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第55 回九州ブロック学校保健・学校医大会
平成23 年度九州学校検診協議会(年次大会)

宮里善次

理事 宮里 善次

去る8 月6 日(土)、7 日(日)の両日、大分県全日空ホテルオアシスタワー並び に大分県労働福祉会館ソレイユにおいて開催された「第55 回九州ブロック学校保 健・学校医大会並びに平成23 年度九州学校検診協議会」について、以下のとおり報 告する。

<平成23 年8 月6 日(土)>

8 月6 日(土)については、台風9 号の影響 で飛行機の出発が遅れたため、参加することが できなかった。そのため、協議内容に関する各 県の事前回答の資料を基に報告する。

各会議の協議事項は以下の通りであった。

1 平成23年度九州学校検診協議会第1回専門委員会(16:00 〜 16:45)

心臓部門、腎臓部門、小児生活習慣病部門の 3 部門による平成23 年度九州学校検診協議会 第1 回専門委員会が行われた。

心臓部門では、報告事項として1)九州各県に おける学校管理下の心臓性突然死(平成22 年 度)について2)心臓病調査票および学校心臓精 密検査受診票・成績表の統一に向けた共有化、 について報告があった。協議事項として1)学校 心臓検診受診票作成の方針について2)心臓検診 時の統一病名について3)心室内伝導遅延 (IVCD)について4)「QT 延長(コード9-7- 1)」に対する学校心臓検診としての対応、につ いて協議が行われた。

腎臓部門では、報告事項として1)蛋白尿検出 精度について(続報)2)各県の一次検尿・二次 検尿の対象者数、受検者数、定性各項目のカッ トオフ値の調査3)九州各県全域における学校検 尿に関する調査結果について4)九州学校腎臓病 検診マニュアル第3 版の改訂について5)九州でのデータ集計の現状について、報告があった。 協議事項として1)来年度実施する学校検尿体制 アンケート案について2)アンケート調査結果の データ管理について、協議が行われた。

小児生活習慣病部門では、協議事項として1) 各地区の糖尿病健診の実情と結果について2)血 液一般検査での、貧血の測定について、協議が 行われた。

2 平成23 年度九州学校検診協議会幹事会(16:45 〜 17:30)

平成22 年度九州学校検診協議会の事業報告 並びに決算について」並びに「平成23 年度九 州学校検診協議会の事業計画並びに予算につい て」の報告があった。

3 九州各県医師会学校保健担当理事者会 (日本医師会学校保健担当理事との懇談会) (17:30 〜 18:30)

協議議題は1)麻しん排除目標達成のための体 制について2)学校欠席者情報収集システムの活 用状況と課題等について、協議が行われた。ま た、日本医師会石川広己常任理事より中央情勢 報告があった。

1)麻しん排除目標達成のための体制について(福岡県)

【提案理由】

国立感染症情報センターの報告によると、麻 しん発生状況は、平成23 年第23 週で307 例と なっており、前年同期に比べて27.9 %増加し ている。

平成20 年度より5 年間の時限措置として、 中学1 年生及び高校3 年生に相当する年齢の者 に対して定期予防接種の追加が行われてきた が、現状では、平成24 年度麻しん排除目標の 達成は、困難であると思われる。今後、日医と して今後の取り組み並びに国への働きかけ等に ついてご意見をお聞かせ願いたい。

各県からの回答

沖縄県:沖縄県では1998 年〜 2001 年にかけて 麻しんの流行があり、乳幼児の死亡例があった。

それを受けて2001 年4 月に小児科医の有志 が麻しん撲滅のための委員会「はしか“0”プ ロジェクト委員会」を立ち上げ、小児科医会、 小児保健協会、県行政、県医師会を巻き込んで 下記のような活動を行い、ある程度の成果が得 られている。

