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在宅医療への取り組みから老化を思う

仲間清太郎

浦西医院 仲間 清太郎

このたびの東日本大震災により被災された皆 様に心よりお見舞い申し上げます。被災地の一 刻も早い復興をお祈り申し上げます。

十二支でいうと、今年は辰年。「辰」にてへ んをつけると「振」・・振動の振。「揺れ動く」 「変化の年」「活気を取り戻す」「モノより心の 重視」といろいろある。

私も還暦を目前にして思いはせてみた。

気持ちは三十代だが、時は否応なしに過ぎて いき「老」への突入を突きつけられる。体力の 衰えも時折感じさせられるこの頃である。

ここらで一度心をリセットし、折れそうで折 れない心を持ってこれからの人生を過ごしたい ものである。

思えば開業して十八年が過ぎた。医療を取り 巻く社会の変貌も著しく、高齢化もまたたくま に進み、今や外来の患者さんは老人の集団とも いえる。私もその一人と言えようか?

在宅支援診療所を始めて3 年が経過した。特 別養護老人ホームから締め出しにより、宅老 所・有料老人ホーム・高齢者専用賃貸住宅など 家族でケアできない老人が多数さまよっている 現状である。それも限られた老人しか入所でき ないのが実情である。

二週間に一度の訪問で月に2 度診療をさせて 頂くのであるが、老人の病状は安定しているか と思うやいきなり急変することが多く、迅速な 対応を迫られることが多い。24 時間対応ということもあり、なかなか気が抜けない。出張やゴ ルフの時もコールされることもしばしばある。

しかし、老化、自分で自分のことがままなら ない・・これは自然のなりゆきでもある。動け なくなることは罪なのか?いや、そうであるは ずがない。これは誰もが辿る可能性を否定でき ない道でもある。

だとすれば、クリニックの主治医たる私がな すべきことは、最後まで患者さんと可能なかぎ りおつきあいすることではなかろうか?

私の母も92 歳の老人であり、宮古で他人の 世話を受けている。家族介護が充足されない場 合、人様の力を拝借できることはありがたく感 謝せねばならない。そういう私もいつかは自分 がままならない時がやってこよう。

いつしか人様の世話にならざるを得ない時の 為に、今は一生懸命患者さんの診療に心を尽く して行こうと思う。

翻って、いや、まだ私は老人ではない。初老 といえども「老」は認めたくないのが本音でもあ る。まだできること、やりたいこと、いろいろあ る。まだまだ若者に負けてはいられない。心をリ セットすれば新しい自分の道が見えてくるはず。 これからの自分に期待したいものである。