那覇市立病院
集中治療科、麻酔科 伊波 寛
毎年、沖縄県医師会報の新年号で、“干支に 因んで”の特集があり、諸先輩方のお話を拝見 させて頂いている。いろいろ感銘を受けるお話 が多くある。今年は私にその依頼が来た。私は 今年、還暦、“還暦に因んで”を考えなければ ならなくなった。
今年、高校の同期会で“還暦の集い”が予定 されている。やはり皆、“還暦”に一目置いて いるようだ。“還暦”、人生50 年の時代には長 生きで、めでたくお祝い事であったかもしれな いが、人生80 年の今の時代にはまだ“若造”であろう。しかし、少し前までは“これ位では 疲れなかったのに”とか、“これ位の酒では二 日酔いはしなかったのに”とか徐々に体力の衰 えを感じつつも知らんふりをし、物忘れが進行 し知力の衰えを自覚しつつも、まだ大丈夫と人 事のように思っていたのが、“うーん、60 年も 生きてきたのか”と実感するのが“還暦”とい う言葉なのかもしれない。ここ数年、同級生も 何人か亡くなり、年齢を感じずにはいられない 出来事も出てきた。大学のクラス会も当初“10 年毎に集まろう”であったのが、5 年毎になり、 卒後30 年を超えてからは2 年毎となった。や はり年齢を気にしてのことだ。
現在、少し夜更かしをすれば翌日に響き、少 し飲みすぎれば二日酔い、ちょっと前の事を覚 えていないのは当たり前、60 肩で右肩の動き がままならない自分を見つめ直すのも“還暦” なのかもしれない。“体力の衰えは気力でカバ ーする”という言葉をよく耳にし、自分自身も そう思うがその気力もやはり年とともに衰えて いく。体力の衰えを少しでもカバーしようと、 30 年ぶりに再開した空手の稽古も、気力がな く長続きしない。体力が衰え、気力も失っては 本当に老年になってしまう。
後ろ向きの話ばかりになってしまったが、 “体力の衰えを、気力でカバーする”ためには、 気力を奮い立たせる“意義”すなわち目標を立 てることが必要になってくるのではないか。 “何時まで働くか”−とりあえず定年(65 歳) までは働こう−という目標を立てる。加えて、 働けるうちは今までやって来た事を継続努力す る、麻酔科の発展、麻酔科医の充足、集中治療 医学の発展・充実、集中治療医の充足はどちら も道半ばではあるが、働ける間はこの目標を持 ち続けて生きたい。“何時まで働けるか”、それ は神のみぞ知る。しかし、医師として働く以 上、患者さんやスタッフに迷惑をかけずに働け るように努力することも当然必要である。
“定年までは目標を立てて頑張ろう”というこ とをあらためて考えるのが、還暦の年頭である。