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第125回日本医師会臨時代議員会

真栄田篤彦

常任理事 真栄田 篤彦

平成23 年10 月23 日(日)、日本医師会館に おいて標記代議員会が開催されたので、その概 要を報告する。

定刻になり石川議長から開会、挨拶が述べら れた後、受付された出席代議員の確認が行わ れ、定数357 名中、出席350 名、欠席7 名で過 半数以上の出席により、会の成立が確認され た。その後引き続き、石川議長より議事録署名 人として、佐藤充男議員(島根県)、野中博議 員(東京都)が指名され、代議員会議事運営委 員8 名の紹介があり、議事が進行された。

原中会長挨拶

概ね以下のとおり挨拶が述べられた。

3 月11 日に発生した東日本大震災に関して JMAT が見事に機能したことについては心から 感謝申し上げたい。JMAT は7 月15 日をもっ て終了し、総計6,000 名以上のドクター、看護 師、事務職の方々が派遣された。

現在はJMAT Uを立ち上げて、被災地の診 療支援、心のケア、乳幼児の健康問題、予防接 種、小児と女性に対する配慮、生活環境におけ る衛生問題等、健康な生活ができるよう医療活 動をしているところである。

一方、今回の大震災に当たって4 月22 日に 政府の被災者生活支援特別対策本部の要請によ り被災者健康支援連絡協議会を立ち上げた。こ の組織には全ての医療職団体が参加し、オブザ ーバーとして関係省庁から、厚労省、総務省、 内閣府、文部科学省などが同席され、頻回に会 合を行った。これからもチーム医療を現地で邁 進させて被災生活が終息するまで支援する事を 目的としている。

○義援金について

約18 億8,000 万円集まって、被災者のため に医療活動ができるよう岩手県医師会、宮城県 医師会、福島県医師会、茨城県医師会、千葉県 医師会へ16 億円送った。残りはこれから有効に使って頂くべく検討している。

7 月27 日総理官邸に赴き、日本医師会は政 府与党と常に国民を守るという姿勢でボランテ ィアで行っている状況を申し上げた。翌日官房 長官に対しても具体的な支援、特に緊急を要す るような支援に対してはいち早く対応してほし いと申し上げた。

○診療報酬改定について

5 月19 日、当時の細川厚労大臣に対して、 下記のことについて配慮してほしいと述べた。

1)前回の改定で入院・外来の差別がひどかった。
2)地域医療支援病院の承認要件の見直し。
3)大都市には慢性疾患の病院が無くなってしまった。
4)有床診療所をもう一度立ち上げてほしい。
5)診療科の偏在と共に地域医療の偏在がますます顕在化して大きな問題になってくると予想される事から配慮してほしい。

9 月27 日、財務省の幹部が今度の同時改定 の意向を聞くため、日医を訪れたので下記の要 望をした。

1)医療費の自然増の2,200 億円はそのまま容認して欲しい。
2)ネットによるプラス改定をして欲しい。
3)入院・外来の配分を予め決めない。

現政権と医療政策についてのスタンスとし て、これからの日医は政権与党と共に国民の安 心安全のもとになる医療保険、介護保険の内容 が悪くならないように努力し、そのために与党 の方針を私たちがバックアップして一緒にやっ ていきたいと思っている。

問題は今回の社会保障・税一体改革における 受診時定額負担である。今回、日本医師会がは じめて保険者の一元化を提案した。100 万人以 上が医療保険未加入で、20 %以上の保険料未 納者がいる。また、国民健康保険の方が組合健 保、共済健保に比する負担額は10 倍以上も高 い所も出ている。100 万円の収入で年間14 万円 の保険料を納めるというのは無理な話である。

私たち目の前にいる患者さんが同じように医 療を受けるというのが第一であって、その裏付 けに医療となるものを提案していかないといけ ない。まだ、民主党が消費税アップの話をする 前に日医は消費税を上げなければ日本の医療費 は持たないと明言した。今後、高齢者社会の中 でこどもの数は減少し、果たして我々が国民医 療、社会保障を守れるかと考えたときに、政府 与党に重大な問題として提言し、私たちは、生 命倫理に基づいた医療のあり方を中心として国 民皆保険を崩すことなく行動していきたい。

○ TPP について

何の条件も付けないでこのままTPP に参加 すれば国民皆保険は崩れていくだろうと考え る。先日官房長官が医療は別問題にすると発表 があった。隣の韓国が2 国間協定でアメリカと の問題が明らかになっているが、韓国と日本は 元々、国民皆保険の条件が違うと言うこともあ って、日本に100 %参考になるとは思えない が、国民を守ると言う姿勢は最終的にどんな政 府与党であっても理解してもらいたい。

