副会長 小渡 敬
挨 拶
○佐賀県医師会徳永理事
協議会にご出席いただきありがとうございま す。本日は日医より三上常任理事がご出席いた だいており、各協議題についてコメントいただ けるものと存ずる。介護保険が始まって10 年 が過ぎた。その中で介護保険の問題点が膨らん できたと思う。スタートしたときからやはり介 護の下支えは医療でないといけない、医療なき 介護はないという認識のもとに介護保険に密接 に関わっていかなくてはならない。これからの 会議が明るい指標を示してくれると思う。本日 は12 の提案があるので熱心なご協議をお願い したい。
○三上日医常任理事挨拶
現在、日本医師会として来年度の診療報酬と 介護報酬の同時改定に向けて、全面的改定をす べき、介護保険・診療報酬とも不合理な部分を 洗い出し見直しを行っている。介護保険につい ては、新しい時代のサービスの類型ができるの で、それをどのような形にするか、いくらの報 酬を付けるのかといったことと、留意事項や通 知をどういう条件にしていくのかといったこと を検討している。今後は月2 回ペースで介護給 付分科会が開催されるので、本日の協議・ご意 見を踏まえて反映させていきたい。
協 議
【提案要旨】
現在、介護認定審査会では申請者に対し介護 の手間を尺度として画一的に審査が行われてい る。しかし、パーキンソン氏病・筋萎縮性側索 硬化症などの神経難病、癌の末期、拡張型心筋 症などによる慢性心不全、これらは医療依存度 は高い。また、閉じこもり、自閉症などの発達 障害者、身体障害者、精神障害者では介護の手間の尺度では計れない。
障害者基本法、発達障害者支援法は65 歳以 上では介護保険が優先されることになってお り、障害者にとって適切な要介護度が与えられ ているか疑問である。そのため、医療依存度の 高い場合、障害者、発達障害者に対しては適切 に判断できる専門性の高い介護認定審査会が必 要である。各県のご意見と日医の見解をお伺い したい。
【各県回答】
各県とも適切に判断できる専門性が高い介護 認定審査会が必要との意見であった。
長崎県より、長崎市では、知的障害や精神障 害等の専門的な判断を要する事例については、 審査委員の判断で、精神科医の助言を得ること ができるシステムとなっており、コンピュータ ーの判断で疑わしいものについては、精神科に 依頼するようにしている、今後全県的な普及に 努めるべきと考えているとの回答があった。
熊本県より、介護認定についてはあまり複雑 な仕組みにしないほうがよいとして、特殊な条 件を認定に反映する仕組みを作って、従来の介 護認定審査会での審査に反映する仕組みを作っ たほうがよいとの意見があった。
福岡県からは、いろいろと困難な問題がある として、1)明らかに専門性が高い案件について は事務局としての判断で専門医やその他の専門 職種が委員の合議体に貼り付ける等の対応をし ている保険者がある。2)いくつかの保険者では 医師会に対して精神科委員・神経内科委員を最 低1 名ずつ推薦依頼があるが、全ての郡市医師 会で対応できるものではない。65 歳以上の場 合に介護保険優先というルールの一考が必要と 考えるとの意見があった。
【三上日医常任理事コメント】
(福岡県より、長崎市の例で1)審査委員ではな いものを審査会に入れること、2)改めてみてき たものの判断を求めることについては、条例で 認められているのかとの質問があったことに対 して)
長崎の例は介護保険23 条で市町村が必要と 認めた場合は、出席できるとなっているので、 各県でも是非使っていただきたい。
【提案要旨】
1)熊本県には13 圏域の認定審査会があり、そ のうち3 圏域の審査会が資料の事前配布が未 実施である。平均すると1 回約35 事例の審査 を行うが、限られた時間内でより適切な審査 を行うには事前配布はよりベターな方法と考 えるが各県のご意見、方法をお伺いしたい。
2)主治医は申請者の実生活の場での状態につい て、案外知らないものである。そこで、先日 配布された主治医意見書記載ガイドブックを 参考にして、一歩前へ踏み出すため、熊本県 医師会と県行政で協力して、試行的にモデル 医師会を選び(2 ヶ所)、申請者情報把握の ためアンケート調査を行うこととした。県内 でもいろんな意見が出されたが、九州各県の ご意見を伺いたい。
【各県回答】
1)全圏域で事前配布されているのは、宮崎県・沖縄県・長崎県・鹿児島県であった。一部圏域のみ事前配布されているのは、大分県(広 域以外)・福岡県(28 の内9 保険者)・佐賀県(7 圏域のうち5 圏域)であった。
