会長 宮城 信雄
平成24 年の新春を迎えるにあたり、会員の 皆様に謹んで新年のお喜びを申し上げます。
昨年は3 月11 日に千年に一度という大地震 と津波が東日本を襲い人災ともいうべき原子炉 の爆発事故まで起こし多くの尊い人命が失われ ました。発災直後から阪神大震災でのボランテ ィア経験のある会員の提案により沖縄県医師会 はいち早く被災地の岩手県大槌町へ医療支援チ ームを派遣してきました。地元の医療機関の復 旧を確認し79 日間に渉る支援活動を終了しま したが、現地の方々に大変感謝をされお礼の寄 せ書きまで頂いて帰ってまいりました。支援 金、義捐金も多額寄せられました。自分の診療 を犠牲にされてまで現地へはせ参じた多くの会 員の皆様へ厚く感謝申し上げます。被災された 現地の一日も早い復旧・復興を祈念致します。
先進国並みに医療費を引き上げるとマニフェ ストに書き込み政権交代を果たした民主党政権 に多大な期待をしておりましたが直後の診療報 酬改定ではネットでわずかプラス0.19 %でした。 しかも大病院中心主義で中小病院や診療所は増 収どころかマイナス改定のところもありました。 東日本大震災を受け日本医師会は医療と介護の 同時改定はするべきではなく不都合な制度の改 定にとどめるように政府に申し入れをすると共 に大病院に編重した改定を是正するように提案 をしております。財務省は相変わらず本体部分 の1 %マイナス改定を主張しております。長年 に渡る低医療費政策が地域医療を崩壊の危機に 陥れたとの反省を忘れてしまっているようです。
日本の医療費は保険料、公費、自己負担で賄 われています。公費の割合は年々下がり続けてい ます。患者の窓口負担は3 割と先進国では例を見 ない極端に高い負担になっています。2006 年6 月の健康保険法等の一部を改正する法律の付帯決 議に将来にわたり患者の窓口負担は3 割を維持す るものとすると書き込まれているにもかかわらず 高額医療費の限度を引き下げるとの名目で3 割の 自己負担以外に受診時定額負担の導入を提案し てきています。法律違反であるばかりか、弱者で ある病人に医療費を負担させるというのは国民皆 で助け合うという保険の趣旨にまったくそぐわな いものであり、絶対認めるわけにはいきません。
壊滅的打撃を受けている東北地方の復旧が未 だはっきりしていないこの時期に野田首相は農 業にとって大きな影響のあるTPP(環太平洋 経済連携協定)に曖昧な形ではありますが参加 表明をされました。TPP は関税障害ばかりで なく金融、保険、法務、特許、会計、電気・ガ ス、宅配、教育、医療を含むすべて米国にとっ て有利なように自由競争の障害を取り除くこと が目的となっております。日本政府は情報をあ まり持ち合わせていないとの理由でTPP の具 体的中身は公開しておりませんが、先行してい るに米韓FTA(自由貿易協定)や米国とカナ ダとメキシコの自由貿易協定であるNAFTA (北米自由協定)の例を見れば予測がつきます。 米韓FTA には「ラチェット規定」とISD(国 家と投資家の間の紛争解決手続き)条項が入っ ています。日本国にとって不利益だと思っても 後戻りは出来ず、紛争処理はアメリカにある裁 判所で審議されることになります。世界に冠た る国民皆保険制度を崩壊に導くような条項が一 つでもあれば批准反対の国民運動を展開してい く必要がでてくるものと思われます。
沖縄県は沖縄21 世紀ビジョンを策定し、今 後10 年間の振興基本計画を策定中です。沖縄 県独自による初めての振興計画です。沖縄県医 師会としましても医療福祉分野を通して具体的 提言をし沖縄の自立振興に最大限協力をしてい く所存であります。
平成24 年辰年が会員の皆さまにとりまして 希望に満ちた一年となりますよう心から祈念し て私の年頭の挨拶と致します。