理事 宮里 善次
去る11 月30 日(水)日本医師会館に於いて標記連絡協議会が開催された。
協議会では、富山県医師会から去る10 月29 日(土)富山県において開催された全国医師会 勤務医部会連絡協議会について報告があり、続 いて、次期担当県の愛媛県医師会より開催の概 要について説明があった。
また、日本医師会より、「勤務医の健康支援 に関するプロジェクト委員会活動報告」があ り、続いて「勤務医委員会臨床研修医部会活動 報告」が行われた。
都道府県医師会からの勤務医活動報告とし て、3 県医師会(1)東京都、2)石川県、3)岐阜県)より取り組み状況について報告があった。 報告の後、「震災における活動を通した医師の 協働」をテーマに事前に寄せられた提案事項等 について意見交換を行った。
挨 拶
原中勝征日本医師会長
現在、いろいろな問題があり、日本医師会はまず、医療費・介護費同時改定に向かって 2,200 億円の自然増の確保、ネットで医療費を プラス改定にする事について、野田総理に対し て説明を行った。
私は、勤務医と開業医を分けたのは何のため なのか、両方とも医師として働いており、どう して色分けしているのかと疑問視し、そういう 事はやめるべきだと申し上げている。
医療とは診療所と病院の病診連携であり、患 者の命を救うこと、苦痛を和らげる事を医師の 連携プレーとして行っている時に色分けをする 事は間違っている。
医師は倫理感に基づき、一つになって患者さ んの為に働き、患者さんの為に我々がいるとい う事を理解していただき、お互いが医師として の責務を果たすためにどういう医療制度を作ら なくてはいけないかを考える時期にきているの ではないかと思う。
また、医師会として受診時定額負担に対する 反対運動を行い、署名運動をしている。医師会 の先生方が直接地元の代議士の方々にアンケートを行い、アンケートに賛成しないのであれ ば、医師会で公認しないという強いメッセージ を放った結果、民主党の約束の一つに入れても らった。そういう状況の中で勤務医の先生方も 大変だと理解しているが、医師として一生涯ど ういう生活をするのか考えた上で、お互いの協 同行動が迫られていると思う。
今回、富山県で勤務医部会を開催させていた だいたところ、多くの先生方に参加していただ き、実りのある会になった事に感謝申し上げる。
開業医の先生方、勤務医の先生方にはそれぞ れの喜び、苦しみがあるかと思うが、先生方の 意見を勤務医部会、地元の医師会を通して日医 へあげていただき、勤務医委員会で討議を行い、 少しでも働きやすい環境を必ず作りたいと考え ているので、ご意見、ご提案をお願いしたい。
議 事
【報告】
1)平成23年度報告 (富山県医師会)
富山県医師会南田理事より、報告があった。
平成23 年10 月29 日(土)、富山県(ANA クラウンプラザホテル富山)において平成23 年度全国医師会勤務医部会連絡協議会を開催 した。
(詳細は沖縄県医師会報2012 年1 月号に既報)
2)平成24年度担当医師会
次期担当県である愛媛県医師会佐藤博彦常任 理事より、来年の開催期日等について下記のと おり説明があった。
日時は、平成24 年10 月6 日(土)、愛媛県 松山市の松山全日空ホテルにて開催を予定して いる。
メインテーマやプログラムについては準備中 であるが、愛媛県内それぞれがもつ問題点やそ れらに対する独自の取り組み等と共に、同時改 定等、来年度のさまざまな動きを絡めた協議会 になるよう、関係役員、職員一同準備を進めている。
愛媛県は四国地方の北西部に位置し、瀬戸内 海に面している。県庁所在地の松山市には日本 最古の道後温泉があり、松山城も優雅にたたず み、ご出席される皆さまをお待ちしている。
さらに、12 月末には新しい愛媛県医師会館 が完成する予定となっており、最上階の会議室 からはパノラマのように松山城が見える造りと なっている。
次年度の愛媛県での協議会にも多くの先生方のご参加を心からお待ちしている。
日本医師会今村聡常任理事より報告があった。
勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会発足の背景として下記事項をあげた。
平成20年度からこれまでの主な委員会活動
○「医師が元気に働くための7 カ条」と「勤務医の健康を守る病院7 カ条」を提案