○中医協の問題について

中医協発足以来、医療者の代表は6 人とも日 本医師会の推薦によって行われてきた。所が歯 科医師会の不詳事後、5 人に減らされて更に次 年度には見直しの学識有識の会が開かれ、5 人 のうち2 人は病院関係から出すことが決定され た。病院協会、法人協会は元々日本医師会が法 人格を持たせて、おのおの将来のことを考えて 機能を高めるために作った団体が、いつの間に か医療費削減のための用具として使われてい る。病院が病院団体を担うもの、診療所は医師 会という分け方がされた。しかし、考えてみる と全国9,000 件あまりの病院のうち、その病院 長が所属しているのは日本医師会であって、9 割以上が加盟している。勤務医は病院協会を始 め4 病協会の中には一人もいない。医師会員16 万人以上の会員の半数以上が勤務医である。そ の中で私たちが厚労省の掲げている問題を一緒 に考える民間団体の中核にいる団体だと自負し ている。自民党政権の時の尾辻厚労大臣は医療 の中心は日本医師会なので、推薦は日医にする と明言していたが、民主党政権が出てきたときに一人の医系議員が全く破ってしまった。

予防接種や感染症、防災の問題、空気の問 題、不登校、自殺防止の問題、今抱えている国 の医療関係の問題は医師会が中心として行って いることを少しでも今の民主党議員に知って貰 いたいと努力をしている。民間議員が大臣や国 会議員以上の職務を持ち、新自由主義がまかり 通っていた最後の自民党政権から、国民を守る ために政権交代が必要だったとし、あの時は政 権交代するしかこの国を救う道はないとの考え で、後期高齢者医療制度などに真っ向から反対 した。民主党政権発足後の政策については、折 角、ものから人へと変わっており、今後とも一 緒に考えながら歩んで行きたいと思っている。 先生方から意見を聞きながら医師としての医療 原理、生命倫理を貴重とした医師会活動を続け ていきたいのでご指導お願いしたい。

会務報告、議事、代表質問・個人質問

原中会長の挨拶に引き続き、横倉副会長から 前々代議員会で会務報告の資料が何もないとの 指摘を受けたので項目だけ添付したとの説明が あり、それに準じて平成23 年4 月以降から現在 までの会務報告が行われた後、議事に移った。

議事は、次の3 議案が提示された。

第1号議案 平成22年度日本医師会決算の件
第2号議案 日本医師会定款施行細則一部改正の件
第3号議案 日本医師会代議員会議事規則一部改正の件

第1号議案については、

1)羽生田副会長より新しい公益法人会計の採用 に伴い決算報告書の様式を変更し、従来の決 算報告書は内部管理資料として引き続き作成 していると前置きがあり、議案書に基づいて 決算の説明が行われた。
2)議長より第1 号議案の審議に付託する財務委 員14 名の紹介が行われた。
3)三宅直樹財務委員長より、本日の代議員会に 先立って前日(10/22)開催した財務委員会 について、慎重に細部まで審議した結果、出 席者14 名全員が適正と認め、提案どおり承 認決定した旨の報告があった。
(九州ブロック財務委員:松田峻一良、横須賀巌)
4)三宅直樹財務委員長の報告を受け、第1 号議案表決を行った結果、賛成挙手多数で承認可決した。

引き続き、羽生田副会長より第2 号議案の日 本医師会定款施行細則一部改正の件と第3 号議 案の日本医師会代議員会議事規則一部改正の件 は関連議案のため、一括して提案理由の説明が あった。

定款施行細則改正は、代議員以外の会員を以 て組織する会長選挙制度の選挙管理委員会の設 置などに伴う規則の一部改正についてであり、 これまで会長選挙の当選者は有効投票総数3 分 の1 以上の得票としていたが、2 分の1 以上の 得票を得ることを条件とする。2 分の1 以上の 得票を得た候補者がいない場合には、有効投票 数上位の2 人を候補者とし、再度、会長選を行 うこととした。選挙管理委員会は各ブロックか ら選出される13 名で組織し、委員の任期は2 年である旨の説明があった。第2 号議案、第3 号議案は一括して審議が行われ、表決を行った 結果、挙手多数により承認可決された。

