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うちの鬼嫁

今井千春

今井内科医院 今井 千春

新年あけましておめでとうございます。中城 村で内科医院を開業しています今井千春と申し ます。開業してからというもの、勤務医時代と はうって変わって時間をもて余しており、毎月 送られてくる内科学会雑誌等も隅から隅まで眼 を通すようになりました。県医師会雑誌の中で は大勢の先生が執筆される新春干支随筆も楽し みの一つです。36 歳、48 歳、60 歳、72 歳、 84 歳の先生方の随筆は各年代ごとに特徴があ ります。仕事に燃える30 代、今までを振り返 りこれからの抱負を語る40 代、まだまだ元気 な60 代、豊かな人生経験を語る70 代、雲の上 の存在?の80 代と各世代で内容が異なり興味 深いです。

この12 干支の12 年間隔というところが絶妙 なところで自分の人生を振り返って見ると、12 年後の自分の姿というものは全く予測できませ んでした。24 歳の研修医の自分は早く一人前 の臨床医となることが大切で、12 年後の自分 に子供が二人いて外国で暮らしているとは想像 できませんでした。次の年男の36 歳では米国 でネズミを相手に実験を行っていましたが、そ の12 年後自分が開業しているとはこれまた予 想だにしませんでした。果たして次の辰年の60 歳、自分は何をしているのでしょうか?

60 歳の自分を(予後)予測する上で、嫁さ んの存在というものが非常に重要かと思われま す。米国で1921 年から1,528 人の10 歳の男女 を生涯に渡り追跡調査したThe Longevity Project によると、一度結婚した男性が妻と別 れると劇的に平均余命が悪化するそうです(ち なみに女性は夫と別れても全く予後には影響し ないそうです)。

自分にとって30 代の米国生活は楽しい思い 出で一杯でしたが、体重が20kg 増加した悲劇 の時代でもありました。当時米国は食料品の値 段はべらぼうに安く、ビールは日本の1/3 の値 段で思う存分飲みました。コカコーラは水代わ りで、バケツくらいの容器に入ったハーゲンダ ッツアイスクリームもよく買いました。帰国後 に健康診断を受けたところ、腹囲は増大し尿酸 値が高くHDL-C 値も低いことが判明しまし た。この結果に妻は驚愕し変わりました。大好 きなビールは週5 回に制限され、休止状態であ った剣道も復活させられました。その甲斐もあ り無事体重は元に戻りました。日常診療で独身 男性の生活指導の困難さを経験するにつけ、し みじみと妻の強制力は偉大だと感じています。

開業後の現在も摂生の日々は続いています。 朝は自宅から職場まで妻と一緒に歩いて通い、 医院では看護師長兼事務長兼院長夫人として診 察室の隣に鎮座しています。妻の機嫌を損ねる と業務にも重大な支障をきたします。こちらが 何か口答えしようものなら「もう、医院に行か ないよ」と恫喝します。妻の持つ横のネットワ ークも強大で太刀打ちできません。妻はいかに 自分が働き者かを力説します。朝は5 時半に起 きて4 人分の弁当を作り、卸業者からはタフネゴシエーターと恐れられている姿を見ると、そ れはもっともなのかなと思えてきます。

それでは最後に最近妻が仕入れてきた家庭円 満の三つの秘訣をご紹介して新年の随筆を終え たいと思います。この秘訣の効果につきまして は、60 歳での新春干支随筆で結果をご報告し たいと思います。それでは今年もよろしくお願 いいたします。

#1 妻にお願いされたら間髪を入れず「はい」
#2 妻が嬉しそうに話している時は、内容を聞いていなくても大きく頷き「へえ〜」
#3 妻に文句を言われたら、例えそれが理不尽で納得できなくても「わかりました」