○勤務医の健康支援のための健康相談
・E-mail 相談 ・電話相談
○医師の職場環境改善ワークショップ研修会の開催
・都道府県医師会開催への展開
○日本医学会分科会への働きかけ
・勤務医の健康支援に関するシンポジウム・ワークショップの開催
○委員による活動
・シンポジウム開催等による啓発活動
・学会誌等への論文投稿等
○医師会の労働時間の設計基準に関する現場実証調査研究
医師の職場環境改善ワークショップ研修会 は、医療機関の管理者(院長、部長、医長等)、 産業医を対象に医療機関における産業保健の役 割、医師のメンタルヘルス支援についての講義 を行っている。医療機関での産業保健活動の展 開について講義を行い、グループワークでは、 具体的な事例に基づいてグループディスカッシ ョンを行っている。
ワークショップ研修会で評価アンケートを行 い、ポジティブな反応を多数頂いているが、研 修会に要望したい点として、「病院間に差があ りすぎて議論が深まらない」、「組織的に対応す ると言うが、具体的にどんな体制で対応するの か今一つ具体性に欠けていた」、「過重労働に対 しての取り組みの考え方について示してほし い」、「うつ病の初期の徴候の見抜き方につい て、さらに教えていただきたい」等の意見もい ただき、さらなる研修会の内容の充実が重要に なってきた。
もう一つ、委員会での重要な役割の中に「医 師の労働時間の設計基準に関する現場実証調査 研究」があげられる。これからの医師の働き方 について、日医として提言ができないかという 事で昨年より下記のとおり実施している。
○平成22年度
ステップ1:労働時間設計基準に関する知見集約
ステップ2:労働時間ガイドの現場適用作業
○平成23年度
ステップ3 :労働時間ガイド現場実証研究
ステップ4 :医師の労働時間の設計基準案作成
・産婦人科で労働時間制度を見直し、勤務医 の交代勤務制を導入した。プロジェクト委 員会委員の所属病院ですでに取り組みを行 いうまくいっている例がある。実際に委員 会委員の病院では医師の就業改善ガイドラ インを作成し、運用している。
また、ワークショップの参加者へ勤務医 の健康支援のための労働時間・業務改善に 関するアンケートを実施している。
今後の取り組みとして、1)各都道府県医 師会における開催、2)講師・ファシリテー ターの養成、3)各学会等におけるシンポジウム等の開催もお願いしたい。
今年度末には、勤務医の労働時間ガイド ラインの具体的な提案がまとまる予定なの で、その際は報告したいと考えている。
日本医師会三上裕司常任理事より報告があった。
勤務医委員会臨床研修医部会は平成21 年度 に設置された。臨床研修医は、医師の第一ステ ージにあり、医療の現場で働く勤務医である。 臨床研修における問題点や改善点について自由 に討論してもらい、意見等を吸い上げながら会 務に反映していきたい。平成21 年度に2 回開 催、平成22 年度に4 回開催と合計6 回の会議 で提言を出した。
部会には、卒後1 年目から5 年目までの若手 医師11 名が参画し、勤務医委員会からは、泉委 員長と今枝委員がオブザーバーとして参加した。
臨床研修制度等に係る意見・提言の概要
・研修状況等
→研修状況は多岐にわたり、習得する技術や労働環境も施設ごとに異なる状況である。特 に、大学病院と市中病院、都市部の病院と地 域の病院では経験症例、指導医の充実、労働 条件に違いがみられ、研修施設によらず標準 的な診療を行う能力を身につけていく必要が ある。そのためにも、研修内容と労働環境の 標準化が重要と考える。
・研修期間・スーパーローテート
→将来目標としている専門家だけではなく各科 を実際に経験する事で重要な経験ができると 感じる研修医が多いという結果であった。ま た、科によってはローテーションの期間が不 十分と感じ、専門性の高い分野を志望する研 修医に対しては、自由度の高い研修カリキュ ラムを希望する声もあった。
・地域医療研修
→地域医療研修で実体験を感じることは重要で あるが、多くの地域医療研修は現場任せとな っており、医療過疎地の労働力として期待さ れる状況もあるので、標準化が必要。
・初期研修修了後のキャリアパス
→大半の医師が医局に所属していた状況から大 きく変化してきており、キャリアパスを研修 医自身が検討する必要があるが、選択の自由 があることには大半が賛成である。また、今 後は研修を受ける側と提供する側での情報共 有や魅力的なカリキュラム作成が課題。
