(医)安立医院 小林 竜司
新年明けましておめでとうございます。今年 が年男ということで沖縄県医師会から新春干支 随筆の依頼がありました。近況や仕事の話につ いて書いていきたいと思います。
私は平成3 年3 月に自治医科大学を卒業後、 県立中部病院で2 年間の初期研修を受け、離島 の診療所、県立中部病院に勤務しました。中部 病院時代に腎臓内科を専攻し、腎臓病、糖尿病、 膠原病を学びました。そして日本腎臓学会専門 医、日本透析医学会専門医を修得しました。
平成15 年5 月に現在の職場である安立医院へ 赴任しました。クリニックで人工透析を中心と した医療を行いたいと思ったからです。安立医 院は沖縄県の中部地区、沖縄市山内にあり、入 院19 床、透析57 床です。外来、入院患者さん を合わせて約160 名(平成23 年10 月現在)の 患者が人工透析を受けています。個人のクリニ ックとしては大規模な施設です。私の仕事は透 析外来の回診が主ですが、その他、入院患者の 回診、一般外来の診察などあり結構忙しいです。
外来の診療は腎臓病、高血圧、高脂血症、糖 尿病の他に膠原病の患者さんも診ています。膠 原病はリウマチやSLE の患者さんが主です。 少人数ですがリウマチの患者さんに生物学的製 剤を使用しています。
透析外来では午前の透析患者さんが55 名前 後、夜間が25 名前後で1 日約80 名の患者さん を診察します。高齢化により重症の患者さんが 増えているように思います。合併症としてはシ ャント不全、心不全、電解質異常(高カリウム 血症など)、脳卒中、消化管出血、感染症など がみられます。最近の傾向として虚血性心疾患 や弁膜症、不整脈などの循環器疾患が増加し、 心臓カテーテル検査を受ける患者さんが増加し ています。
次に透析医療に関わっていて、医療の進歩を感じたことを幾つか書きたいと思います。
まず高血圧の治療に関してですが、昔は5 〜 6 剤併用しても患者さんの血圧が下がらなくて 頭を抱えていました。最近ではアンギオテンシ ン受容体拮抗薬や長期作用型のカルシウム拮抗 薬など強力な降圧剤が出て、2 〜 3 剤併用程度 で血圧のコントロールが可能となっています。
腎性貧血の治療では、週3 回投与のエリスロ ポエチン製剤が主流でした。最近、週1 回投与 のダルベポエチン、月1 回投与のエポエチンベ ータなどが市販されました。使用してみると長 期作用型が使い易く感じます。エリスロポエチ ン製剤は包括化されていることもあり、貧血の コントロールは重要です。今後、使用方法を研 究していきたいと思います。
長期間透析を受けていると副甲状腺機ホルモ ンの上昇がみられ、二次性副甲状腺機能亢進症 を発症します。最終的には副甲状腺切除術が必 要となり、手術を嫌がる患者さんが多く困って いました。治療としてはビタミンD 製剤の静注 や内服が主流でしたが、2 年ほど前にシネカル セトという内服薬が市販されました。副甲状腺 のカルシウム受容体に直接作用する薬です。当 初は内服薬では全く効果がないのではないかと 思っていました。しかし投薬してみると副甲状 腺ホルモンの値が劇的に下がります。当院では 副甲状腺切除術を受ける患者さんが年間10 例 近くいましたが、この薬を投与してから、ほと んどいなくなりました。最近、最も驚かされた 薬です。
医療は日々進歩していて幾つになっても勉強 していかなければならないと思います。早いも ので今年4 度目の干支を迎えます。正直な所、 日々の仕事で忙しく今まで年齢や干支など自分 では考えたこともありませんでした。いつまで も気持ちだけは若いつもりですが、最近は体力 の衰えを感じます。次の干支までの間、健康に は十分に注意して頑張っていきたいと思います。