平成23 年11 月17 日(木)、午後1 時45 分より沖縄県庁知事応接室に於いて、仲 井眞弘多知事と宮城信雄会長、玉城信光政策参与(副会長)による鼎談を開催しま したので、その内容について以下の通り掲載致します。
左より宮城信雄会長、仲井眞弘多沖縄県知事、玉城信光政策参与
○玉城政策参与 明けましておめでとうございます。
○仲井眞知事 おめでとうございます。
○玉城政策参与 この度、沖縄県医師会報の 新春号に企画いたしました仲井眞知事と宮城会 長を交えての新春鼎談ということで、ご公務の お忙しい中ご参加いただきましてありがとうご ざいます。
また、仲井眞知事には、平素より私どもの活 動分野であります県民の保健・医療・福祉行政 に関しまして、種々多大なるご尽力を賜り大変 感謝申し上げております。
それでは早速ですが、知事の今年の抱負をお 聞かせいただけますでしょうか。
○仲井眞知事 日頃から玉城先生には、県の 政策参与としてお世話になっております。ま た、宮城先生は私の後援会長であり、振興審議 会や医療審議会長もお願いしております。医療 分野のみならず、広く、産業政策的な側面も含 めてご意見をいただき、いろいろな形でお世話 になっております。
今年の抱負については、沖縄の将来のあるべ き姿を描いた「沖縄21 世紀ビジョン」の実現 に向け、各種施策に取り組み、今後の振興の道 筋を示し、未来を担う子や孫たちが夢と誇りを 持てる沖縄をつくっていくため、県政運営に全 力を尽くしたいと思います。
沖縄振興法が今年の3 月31 日までとなります ので、これからの10 年間の新たな沖縄振興のた めの法制度実現を目指し、更には、残留軍用地跡地利用促進法の期限到来に伴い延長すること になっておりますので、沖縄の基本的な法律を、 これからの10 年に向けて整えていきます。
そして、法の中身もこれまでと違い、沖縄に 自主性をかなり持たせた中身にするべく、自主 性を確保するために、民主党が提案している比 較的使い勝手の良い制度である一括交付金によ って、基本的な計画は県が作成し、国が支援す るようにしたいと思っています。新しい21 世 紀ビジョンを実現するために、沖縄側に自主性 を持たせた形で展開をしていきたいと考えてい ます。
その中には無論、医療・福祉関係が非常に大 きな柱になっておりますので、そういう意味で は大げさですが、沖縄の心持ち自主性を持った 元年になればと、こう思っているんです。
また、過重な米軍基地の負担軽減にも努め ていきたいと考えており、そのためにも、日米 共同発表の見直しや米軍基地から派生する諸 問題の解決に取り組んでいきたいと思っており ます。
また、今年は、日本復帰40 周年記念式典(5 月)、第6 回太平洋・島サミット(5 月)、沖縄 県議会議員選挙(6 月)、第32 回全国豊かな海 づくり大会(11 月)をはじめとする多くの重 要なイベントが控えており、これらの円滑な運 営にも尽力して参りたいと思っております。
○玉城政策参与 ありがとうございます。
これまでの振興計画を超えるような新しい沖 縄をつくっていきたいということで、知事の発 言がございましたが、おそらく医療分野では、 また本会も県行政と一緒に多くのことをやって いかないといけないと思います。
宮城会長、今の知事のお話を聞かれていかが でしょうか。
○宮城会長 4年前に、最初に知事が当選さ れて1 年足らずの時に、同じような対談を持ち まして、知事のざっくばらんな意見を聞かせて いただきました。その時に、医療分野は非常に 大事な分野になりますから、ぜひアドバイザー を配置していただきたいと医師会から要望し て、玉城政策参与が誕生したという経緯があり ます。
なぜそういう提案をしたかといいますと、沖 縄は、基地問題は非常に大事だということです が、ある程度方向性は見えてきております。医 療の問題に関してはまだいろいろな問題点があ るということで、ぜひ医療行政の中に医療の立 場に立った専門の方を置いていただき、県行政 に対してアドバイスができるような方を採用し ていただきたいとお願いしてやっと実現してい ただきました。ありがとうごます。
○仲井眞知事 そうでしたね。
○宮城会長 先ほど玉城政策参与が言われま したように、医師会というのはいろいろな取り 組みをしております。