1.麻しんサーベイランスの構築

県行政とタイアップし、「沖縄県麻しん全数 把握実施要領」を作成。医療機関は麻しんの症 例も含めて全例を保健所に報告。県行政は週報 として各医療機関に連絡。

2.麻しんワクチン接種の広域化

県医師会が中心となって自治体と交渉し、麻 しんワクチンはどの地域の医療機関で受けても よいシステム。

3.はしか“0”プロジェクト週間の設定

毎年5 〜 6 月にはしか“0”プロジェクト週 間を設定し、2003 年からマスコミで広報。

4.一斉予防接種

はしか“0”プロジェクト週間の日曜日に一 斉予防接種を施行。協力医療機関は事前に新聞 にて広報。

5.自治体の1 歳麻しんワクチン接種率をマッ プにし視覚化

県行政は自治体の接種率を、80 %以下を赤 色、80 〜 90 %以下を黄色、90 %以上を青色で 可視化し啓発に努めている。

上記の取り組みで麻しん流行前は60 %台で あった接種率が年々向上し、2007 年度の第二 期接種率は87 %となった。また全数把握実施 は麻しん封じ込めの成果を出しており、流行に は至っていない。

しかしながらこうした努力も“任意接種”の 予防接種法では95 %を目標としており、それ には限界がある。

沖縄の流行から一年後に同様の流行があった 韓国では、国策として一歳で予防接種の義務 化、小学校入学時に予防接種していなければ入学できない等の処置をとり、流行翌年には接種 率98 %という驚異的な成績をだしている。

医師会、県行政、保健所、自治体が協力体制 を構築するのはもちろんだが、VPD という観 点から、麻しんワクチンの義務化を提案すべき と考える。

長崎県:長崎県の第3、4 期の実施率、89.9、 84.6 %で95 %に達していない。

集団接種を実施の市町村は、23 市町中4 市 町(佐世保市、西海市、対馬市、小値賀町)。

予防接種台帳の電子化を県に要請している が、進んでいない。台帳自体が未整備の市町2 つもあり、推進に努力したいと考えている。

日医から国が更なる強化策を提示するよう要 請してほしいと考える。

宮崎県:本県は、県担当課と対策会議を行い、 現状報告、今度の取り組み等を協議している。 日医の今後の取り組み等、ご意見を伺いたい。

熊本県:日本医師会、各県医師会の取り組み、 ご意見を参考に接種率アップに努めたい。

なお、本県の状況は下記のとおり。

本県の麻しん発生数は、平成20 年度27 件、 21 年度0 件、22 年度1 件、平成23 年度は現時 点で0 件である。

学校での発生状況は、平成20 年度4 人(小 学生1 人、中学生1 人、高校生2 人)、21 年度 0 人、22 年度1 人(小学生1 人)となっている。

第1 期の接種率は、平成20 年度90.7 %、21 年度93.1 %、22 年度94.6 %。

第2 期の接種率は、平成20 年度92.8 %、21 年度93.1 %、22 年度93.8 %。

第3 期の接種率は、平成20 年度91.7 %、21 年度89.3 %、22 年度91.9 %。

第4 期の接種率は、平成20 年度84.2 %、21 年度85.3 %、22 年度85.1 %。

第1 期、2 期の接種率は徐々に上昇し、目標値の95 %に近づいているが、3 期、4 期の接種 率は伸び悩んでいる。

45 市町村中、3 期12 ヶ所(宇城市95.4 %、 玉東町96.6%、長洲町98.8%、高森町94.7%、 西原村98.4 %、益城町95.4 %、錦町97.7 %、 あさぎり町98.9 %、多良木町95.3 %、湯前町 100 %、水上村95.0 %、五木村100 %)、4 期 6 ヶ所(宇城市86.4 %、高森町92.5 %、西原 村89.1 %、多良木町98.3 %、湯前町98.4 %、 水上村100 %)が集団接種を行っている(接種 率は平成22 年度)。

佐賀県:日医のご意見を拝聴させて頂く。

鹿児島県:今年2 月27 日(日)に日本医師会 で開催された予防接種講習会でも「予防接種週 間・麻疹排除に向けて」及川馨日本小児科医会 常任理事からご講演があったが、平成20 年度 から5 カ年で麻しん排除を行うことを目標に始 まったこの事業は、次の5 つの取り組みを柱に している。

1)麻しんの全数報告(平成20 年1 月開始)、 2)MR ワクチンの3 ・4 期接種、3)国・都道 府県での対策会議の開催、4)95 %以上の接種 率確保、5)検査診断体制(PCR、ウイルス分 離)の整備。

