医師法で限定されているので、必ず医 師が行うことが医療安全を確保する大前提であ る。医療安全の観点から医師が行うべきものが 看護師にタスクシフティングすることのないよ う、今後も厳しくチェックしていきたい。

協 議

(1)准看護師卒後研修会について

千葉県医師会および東京都医師会より、実施 状況について説明があった。同事業は、現在、 10 県医師会(あるいは郡市区医師会)で実施 されている。

◇千葉県実施状況について

井上雄元(千葉県医師会副会長・日医看護職員検討委員会委員長)

平成18 年より年1 回開催。平成22 年度は 108 名の参加があった。東京都医師会広報誌を 見て、専任教員研修会の開催を知った。平成 18 年度より取り組むことになったが、やり方 がわからないので、看護協会に依頼して実施し た。非常に好評だった。

参加者が増えてきたので続けていかなくてはいけないと考えている。

◇東京都実施状況について

道永麻里(前東京都医師会理事・日本医師会看護職員検討委員会副委員長)

昭和56 年度より開催。翌年度から年2 回、 63 年度から年3 回開催している。その後東京にて研修会が開催されたことから、平成6 年度か ら再び年2 回開催となった。毎回300 名程度参 加しており、数回参加している人や、正看護師 もいる。聞きたい内容について、アンケートし て、希望にあったものを選んでいる。講師は、 主に看護師で、医師が行うこともある。2,300 名に開催案内を出す。

要望・質疑

事前に各県から提出された質問・意見について、厚労省および日医から回答があった。質問等の主な内容。

問1 准看護師の卒後研修の実施について

10 県が実施

問2 養成にあたって、現在抱えている問題

  • 1)教員確保(長期の県外研修は困難・代替教員確保困難)、県内での実施およびe ラーニングでの研修を要望
  • 2)実習病院の不足(特に産科)
  • 3)生徒数の減少
  • 4)男性の産科実習。DVD 等でできないか。
  • 5)校舎の老朽化・耐震化・移設のための補助金の減少
  • 6)社会人入学の減少
  • 7)補助金の減少
  • 8)学生の確保減少
  • 9)学生の質の低下(退学・心・うつ)
  • 10)大学附属の看護学校の就職は大学が多く、民間減少。

問3 日医への質問・意見・要望

  • 1)母性実習のカリキュラム編成の改正等
    男性応募者が増加しているのに、入学させられない状況にある。ビデオ(DVD)や模型で代用できるカリキュラムへの変更ができないか。
  • 2)教員確保が困難
    教員養成講習会の各県での開催への働きかけ・e ラーニング導入の確実な実施・定員に応じた専任教員数の調整
  • 3)看護職員養成校への財政支援
    医師会の負担増大・運営難による養成校の減少・補助金の増額が必要定員数による調整率の撤廃
  • 4)看護職員養成校の定員増・新設
    看護師数の不足および大病院への偏在により、地域医療が困難となっている。
  • 5)准看護師養成についてのスタンス
    日医のスタンスを明確にして、准看護師養成の実状を国に訴えるべき。
  • 6)「平成22 年の実数アンケート調査」と「第六次看護職員需給見通しの見込み数」との齟齬をどのように分析するか。
  • 7)国はもっと看護師養成に支援していただきたい。医師会任せにしている。
  • 8)「カリキュラム増大」「看護教員の有資格問題」「医師会側の負担の増大」に対する日医の看護養成に関する方策を伺いたい。
  • 9)実習病院の減少に対する手立てはないか。
  • 10)准看護師の卒後研修カリキュラムのマニュアルを作成して
  • 11)悪質な人材派遣会社の規制を国に要望して(紹介料・祝金のため転職を繰り返すものあり)

問4 厚労省への質問・意見・要望

補助金の増額・運営資金の支援・校舎老朽化による新築・改築費用の補助・7 対1 入院基本料の算定による看護師の偏在増大への対応・実習病院の要件緩和・准看護師養成に対する考え方・EPA による准看護師試験受験