事前配布できている圏域では、審査会は短 時間で終了し、効率的な運営が出来ていると のことであった。長崎県からは、一部事例 (医師意見書の返送遅れ・認定を急ぐ例)で 事前に見ていないものがあり、審査精度の低 下の要因となっているので工夫が必要との意 見があった。また、福岡県からは、事前配布 については以前より意見交換を行っているが各審査会で意見の統一には至っていない、審 査会により審査状況にばらつきがあるとの意 見があった。
2)宮崎県では、平成20 年度より「主治医意見 書予診票」を作成して活用を促しており、本 人あるいは家族が意見書の内容に準じた質問 事項に回答いただくことにより、特記事項作 成の参考になるようにしているとのことであ った。
福岡県からは、「統一したものはなく、介 護保険当初より「介護保険問診票」をいくつ かの郡市医師会で作成し、意見書作成のため の資料作りを提案した経過がある、担当理事 者会等で情報提供を行っているが、今後改訂 等検討したい」との意見があった。
鹿児島県では、アンケートは有効な手段と 考える、特記すべき事項の記載内容が画一化 すると意見書が形骸化することが懸念される ので、その点もモデル事業においてご検討い ただきたいとの意見があった。
沖縄県・大分県・長崎県・佐賀県からは、 特に取組していないがアンケート調査で有用 な意見が得られると思われるので今後参考と したいとの回答があった。
【提案要旨】
日本経済発展の原動力となった団塊の世代が 定年を迎え、今後は逆に医療・介護を含めた社 会保障費の重荷と見なされようとしている。そ の対策として医療・介護は病院・施設から在 宅・居宅への大きな流れが作られようとしてい る。その流れで最も大きな影響を受けるのは増 加する認知症の患者とその家族であろう。必要 な介護サービスを受けるにあたって、認知症の 要介護度が未だに低すぎるという状況が続いて いるからである。在宅・居宅への流れはやむを 得ないものがあるが、これをスムースに進める ためには、要介護認定で認知症が正当に評価さ れていることをきちんと示し、国民に理解・納 得してもらう必要がある。
そこで、介護保険開始時からの認定審査デー タを2 群(1)旧方式、2)現行方式)に分け、認 知症が要介護認定で正当に評価されているかを 検討した。
1.現行方式は、基準となる「認知症度自立」 のグループの要介護度を旧方式よりほぼ全域 にわたって半段階前後下げ、その相対効果で 認知症を一見評価したように装っていた。さ らに認知症のグループも程度は少ないものの 同様に引き下げていることもわかった。これ らの大きな問題点はあるが、今回の検討で認 知症をレベルに応じて段階的に評価(上乗 せ)していることはわかった。今後はその評 価が低すぎることを課題にして、再検討する 必要があると考えている。
2.現時点の対策としては、認定審査会委員は 主治医意見書特記事項の具体的記載内容によ って現実的で妥当な要介護度への変更を行う ことができることになっており、是非これを 活用すべきと考えている。そのためには、認 知症のレベル毎の上乗せ分はこの程度が望ま しいという統一見解を形成し共有する必要が ある。これを用いて認定審査を行えば、家族 の過度の負担を減らすのに必要な居宅介護サ ービス等を提供することが可能となり、今後 推進される居宅介護への移行もスムーズに家 族に受けいれられるのではないかと考えてい る。そこで、介護認定審査会にモデル事業の 時から関与している立場で理想モデルを作成 してみた。日医の見解及び各県のご意見を伺 いたい。
【各県回答】
各県とも再検討が必要との意見であった。沖 縄県・長崎県・福岡県・鹿児島県から、認知症 のレベルごとに応じた上乗せ分の統一的な見解 の共有は必要との回答であった。
宮崎県からは、認知症患者に対する介護の大 変さは、旧方式でも新方式でもさほど考慮され ていない、一次判定での認知症に対する介護の手間の大変さをもっと評価しやすいものにする 必要があるとの意見があった。また、主治医意 見書の特記欄の記載によりかさ上げされる可能 性が強いため、医師によって差がでてくると思 われるので、意見書記載のための講習会の充実 が必要との意見も出された。