・医学部教育
→従来の医師国家試験のみでなく、CBT や OSCE といった学習段階に応じた試験での習 得の節目を明らかにすることは有効であるが、 基礎医学分野や学位取得等、希望する医学生 が少数であるが重要な分野についても医学教 育での位置づけを議論していく必要がある。
・臨床研修先の限定
→日医が医師の偏在を解消する目的で臨床研修 先を限定する事を提案した事に対して、臨床研 修の本来の趣旨からは逸脱する可能性が高い。
・部会のあり方
→医学部教育、臨床研修に近い立場の委員で議 論する事は重要であるが、今後は様々な立場 からの意見を集約してほしい。
上記の提言を受け、勤務医委員会臨床研修医 部会in 富山を開催し、富山県内7 臨床研修病 院から9 名(内女性2 名)の臨床研修医が出席 した。
部会の中で、女性医師への配慮については、 多くの診療科で配慮がなされている事、医師の 健康については、全体的に富山県では配慮がな されている印象であった。
また、医学部教育については、他学部との交流の重要性についても意見があった。
平成23 年度勤務医委員会臨床研修医部会委 員は卒後1 年目から3 年目までの13 名で構成 され、11 月25 日に第1 回目を開催した。その 中で「臨床研修の満足度」は概ね満足している との意見が多く、「選択必修診療科の選択」に ついては、希望している診療科に限定せず、多 くの診療科を回っているとの意見が多かった。 「処遇・給与」については、基本的には平均水 準であった。
平成23 年4 月1 日より、「日本医師会臨床研 修医支援ネットワーク」を開始し、臨床研修医 に対して日医の事業のうち、広く利用できるサ ービスを無償提供する事により、臨床研修医を 支援し、理解を深めてもらう目的で行っている。
1)東京都医師会理事 弦間昭彦先生
東京都医師会の会員数は20,516 名、内勤務 医は10,357 名である。役員19 名の内、2 名、 代議員171 名の内、22 名が勤務医である。
勤務医に対する取り組みとして、勤務医委員 会を設置し、会長諮問について検討し答申して いる。最近では、平成21 年3 月に「勤務医の 労働環境の問題点と改善策」として、包括的に アンケートをとった。その中の問題点として、 「患者対応の問題点と対応策について」諮問が あり、平成23 年に答申した。
平成21 年度の答申の中で、多くの問題があ り離職する医師が増加している事から、勤務環境の改善を図るために行い、646 施設に医師及 び施設調査の協力を依頼し、回答率は約18 % であった。具体的なアンケートの内容として は、収入、業務量、負担感等の典型的な内容 と、新医師臨床研修制度等について行った。
具体的な業務の増加については、会議回数、 診療録の記載・入力等、事務的な面での業務が 増加しているという回答が70 %以上であった。 また、負担がある業務については、当直、救急 患者数が80 %となっており、その他、会議の回 数、紹介状・報告書・診断書作成等が負担にな っている。改善の必要があると認識されている 業務に関しても、事務的な業務があげられた。
今回は、大学病院からの回答が多かったが、公的病院、私的病院に分けても内容は同様であった。
非診療行為(事務系の仕事)の増加、救急患 者の増大、新臨床研修制度導入に伴う変化に対 して負担が増えており、また、患者の意識変化 も問題視されている。
勤務医の労働環境の問題点と改善策の提言と して、他職種への業務代替(事務的な業務)、 当直や救急体制、女性医師支援、臨床研修制度 の改善があげられた。
今年度から大学と病院協会等と協力し、病院 と大学それぞれの意見を集約し具体策を検討し ているところである。
2)石川県医師会理事 久保実先生
石川県医師会勤務医部会は、平成4 年度に設 置され、会員増強委員会、活動方針検討委員の 2 つを設置し活動している。平成8 年10 月には 全国勤務医部会連絡協議会を主催し、平成20 年には「勤務医の抱える諸問題について」を答 申し、「声をあげよ、勤務医」の小冊子を発刊 した。勤務医フォーラムの開催や、病診連携の 集いを実施し、勤務医支援総合対策委員会が設 置され、どういった支援が必要かという事を決 め、実施している。