全数報告が始まった初年度の報告数が 11,015 例であったが、翌年には741 例まで 93 %の低下がみられ(22 年度は457 例)、一定 の効果があったものと思われる。

しかしながら、麻しん排除の定義である「人 口100 万人に1 人」のレベルである120 人以下 目標にはまだまだ達しておらず、貴見のとおり 今後対策の強化が望まれる。

また、2009 年度の鹿児島県の麻しんワクチ ン接種率は1 〜 3 期で全国平均を下まわってお り、特に2 期は全国で最下位、3 期も45 位であ った。今後、行政・学校・医師会が一体とな り、接種率向上への取り組みを強化したい。

ちなみに本会の現状の取り組みは以下のと おり。

1)全県的相互乗り入れの実施(参加率9 割 39/43 市町村)

2)平成21 年度から、全国で3 月に実施してい る「子ども予防接種週間」とは別に、8 月4 日を「はしかの日」と定め、「鹿児島県子ど も予防接種週間」を8 月4 日を含む8 日間 (土曜を2 回:今年度は、7 月30 日(土)〜 8 月6 日(土)まで)実施。

主催:県医師会・県小児科医会・県
後援:県教育委員会
(実績:平成21 年度 協力医療機関: 349、接種者数3,861、平成22 年度 協力医療機関: 345、接種者数5,713) ※年々増加傾向にある。

3)就学時健康診断の際に、予防接種に関するア ンケートを実施し、保護者に未接種の予防接 種を確認して頂くとともに、接種勧奨を行う。

4)今年度は、「日医テレビ健康講座〜ふれあい ネットワーク〜」でも、子どもの健康を守る という観点から、「予防接種」について12 月 に収録・放映予定。また、これに併せて、11 月には健康セミナーとして一般向けの講演会 も予定している。

大分県:本県の22 年度県内市町村平均接種率 状況は、第T期 92.7 %、第U期 92.1 %、 第V期 89.7 %、第W期 83.8 %であり、目 標値にはまだまだ達していない状況である。

日医、各県の意見を拝聴させて頂きたい。

2)学校欠席者情報収集システムの活用状況と 課題等について(鹿児島県)

【提案理由】

感染症による欠席情報の早期把握と、関係機 関との共有により、児童生徒の感染症予防への 迅速な対応を図るとともに、これまで各学校が 作成していた出席停止や臨時休業の報告の簡素 化を図るため、国立感染症研究所感染症情報セ ンター(以下、感染研)が開発した「感染症に よる学校欠席者情報収集システム」を、鹿児島 県では今年度から導入することが決まった。

現在、県教育委員会が感染研の主任研究官と ともに、学校現場への説明会を開始しており、 7、8 月の試行期間を経て、9 月から本稼働にな る予定である。「学校欠席者情報収集システム」 のホームページ(http://www.syndromic-surveillance.net/gakko/index.html)で確認した ところ、本年4 月現在、全国で約1 万2 千校、 全学校の3 割弱が導入している。九州では佐賀 県・長崎県・大分県・福岡市が導入しており、 熊本県が検討中になっている。本会では、本シ ステムを有効に活用していただくため、7 月21 日(木)にシステムを開発した感染研の大日おおくさ主任研究官を講師にお招きし、学校医をはじめ関 係機関や保護者を集めて研修会を企画した。9 月の本稼働に向け、すでに導入済みの県医師会 におかれては、活用状況や課題等があればご教 示いただきたい。

また、平成21 年に佐賀県担当で開催した本 担当理事者会でも、本県から提案したとおり、 本システムの活用には文部科学省からの都道府 県教育委員会への働きかけも重要と考えるが、 日本医師会としての本システム活用に対する見 解をお伺いしたい。

各県からの回答

福岡県:本県としては導入に至っていない状況である。

福岡市教育委員会では、新型インフルエンザ の発生数が増加したことに伴い、より効率的な 把握方法が必要となったことから、平成22 年 1 月の3 学期始業日より本システムを導入した。

システムの導入により、即時的に各学校の欠 席者数が把握できる事により、市内の感染状況 の把握も短時間となり、また、各種報告の簡略 化並びに学校の事務軽減となった。

現段階での問題点としては、インフルエンザ の欠席者の入力は、全ての学校で行っている が、他の感染症については担当者の入力時間の 確保が出来ないこと並びにシステム運用上の問 題がある。

