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平成23年度 第1回都道府県医師会長協議会

小渡敬

副会長 小渡 敬

去る6 月21 日(火)午後3 時より日本医師 会館において標記会長協議会が開催され、宮城 会長(日医理事)の代理で出席した。

はじめに、今村聡常任理事の司会により開会 の辞があり、会次第に沿って議事が進められ、 原中勝征日本医師会長より概ね次のとおり挨拶 があった。

「東日本大震災に際しては、会員の先生方に は大変なご協力を頂き、感謝申し上げる。現在 に至るまで1,200 人以上の先生方に現地で支援 活動を続けて頂いている。

まだ、福島原発問題の解決には至ってはおら ず、この問題が解決しなければ今回の大震災は 終結しないと考えているので、今後とも引き続 きご協力をお願いしたい。

政権の混乱が生じ、私たちは随時方向性を判 断していかなければならない。しかし、日本医師 会としては、どのような場合でも日本医師会と しての信念をもち、医療を中心に、会員並びに 国民の為に地域医療の崩壊を正していくための 予算や制度上の問題を提案していく次第である。

また、これまで社会保障審議会、その他の審 議会に委員が派遣されていなかったが、今は重 要な会議には日医より代表を送れており、その 中で意見を述べる機会がある。また常任理事 が、担当の官僚や政府の三役に対して提言をし ているので、少しずつではあるが成果が出てく るものだと思っている。

引き続き協議に移り、各県から寄せられた 10 題の質問並びに日本医師会から提案された 議題2 題について協議・報告が行われたので概 要について報告する。

協 議

(1)母体保護法について[石川県]

<提案要旨(抜粋)>

母体保護法第14 条には、「都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会 の指定する医師は、本人および配偶者の同意を 得て、人工妊娠中絶を行うことができる。」と あるが、すべての都道府県医師会が公益法人に 移行する保証はなく、一般社団法人となった都 道府県医師会は指定権限を失い、母体保護法指 定医師の空白地域が発生することは明らかであ る。これらの課題解消のために、現行法の改正 について政府との交渉を期待する。

回答:今村定臣常任理事

ご存じのように、去る6 月17 日に改正母体 保護法が成立した。改正法には日医が要望した 内容が100 パーセント取り入れられ、先生方に お約束を果たすことが出来たとホッとしている ところである。当局との交渉が本格化してから 1 年余りになるが、都道府県の会長先生方には 様々な方面からご指導・ご支援を頂き、今回の 成果を勝ち得ることが出来た。衷心よりお礼申 し上げる。

今後、母体保護法の運用については従来通り 都道府県医師会に依頼することになったので、 よろしくお願いしたい。あらためて会長先生方 の絶大なご支援・ご協力に深甚の謝意を申し上 げる。

(2)災害に対する医療支援について[石川県]

<提案要旨(抜粋)>

東日本大震災でのJMAT の活躍は評価でき るが、DMAT や各病院系列等からの医療支援 活動がばらばらに行われている感が否めない。 これを機に日本医師会が中心となり災害に対す る医療支援活動のシステム構築を希望する。

また、通常より原発事故を含めたあらゆる災 害を想定し、災害支援に即対応可能な部署を日 本医師会内に設置することを希望するととも に、活発な啓蒙活動を期待する。

回答:石川広己常任理事

6 月20 日現在のJMAT 活動状況は、派遣 中・派遣済みが1,295 チームある。多大なるご尽力を賜っている。

システム構築については、ご指摘通り、東日 本大震災では様々な医療支援チームが被災地に 派遣され、更に個人によるボランティア活動も 行われ、日本医師会では二次災害への補償を目 的として、医師会以外のチームもJMAT の枠 組みにするよう都道府県医師会にお願いした経 緯がある。JMAT は、被災発生時はまだ構想段 階であり、急遽立ち上げたため準備不足であっ たことは否めないが、これを大きな拠り所とし て、日本医師会、都道府県医師会、郡市区医師 会の組織力を十二分に発揮した医療支援システ ムの構築に今後も努める所存である。

更には、中央防災会議への日本医師会の参画 を果たし、災害時の医療活動の指揮系統、役割 分担と連携の重要性を国に主張していく。

また、関係団体、関係行政機関との連携につ いては、原中会長が会長、横倉副会長が事務局 長として被災者健康支援連絡協議会を立ち上げ ている。本会を含む16 団体、厚労省を含め4 省が参画しており、被災地のニーズを聞きなが ら、各団体の力を結集して支援に携わっていく 所存である。

通常時から日本医師会内に災害対応の部署を 設置するご要望については、大災害時の支援活 動が医師会組織の総力を挙げて取り組むべきと 考えている。重要なのは、災害発生時に即座に 通常モードから災害モードに切り替えることで あろうと考える。日本医師会では、今回の災害 が発生した時、即座に災害対策本部を立ち上げ、 本部長の原中会長を筆頭に副会長、常任理事が それぞれ担当分野を受け持ち、事務局も、局長 の下、平時とは異なる分野も担当し対応した。

活発な啓発活動への期待については、震災直 前まで、救急災害医療対策委員会とその小委員 会でアメリカ医師会の災害医療研修コースも参 考にしながら、JMAT へ参加する医療関係者の 研修とすべての医師会員への研修について検討 していた所であった。残念ながら実現していな いが、今後も引き続き検討していく所存である。