年間活動については、研修医オリエンテーシ ョンを行い、医師会の活動を紹介し、活動を知 ってもらう努力をしている。また、勤務医フォ ーラムでは医師不足の問題について講演を行 い、総会では、毎年テーマを決めて講演会を行 っている。今年度は、県が学生と研修医を集め てイベントを行っているので、そこへ勤務医部 会も参加している。
また、勤務医支援総合対策については、諮問 に対して答申を行った。内容としては、勤務医 の理事を確保する事、勤務医会員諸会費の減 額・免除、病診連携の推進という事で「病診連 携の集い」等、県民公開講座を通じて勤務医の 活動を広くしていく活動を行っている。
平成22 年度に勤務医労働実態アンケート調 査を実施し、回答率は20 %であった。週平均 の実労働時間の結果、法定労働時間の週40 時 間以内は10 %、36 協定上限の週55 時間以内 は約半数、3 人に1 人は過労死の危険があると いう結果がでた。週休についても、4 週4 休〜 8 休が86 %で、休日は比較的確保されている状 況である。当直回数は2 〜 3 回が最多の36 %、 5 回以上は11 %である。当直明け勤務について は、3/4 が当直後も通常勤務で、32 時間連続勤 務をしている状況である。超過勤務の処遇につ いては、56 %が処遇があるが、代休ではなく 手当での対応になっている。仕事、収入の満足 度については、両方とも90 %以上が満足して いると回答しており、将来については、74 % が勤務医を続けたいと回答し、7.5 %が開業希 望である。半数が60 歳まで働きたいが、70 % は体力に不安があると回答している。
勤務医へ入会を進めると、メリットを聞かれ る事が多いが、メリットを論じるものではな く、医政の問題や組織率を上げる事と同時に勤 務医が医師会へ入会する事が大切だと説明して いるが、実際には効果がなく、医師会に入るメ リットを提示していかないといけないと感じて いる。
3)岐阜県医師会常任理事 臼井正明先生
始めに岐阜県の概要、岐阜県医師会員数、会員区分と年会費額(大学勤務医会員の会費)、地区医師師会の入会金・年会費について説明があった。
岐阜県医師会専門部会については、独自で運 営していたが、新公益法人制度改革に伴う専門 部会の在り方として、県医師会内内部組織とし て設置し、役員の名称も統一となった。
岐阜県医師会勤務医部会は昭和61 年3 月9 日に設置され、現在、会員は1,210 名である。 部会費は年間2,000 円としている。
平成14 年度から、総務委員会、学術委員会、 学術選考委員会、IT 委員会が設置され、平成 22 年度には男女共同参画委員会を発足した。
学術委員会では、年2 回学術研修会を開催 し、テーマ、講師を学術委員会で選考してい る。研修会はその時々の話題、課題をテーマと して開催しており、平成21 年度からは災害医 療を取り上げている。勤務医部会学術選考委員 会は岐阜県医師会独自の取り組みであり、会員 の研究助成を目的とし、平成16 年度から助成 金を授与している。研究助成の選考条件として は、「純基礎的な研究は除く」、「他施設・複数 科にわたる研究」としている。過去の受賞状況 は、当初は、年間200 万円出していたが、現在 は100 万円へ減額している。お金が続く限り、 助成を続けていく考えである。
協 議
テーマ:「震災における活動を通した医師の協働」
(日医、各都道府県医師会からの提案事項等について意見交換)
東京都医師会東日本大震災災害対策本部は、 災害発生時から「東京都医療救護班」を宮城県 気仙沼市、岩手県陸前高田市、福島県相馬市に 派遣した。また、「東京都こころのケアチーム」 を岩手県陸前高田市に派遣し、JMAT 等で各県 の被災地域に派遣を行った。その過程で、東京 都医師会として、いくつかの問題点を認識した。
1)被災地域に派遣されている救護班の統制について。
2)災害拠点病院への患者集中の問題点。
3)その他の病院をどう位置づけるか。
4)地域医療再生のため、通常状態への移行をどう計画するか。
医師の協働を考える上で、上記問題点を踏ま え、医師会と行政を中心とした医療救護班統括 等の施策が重要だと考える。
日医勤務医委員会泉委員長から、1)〜3)については、新潟県、兵庫県、石川県と大地震があった事で救護活動を行った経験のある方々の意見を聞かせていただきたいと説明があり、下記のとおり意見があった。