熊本県からは、認知症対応力向上研修で実際 の認知症介護度を評価する主治医意見書の認知 症度評価法を充実させてはどうかとの意見があ った。さらに、熊本県医師会では県行政ととも に「主治医意見書の情報把握ツール」の2 郡市 医師会においてモデル的取組を計画しており、 身体的情報だけでなく認知症症状情報も把握で きるよう工夫されていること、主治医意見書作 成時の補助資料として利用することにしている との紹介があった。
【三上日医常任理事コメント】
認知症については、評価されたものはない。 完全にオーソライズされていない。平成21 年10 月に見方が変わり、かなり軽度に認定されるよ うになった。これは今後の審議の中で要望して いく。現在、精神の勉強会でも検討しており、 評価をどのようにしていくのかについては問題意 識として議題があがっている。なかなかぴったり 来るのがでてこない。介護の手間を反映するも のが出てきていないので、議論していきたい。
座長(佐賀県医師会徳永理事)
大分県を参考にして各県ご検討いただきたい。
【提案要旨】
「癌終末期」と言う病名であっても、その状 況は様々であり、介護認定に大きく差が出るこ とがある。
審査時点ではADL が保たれており、要介護 1 相当以下の判定であっても、数日後には介護 度が急激に悪くなっていることも多々ある。
このような場合、看護においては医療保険を 用い訪問看護を増やすことができるが、医療用 ベッド、車いすのレンタルや介護以外の援助、 あるいは、要支援から要介護に変更になること で包括支援センターから事業所のケアマネに担 当替えなど、いろんな面で手間暇がかかること が多くなる。
認定審査において、癌終末期であれば状況に 係わらず、要介護2 以上の判定を付けていいた だくか、病状に応じた介護度に速やかに変更が できる制度を作っていただきたい。
【各県回答】
宮崎県・沖縄県・熊本県・鹿児島県・佐賀 県・鹿児島県とも提案に賛成であった。
また、最低でも要介護2 の判定がなされるよ う取り決めることは有意義(宮崎県)、症状に 応じて柔軟に介護度が変更できる制度設計は必 須(沖縄県)、癌患者の病状に合わせて速やか に介護度を変更するよう通達が出ている(熊本 県)長崎県の提案に併せて要介護認定前に利用 者が亡くなった場合も利用者の実費負担となら ないよう介護保険から給付できる仕組みが必要 (鹿児島県)等の回答があった。
大分県からは、これらの疾患だけをピックア ップして検討する専門性の高い介護認定審査会 が別途必要と考えるとの回答であった。
【三上日医常任理事コメント】
審査会を通さないわけにはいかないが、癌経 過が早くて認定に時間がかかると介護サービス が受けられないのも困る。平成22 年4 月に厚 生労働省から都道府県と市町村に、「末期がん 等に対する迅速な要介護認定の周知を行ってい るし、平成22 年10 月急速に状態が悪化が見込 まれるもの要支援・要介護1 の人の不使用分分 配については、市町村の判断で配布が可能にな っている。
ある程度自治体の裁量でできるのではない か、厚生労働省と調整する。
【提案要旨】
介護老人福祉施設と介護老人保健施設は本来 生活の場(ホーム)と家庭復帰を支援するリハ ビリ施設という役割があったはずである。
しかし、現在では入所者の平均介護度はどち らも介護度4 以上と利用者の介護度は接近して おり、どちらも重度の利用者が占めている。老 人保健施設も特養化し、家庭復帰が困難である ばかりか長期滞在が普通となっている。国が推 進している在宅介護を実現するには、老人保健 施設本来の役割を果たすことが「地域包括ケ ア」の実現に必要ではないかと考える。
また、グループホームでも重度化した入所者 で、自力で食事摂取できない状態にあるにも関 わらず介助が必要な状態となっており、結果的 に特養入所対象である者がグループホームに入 所を続けており、緊急にグループホーム入所が 必要な認知症の利用者が、利用できない状態が 出現している。
このことについて、日医の見解及び各県のご 意見を伺いたい。
【各県回答】
各県とも、役割分担ははっきりしておらず曖 昧になってきているとして、本来の目的にそっ た役割を果せるよう整理が必要との回答であっ た。現在、老健の入所者の重度化が見られるこ とや、特養も重症の人をみているなど本来の施 設のあり方が失われているとの指摘があった。
沖縄県からは医療の必要性の高い要介護者の 増加が見込まれる中で、介護保険の役割はもち ろんのこと、自宅サービスと居住系サービスの 定義を明確にしたうえで、それぞれの機能を整 理することが必要と意見を述べた。
【三上日医常任理事コメント】
