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新年にあたって

宮城清美

ほくと会北部病院 宮城 清美

新年あけましておめでとうございます。いつも お世話になっております。今年がみなさまにとっ ても良い年でありますようお祈りいたします。

今年のお正月は、被災地ではどう迎えられて いるかが気になります。去年の震災は、いった いどうだったのか、津波災害について、琉大工 学部の先生の講演を聞く機会がありました。

東北は災害対策の先進県で、津波対策はすで にとられていたそうです。ところが、避難所に いて津波にあったケースと避難所からすぐに避 難して難を逃れたケースがあったそうです。

「大切なことはリスクマネジメントというこ とです。リスクマネジメントは危機管理と訳さ れることがありますが、危機のときどうするか ではありません」と講演で言っていました。

リスクの定義は、英語のrisk と完全に同じで はありません。危険という意味に加えてその確 率と度合いという意味がふくまれます。このため、自動車事故のリスクといった場合は、自動 車運転による危険の確率と程度をあらわすこと になります。これは、危険をどれぐらいの確率 でどのくらい危ないかの2 方向から考慮すると いうことです。するとリスクの確率と程度を評 価したあとリスクを処理することができるとい うのが、リスクマネジメントの考えかたです。 この理論と統計を用いて、自動車保険や交通ル ールがつくられています。

津波は、リスクとしての確率は低いのですが、 いったんおきると甚大な被害が発生します。リ スク対応として、防波堤をつくり、避難所をつ くり、防災訓練を行います。しかし、たとえ完 璧と思える津波対策をしていても、絶対安全は ありえないということに、理解が必要です。ま たリスク対策をとらないことによってリスクが 生じる場合があるということも理解が必要です。 防災訓練というのは、どういう経路で避難する かという個別の知識なので、状況が変わると適 応できないことがあります。リスクマネジメン トの考え方を知ることでリスク対応の行動が変 わるかもしれません。講演を聞いて、リスクマ ネジメントの概念は重要だと思いました。

震災は自分にとって、大きなことを教えてく れたように思います。まだまだ時間がかかると 思いますが、被災地の1 日も早い復興を期待し たいと思います。