まず1 つは、先ほど知事が強調されましたよ うに、平成24 年度から実施されます新振興計 画について、かつて、世界に長寿地域として世 界に名を馳せた本県が「健康長寿復活」を図 り、世界のモデル地域として地位を確立するた めの「地域活性化プラン」と、玉城参与が中心 になってつくっておりますが、医療を通じた新 成長戦略として「沖縄メディカルアイランド構 想」を提案していますので、その具体化ができ ればと考えます。
2 つ目は、昨年から具体的に取り組んでおり ます地域医療再生事業の推進です。まず、脳卒 中や糖尿病のIT 連携パス構築作業を精力的に 進め、24 年度中の試験運用を目指します。
3 つ目は、北部地域の慢性的な産婦人科医師 不足を解消すべく、県立北部病院の産婦人科医 師の確保に努めたいと思っています。
また、臨床研修医確保対策にも取り組んで行 きたいと思っています。平成16 年度の臨床研 修医制度実施以来、本県で研修を受ける医師は 全国と比べ多い方です。人口比でいうとトップ クラスにあるということですが、ここ最近減少 傾向にあることから、沖縄では3 つの研修グル ープ、大学を中心とした「RyuMIC」、民間病 院を中心にした「群星」、あと県立病院を中心 にした「県立病院群」と3 つの研修グループが連携をとり、できるだけ統一プログラムを組み ながら研修医を確保していきたいと考えており ます。
本県の安定的な医師確保の面からも、本会が 県下15 研修病院のまとめ役として、東京都や 福岡県等で開催される合同説明会等への参加企 画を行うこととしております。
4 つ目は、平成20 年12 月に施行された公益 法人制度改革にともない、私ども医師会も新法 人へ移行しなければならないことから、本会は 本年4 月1 日付で非営利型の一般社団法人へ移 行すべく、県当局のご指導を仰ぎながら進めて 参ります。
その他、会員のための諸事業も予定どおり展 開していきたいと考えております。今年の目玉 事業としては以上のようなことですね。
○玉城政策参与 宮城会長が多岐にわたって 話されましたが、やはりまず第1 番目は、沖縄 の医療を中心にした「沖縄メディカルアイラン ド構想」です。一般的には長寿復活のための地 域活性化ということと、それからもう1 つは、 重粒子線。それと、来年4 月から医療のシミュ レーターを使ったシミュレーションセンターが オープンしますので、それをさらに充実・発展 させるような計画です。
今のシミュレーターはアメリカ製が中心にな っています。それを日本の産業として沖縄を基 点にしてつくっていこうかというのが、1 つの 話です。
例えば今は内視鏡手術とか、心臓のカテーテ ル検査用のシミュレーターもありますが、ロボ ット手術用のシミュレーターがないので、それ を沖縄でつくってみようかという話や、いろい ろ高度な技術を持った話が出ていますので、医 療を中心とした産業と人材育成ができてくるの ではないかという感じがします。
このシミュレーションセンターを育てて、先 ほど会長が言われたような沖縄県の人材育成の 面を強化したい。4 月1 日に、琉大の敷地内に オープンします。研修医だけではなくて専門研 修にもなりますので、長寿復活を目指し、県医 師会も全面的に協力いたしますけれども、県に も音頭を取っていただき、新しい振興策をぜひ とも考えていただければと思います。
また、振興計画は仲井眞知事が全身全霊をか けて取り組まれている事業と存じますが、健康 医療分野で当計画に対する仲井眞知事のお考え や、今後10 年、20 年先の沖縄はどうあるべき か、お話しをお伺いしたいと思います。
○仲井眞知事 子どもからお年寄りまで、心 身ともに健康で生きがいに満ちた人生を送るこ とは、県民すべての願いであります。
そのため、21 世紀ビジョンでは、「健康・長 寿おきなわ」の維持継承を図るとともに、男女 とも「日本一の長寿県」復活に向けて、地域、 事業所、医療機関、行政等が連携し、「沖縄の 食や風土に支えられた健康づくりの推進」や 「スポーツアイランド沖縄の形成」を図ってい くこととしています。
また、県民一人ひとりが生きがいと希望を持 って生活をするためには、万国津梁の精神を受 け継ぎ、自立した経済を構築することが重要で あると考えています。
