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平成23年度第3回沖縄県・沖縄県医師会連絡会議

安里哲好

常任理事 安里 哲好

去る9 月12 日(月)、県庁3 階第1 会議室に おいて標記連絡会議が行われたので以下のとお り報告する。

議 題

1.任意予防接種等行政措置予防接種への指定について(提案:沖縄県医師会)

<提案要旨>

各種予防接種はウイルスや細菌感染症に対す る免疫を獲得し、主に次の時代を担う子供たち を各種感染症の脅威から守るために行われ、又、 多くの人が接種を受けることによって流行を予 防することにもなる。

現在の予防接種制度は、大きく2 つに分けら れ、1)定期予防接種(予防接種法により定めら れた予防接種、麻しん、風しん、日本脳炎、ポ リオ、DT、DPT、BCG)と2)任意予防接種 (希望する人が有料で接種する予防接種、イン フルエンザワクチン(高齢者を除く)、おたふく かぜワクチン、水痘ワクチン、B 型肝炎ワクチ ン等)があるが、定期予防接種については、公費(無料)で接種が行われ、その際、健康被害 (強い副反応)が生じた場合においては厚生労 働省による予防接種健康被害救済制度がある。

これとは別に、任意予防接種で健康被害が発 生した場合は独立行政法人医薬品医療機器総合 機構により「医薬品副作用被害救済制度」が適 用されるが、補償内容が定期予防接種の健康被 害補償には遠く及ばないので、任意予防接種に ついてはこの救済制度に加え、各市町村におい て行政予防措置予防接種(市町村が独自に全国 市長会・町村長会予防接種事故賠償補償保険 に加入する)として指定を行い、健康被害を被 った場合に行政による健康被害救済制度を適用 することにより、安心して予防接種が受けられ るよう、下記の件について要望する。

注)行政措置予防接種は、接種料金を公費負担 にするための制度ではない。

任意予防接種で健康被害(強い副反応)を被 った場合、救済を行う制度である。これにより 定期予防接種並みの救済が行えることになる。

1)各市町村に対し、任意予防接種を行政措置予 防接種に指定するように働きかけて頂きたい。

2)定期予防接種を期間内に受けられなかった者 に対しても、接種対象外となることから行政 措置予防接種に指定するように働きかけて頂 きたい。

備考:現在、今年度に限り、Hib、小児肺炎球 菌、子宮頚がんワクチン接種については行政措 置予防接種として行われている。(次年度以降 の実施については未だ決定していない。)

<健康増進課回答>

任意予防接種に係る健康被害が発生した場合 に、「医薬品副作用被害救済制度」が適用され るが、各市町村においては、「子宮頸がん等ワ クチン接種緊急促進事業」の実施の際に、健康被害の救済措置として、「全国市長会予防接種 事故賠償補償保険」等の民間保険に加入してお り、任意接種を行政措置予防接種として指定す ることで、その保険の適用が受けらる。

県としては、来る10 月に開催する市町村担 当者向け予防接種従事者研修会にて、

  • 1)任意接種
  • 2)定期接種を期間内に受けられなかった者の任意接種

を行政措置予防接種として指定するよう、助言していきたい。

<主な意見>

■ご指摘のとおり、各市町村へ働きかけていく(県福祉保健部)。

□小児科医会、はしか“0”プロジェクト等か らも、各市町村へは働きかけてはいるが、承 諾いただけない。是非、全市町村が任意予防 接種を行政措置予防接種に指定するように働 きかけて頂きたい(県医師会)。

■現在、全市町村において、Hib、小児肺炎球 菌、子宮頚がんワクチン接種については行政 措置予防接種として行われている。任意接 種、定期接種を期間内に受けられなかった者 の任意接種についても行政措置予防接種とし て指定するよう、働きかけていく(県福祉保 健部)。

当連絡会議終了後、下記のとおり「沖縄県経 済の活性化に資する新たな制度の提言につい て」県より情報提供があった。

平成23 年7 月、万国医療津梁協議会より県 知事に標記の提言がなされた。

提言の概要は次のとおり。

1)インバウンド観光を推進する沖縄県の取組と して、外国人観光客への緊急医療体制を充実さ せること

2)平成24 年3 月末で期限切れを迎える沖縄振 興特別措置法に代わる新たな法律において、 「沖縄ウェルネス産業特別特区(沖縄国際医療 交流特区)」を創設すること

3)沖縄振興特別措置法第16 条に規定する特定 民間観光関連施設に医療施設等を追加すること

4)国際医療交流に資する医療機関との連携事業 の促進のため、医療連携事業化支援事業等を創 設すること

上記の情報提供を受け、沖縄県医師会から下記の通り意見をのべた。

提言内容は具体性に欠けており、県全体とし てのスパンではなく一施設の事業として進めら れることに危惧を感じる。

医師会の大きな方針は、県民医療を第一の使 命として活動している立場から、国民皆保険制 度を堅持することであり、国民皆保険制度が崩 壊するような内容であれば、断固反対の姿勢で ある。

この問題は時期尚早であり、そもそも医療ツ ーリズムを通じて観光客増が見込めるかどうか 等について慎重に検討すべきであると考える。

印象記

常任理事 安里 哲好

今回は各地区医師会に議題を問い合わせた結果、中部地区医師会よりの案件を県医師会提案議 題とした。

議題「任意予防接種等行政措置予防接種への指定について」を当会より提案した。県行政とし ては、来る10 月に開催する市町村担当者向け予防接種事業者研修会にて、1)任意接種、2)定期接 種を期間内に受けられなかった者の任意接種を行政措置予防接種として指定するよう、助言して 行きたいと述べていた。予防接種法における救済制度の補償額と医薬品副作用被害救済制度の補 償額とは極端に差がある感じはしないが、その支払い手順等に違いがあるのであろう。それにし ても両方とも、それ以上の請求が被害者から出されたらと思慮する。その様な事も鑑みて、本文 中の全国市長会の「予防接種事故賠償補償保険のあらまし」も参照いただきたい。

その他、懇談として、万国医療津梁協議会(平成23 年7 月)より、仲井眞弘多知事へ「沖縄県 経済の活性化に資する新たな制度の提言について」に関する要望があり、その件についての情報 提供があった。

※「沖縄県経済の活性化に資する新たな制度の提言について」より抜粋

各論2.平成24年3月末で期限切れを迎える沖縄振興特別措置法に代わる新たな法律において、「沖縄ウェルネス産業特別地区(沖縄国際医療交流特区)」を創設すること。

沖縄における 〜(省略)〜 地区又は施設等を「沖縄ウェルネス産業特別地区(沖縄国際医 療交流特区)」として指定し、〜(省略)〜 国際医療交流に資する病床、外国人医師の医療行 為や臨床修練、〜(省略)〜 。

各論3.沖縄振興特別措置法第16条に規定する特別民間観光関連施設に医療施設等追加すること。

国際医療交流を 〜(省略)〜 本施設に「健康・医療関連サービス施設」も対象とすること を要望します。

医療特区を創設し、何でもありと言う内容にも解釈できる。自由に病床を増床し、日本の医師 免許を有していない外国人医師が大学病院等でも無く、医療施設でも無い施設で自由に診療をし、 また、株式会社(民間観光関連施設)が医療施設を自由に開設すると。さすがに、これまで、医 師会の中で見解が充分に統一されていなかったが、この提言には、医師会側の参加者の全員が反 対の意見を述べていた様に、小生には思えた。後日、理事会報告事項の際に、きちっと理事会の 議題にあげ詳細に検討し、必要ならそれなりの行動をとの意見も出た。