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辰いろいろ

辺土名仁

みどり耳鼻咽喉科 辺土名 仁

今年の干支は辰。私も還暦を迎え老人の仲間 入りなどと揶揄されるが、当方はいたって平気 である。まだ心身共に若いつもりなので、これ からも頑張れそうである。干支にちなんでいろ いろな辰について述べてみたい。

干支。私が辰年を意識したのは幼稚園生の頃 であった。「あの人は寅の人だから何歳」など と干支で年を数えていたお年寄りが、「あんた は辰だよ」と教えてくれた。その時私は「僕一 人が辰なのだ」と思い込んだ。幼稚園で同級生 の仲程一博君(八重山で奇しくも耳鼻科を開業 中)に「僕は辰だよ。君は何なの?」と質問し たら、返ってきた言葉が「僕も辰だよ」であっ た。辰は一人しかいないはずだが、なぜ彼も辰 なのだろう?家に帰って母に尋ね、その時初め て干支について教えられた。50 数年前の話だ が、今だに覚えている干支の事始めである。

タツノオトシゴ。中学生の頃、与那原の浜で タツノオトシゴを見つけた。背びれを懸命に揺 らして立ったように泳いでいて、その姿はまさ に“竜”であったが、動きはにぶくて簡単に捕 まえることができた。エビやヒトデの仲間に間 違われることもあるようだが、エラもヒレもあ り、れっきとした魚類である。トゲウオ目タツ ノオトシゴ属(Hippocampus)で海馬の別名も あり、英語ではsea horse と言う。最近注目を 浴びている大脳辺縁系の“海馬”も同じスペル で、形態が類似することから医学的にも同名が 付けられている。

たつみ会。与那原中学校時代の同級生15 名 が集う模合の会である。高校卒業時に結成され たので、かれこれ40 年余になる。新聞に“ザ・ モアイ”という記事が載るが、それらに決して 引けをとらないロング模合である。町内の居酒 屋で毎月1 回集まるが、心は全員中学生に戻る。 職業はさまざまで、飛び交う会話は方言が多 い。方言しか話さないメンバーがいるが、「君も たまには共通語を話してみー」とからかわれる。 現役校長が品のない方言を使うと「おまえはほ んとに校長やるばー?」などと非難を浴びてい る。遠慮のない実に楽しい会である。

燃えよドラゴン。言わずと知れたブルース・ リー主演のカンフー映画で、私が大学生の頃に 一世を風靡した。映画が終わって出てくる観客 の足取りが、彼のステップに似てくるという面 白い現象もあった。彼の他の作品を本八幡駅や 亀戸駅前の映画館へよく観に行ったものだ。後 年、私が最初に手に入れたDVD もこの作品で ある。

龍馬。福山雅治主演のNHK 大河ドラマ“龍 馬伝”は実に面白かった。福田靖原作で、司馬 遼太郎の作品に比べて歯切れがよく、龍馬の人 柄のよさと大胆さがよく表現されていた。昨年 夏、福山雅治が与那原の東浜(あがりはま)で コンサートを開いた。我が家の2 階からカクテ ル光線が眺められ、遠くで音楽が響いていた。 2 日間で3 万人の観客が集まったが、その内2 万人は本土からの追っかけファンだったと聞い てびっくりした。

テンペスト。池上永一原作の小説と同名の NHK ドラマである。女性主人公の“孫寧温” が琉球王朝末期に活躍する作品であるが、首里 城正殿に刻まれた“竜”が彼女に乗り移るので ある。琉球、薩摩、清国、西洋列強の国々が織 りなす壮大なロマン劇である。文章表現がやや オーバーで、史実と異なる点があるとの批判も あるが、エンターテイメントとしては面白い。 ある日の喫茶店での隣のおばさん達の話。「私 はねテンペストの筋そのものはどうでもいいの。 テレビに出てくる一流の琉球衣装が気に入って いるの。」とらえ方は様々だと気付かされた。

辰のいろいろを思いつくままに書き連ねた が、2012 年が穏やかで平和な1 年であること を切に願っている。