そのため、健康・医療分野においても、産学 官医の連携により、食文化や風土等の沖縄の魅 力や優位性を生かした新たな健康増進サービス の推進の他、先端医療産業、国際医療協力等の 新産業、新事業を創出していくことが必要であ ります。
これらの対策を図ることで、10 年後、20 年 後も県民が健康で生き生きと暮らせ、さらに沖縄型自立経済の中で、ゆとりと豊かさを実感で きる社会をつくっていく所存です。
その実現のために、下記の対策を図って参り たいと考えております。
【生活習慣病予防対策】
○食生活改善や運動習慣の定着を推進する。
【がん予防対策】
○がんに関する正しい情報の提供や、がん検診・生活習慣病健診の受診等を推進する。
【食育の推進】
○食の大切さや、食に関する知識と選択力等食を通じた健全な生活を促進する。
【たばこ対策】
○受動喫煙防止対策や禁煙外来の受診勧奨等を推進する。
【歯科保健対策】
○幼児期から高齢者まで歯科保健意識の向 上を図り、むし歯予防や歯周病予防を推 進する。
○玉城政策参与 ありがとうございます。
先程、宮城会長から、北部地域の産婦人科医 確保事業に取り組むとの話しがありましたが、 本県では、県立北部病院、宮古病院、八重山病 院においても産婦人科のみならず外科、脳外科 等が恒常的に医師不足の状況が続いておりま す。仲井眞知事は常々県民は離島であろうが都 市部であろうが沖縄の何処にいても同レベルの サービス、いわゆるユニバーサルサービスを提 供するという姿勢を示されておられます。県立 北部、宮古、八重山病院の医師確保について、 県行政としてどのようにお考えになっているの かお伺いしたいと存じます。
○仲井眞知事 離島医療、過疎地域も含め て、もっともっと県民が安心して暮らせるよう にというのは当たり前と言えば当たり前です し、いろいろな島々も含めてユニバーサルサー ビスの提供というのは当たり前のことだと思い ます。
言うは易くで、これはなかなか大変で、医 師をどう確保するかということは永遠の課題 に近くなっています。ただ、宮城会長もおっ しゃったようなことも含めて、いろいろなこと を頭からしっぽまでトライする必要があると 思います。
今回、県医師会が、県立北部病院の産婦人科 医師の確保について、ご検討いただいているこ とに感謝申し上げます。沖縄県は、琉球大学の 卒業医の県内定着率(55 %)も高く、全国か ら多くの研修医も集まっており、人口当たりで の医師数は、全国平均を追い越している状況に あります。まずは、今後も県内の医師数を増や すことが重要で、研修医の確保について医師会 のご協力をお願いしたいと考えています。ま た、北部や離島の県立病院においては、現在、 琉球大学や県立中部病院等からの医師派遣、県 外からの医師確保も行っているところでありますが、安定的に医師が供給できるシステムづく りを検討していくつもりです。特に、琉球大学 と連携して取り組んでいる「医師修学資金貸与 事業」では、現在、65 名の医学生等が、その 資金を貸与しており、これらの者が専門医とし て長期間、派遣される状況になると、医師確保 は、かなり推進できると考えています。離島等 の県立病院の医師確保については、今後も様々 な対策を検討することとしており、医師会のご 協力を引き続き、お願い致します。
<医師確保対策事業>
・医学臨床研修事業42 名(予算額251,388 千円)
・医師修学資金等貸与事業(予算額52,230 千円)
・医師確保対策補助事業(予算額385,820 千円)
・代診医派遣事業(予算額30,372 千円)
・自治医科大学学生派遣事業(予算額127,000 千円)
※琉球大学医学部から宮古・八重山病院への医師派遣状況
※離島県立病院に医師派遣を行なっている民間病院(2 施設)
新たな沖縄振興計画の医療の部分では、もっ ともっと沖縄型に使いやすい仕組みを自ら考え ており、その予算を今度はある程度は確保でき ると思います。
ですから、島々で医療も介護も教育も、それ から一部の産業もごみ処理に至るまで、1 つの 島があるレベルでの生活がきちっとやっていけ るような形、医師の確保も含めて、理想的には そういうものをつくるため、どちらにも総合的 に使えるような予算として、自由度の高い一括 交付金の創設を求めているのです。我々は今国 とやりとりしていますが、国には、決まった法 律に従って実施してきた100 年の歴史があるも のですから、なかなか自由度の高いつくり方と いうのは彼ら自身がまだよくわからない。我々 もお互いに設計をしながらやっていきます。