問5 その他の意見

東日本大震災被災県の学生の学費免除および学費支援を強力に実施いただきたい。

各県より提出された要望・意見・質疑について、厚労省より下記のとおり説明があった。

厚生労働省回答:教育・確保・予算について

◇教育関連

・教育の充実のための養成所の教員数について

ここ数年、検討会を開いてカリキュラムを 変更し、単位数・時間数が変更されたが、専 任教員数は変更していない。指定基準に記載 した指定人数は、それぞれの専門領域を確保 する最低限の人数を示している。しかし、実 習を含めてたくさんの教員が必要になってく ると思われるが、補完するために「実習指導 教員」を置くことが出来るとしているので、 教育の質の担保のためにも実習指導教員を置 いて実習の充実を図っていただきたい。

・国家試験

看護師については、必修問題と一般問題が あるが、必修問題が絶対基準、一般問題は相 対基準を活用している。一般問題はその年の 難易度を一定に保つことが難しいため、看護 師という免許を与えるのにふさわしいと識別 できるよう相対基準としている。

・確保策

昨年12 月に第七次の需給見通しを出した 今年は1 年目にあたる。今年は需要と供給の バランスは96 %供給、27 年度には95 %、全 国的に99 %という見通しとなっている。中 期的には全国的には満たしていると考えてい るが、個々の地域では、不足感があると聞い ている。原因としては、勤務環境や家庭の事 情など、さまざまな要因が複合的に影響して いると考えられる。医療現場の特性に応じた 確保対策として、さまざまな勤務体制が採用 されて確保に努力されていると思うが、厚労 省としてはそのためのデータ集積を図って、 国・地方公共団体・医療機関の皆様、関係者 と協力して、地域に応じたきめ細かい対策を 講じていく必要があると考えている。

その一つとしてのナースバンク事業は、ナ ースセンターで無料職業紹介、ハローワーク と連携して効果的な確保に努めている。ナー スセンターでは、専門性の高い専門員が相談 者の経験に合わせた個別の対応ができるよう にしている。地域における就労支援のネット ワークを図るようにしており、その充実が望 まれる。

・EPA

准看護師の資格がとれるようにとの意見をいただいているが、インドネシアとフィリピ ンのEPA において、看護師候補者の入国・ 滞在があるが、日本の法令に基づいて「看護 師の資格を取得することを目的に滞在する」 という特別な滞在目的となっている。ついて は、准看護師資格取得は、協定の目的にはな じまないものである。各施設において、看護 師国家試験に受かるよう研修をしているが、 日本語研修も含めて実施されており国も支援 している。

・予算について

◇校舎の老朽化に関する新築・改築の要望が でているが、厳しい予算事情がある。平成 23 年度施設整備費補助金は49.3 億円である が、各県からの要望は102 億円で非常に予 算の確保に苦労しており難しい状況である。

◇運営費の増額の要望があるが、24 年度予 算については閣議決定でその他経費につい ては10 %削減という厳しいシーリングが 出ており、増額は大変厳しい。

そういう条件でありながら、49 億円は 大変努力させていただいたと思っている が、引き続きご意見をいただきながら努力 していきたい。

◇専任教員の経費・実習施設の謝金を増額で きないかとの意見であるが、行政上の 基準額に含めて算定している。増額は厳し い。引き続きご指導賜りたい。

◇調整率は、平成21 年度に財務省による予 算執行調査により、メリハリのある予算執 行をするようにとのことから調整率を作っ ている。収支率・学生の定員等をみたとき に差があることからメリハリをつけること になり、撤廃は困難である。

◇奨学金については、平成17 年度に一括交付金として地方へ財源委譲している。

◇第3 次補正予算が成立し、被災地の医療施 設等災害給付金要綱を改正する予定であ る。日医から7 月に要望のあった看護師等 養成所の教材等を補助対象にできないかと の要望を受けており、看護師等養成所の図 書設備費としてその範囲で対応できるよう 交付要綱の改正を進めている。

藤川常任理事:

以下、各県から日医への意見・要望への回答に対する日医意見。

1)各県とも実習病院の確保に難渋している。看護大学が193 校開設され、医師会立で実習をはずされている例が出ている。病院で看護学校を持っているところや大学の看護課程の開設により、医師会看護学校の実習施設の確保ができるよう、厚労省からも指導いただくよう要望する。

2)8 ヶ月の県外での研修はかなり負担になっており、専任教員養成のe ラーニングの全面的導入を要望したい。

3)入院時の定員については、入学時100 名→卒業80 名になることもあり、ある程度増員して入学できるよう調整していきたい。

4)生徒の質の問題についてもうつや退学の問題等数県から出ている。また、社会人入学が増え、進学率が下がってきているとの問題も指摘されている。社会人は、准看を取得するが家庭の事情等で進学できない人がいる。

5)校舎の耐震・老朽化・増改築のための補助金を要望していきたい。

6)看護師男性の産科実習のこと、検討が必要。

7)教育環境の地域の市・県に国からの補助金があがるよう強く申し入れていきたい。

8)2 年過程の競争率は、由々しき問題。多くの看護学校(高校)が無くなった。競争率1.2倍から1.5 倍

その他、数県から、補助金・定員・教員養 成・実習病院の確保および男性看護師の産科実 習・EPA による准看護師試験受験等要望が出 されたが、厚労省からは同様の回答であった。 また、静岡県から、静岡市医師会は准看養成過 程を一旦廃止したが、また開始したいができる のかとの質問があり、厚労省は、難しい質問で あり、現時点で簡単にできることではないとの回答があった。

藤川常任理事

◇埼玉県と同様にEPA による准看試験を受験させて欲しいと考えている。

◇准看護師養成については、看護協会も厚労省も地域で看護師が足りないのは分かっている ので、根っこのところにはあると思う。准看護師廃止はありえないと思うので安心いただきたい。

◇准看養成について、日医の方針は何ら変わりない。現実的に42 万人が医療に貢献、就業 している。日医としてしっかりと胸が晴れるよう環境づくりをしていきたい。

協議終了後、羽生田副会長より「専任教員の 通信制については。10 年前から要望しつづけ て来年度やっと調査費がついた。うまくいけば 再来年からできるようになるので、是非実現さ せたい。男性看護師の産科実習についてはまだ できておらず、バーチャルでできるようにカリ キュラムを改正するよう厚労省に申し入れてい る。助産師学校については、要望して2 年目に できるようになった。まだ達成できていないも のについては、もっと頑張っていきたい。ま た、准看学校新設についても県医師会とともに 一緒に闘いたい。」との挨拶があり、会を終了 した。

印象記

副会長 小渡 敬

平成23 年11 月30 日、都道府県医師会看護担当理事等連絡協議会が日医会館で開催された。看 護問題については毎回同様のテーマが繰り返し議論されているように思われる。まず看護師の需 給状況については厚生労働省も看護協会も地域での看護師が不足していると分っていながら、絶 えず看護職員需給見通しでは十分供給されるというデータばかりを並べている。需給状況のバラ ンスについては10 年以上前から変わらない様な気がする。看護の質を高めることについては、看 護大学を創設して全国に193 校が開設され高等教育を受けた看護師が養成されるのは良いが、実 際には民間病院等で勤務する看護師は少なく、臨床に貢献しているか疑問である。また、そのし わ寄せで医師会立の看護学校が実習施設を追われてしまい困っている現状がある。

同時に看護協会や厚生労働省の看護課は、本音では准看護師の養成を廃止したいという考えで あるが、現状では多くの准看護師が就労しており、看護の質をあげようとするならば、むしろ准 看護師の研修その他にも力をいれるべきではないかと思われる。

看護学校教員の養成システムも非常にハードルが高く、実際には養成を拒んでいる様にも思わ れる。もっと教員希望者が教習しやすいようなシステムを作るべきである。以上のような課題は すでに何年も前から言われてきていることであるが、初めてこの会議に参加して全く進展してい ないことがよく分かった。看護協会・厚生労働省看護課と、日医では看護問題については基本的 に本音と建前が異なるのでこのようなことになるのであろう。