施設間の機能、もともと介護保険は順番に本 人の状態に合わせて移っていくともともとなっ ていたが、すべての施設が重度化している。全 施設看取り加算ついており、看取が普通になっ てきた。この問題については、今、医療を外付 けにしてはどうかとの議論も出てきており、 我々としては、外からかかりつけ医が入れるよ うにする等いろいろなことが言われている。特 に今回の事業場システムでサービス高齢者住 宅、24 時間定期巡回がするほんとに施設のよ うな住宅を作っていこうとしているので、今あ る介護保険3 施設を外付け医療ということにな ると、全部特定施設化するという方向が議論が 出てきている。我々としては、それぞれ本来機 能が分化しているので、ケアマネジメントの中 で適切な施設を選択してもらいケアプランを作 っていくことが大切ではないかと考えている。
こらから半年の間で議論していくので、また 先生方にも情報を提供していきたい。
沖縄県より日医の考えを伺いたいとして2 点 質問した。
国の介護保険制度の失敗だと考える。国は、 さらに高齢化社会になるので施設をどんどん作 ったらきりがない、財源がもたないという前提 で在宅のケアを押している。そして、参酌基準 を設けて施設を作らせないとしている。しか し、在宅の定義もはっきりしない。自宅なの か、在宅なのか、居宅なのか。基本的に家で見 れない場合とは、施設なのか、在宅なのか、居 宅なのか、これも明快ではない。サービスを受 けられますよと曖昧な形でやるので混乱を招い ている。まずは在宅でやるなら定義をきちんと してもらわないといけない。
また、3 施設も当初の制度設計では中間施設 としていたが、今はそうではない。やる側(介 護・医療側)の基準で考えたらそうなるわけ で、利用者側の基準で考えるとこうなる。同じ 人が利用しているので、最初は中間施設だが 10 年たつと10 歳年をとり高齢化していく。最 後は家で見れなくなる、そういう人がたくさん いる。入所時は要介護2 ぐらいだったが、今は 要介護4 に近く平均90 歳に近い。こんなごまかしやっているからおかしくなる。制度そのも のを検討しないと解決しないと考える。
【三上日医常任理事コメント】
基本的には、在宅は自宅である。居住系施設 は、高専、高齢者老人ホームである。特養、療 養病床、老健は介護保険施設である。したがっ て介護保険施設サービスと居住系施設サービス と自宅である在宅サービスに切り分けて、報酬 体系も変えるべきだと考えている。すべてが流 動化してきている。とくに老健は、療養病床や 特養に比べると要介護度が低く自宅への復帰率 が高いが、地域によっては第2 特養のように長期 間入院のところもあれば、自宅復帰率が高く中 間施設としてやっているところもある。両方と も取り入れるしかないと考えている。今、在宅、 住み慣れた地域ということで、いい評価を報酬 上もしている。これが、シルバービジネス等に利 用されていくということがあるので、事ある毎に 在宅サービスとは切りわけていただきたいと考え ている。考え方としては、アクセスとしての囲い こみのなかの評価を考えていきたい。
【提案要旨】
日本人の年間死亡数は、約119 万4 千人で、 死亡場所の約8 割は医療機関になっている。ま た、社会保障・人口問題研究所は、今後、死亡 数は増加し続け、平成52 年に166 万3 千人の ピークになると推計している。
介護保険では、ターミナルケア加算が認めら れているが、介護老人福祉施設、介護老人保健 施設においては、医療が、外付けになっていな いため、看取りについて十分な対応ができない 状況にあると考える。
療養病床の再編が進む中で、医療機関におい ての看取り数には限界があると思われ、加算を 増額し、介護老人福祉施設、介護老人保健施設 での看取りを一層進める必要があると考える が、各県の御意見を伺いたい。
【各県回答】
各県より、看取りの場所がなくなっている、 医療行為の制限があり十分な対応ができない、 医療提供体制の見直しが必要等の意見があっ た。また、在宅で日頃より診ている患者だと信 頼関係があるから翌日行くと言っても理解して くれるが、特養だと難しいのではないかとの意 見があった。
【三上日医常任理事コメント】
現在、医療機関の看取り8 割で、これ以上増 やすのも難しい。今後は、高齢者住宅等でも看 取りが増えてくるだろう。現在、特養や老健で は、看取り加算が1 ヶ月あたり47,000 円であ る。特養、老健でとり方はちがうが、この金額 が妥当かどうかという問題はある。特養の医師 が看取りをするとき呼ばれてすぐに行く必要は ない。在宅医療支援診療所でも、翌日でもよい とされており、在宅の場合はそれでよいと考え ている。