しかし、実際はそういう方向にあることは確 かですから、沖縄みたいな離島地域、過疎、遠 地があるところに、国の予算でもっともっと使 い勝手のいい配分をすべきではないかというこ と、これが筋だと僕は思っているんです。12 月 の半ば過ぎるとおおよそ目途がついてくると思 いますから、是非沖縄県医師会の先生方には、 いろいろなものが湧き上がってきておられるは ずですから、遠慮なく提言してください。よろ しくお願いします。
○玉城政策参与 只今の知事のお話しについて、宮城会長如何でしょうか。
○宮城会長 そうですね。特に地域の医療、 離島を含めて県立病院もそうですけれども、 医療を守るというのは、これは1 つの勢力だけ ではできないですよ。医療に従事する人たちが 力を合せない限りは、これは絶対に解決でき ないです。これまで県立病院が一生懸命支え てきたんですけれども、今はそれだけでは支え られない。そういう意味では、大学、医師会 も含めて、全医療人が沖縄の医療をどうする かという観点で立ち向かっていかないと解決で きないということです。
県医師会はできるだけ指導性を発揮して、大 学、県立、民間を含めた形での医療提供体制を つくっていこうと考えております。そのため に、全面的に協力したいと思います。医師確保 という点で、離島の医師を含めてそういうこと をやっていきたいと。これはもう全員で力を合せない限りは、決して解決できないです。先ほ ど永遠の課題と知事が話されたんですけれど も、それに近いですので、全体で取り組まない と解決はできないと思っております。今はそう いう傾向で全部でやっていこうという流れがで てきていますので、それをぜひもっとそういう 方向に持っていきたいと考えています。
○玉城政策参与 今の研修医を育てるという こと、そして専門の医師を育てるということで、 先ほどからずっとお話に出ているシミュレーシ ョンセンターが4 月にオープンします。本会主 催の新臨床研修医激励会の翌々日の日曜日に、 朝9 時前から6 時まで研修をみんなでやろうと いう非常におもしろい計画を立てています。
今の若いドクターはゲームに慣れているもの ですから、シミュレーターは大好きみたいなん です。
シミュレーターで何ができるかというと、明 日現場に出ても採血がすぐできるように、注射 の練習を徹底してさせる。それから高度なもの として、もう少し医師としての経験を積むと、 腹腔鏡という高度な手術もできる、練習器もあ るよというのを見せてあげようという話もして います。知事も時間が合えばぜひともお越しい ただきたいと思います。
○仲井眞知事 例えば先生方の時代は注射と いうのはどうやって練習したんですか。
○玉城政策参与 いきなり人体、患者さんにです。
○仲井眞知事 それは医学部の何年かでやるんですか。
○玉城政策参与 卒業したらすぐです。昔は 国家試験を通る前にインターンがありましたが 現在はないので卒業後になります。
○仲井眞知事 卒業するまではやらないんで すか。
○玉城政策参与 今はそういうこともできま せん。本当に免許を持ってからになります。
○仲井眞知事 そうすると、シミュレーター は必要になりますね。
○玉城政策参与 非常によいものです。人材 育成ができないと離島に人を配置することもで きないものですから、ぜひともシミュレーター をご覧いただきたいと思います。
後ほど、離島に派遣されている医師が知事に ご挨拶したいということで集まっているようで す。彼らが担っている責務というのもたくさん ありますし、そういう人たちが安心してできる というのが、これからの医療全体のバックアッ プにもなると思います。
続いて、県立病院に関する話しになります が、県立病院の問題につきましては、県行政の 重要課題の一つであると考えております。現 在、病院事業局をはじめ各県立病院で取り組ん でいる経営健全化3 年計画が3 月をもって終了 します。地域の中核病院である県立病院の果た すべき役割を考える時、県民はもとより私ども 医療関係者も、更なる充実発展を望むものであ りますが、経営の安定なくして医療提供の充 実・発展は困難と考えます。経営健全化の進捗 状況や今後の展望についてお聞かせいただけま せんでしょうか。