その後、ブロック代表質問(8 件)及び個人 質問(16 件)について質疑が行われ、受診時 定額負担の導入やTPP への参加など国民皆保 険制度の崩壊へ繋がる政策について危機感を示 す意見が相次いだ。

受診時定額負担の導入について

原中会長は、受診時定額負担について、国民 皆保険は国民全体の連帯で営むもの。老人や疾 病を持った人からさらに徴収することは反対す るとし、署名活動などの反対運動で、きちんと 対応してもらうよう強烈にアピールしていきた いと述べた。

羽生田副会長は、公的保険制度は公平な負担により、年齢、地域、所得に違いがあっても、 受ける医療に格差が生じないというのが根幹。 導入後、負担額が上がっていくことは厚労省の 今までのやり方で実証済であり、受診控えによ る重篤化も懸念されると述べ、12 月9 日に国民 医療推進協議会に参加する団体の一致団結した 行動として「日本の医療を守るための総決起大 会」を開催することとしており、反対署名活動 と併せて、国民運動として反対運動を大きなも のにしていきたいと述べた。

高杉常任理事は、高額療養費の負担軽減策と して受診時定額負担を提案しているが、財源は 保険料や公費に求めるべきである。日医は受診 時定額負担には断固反対し、さらに現在の一部 負担割合の引き下げも求めると述べた。

TPP 交渉参加について

原中会長は、TPP には強い姿勢で反対すべ きとした質問に対し、参加するなら譲れない点 を示すべき、そもそも医療保険が含まれなけれ ば米国には魅力がないはずと述べ、根本的に反 対するとの見解を示した。

今村定臣常任理事は、TPP へ参加すること で国民皆保険制度が崩壊しかねないと強い懸念 を抱いている。TPP は例外のない貿易自由化 を目指しており、日本の公的医療は、営利目的 の市場競争にさらされることになる。政府は 「現時点では混合診療の全面解禁や、株式会社 参入はTPP の議論になっていない」と言って いるが、今後も議論にならない保証は全くな い。本年2 月の「日米経済協調対話」の中で、 米国の関心事項として、医療のIT 化、医薬 品・医療機器の価格決定の見直し、米国企業の 血液製剤の使用拡大などを挙げている。日医 は、政府が国民に将来にわたって安全と安心を 保障しない限り、TPP への参加は断固反対す ると述べた。

又、会場内の代議員から、TPP の問題は受 診時定額負担より大きな問題であり、TPP に 関しても署名活動をすべきとの意見があった。

診療報酬の同時改定について

葉梨常任理事は、被災地は通常の医療提供体制ではなく、地域の実状把握が困難であり、診 療報酬改定の基準となる「医療経済実態調査」 に正確な実情が反映されないと判断、また、国 の財政支出は医療費も含めて被災地への対応・ 手当てが最優先という現状から、日医は「当面 全面改定は延期すべき」と提案した。しかし、 地域医療を担う立場から、「通常診療に支障を 来す不合理な診療報酬項目は速やかに改善すべ き」と要望を併記したと説明。中川常任理事 は、政府は、大震災の復興財源確保という錦の 御旗を掲げ、あらゆる分野で歳出削減圧力を強 めてくること、財務省主導は自公政権時よりも 強まっていること、震災復興、財政再建を大義 名分に社会保障費の国庫負担2,200 億円削減の 実質的な復活も視野に入れ、強硬に診療報酬本 体の引き下げ圧力をかけてくることを指摘、今 回の同時全面改定見送りの要請は決して苦肉の 策ではなく、冷静な情勢分析を行った上での判 断であるので理解して欲しいと述べた。また、 部分改定について、診療所、中小病院にかかる 診療報酬上の不合理点を重点的に是正すること を基本方針とするとの見解を示した。

消費税について

今村聡常任理事は、全ての医療機関が本来支 払う必要のない税額は2,000 億円を超えると試 算している。現在の制度のまま税率が上がるこ とは、地域医療の崩壊につながる。関係する国 会議員もこの問題の重要性は十分認識してお り、現在のままで税率を上げることはないとい う認識である。一般国民への理解、啓発も大変 重要という認識で、8 月にセミナーを開催した。 1,800 人を超える参加者があり、ゼロ税率を強 く日医も主張しているが、非常に大きな反響が あった。また多くの会員も、勤務医を含めてま だ十分この問題に理解をいただけているわけで はない。会員に対しても一層の情報提供をして いきたいと述べた。