福岡県教育委員会としては、学校保健安全法施行令第7 条に、出席停止の報告は学校の設置 者に報告することになっており、小・中学校は 市教育委員会までとなっていることから、現時 点においては、県域での情報把握は必要がない との見解であり、本システムの導入についての 検討はなされていない。

今後、本県においてシステム導入を検討する 際に、既に導入済みの県医師会における導入メ リットをご教示いただきたい。

沖縄県:本県の現状としては県教育委員会へ問 い合わせたところ、現在特に「感染症による学 校欠席者情報収集システム」の導入は考えてい ないとのことであり、12 月〜 3 月までの流行期 においては従来の方法(各学校から上がってき ている感染症の報告を集計)で統計をとってい るとのことであった。

導入していない理由としては、本県の“はし か0 プロジェクト”による全数把握が効果を出 し、予防接種率が低いにも関わらず昨年度は発 生がなかったことや、数年前の発生では封じ込 めに成功していることがあげられる。また、入 力に時間がかかってしまうとのことであり、簡 略化が進み誰でも容易に入力可能な状態になれ ば導入を考えるとのことであった。

長崎県:本県では、平成22 年2 月に全ての公 立学校(幼・小・中・高校・特別支援学校) で、また平成22 年10 月には、私立学校におい てもシステムの運用が開始されています。

運用している県体育保健課から提出願った導 入後の成果と課題は次の通りである。

  • 1)(○)学校、学校医、保健所、教育委員会 等、関係機関が迅速に情報を共有している。
  • 2)(○)学校から関係機関〈保健所等〉へ、 児童生徒の出席停止や臨時休業の報告が迅 速にできる。
  • 3)(○)感染症別(疾病別)の患者数等のデ ータ管理ができる。
  • 4)(○)地域や学校での流行の状況がわかる。
  • 5)(△)導入当初は、各学校が毎日パソコン を起動させることへの多忙感があったが、 導入から1 年が経過し、定着してきている ようである。

宮崎県:県教育委員会に確認したところ、導入 については検討中とのことなので、すでに導入 済みの県医師会、また日医の見解を伺い参考に させていただきたい。

熊本県:貴見のとおり、日本医師会のご意見と 各県医師会の状況を参考に対応したい。

佐賀県:佐賀県では、新型インフルエンザ対策 として、平成21 年10 月1 日から欠席者情報の 入力が開始されている。

なお、平成21 年導入の際は、「インフルエン ザの流行期に活用する」としていたため、全て の感染症の入力までは、各学校に求められてい ない。したがって、すべての感染症に対応して いないため、不完全な情報ということで一般公 開は見送られている。

活用状況等は以下の通り。

活用状況

・インフルエンザの流行期に、各学校で健 康観察後、担当者でシステムに入力をし ている。

・県立学校においては、インフルエンザの出 席停止の報告をシステムで行っている。 また、学級閉鎖の報告をシステムで行って いる。

メリット

・中学校単位で情報がみえる。

・インフルエンザの情報の共有化が図られた。

・児童生徒の健康観察が充実した。

・危機管理意識が向上した。

デメリット

・入力ミスがある。

・入力は簡単だが、情報の収集に時間がかかる。

・システムに入力する時間帯に差がある。

大分県:大分県教育委員会に問い合わせたとこ ろ、本年7 月以降は、県内全公立小(305)・ 中(134)・高(54)・特別支援学校(16)で 運用中であり、幼稚園では各市町村毎に判断 し、導入したところもある。

私学については、導入当初に呼びかけをし、 数校は導入しているが、その後の継続運用につ いては、県教委では把握していない。

全公立学校で運用開始したことに伴い、九州 大会終了後に改めて、医師会・福祉保健部等の 関係機関へ協力を依頼したいと考えている。

また、現在の状況を把握・検証し、9 月以降 にシステム活用に向けた研修も検討している、 とのことである。

<平成23 年8 月7 日(日)>

1 平成23 年度九州学校検診協議会(年次大会)(09:30 〜 12:00)