まずは宮城会長、これまで県立病院のあり方 について県の委員会等にも参加され、直接議論 に加わったと思いますが、如何でしょうか。
○宮城会長 あれはなぜそういうことをやっ たかというと、非常に簡単なことです。
その当時、県立病院の改革を進めていかない と、黙っていたら倒産して消滅をしてしまう、 そういう危機意識がありました。赤字がどんど ん膨らんでいって、もし銀行が「お金を貸さな い」と言ったら、その場で倒産します。そうい う方向にずっと流れが進んでいました。県立病 院が果たしてきた役割というのは非常に大事で したし、これからも果たすべき役割はあること から、絶対に消滅させてはいけない、なくして はいけないというのが、まず最初にありまし た。では、そのためにはどうしたらいいのか。
そのためには、意識を変えて改革をしていか ない限りは、県立病院の存続はあり得ないだろ うという危機意識の中で貫かれているんです。 残す、発展させる、そのためにいろいろな提言をして、最終的には、人事にしろいろいろな計 画が自由にできる独法化がいいだろうとなりま した。意識が変わってきますから、そういう提 言をあの中にまとめているんですね。なにも独 法化ありきということではなくて、どうすれば 一番いい残し方ができるのだろうか、永続して いく方法はどうだろうかということで提言とし てまとめられています。その趣旨というか、精 神だけはぜひご理解していただきたいと思いま す。縮小、潰すとかそういうものではないとい うことですね。
○仲井眞知事 よくわかりました。
あのとき宮城先生には、非常にご苦労してい ただいて、まとめ役としてご提言をいただき、 ありがとうございます。県立病院については、 歴史的には何回か抜本改革を取り組んできまし たが、やはり私が知事になったときにも累積赤 字が200 億円ぐらいでしょうか。運転資金も足 りなく、借り入れが100 億円ぐらいありました ので、いろいろな形で取り組まないと新しい設 備も入れられないと何もできない、管理もでき ないという状態に入り込んでおりました。
宮城会長にもご尽力をいただいた平成20 年 度の「県立病院のあり方検討部会」の検討結果 等を受け、県では、平成21 年度から平成23 年 度の3 年間、病院事業に対する繰出金を約85 億円定額措置する支援を行うこととし、病院事 業局においても、職員一丸となって基本的には 永続的に県立病院としての医療サービス提供で きるように経営再建に取り組んできました。
特に、平成22 年度は診療報酬改定の追い風 や南部医療センター・こども医療センターでの 7 対1 看護体制の導入等により、病院事業収益 は対前年度で約20 億円増加しました。
一方で、材料費の縮減や給料の調整額の段階 的廃止等に努めたことから、費用は約9 億円の 伸びに抑制することができています。
その結果、平成22 年度は約18 億円の経常収 支の黒字となったほか、約100 億円の資金不足 等も解消されるなど、病院事業の経営再建計画 の主要3 目標を一年前倒しで達成することがで きました。
しかし、今後、病院事業は、資金不足を解消 するために借り入れた公立病院特例債等の約 70 億円の固定負債や約300 億円の企業債を計 画的に償還しながら、医療機能を維持発展させ るための施設や医療機器の整備を行うほか、研 究研修等の人材育成を行うなど、将来にわたっ て安定した医療提供と経営の維持を行う必要が あります。
そのためには、減少傾向が続いてきた患者の 確保や目標管理の手法による経営改善の取り組 みのほか、医師・看護師等の安定的確保等、よ り一層経営体質の強化に取り組む必要があると 考えております。
思いのほか今の事業局長、前の事業局長、 大勢の関係者のおかげで、少し早いスピードで 改善のベクトルは出始めていると思います。た だ、長期的にも大丈夫だという結論というのが 県営のままで出るのか、独法化が必要なのか、 どんな形が必要なのか、経営改善の状況につい て「経営再建検証委員会」で検証を進めてい るところであり、これまで3 年間の経過を踏ま えて、県立病院が果たしてきた医療機能を持続 的に維持し、向上できるようにしていくつもり です。