<新潟県>
新潟県では、保健所長を中心として各地域へ コーディネーターを指名し、外部からのDMAT やその他、JMAT 等の統制を作る体制を 日頃から作っている。1)〜3)に関しては、新潟 県全体の行政と一緒にコーディネートし、動い ている状況である。
<泉委員長>
中越地震、中越沖地震の経験からの活動なのか。
<新潟県>
中越沖地震の際、行政と医師会との協働が機能したので、全地域で体制を整えている。
<石川県>
能登、北部地震があり、その経験は大きかっ たと考える。石川県は国公立病院を中心とした DMAT の他に、医師会を中心としたJMAT が 組織され、会長が自ら南相馬市へ出向き活動を 行った。その他に、県の保健師チーム、精神科 を中心としたこころのケアチームが支援を行っ た。チームごとに派遣先が違っており、もう少 し連携体制の整った体制が必要であった事が反 省点であると感じた。
1)震災直後のD-MAT 活動
当センターから派遣したD-MAT チームの体 験から、患者や医療者を搬送した自衛隊等との コミュニケーションが十分取れていなかった。 そのために多少混乱が生じ、連携能率が良くな かった面があった。組織間の連携にやや困難が あると感じたので、このような状況で取り仕切 れるような訓練を受けた人材が必要ではないか。
2)震災1 〜 2 カ月後の医療活動
仮設診療所に派遣されたが、患者数が少な く、もっと他の場所に医療チームの必要性はな いかという思いがあったが、情報がほとんど得 られなかった。このような場合の情報の伝達と 医療チームの必要な程度などを判断できるよう なシステムの構築が必要ではないか。
3)通信手段の確保
衛星携帯電話を所持させ、これが唯一の通信 手段であった。無線、衛星携帯電話等のハード 面でも準備が必要だと感じた。
京都府医師会は福島県へJMAT(4 〜 6 名体 制)として派遣した。京都府薬剤師会に協力し てもらい各チームに1 名ずつ参加してもらっ た。京都府医師会から事務も参加する事にな り、連絡係として参加した。初期の混乱として は、各県と同じで、自分達で活動の場を探さな くてはいけなかった。その後、地元の行政から 派遣されているチーム、いわき市保健所職員と 連携をとって活動を行った。
京都府医師会は1 年前に新会館を設立し、シ ミュレーションラボを作った。薬剤師、看護師 等の他職種との連携を重要視しており、顔の見 える活動を行ってきた。チーム医療の研修を行 い、発信している。震災時に医師会活動が大事 なキーであると感じた。
大阪府医師会として、多くの医療従事者が被 災地に赴き活動を行った。その中で、医師、保 健師、看護師、薬剤師、理学療法士等の医療従 事者、事務職員が心を一つにして活動を行い、 チーム医療の重要性を再認識した。JMAT 活動 を通じて、いくつかの問題点も感じた。
災害医療チームは「自己完結型が原則」とな っていたが、JMAT が組織的な後ろ盾の下、充 分な訓練と経験を積んだ機動力を持つチームと 協働するためには、今回の活動を検証し、派遣 体制を万全にしなければならないと考える。
○被災状況を的確に把握し、被災地に求められる支援を決定(情報共有集約のための通信システム確保)
○支援時期に応じた被災地までの交通手段確保(行政、関係団体との連携)
○被災地における支援者受入体制の構築(活動拠点、活動支援等)
○出動者の身分保障(傷害保険、医賠責保険、休業補償等)
以上を整備した上で、刻々と変化する現地状 況に合わせた支援が円滑に行えるように指揮す る人材の養成を含め、国に対し、日本DMAT と医師会JMAT が同じ機動力を発揮できるよ う大阪府医師会として要望する。
報告の後、各県から意見交換が行われた。そ の中で、沖縄県から私宮里が下記のとおり意見 を述べた。
沖縄県は3 月16 日には現場に入ったが、現 地の情報が全くつかめなかった。行政も破壊 し、被災地の医師会も破壊しており、どこに問 い合わせたらいいのかも分らない中で模索しな がら岩手県で支援活動を行った。沖縄県医師会 は、医療支援班を希望する者が多く、全員を派 遣する事が出来なかった状態である。
