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年頭所感

原中勝征

日本医師会会長 原中 勝征

明けましておめでとうございます。

昨年は、3 月11 日に発生した「東日本大震 災」が歴史上経験のない大災害をもたらしまし た。巨大地震、巨大津波が太平洋に面した東北 3 県および周辺地域を襲い、死者・行方不明者 をあわせ約2 万人の犠牲者と多くの街に壊滅的 打撃を与えました。さらに、人災と思われる福 島第一原発の水素爆発による放射性物質の外部 漏れ、放射能汚染が一向に解決の方向が定まら ない中、大震災後の医師会によるJMAT の活 躍、わが国の医師の国民を守るための迅速な行 動に国内外から賞賛の評価が寄せられました。 そして現在も、子供や婦人の方々をはじめとす る被災者の心のケア、生活支援、衛生環境の整 備や伝染病予防、医師不足地域への支援などを 目的にJMAT Uを立ち上げ、全国の医師会や 医療の各団体のご協力をいただいております。

昨年の暮れ近く、「社会保障と税の一体改革」 について政府与党の中で、その実施に向けた論 議が激しく行われました。超高齢化と少子化が 進行する社会における制度持続のための改革と 政策ですが、残念ながら具体的な数値や道筋が 国民にわかるようには説明されておりません。 そんな状況下にあって、診療報酬と介護報酬の 同時改定、医療における消費税問題、事業税、 持分無しの医療法人への強制移行、受診時定額 負担など諸問題が山積しておりますが、日本医 師会執行部の全役員は精力的に政府三役、党幹 部や党担当委員に日本医師会の諸政策の説明を 行いました。前政権時代から医療費削減に固執 する官僚や外部審議会、各種団体からの圧力な ど政策実現にはとても複雑な要素がありました。現政権の内部の問題は別として、ほとんどの与 党の幹部や議員の方々は日本医師会の主張をま じめに聞き理解をしていただいたと思います。

さて、新年は昨年の大震災からの復興を進め なければなりません。新しい街づくりは、医療 施設を中心に考えなければなりません。また被 害を受けた医療機関の多重債務などの問題もあ ります。引き続き政府と協議を続け、会員の先 生方が元のように新しい街の中で安心して医療 活動が出来るように、最大限の努力をする覚悟 であります。今後も引き続き努力が必要な問題 として、医師不足、医師の診療科・地域偏在の 問題、医学教育・研修制度のあり方、TPP の 医療制度への影響、医療法改正、消費税などが ありますが、政府や議員には多種多様な考え方 を持つ議員がおられます。目的達成には地元議 員に対する地域医師会の活動が重要であり、日 本医師会と地域医師会が責務を分担してこそ実 を結びます。新年を迎えるに当たって、さらに 会員相互の交流を活発にし、「医の倫理と国民 のための医療」を共通の活動の基礎として行動 することをお願いいたします。

日本医師会は医師会活動の目的達成のために 自らはもとより都道府県、郡市区医師会、さら には全ての会員が積極的に活動へ参加して、わ が国の医療をよくするための意見を述べていた だける医師会を目指して努力したいと思ってい ます。そして、医師が明るい気持ちで医療活動 が出来る医療制度に向けて努力の年にしたいと 思います。会員の皆様が辰年に見合う昇り龍で あることを祈念いたします。