今後ますます増えてくると思われるので検討 していきたい。
【提案要旨】
介護保険において、急速に症状が悪化した場 合には、特別指示書や介護認定の変更などで対 処するようになっているが、必要な介護、特に 訪問看護により行えるサービス量が介護認定に 追い付いていけない場合が多々見受けられる。
本制度の不備に対して、本県は過去にも何度 か本協議会で提案しており、平成20 年の本協議 会における本県からの質問に対し、三上日医常 任理事日医常任理事は、「元々医療保険での訪 問看護は在宅の方の急性増悪に対処するために 作られたものであり、月に何度も急性増悪を繰 り返す状況があれば、当然医療保険で考えてい く。介護保険では対応出来ない。これは同時改 定の時期を待たなければ片方だけの改定だけで はうまくいかない。4 年後の同時改定の時まで 解決出来ないかもしれないが、そういう方向で考えていきたい。」とお答えになっておられる。
今回はその4 年後の同時改訂の時期でもあ り、ぜひ、在宅医療における訪問看護はケアマ ネによる主導でなく、医師がイニシアチブを取 れるような制度に変更することを強く働きかけ ていただくことを要望する。
日医や他県のご意見を伺いたい。
【各県回答】
各県とも提案に賛成。今後ますます高齢化が 進む中で訪問看護の役割は重要性を増す(沖縄 県)、急性憎悪など医師が必要と認めれば医療 保険の給付が優先されるべき(大分県)、状態 が不安的の患者こそ医療や訪問看護が必要(熊 本県)、医師がイニシアチブをとれるルールに 変更すべき(福岡県)との意見であった。
【三上日医常任理事コメント】
症状が安定したら介護保険を使うことになっ ている。その場合医療保険サービスをなかなか 使えない。現在は、「特別指示書」が癌等の時 などに使えるが、今後条件を拡充していくこと を考えている。リハビリでよく要望が出るの は、維持期のリハのあと、少し落ち込んだとき に持ちあげるために集中リハを医療で使わせて くれないかと要望が出ているので、ぜひ主張し ていきたい。
【提案要旨】
動ける認知症の方が大腿骨頚部骨折を起こし た場合、通常であれば手術を行い、その後2 ヶ 月から6 ヶ月の回復期リハビリを行うところで あるが、認知症の程度によっては入院自体が困 難であったり、よしんば可能であったにして も、認知症自体が環境の変化で進行したりする ため、現実には早期の自宅復帰がすすめられて いる。
ところがグループホームを代表とする居宅系 施設においてはリハビリを継続するシステムが 今のところ見当たらない。維持期リハビリも以 前から問題になっているが、せめて回復が見込 める時期は居宅系施設内で外付けのリハビリを 可能にするよう制度を改めていただきたい。
【各県回答】
各県とも提案どおり、外付けのリハビリが必 要との意見であったが、実施にあたっては必要 性や中止に対する客観的な評価が必要(大分 県)、居宅系施設に限らず、外付けのサービス については必要性と様々な問題点があろうと思 われる(福岡県)、認知症対応回復期リハビリ を開発すべき(熊本県)との意見が出され、日 医の意見を伺いたいとした。
また、宮崎県からは、多くの居宅系施設でリ ハビリ専門職が関われないのは問題で制度上外 付けが利用できない施設があること、あっても 介護保険枠を目一杯使っており実際上は入れな い施設があるも多いことから、一定期間・急性 憎悪期は医療保険による訪問リハや通所リハが 認められるべきとの意見があった。
沖縄県からは、介護保険施設・居宅系施設等 におけるサービス提供の在り方は早急に検討必 要と意見を述べた。
【三上日医常任理事コメント】
認知症の方の大腿骨骨折の場合、グループホ ームは介護保険のサービスが受けられない。居 宅管理指導以外は受けられないとなっている。 今回の地域包括ケア中でも大事な項目として、 医療と介護の両方に関わる問題であるので、十 分議論していきたい。
【提案要旨】
現在介護保険において訪問リハビリテーショ ンを提供する機関は、訪問看護事業所と訪問リ ハビリテーション事業所の2 種類がある。