働いている医療従事者、病院関係者が気持ち よく働ける状態にしないと、もうきつい、赤字 だからといつも改革を要求されるというので は、ちょっと言葉が過ぎてますが、あまりおも しろくありません。働いて生き生きとした環境 がないと、これだけ大変厳しいお仕事をされて いる大勢の方にちゃんとした環境をつくるとい うのは我々の仕事です。
ひとつ、医療審議会としてご提案いただいた 県医師会の会長さんとしても、是非とも最後ま で基本的な方向を間違えず、きちっと出せるよ うにできればと思っておりますので、ご支援を いただきたいと思います。
○玉城政策参与 昨年の3 月11 日発生した 東日本大震災は未曾有の被害をもたらしまし た。犠牲になられた方々には心よりお見舞い申し上げると共に、被災地の一日も早い復興を望 むものであります。
この度の大震災に際しては、本会も3 月15 日から5 月末日迄岩手県の大槌町へ医療支援班 を派遣し医療活動を行いましたが、途中で県福 祉保健部と調整・連携を図り、5 月からは沖縄 県の医療班として活動いたしました。県と協力 して医療支援活動ができてとても良かったと思 います。
今後、本県においても大規模災害や感染症の 発生、2 年前にも大変でしたインフルエンザ等、 例えば悪性の鳥インフルエンザの発生や、サイ バーテロ等様々な面からの危機管理が求められ ると思いますが、現在、沖縄県ではどのような 対策をお考えでしょうか。
○仲井眞知事 東日本大震災における沖縄県 医師会の岩手県大槌町での医療支援活動につい て、多くの被災者の生命と健康を守るため御尽 力されたことに、心より敬意を表します。沖縄 県においても、東日本大震災を踏まえ、地震・ 津波対策を強化すべく、沖縄県地域防災計画の 見直しを実施しているところです。
なお、危機管理的な分野というのは、沖縄の 場合いわゆる軍事的な防衛上の話があります し、大規模自然災害への対策や、今おっしゃっ た医療、この間の新型インフルエンザ等の感染 症対策のほかにも、テロ、サイバーアタック、 食糧問題やエネルギー問題などがあります。県 として直面する様々なリスクに対して、多くの 離島を抱えアジアにも隣接するなどの本県の特 性を踏まえた危機管理のあり方を検討すべきと の観点から、現在、知事公室の防災危機管理課 を中心に各部と連携して総合的安全保障研究推 進事業の中で、宮城会長にも検討委員会委員長 として御協力を賜りまして、調査研究を行い、 今後の対策強化に繋げていく予定です。
アメリカには、いろいろな形の危機に対して 対応をとるFEMA(フィーマ:連邦緊急事態 管理庁)という機関(組織)があります。沖縄 県は沖縄県なりに仕組みを考えていこうとなっ ています。宮城会長と一緒になって勉強会を始 めていますので、医療分野、自然災害対応も含 めて、行政としてどんな手が打てるのかご検討 よろしくお願いいたします。
○玉城政策参与 今後沖縄県での、大災害の 発生に備え、沖縄県医師会としても県民の医療 を守る立場から、今回の大震災の対応を参考に しながら会内でもその体制整備を急がないとい けないと思います。
医師会としてはどう取り組まれる予定でしょ うか。また、県行政にお願いしたいことなどが ありましたらどうぞ。
○宮城会長 危機管理に関しては、全般的な 危機管理ということで、知事の指示でそういう 委員会が始まっています。それはそれとして進 めていかないといけないのですが、私たちが考 えているのは、医療の分野に限って言います と、県内で災害等が発生したときには、沖縄県 と沖縄県医師会はお互いに協力をすると防災で 締結しており、災害発生時は、一番近くの医師 が駆けつけて医療活動をするということに関し て、これは県の準公務員としてみなすという内 容です。
しかし、今回の東日本大震災のように、医師 会が県外へ出向いていってもこれは医師会独自 の活動になります。沖縄県と医師会が一緒にな って、県が医療派遣したというのは我々の派遣 から1 カ月後なのです。そういうことではなく て、災害が発生したときには、県も医師会も一 緒になって即行動がとれるように、逆に医師会 が先に行ったときに、これは県としての活動と して認めてもらうというような、県外へ広げたことを認める。そういう契約をしていただきた いと思います。先進県はもう既にそういうこと をやられているんですね。本県では、県外で起 こったときの締結はないんですね。