個別指導について

鈴木常任理事は、指導・監査については、運 用の見直しで対応できるものがあると考えてお り、厚生労働省と、都道府県医師会からの要請が多い集団的個別指導について、対象医療機関 を選定する際の類型区分を時代にマッチしたも のに改めること、集団的個別指導を医師会のピ アレビューと連携した形にできないか、集団的 個別指導後、継続して高点数だった場合の個別 指導への連動改善、類型区分のうち、在宅医療 などで高額薬剤を投与したことで高点数になり 指導になるケースについて何らかの是正ができ ないか等協議していると説明。今後は集団的個 別指導に加え、新規指定医療機関に対する個別 指導の位置付けについても改善していきたいと 述べた。

災害発生時の対応策について

石井常任理事は、被災地域の都道府県医師会 が災害対策本部の枢要な立場となり、かつ現地 のコーディネーター機能を郡市区医師会長が担 うことが、各地のニーズを的確に把握し、それ に対応するシステムにつながるものと日医は認 識している。その理念を全国に敷衍していくこ とが、全国の医療支援システムの実現につなが ると考え、厚生労働省の「災害医療等のあり方 に関する検討会」や消防審議会などの場で主張 していると述べた。

横倉副会長は、被災各県に対しては、診療報 酬支払いで一定の条件の下、概算請求支払いや 定員緩和などの手当てが行われた。介護保険制 度でも法律などで災害時の利用者負担減免や基 準緩和などを認める措置が定められているが、 さらに今回の大震災での対応を検証した上で、 災害時の対応について必要な見直しなどを行う よう求めたい。中央防災会議に新たに設置され た防災対策推進検討会議の委員に、原中日医会 長が就任することが決定した。日医が国の防災 行政に参画することで、災害発生前の体制から 収束後の地域医療再建に至るまで各段階での対 策の重要性を国に対して主張することができる と考えていると述べた。

この他、「社会医療法人の認定要件」、「地域 医療支援病院の要件」、「新公益法人制度下にお ける医師会立共同利用施設の在り方」、「看護師 不足」等について活発な質疑が交わされた。

印象記

常任理事 真栄田 篤彦

開会の会長挨拶では、原中会長から東日本大震災に対応して頂いた全国からのJMAT 医療活動 に協力への感謝があった。

次いで横倉副会長からの会務報告があった。JMAT 派遣関連しての義援金は9 月30 日現在で 18 億8,894 万1,942 円、2 回にわたり配賦しているにあたり、医療政策会議では、昨年6 月閣議 決定された「新成長戦略」で医療介護が日本の成長牽引産業として位置づけられ、医療の国際化 推進を決定したことにより、行政刷新会議の規制・制度改革に関する分科会や総合特区制度、 TPP 等において、医療の営利産業化・市場開放に向けた議論が加速しているので、「医療を営利 産業化していいのか」を会長諮問とした。

医療保険関係事項では、前回改定が大規模病院に偏在しているという不合理な診療報酬項目に ついて、診療所と中小病院を中心に対応する方針で整理を進めているとのこと。また、社会保 障・税一体改革成案に盛り込まれた「受診時定額負担」の導入には反対している。

医療安全対策に関しては、「医療事故調査制度の創設に向けた基本的提言」が答申。税制につい ては、平成24 年度税制要望として、「消費税非課税制度を仕入れ税額控除が可能な課税制度に改め、かつ、患者負担を増やさない改善にすること」、「事業税非課税措置の存続」、「いわゆる4 段 階制の存続」などを取りまとめた。

第1 号議案の、平成22 年度の決算報告があったが、治験促進センター事業特別会計では未執行 で国に返還補助金として3 億円余も計上されていた。沖縄県医師会からの治験事業の開始にあっ たって日医に予算請求したが、認められなかった理由は予算がないとのことであったので、非常 に残念な結果だと思う。

再度、予算獲得に向けて交渉をするべきと思った。

次に代表質問では、昭和36 年から国民皆保険制度が施行されてから50 年目にあたり、あらた めてその意義を考慮するよう提案があった。2025 年には高齢化で65 才以上人口比率が30 %をこ え、団塊の世代が75 才以上高齢者に到達するので、費用負担増加が懸念され、制度設計の変更検 討が必至であると思う。また、TPP にたいする反対、受診時定額負担の導入に断固反対の意見が あった。福島県からは、全国の会員の支援・援助に対して心からの感謝の言葉があった。

個人質問に関しては、地方厚生局の適時調査に関して、自主返還のあり方の見直し、複雑にな り過ぎた施設基準を簡素化することの要望があった。

TPP への参加反対に関しては個人質問でもあった。