このうち訪問リハビリテーション事業所の医 師がリハビリの指示書を書く際に、利用者の主 治医から情報提供を受けて記載することになっている。しかし最近、情報提供書を受けるだけ では訪問リハビリの指示書を書いてはならず、 訪問リハビリテーション事業所の医師もまた、 利用者を毎月診察する必要がある旨の通達がい ろいろな県でなされている。
これを厳格に実施するのであれば利用者は毎 月2 か所の医療機関を受診するか、もしくは2 か所から訪問診療を受けなければならなくな り、かなりの負担となる。また地域における医 療連携が妨げられる要因となりかねない。
各県における指導状況をお聞きするととも に、日医の見解を伺いたい。
【各県回答】
沖縄県・福岡県・鹿児島県・佐賀県では、通 達や指導は行われていないとの回答であった。
福岡県でも、厳密な指示はないようだが二重 の診療を示唆されることがあるとの回答であっ た。さらに、訪問リハを実施している医療機関 は少なく多くが病院であるため、二重の診療が 必要となれば、患者は訪問リハを実施している 医療機関(おおむね病院)への受診を希望する ことになり、病診連携・かかりつけ医への誘導 とは矛盾してしまうとして、矛盾した指導は撤 廃すべきとの意見であった。
大分県からは、会員からも同様な指摘があっ たことや、制度と現実に乖離が生じていること は行政も認識しているが、現時点では特段の動 きはないとの回答であった。
長崎県からは、平成15 年5 月30 日付「介護 報酬にかかるQ & A」では、毎月の診療は必要 ない、本県では厳しい指導はなく、事業所担当 医の指示書が最低1 回きちんと出されていれば 黙認されている状況であるとの回答があった。 また、本来なら直接主治医が訪問リハビリ事業 所にサービス指示書を提供する形のほうがコス トも人手もかからず情報の風通しもいいと考え ているので、制度を改めていただきたいとの要 望があった。
熊本県から、2 重受診は必要なく、主治医か らの診療情報書の提供を受けて、訪問リハ事業 所の医師が指示書を書くことは差し支えないと 県から回答いただいていることの紹介があっ た。なお、必要があればリハビリの観点から受 診を求めることは必要との回答があった。
【三上日医常任理事コメント】
1 ヶ月に2 回診察するのは面倒だということ だが、わざと面倒なようにしていることを理解 いただきたい。同時改定でこの問題出ているだ ろう。
基本的にリハビリの医師が少なく、リハビリ を細かく指示できるかかりつけ医も少ない。診 察目的が違うと説明いただきたい。これから問 題になってくるなら厚生労働省に確認する。
【提案要旨】
昨年11 月の社会保障審議会介護保険部会 「介護保険制度の見直しに関する意見」におい て介護予防サービスを介護保険の対象から外す ことについて賛否両論併記で報告された。
来年の診療報酬・介護報酬同時改定について は、このことは前面に出ては来ていないし、今 回の改定では、実施されないだろうとの予測は 流れている。
介護予防サービスは、施設費を除くと介護保 険費の約1 割を占めており、介護保険対象外に なることにより、市町村の予防事業に移行した としても多数の事業所経営に影響を与えると考 えられる。
介護予防サービスを介護保険の対象外とする ことは、極めて慎重であるべきと考えるが、各 県の御意見を伺いたい。
【各県回答】
宮崎県・長崎県・熊本県・佐賀県が提案に賛 成で、介護予防を外すべきではないとの意見で あった。
加えて、宮崎県から「慎重に検討すべき問 題。一方、今後さらに高齢化し、重度の要介護者が増加する中で、介護費用が増大しているこ とは避けられず、要支援者や軽度の要介護者に 対する介護際―ビスについてはその効果を含め 再検討すべきである。」との意見が出された。
また、長崎県から1)介護予防を介護保険から 外すこと考えられない。2)むしろ、非該当に対 し生活支援サービスをもっと増やして将来の要 支援者を防ぐことが大切。3)要介護3 以上は、 介護サービスよりも医療保険を用いた医療を重 点に行うべきとの回答であった。
沖縄県からは、社会保障審議会・介護給付費 分科会では、限られた財源を重度者へ重点化さ せるため要支援を介護保険から外すとの議論が あったが、一方今回の介護保険法改正では「介 護予防・日常生活支援総合事業」が創設される 等、介護予防を推進する動きもあるので、日医 の見解を伺いたいと回答した。
一方、大分県からは、介護予防サービスが始 まった当初から有効性を疑問視していたとの意 見があった。今介護予防を介護保険の対象外に しようという動きは、介護予防サービスの効果 がなかったということか。そうなら無効であっ たことを公式に認め、介護予防サービスを全廃 して地域包括支援センターが高齢者への定期訪 問や虐待防止等権利擁護業務に専念すべき。介 護予防は別の病気ではないかと思っているとの 回答であった。
