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今年の抱負

神谷義雅

那覇市立病院耳鼻咽喉科 神谷 義雅

皆様明けましておめでとうございます。この 言葉がお互いにいいあえる家族がいる方、知 人、友人がいる方は、去年の3 月11 日に発生 した東日本大震災にて被災されました方々を思 うと例年になく改めてこの幸せが実感できるの ではないでしょうか。また被災者へのお見舞い と、1 日も早い復旧復興を願うとともに微力な がらも援助したいと思う年明けです。去年当科 にも被災地から遠く離れた沖縄県へ避難した家 族が受診しました。この中で3 歳の長男がハン ト症候群(皮疹の無いハント症候群)に罹患し 入院しました。幸い治癒しましたが、3 歳であ ってもやはり社会の大きな変化にそれなりのス トレスを感じていたのでしょう。病気は自分の 家族、特に子供が患者になることは家庭内がい っそう重苦しい雰囲気に包まれてしまいます。 しかし、これが治癒した時の喜びは何事にも代 えがたいものです。私の息子(次男)も先天性 側わん症にて一昨年(平成22 年)8 月に東京 の慶応病院で手術を受けました。約2 ヵ月間の 入院生活でした。東京には親戚もなく中学2 年 生のほぼ一人での闘病生活でした。出生時から の疾患が改善した時の喜びは言葉で表せないく らい嬉しいものでした。そしてそのことは普段 診療している時と違って自分が患者側の立場に なると見えてくるものです。医師のひと言一言 が患者さんの家族の希望にも大きな影響を及ぼ すことを実感しました。改めて自分自身の普段 の診療への姿勢を振り返るきっかけになりまし た。私の出た那覇高校24 期生の卒業後の集ま りはのらりくらり会です。自分を含め同級生を みていると目標に向かってまっしぐらではない ですが、ひたすらあきらめずにやりくりして達 成していく性格が特徴と言えます。私は高校卒業後から医師になるまで何年か遅れて医師にな りましたが、この時も結局はあきらめずにきた ことがよかったと思っています。この時の経験 が今も目標に対する考え方が生かされているか らです。

医師の卒後研修制度も始まっています。去年 当院においても初代の研修生が10 年経たこと からその10 年を振り返るということでシンポ ジウムが初めて行われました。その席での彼ら の発表を通しての10 年間の成長には目を見張 るものがありました。振り返って自分のこの10 年間が日々成長してきたか、自分の置かれてい る立場から社会に貢献できているか、自問自答 の日々です。

今年の干支は辰年です。還暦の年です。半世 紀のさらに10 年超えて生きてきたことになりま す。そうして今徐々に分かってきたことですが、 (普通の方からするとちょっと遅すぎるといわれ るかもしれませんが)いつの時代も物事は自分 自身で少しずつでもよくしなければ何も変わら ないということです。でも決して欲張らずに大 きな変化のみ追求することなく目標を一歩でも 進捗していこうと思っています。今行っている 研究、聴覚、平衡覚のモルモットを使った実験 においてもそう考えています。いまだに大いな る成果が導き出せないまま何年にも渡っている 研究ですが、一生懸命今年も地道に取り組んで 形として分かるような結果を出したいと思って います。ひとつでも病気が解明されていって患 者さんの健康につながればこのような長年かけ てきた苦労も吹き飛んでしまうでしょう。

社会の医師への期待とその責務が厳しく問わ れている現代ですが、患者さんの治療に諦める ことなく、真摯に対応することを念頭に置いて 治療していきたいと思います。そして最後に会 員の皆様が今年もそれぞれ健康で患者さんへの 治療に当たられ充実した1 年を過ごされること をお祈りします。