午前9 時30 分より「平成23 年度九州学校検 診協議会」が開催された。

平成23 年度九州学校検診協議会では、小児 生活習慣病部門、腎臓部門、心臓部門の3 部門 による教育講演が行われた。

小児生活習慣病部門では、大分大学医学部小 児科学教授の泉達郎先生より、「学童生活習慣 病検診の経時的推移」と題した講演が行われた。

講演では、大分市が昭和54 年より実施して いる「大分市小児生活習慣病予防検診」につい ての説明があり、「本検診における血液検査の 実施状況と結果」についての報告として、血液 検査を行うことにより、高脂血症、肥満、高血 圧の早期発見につながるという血液検査の有用 性について述べられた。また、医学的管理を要 する学童は、肥満度や身体計測値に関わらず見 出されており、学童期に肥満の評価を行うとと もに、採血による血液検査や血清脂質評価を実 施し、臨床的発症前に高脂血症の状態を把握す ることが重要である。加えて、学童だけでなく、 御両親共に疾病への認識度を高め、生活習慣病 予防に努めることも重要であると述べられた。

腎臓部門では、西別府病院小児科部長の平松 美佐子先生より、「大分県の学校検尿の現況」 と題した講演が行われた。

講演では、我が国の学校検尿は腎尿路疾患の 早期発見、治療を目的に施行され30 年が経過 した結果、主に慢性糸球体疾患の早期発見、早 期治療に結びつき、腎不全への進行を遅らせて いるとして、学校検尿の有用性について報告が 行われた。しかし、九州の学校検尿が抱える問 題点として、1)3 次検診に専門医の有無で検診 に地域差がある、2)非都市部で専門医確保が難 しい、3)診断基準、診断名、事後措置が県、地 方で不統一、4)緊急受診体制の未整備等が挙げ られるとの指摘があった。また、透析導入患者 の増加を抑えるための対策を講じる必要があ り、高校卒業以降のフォローアップについても 検討しなければならないと提起された。

今後、この学校検尿システムが幼児、学童、 成人へとバトンタッチしていく生涯検尿および 家族性腎炎等の解明、生涯のCKD の予防につ ながることに期待したいと述べられた。

心臓部門では、大分大学医学部小児科学助教 の川野達也先生より、「最近話題の心電図所 見:早期再分極とQT 短縮−学校心臓検診の心 電図データの有効活用−」と題した講演が行わ れた。

講演では、大分県における心電図検査は30 年以上が経過しており、蓄積された検診データ は膨大な数に上るが、これらを集積、解析、フ ィードバックするシステムに乏しく、十分に活 用できていない状況にあると説明があり、これ ら検診データを基に行う早期再分極とQT 短縮 に係る調査の必要性について意見されるととも に、調査により見えてくる現在の心電図検診の 問題点、改善点、今後の方向性等についての見 解が述べられた。

2 第55 回九州ブロック学校保健・学校医大会分科会(09:30 〜 12:00)

平成23 年度九州学校検診協議会と並行して 「第55 回九州ブロック学校保健・学校医大会分 科会」が開催された。分科会では、眼科部門、耳鼻咽喉科部門、運動器部門の3 部門による教 育講演、パネルディスカッションが行われた。

眼科部門では、皆良田眼科医院院長の皆良田 研介先生より「眼科学校医に役立つ斜視の知 識」について、ら(羅)眼科院長の羅錦營先生 より「3D 立体映像時代と学校保健における眼 科校医の役割」について、それぞれ講演が行わ れた。

耳鼻咽喉科部門では「学校保健における「こ とばの障害」に対する耳鼻咽喉科医の役割」を メインテーマに、パネルディスカッションが行 われた。パネルディスカッションでは、大分市 立鶴崎小学校教諭の佐藤庸子先生より「学校保 健の現場における小児のことばの障害への対応 ―教諭の立場から―」について、別府発達医療 センター言語聴覚士の末廣沙紀先生より「学校 保健の現場における小児のことばの障害への対 応―言語聴覚士の立場から―」について、佐藤 クリニック耳鼻咽喉科・頭頸部外科院長の佐藤 公則先生より「学校保健の現場における小児の ことばの障害への対応―耳鼻咽喉科医の立場か ら―」について、それぞれ発表があった。ま た、特別講演として、国際医療福祉大学言語聴 覚センター教授の新美成二先生より「学童期の ことばの障害」について講演が行われた。