福岡県は、県医師会として意見集約おこなっ ておらず、各県・日医の見解を伺いたいとした。
【三上日医常任理事コメント】
なるべく介護保険費を使わないように、ある 部分については自治体持ちでやっていただく方 向で動いていくと思われる。サービスがなくな るわけではなく、自治体がやる気があればでき ると理解している。多くの自治体が厳しいので サービスが低下していくのでないかいうことは 全くない。要支援者も増えているので、認定を 受ける人が増える。要支援者に定期的な運動を させることによって、心身機能がかなりよくな ってくるとわかってきたので、新予防給付が出 てきた。今後検討する、外すかも知れないとし て賛否両論併記となっている。皆さんが外すな ということであれば日医もそう要望するが、全 体の財源の構成のこともあるので地域支援とい うなかで予防給付について介護保険の外に出し て自治体の裁量でやっていただく方向で考えて いきたいが皆さんのご意見をいただいて議論し ていきたい。
【提案要旨】
特別養護老人ホーム等には施設内診療所が必 要で、その診療所の管理医師も必要となる。そ の管理医師は配置医師とも呼ばれている。
一方、特別養護老人ホーム等に入所している 方々に医療を提供しても初再診療、指導料、在 宅医療などが請求できないという厚生労働省保 険局課長通知(保医発0330 第2 号)があり、 配置医師が診療を行っても適切な保険請求がで きない。
さらに、1 人医師診療所の場合には、その施 設内診療所の管理医師になるため、特別養護老 人ホーム等内診療所が開院している時間帯には 自院を閉めなければならず、その間の自院の収 入はなくなることになる。診療所の収入が十分 にあった時代にはいわばボランティアとして特 別養護老人ホーム等内診療所の管理医師(配置 医師)となる医師も多かったと思うが、現状の ように収入が減少している中で、ボランティア で診療をするのにも限界がある。厚生労働省は 特別養護老人ホーム等の介護報酬等に医師の給 与分が含まれているため、そこから給与を取る べきと言っているが、給与額は一定ではない し、自院の職員も給与分もあるため、十分な対 応とは言えないと考える。
さらに、在宅医療が重要と言いながら、特別 養護老人ホーム等内での診療を制限しているこ とには、在宅医療・施設内医療を阻害してお り、矛盾があるのではないか。
そこで、この厚生労働省保険局課長通知(保医発0330 第2 号)を廃止し、特別養護老人ホ ーム等に入所している方々の診療の際にも、一 般の外来や在宅患者と同じように適切な保険請 求ができるようにすべきと考える。この点につ いて各県のご意見をお伺いしたい。
【各県回答】
各県とも現行制度は改めるべきとの意見であった。
沖縄県からは、特養では、従来からの入所者 の介護度が増し医療の必要性も増している。新 規入所者も認知症や重介護度の高齢者が増え医 療ケアの必要性が高まっているが、制度上数々 の制約があるので、特養の配置基準を含め医療 提供体制のあり方を検討する必要があると回答 した。
宮崎県からは、国が介護報酬の中に管理医師 の給料も入っているというなら、どの部分がそ れに当たるのか明示してもらう必要がある。せ めて薬剤料だけでも出してもらいたいとの意見 があった。
その他、介護保険施設であろうと在宅であろ うと場所によらず医師によるきちんとした医療 が行われるようにすべきで、医療は医療保険で 行うべき(長崎県)、これまでの配置医師は入 所者の健康管理を行うことが主であったが、現 在の医療依存度の高い入所者も多く受け入れて いる状況には即していない。医療の外付けを実 現いただきたい(鹿児島県)、会員からも要望 があり現行制度は改めるべき(大分県)との意 見が出された。
【三上日医常任理事コメント】
診療ができないというより、診療しても請求 できない。特養の施設療養費の中には、管理医 師が行う初診、再診、指導部分が入っていると されている。20 〜 30 万ではないか。これは措 置の時代にははっきり決まっていたようだが、 今介護保険料の中に入っているかはっきりとは わからない。