大災害だったので、準備ができてなかったと 感じた。一つの県が潰れた場合、司令塔をどこに置くかが重要である。例えば、九州で地震が 発生した場合は、沖縄県、山口県も含めて応援 に行く体制が整っているが、東北、関東、近畿 地方で一つのエリアを作り、兵庫県が潰れた場 合にどの地域が司令塔になる等を作ってほし い。医師会だけでは動けないので、行政との連 携も重要だと感じた。
最後に、日医望月副委員長から下記のとおり 説明があり、協議会は終了した。
今回の東日本大震災で多くの医師がD - MAT、JMAT に参加し、自らの意志で被災地 に入って頂いたことに感謝申し上げる。今回の 大震災の特徴は、初期急性期の救急がほとんど なかった。阪神大震災を想定したD-MAT が翌 日128 隊岩手県入りした。患者搬送、避難所の 医療活動を手伝って頂いた。受け入れ側とし て、各県災害対策本部は必ず県庁所在地にでき るので、岩手県盛岡市に設置した。対策本部で は、自衛隊、警察、行政が活動していたが、一 週間後に災害医療ネットワークが設置された。 医療支援チーム(県医師会、大学医師会、行 政、県立病院が加入)はそのネットワークで受 け入れ、情報収集を行い配置した。
現地でのコーディネートに関しては、岩手県 でも保健所長にしていたが、機能していなかっ た。保健所も広域になっており、保健所長一人 ではなかなか把握していないのが現状であっ た。結局、現地をよく知っている災害拠点病院 の先生方、現地医師会の先生方で受け入れ等を 行った。災害の規模、急性期、慢性期等に応じ た医療支援チームの日頃からの訓練の必要性を 感じた。今後は、医療、介護、福祉が連携した チームを作り、支援していく事が必要でないか と感じた。
印象記
理事 宮里 善次
平成23 年11 月30 日に日本医師会館に於いて『都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会』が開催された。
原中会長の挨拶では診療介護報酬同時改定では2,200 億円の自然増とネットでのアップを総理 大臣に進言。さらにTPP に関するディスカッションで、皆保険の堅持を強く要望した旨の発言が あった。
また、日本医師会を開業医団体と勤務医に分けること自体が本来あるべき姿ではなく、それぞ れの立場で病診連携することが医療である。その為に日本医師会は勤務医の労働環境整備に対し ても積極的に対策と対応をしており、手をとりあって困難を乗り越えたいとの発言が印象的であ った。
報告では23 年度の全国大会を主催した富山県医師会から大会と富山宣言の報告があった。
続いて日本医師会の今村聡常任理事から「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会活動 報告」が発表された。
平成20 年に立ち上げられた同委員会は勤務医の健康の現状と支援のあり方に関するアンケート 調査から始まり、4 段階のステップを踏んで医師の労働時間の設計基準に関する現場実証調査研 究の段階まで進んでいる。昨年度からは各県医師会で「医師の職場環境改善のワークショップ研 修会」を開催しており、研修会の内容も役に立ったかどうかと云う点において、95 %以上の満足度を示す内容となっている。
最後に、今後各都道府県医師会での開催と講師・ファシリテーターの養成、各学会でのシンポジウムの開催を行い、「勤務医の労働時間ガイドライン」を提案する旨のまとめが報告された。
続いて三上裕司常任理事から「勤務医委員会臨床研修医部会活動報告」があった。大学病院と 市中病院、都市部と地域の病院では経験症例や指導医の充実度、労働条件に大きな違いがあるこ とが指摘され、研修内容と労働環境の標準化の重要性が指摘された。同時に日本医師会臨床研修 医支援ネットワークの紹介があった。
報告の最後に、東京都、石川県、岐阜県の勤務医会から現状報告がなされたが、いずれの医師 会もご苦労されている印象であった。特に医師会入会率で苦労されており、相も変わらず入会の メリット、デメリット論に終始しているようである。詳細は本文を参照して頂きたい。
最後に『震災における活動を通した医師の協議』のテーマで意見交換会が行われた。各県の DMAT チームから様々な意見がでたが、今回の大震災においては初動期間において情報の共有と 指揮命令系統の構築が遅れ、応援が十分にできたとは言い難い。今回の経験を今後に生かすには どうすべきか、更なる議論が必要であろうという結論であった。