運動器部門では、大分大学医学部整形外科学 教授の津村弘先生より「中津市における学童期 運動器検診の実際と効果」と題した講演が行わ れた後、活発な質疑応答が行われた。

3 九州医師会連合会学校医会評議員会(12:00 〜 12:50)

○報告

鹿児島県医師会の鮫島秀弥理事より、以下の 1)、2)の事項について報告が行われた後、大分 県医師会の藤本保理事より、3)の事項について 報告が行われた。

1)平成22 年度九州医師会連合会学校医会事業について

2)平成22 年度九州医師会連合会学校医会歳入歳出決算について

3)平成23 年度九州医師会連合会学校医会事業経過について

○議事

大分県医師会の藤本保理事より、以下の議案 について説明があり協議が行われた結果、特に 異議なく承認された。

1)第1 号議案 平成23 年度九州医師会連合会 学校医会事業計画に関する件

2)第2 号議案 平成23 年度九州医師会連合会学 校医会負担金並びに歳入歳出予算に関する件 大分県医師会の藤本保理事より、以下の議案 について説明があり協議が行われた。

3)第3 号議案 第56 回・第57 回九州ブロック 学校保健・学校医大会開催担当県に関する件

協議の結果、第56 回(平成24 年度)は福岡 県に決定し、第57 回(平成25 年度)は沖縄県 に内定した。

4 九州医師会連合会学校医会総会(13:00 〜 13:30)

午後1 時より「九州医師会連合会学校医会総 会」が開催され、大分県医師会の嶋津義久会長 により開催県医師会長挨拶が述べられた後、日 本医師会の原中勝征会長(横倉義武日医副会長 代読)、大分県の広瀬勝貞知事、大分県の釘宮 磐市長より来賓祝辞が述べられた。その後、次 回開催県の福岡県医師会の松田峻一良会長より 次回担当県としての挨拶が述べられた。次回は 平成23 年8 月5 日(日)ホテルニューオータニ 博多にて開催される。

5 九州ブロック学校保健・学校医大会(13:40 〜 15:30)

「学校におけるアレルギー疾患対策」をメイ ンテーマに基調講演並びにシンポジウムが行わ れた。

大分大学医学部地域医療・小児科分野担当 教授の是松聖悟先生より、「アレルギーの子が 安心して通える学校にするために」と題した講 演が行われた。

講演では、「この10 〜 20 年の間で、食物アレルギーが大きな問題となっており、主な原因 は、乳幼児期は鶏卵、牛乳、小麦であり、その 重症度によってはアナフィラキシーといった命 の危険にさらされることもある。成長とともに 徐々に軽快し、食べられるようになる(耐性獲 得)ことが多いが、学童期になっても耐性を獲 得できない場合は難治であるばかりか、甲殻 類、そばなど、新たな食物アレルギーに進展す る場合もある。さらには、花粉症を発症するこ とによって共通なアミノ酸配列を持つ果物にア レルギーを示すようになったり、食後の運動に よって食物依存性運動誘発性アナフィラキシー が惹起されたり、症状も多彩となる。」と説明 があった。

また、食物アレルギーを持つ児の学校給食の 問題点として、「耐性獲得の確認をしないまま、 除去を何年も継続している場合があり、保護者 がそれを学校に要求していることがあるこ と。」、「誤食によって生じる危険レベルがわか らないまま給食対応しており、少量でもアナフ ィラキシーの危険がある食物と、食べ過ぎたと きに軽度のかゆみが生じるだけの食物を同レベ ルで扱おうとしていること」という2 つの問題 点があると提起され、「学童以降の食物アレル ギーの有病率は1 〜 2 %とされているが、アナ フィラキシーの危険がある児は0.5 %程度、そ して1 人当たり平均2 食品の除去で良いことが 推定されるため、専門医、校医、教員、保護者が連携を図ることで2 つの問題点は解決可能で あると考える。」との見解が示された。

アレルギーの子が安心して通える学校にする ためには、数年毎に除去内容を再検討し最低限 の除去を行うこと、またアナフィラキシーの可 能性のあるものと、ないものを区別し、可能性 のあるものを確実に除去することが重要である と説明があり、児童生徒が安心して安全に学校 生活をおくるためには、子供を取り巻く関係者 や関係機関が連携をとり、より良い方向に向け て働きかけをしていくことが重要であると述べ られた。