○仲井眞知事 では、今度初めて呼ばれた先 生には適用されないのでしょうか。
○玉城政策参与 はい。事後承認みたいな形 になりましたので。それまでは、独自に保険を かける等して送り出しました。
○宮城会長 すべて決定を待って動いても遅 いということがありますので、沖縄で大災害が 発生した場合の対応については、今回の東日本 大震災の教訓を基に、県内外の救急医療の専門 家のご意見を拝聴しながら、指揮命令系統、通 信手段の確保、医薬品、医療資器材の確保、移 動手段の確保等について具体的に纏める必要が あると考えています。
また、県内における災害時の医療支援につい ては、協定書が締結されておりますが、今回の ように他県の災害における医療活動について は、県と医師会との協定の締結はありません。 今後、何時このような大震災が発生するか分か りませんので、県外の災害における医療活動協 定についても、早急に協定締結が出来るようお 願いしたいと考えております。
○仲井眞知事 沖縄県では、県外での震災が 発生したときに、今後も迅速な医療支援を行う こととしています。医療支援活動については、 医師会の協力が必要であり、こちらからお願い する立場であり、医師会のご提言に感謝しま す。担当部(福祉保健部)を中心に協定づくり を早急に取り組むようにします。
○玉城政策参与 只今の県外の災害における 医療活動にかかる協定については、是非お願い したいと思います。最後に、仲井眞知事も1 年 中休みなくお仕事だと思いますけれども、ご自 分の健康法で何かございましたら、教えていた だけますでしょうか。
○仲井眞知事 特段にはありませんが、禁 酒・禁煙を4 年半前からやっていまして、楽し みがだいぶなくなってしまったのですが、やは りそうなると早寝・早起き、毎日一万歩歩いて います。優等生みたいな生活をやっています。
しかし、これはちょっとエキサイティングな 部分がないものだから、どうしようかなと思っ て、下手ながらも、点数にこだわるというゴル フにかけています。宮城会長みたいに上手にな ると点数にこだわらないんですが、僕はこだわ るほうになりまして、これが意外にフラストレ ーションになっていると思います。
それと、私が昔東京に30 年居て落語が好き で、寄席が新宿の末廣亭とか、上野の鈴本とか 池袋、あと浅草にもあったのですが、最近もう 1 件復活していますかね。実はCD を1,000 枚 ぐらい持っているんです。それを聞き、笑いな がら寝ています。健康法というのは、それぐら いです。
○玉城政策参与 知事のお仕事は、沖縄一 激務と思いますが、健康には充分にご留意い ただき、県政運営に当たられることを祈念い たします。
本日は、ご多忙の中、誠に有り難うございました。
離島診療所勤務医仲井眞知事表敬訪問
※鼎談終了後に、離島勤務の医師による仲井眞 知事表敬訪問があり、知事並びに同席した宮 城会長から以下の通り激励の挨拶が述べられ たので掲載致します。
○仲井眞知事 沖縄県のような東西1,000 q、南北400 qの島がぷかぷか浮かぶ県という のは、医療の面でしっかりしたユニバーサルサ ービスはまだまだですので、皆さんのほうで頑 張っていただきたいと思います。
先生方がおられないと、なかなか沖縄県が県 の体をなさないというところすらあります。い ろいろ大変でしょうが、お若いうちに少しご苦 労いただいて、沖縄の安定と安心のために頑張 っていただきたいと思います。よろしくお願い いたします。何かご注文があれば、何なりと言 ってください。
○宮城会長 とにかく離島の医療というのを 皆さんが、離島に住んでいる方々の健康、命を 守っていただいているということに関しては、こ れは感謝しても感謝しきれないものがあります が、これはやらざるを得ない。誰かがやらないと いけないということがあります。頑張ったのがき ちっと評価をされるという状況にしておかないと いけないし、ここでやってきたということが無駄 にならない。必ず役に立つと思います。
いつまでも永遠にということではないと思い ますので、きちっとやっていけるようなシステム というのを県と一緒に相談しながら、医師会も できるだけ協力してやっていきたいと思います。
本当にありがとうございます。最後まで頑張 っていただきたいと思います。若いときのこと を思い出しました。