外付けにするとの話が出た場合、介護保険施 設の施設療養費の中に配置医師の分を引き出し て外付けにすると議論している。「みだりに配 置医師以外」を厳しく捉えているところとそう でないところがあるが、基本的には必要な場合 には行ってもいい。特養は薬代もでるので赤字 になることはないのでできるのではないか。老 健は薬代はでないので赤字になってしまう。
今、議論をしているところであり、入所者に必 要な医療が担保されるのかどうか、かかりつけ医 が施設にきて診察することができるのか、医療保 険・介護保険どちらから出すか、保険局と老健 局の考え方も違うので今後どうなっていくかわか らないが、意見を伺って議論していきたい。
三上日医常任理事と出席者の議論のなかで、 外付けの医療をとの意見がでたことについて、 沖縄県から「やぶへびになるのではないか。逆 に老健に医師を置けと言われるのではないか」 との意見を述べた。
【提案要旨】
平成23 年6 月15 日に「介護サービスの基盤 強化のための介護保険法等の一部を改正する法 律」が成立し、2012 年度から医師、看護師と の連携を前提に、研修を受けた介護職員らにた ん吸引と経管栄養の実施が認められるようにな った。
しかし、実施に当たっては、講義・演習など が中心の基本研修と実技を行う実地研修で構成 する総合的な研修の受講が必須であり、さらに 実施を認めた後も定期的な指導や監督などフォ ローアップ研修をやっていく必要があるとされ ている。福岡県医師会では研修のあり方等につ いて、積極的に関わっていく方向で行政と協議 中である。
そこで、下記の2 点について各県及び日本医 師会のご意見をお伺いしたい。
1)各県におかれましても医師会として研修実施 に積極的に関わっていくのか否か。
2)居宅や特別養護老人ホーム等では実施を認 め、医療機関では認められていないことにつ いてどう考えられるか。
【各県回答】
医師会として研修への関わりについては、宮 崎県・長崎県・熊本県・佐賀県から介護の質の 確保のため、積極的に関わっていくべきと回答 があった。特に、熊本県からは、すでに積極的 に関わっていく方向で県と協議中であるとして 具体的なスケジュールの紹介があった。
しかし、大分県からは、市町村医師会単位で 訪問看護師に対して実技研修を行っているとこ ろもあり、今後介護職員に広げる計画あるが、 単なる研修の問題ではなく、むしろ非医療者の 行いうる処置の拡大や、処置によって生じた不 測の事態に対応する責任の所在などを問題視す べきであると考えるとの回答であった。
沖縄県からは、現在特に関わっていないの で、各県の意見を伺い参考としたいと回答し た。鹿児島県からは、県当局にも具体的な情報 がきておらず、それを待って協力するか否かを 判断したいとの回答があった。
2)医療機関で認められないことについては、 各県とも混乱を招く、制度設計に疑問があると の意見であった。
【三上日医常任理事コメント】
日医としてはずっと反対してきたが、孤立無 援であった。実地研修をする登録研修機関、登 録介護施設については、たいへんハードルが高 いと思われる。登録研修機関については、医師 会に協力を求めてくると思われるが、患者さん が同意されるかどうか。研修内容は、経鼻経管 栄養・気管管理を除く部分、それを全部含んだ 分、特定の者(障害者)を対象とした部分、介 護福祉士養成と4 種類に分かれている。リスク の高い研修については、登録研修機関が少ない し、希望される方もすくないのではないか。そ ういう意味では、口腔内とかの研修をすると思 われる。医師会に講師の依頼があれば、患者の 安全のためご協力いただきたい。
また、医療機関で認められないことについて はご指摘のとおりである。
印象記
副会長 小渡 敬
平成23 年9 月17 日に九州医師会連合会の平成23 年度第1 回各種協議会が佐賀県で開催され、 日本医師会からはいつものように三上常任理事が参加しておりました。介護保険対策協議会にお いては各県から12 の議題が提出され、今回は介護認定審査会に関する質問が多く提出されていま した。来年度は診療報酬と介護報酬の同時改定の年でありますが、日医が改訂の実施に反対して いるためか、介護報酬に関する質問は1 件も出ていませんでした。
しかし改定は行われるようで中央では審議が進んでいるようであります。ただ、詳細について 現時点では明確にされておらず、三上先生からも詳しい情報はありませんでした。介護報酬の動 向は介護保険施設をはじめ、介護に関わる施設にとっては重大関心事であることから、今後、本 会としても情報を得次第、発信したいと考えております。