シンポジウムでは、宇佐市立駅館小学校養護 教諭の乙咲繁子先生より、「アレルギーの子が安 心して安全に学校生活をおくるために」につい て、大分県PTA 連合会会長の冨永大輔先生よ り、「食物アレルギーを持つ子どもの現状」につ いて、松本小児科医院院長の松本重孝先生よ り、「症例を通して学校におけるアレルギー疾患 対策の問題点を探る」について、由布市教育委 員会学校給食センター主査の中島進先生より、 「最先端の給食センターとしてすべきこと」につ いて、由布市立東庄内小学校主任学校栄養職員 の本田真紀先生より、「由布市学校給食センタ ーにおける食物アレルギーの対応について」、そ れぞれの立場から見解が述べられ、その後、フ ロアを交えて活発な質疑応答が行われた。

印象記

理事 宮里 善次

平成23 年8 月6 日大分全日空ホテル・オアシスタワーで九州学校検診協議会第一回専門委員会 と九州各県医師会学校保健担当理事者会が開催された。

しかしながら、当日早朝まで台風9 号の暴風圏内にあり、飛行機が飛んだのは出発予定時刻から 8 時間30 分後であり、福岡から大分への移動もあり、会場に着いたのは深夜22 時30 分であった。

残念ながら両会とも欠席となった。協議における細かいニュアンスは伝えられないが、協議内 容に関する各県の事前回答の資料があるので参考にしていただきたい。

翌日、同会場で「第55 回九州ブロック学校保健・学校医大会 平成23 年度九州学校検診協議 会(年次大会)」が「環境の変化とからだ−いま、学校現場に何を求められているのか−」をテ ーマに開催された。

午前中は年次大会の教育講演(1)小児生活習慣病部門、2)腎臓部門、3)心臓部門)と、分科会 (1)眼科部門、2)耳鼻咽喉科部門、3)運動器部門)が開催された。筆者は教育講演3 題を拝聴した。

まず、小児生活習慣病部門では大分大学医学部小児科学の泉達郎教授が「学童生活習慣病検診 の経時的推移」と題して講演された。大分県では昭和54 年から腎臓検診と同時に小児生活習慣病 予防検診を実施しており、かなり早い時期から取り組みがなされてきた。身体計測以外に採血 (血液一般検査、血清、脂質、肝機能検査)を行い、一次検診から二次検診、さらには専門医への 検診につなげている。しかしながら、大分県では肥満、痩身ともに全国平均を上回っているとい う現状が報告された。検診の取り組みが必ずしも結果につながっているとは言い難いが、全国平 均を上回っているからこそ、必要度が高いと言えるだろう。

腎臓部門では西別府病院の平松美佐子小児科部長が「大分県の学校検尿の現況」と題して講演 された。

九州の学校検尿が抱えていた以前の問題点として1)3 次検診に専門医の有無で地域差がある、 2)非都市部で専門医の確保が困難、3)診断基準、診断名、事後措置が県や地方で不統一、C緊急 受診体制の未整備、が指摘された。しかしながら、2004 年に九州学校検診協議会腎臓専門委員会 によって作成された「九州学校検尿マニュアル」によって、3)の項目が大幅に改善されたことが 報告された。

心臓部門では「最近話題の心電図所見:早期再分極とQT 短縮−学校心臓検診の心電図データ の有効活用」と題して大分大学医学部小児科学の川野達也助教の講演があった。文献的に定義さ れていないことと、死亡や有症状の自験例がないと云うことで、文献紹介に止まった感がした。

午後は「学校におけるアレルギー疾患対策」をテーマにシンポジウムが開催された。今まで議 論されたことに終始するような内容であったが、基調講演をされた大分大学医学部地域医療・小 児科分野担当の是松聖悟教授の意見が印象に残った。「学校現場で“エピネフィリン(エピペン)” が使われるようになって、逆に学校現場の教師がアレルギー疾患にぴりぴりしている。必要以上 の検査と診断書、生活指導を要求されることが少なくない。アナフィラキシ―ショック以外は慌 てる必要もないので、何が緊急で何が緊急でないのかを学校医と保護者と学校側で確認する必要 がある。」