(3)災害時医療等の支援に対するタイムリー な情報提供システムの構築について[新潟県]

<提案要旨(抜粋)>

今回の東日本大震災では、医師会や各医療機 関の災害時の連携を高める上で災害時における 地理情報システム(GIS : Geographic Information Systems)が役立つのではないか。 避難生活の長期化が予想される現在、医療面で の支援活動の充実が求められているが、各医師 会においても災害発生時からタイムリーな情報 提供を行うための各種システムの構築が必要と 考える。

回答:石川広巳常任理事

日本医師会では、被災地の医療支援活動に於 いて正確かつ迅速な情報が必要と考え、第28 報まで情報提供をFAX で行ってきた。

今回の大震災の教訓の一つが、被災地との正 確な情報のやり取りであると痛切に感じてい る。避難所の医療とともに、感染症発生動向把 握、衛生環境、食事、自宅避難者の状況把握等 について、GIS の応用は有用と考えている。こ のような情報が入力され被災地の関係者、後を 引き継ぐチーム、チームの派遣を検討する各都 道府県と情報共有ができれば素晴らしいことで ある。

しかし、実際にはGIS の情報端末に誰がデ ータ入力し、誰とデータを共有するかが課題と なる。新潟県のご提案では、避難所の収容可能 人数や病院の患者受け入れ状況、心のケア、感 染症発生動向の把握が挙げられているが、そう なると端末にデータを入力し、共有するのは、 JMAT や地元医師会だけではなく、JMAT 以 外の様々な医療支援チーム、保健市、避難所の リーダー、地元行政の担当者、被災地の病院の 担当者など、非常に広範囲である。

情報端末やソフトの価格統一、他県を含む関 係者への配布など医師会単独では対応が難しく なる恐れがある。

また、日医総研では津波の浸水地域と医療機 関の位置情報をマップに落とし、被災状況の把 握に利用していただいている。また、この地理 情報システムは災害時だけでなく、例えば、地 域の医師不足状況などをマップで示すことで、 平時の医療政策を考慮するうえでも有用である。

厚労省の4 疾病5 事業に関する指針でも、 GIS 等の結果を参考に救命救急センターの整備 を地理的空白地域を埋める形で進めるよう求め ている。

現在、本会では被災者健康支援連絡協議会を 立ち上げているが、4 省(内閣府、厚労省、文 科省、総務省)が詳細な避難所の状況を把握し ており、情報端末の入力も可能である。いずれ にせよ、地理情報の活用が災害医療の新たなツ ールとして重要であることを今回の震災で充分 に理解している。これを教訓として次の災害に 備えて、GIS を含めた医療支援活動を検討して 参りたいと考えている。

(4)予防接種ワクチン価格について[山口県]

<提案要旨(抜粋)>

国のワクチン接種緊急促進事業により、平成 23 年1 月より子宮頸がん予防ワクチン、Hib ワ クチン、小児用肺炎球菌ワクチンがほぼ全額公 費負担で個別接種されることとなったのは評価 できるが、ワクチン価格が高すぎるという意見 が郡市医師会だけではなく市町の実務担当者か らも複数あった。世界的にも予防接種政策の後 進国と言われている我が国の予防接種向上を図 るためにも、ワクチン価格を下げるべきと思う が、日医の見解をお聞きしたい。また、関係方 面にも働きかけていただきたい。

回答:保坂シゲリ常任理事

価格については、日本と海外の価格を比べる と、必ずしも日本の価格は高くはない。

米国を例に出すと、米国は二重価格である。 無料で摂取するワクチンについては国が全面的 に買い取っており、日本と比べて安価ではある が、民間保険の予防接種をカバーしていること も多く、そこで使うワクチンは民間の医療機関が買い入れるため、その価格は日本と比べて決 して安くはない。

補正予算による3 つのワクチンの接種事業が 開始される以前から、各メーカーにはワクチン 価格の引き下げを申し上げ、再三再四価格交渉 しているところだが、結果的には値下げ交渉は 成功していない。しかし、今後も引き続き強く 交渉して参るつもりであるので、予防接種法改 正等に合わせて国がワクチンを買い上げる仕組 みや国によるメーカーへのワクチン価格の値下 げ申し入れの必要性について、地元選出議員へ の働きかけやお力添えをお願いしたい。

(5)消費税補填分問題について[福岡県]

<提案要旨(抜粋)>

四病協は、消費税を「原則課税」に改めるに は、診療報酬上乗せ分の1.53 %を国に返すべ きとの驚くべき認識を示している。

また、日医は以前より、補填分の1.53 %は 実態不明と言っているが、日医の考えと今後の 方針をお尋ねしたい

回答:今村 聡常任理事

診療報酬の中に1.53 %が含まれていると言 うことについては実態とは解離している。さら に、診療行為に対する0.43 %についても、度 重なる診療報酬のマイナス改定で実態が無くな っている。

病院団体も共通の認識だと思っている。日医 の税制検討委員会の中に病院団体も入っている が、その一方で、病院団体は独自の協議会を設 置し様々な議論が行われているようである。そ の中で1.53 %を戻さなければとの議論が出て、 その部分だけマスコミが取り上げ記事になった と言うことである。日医としては、メディファ ックスに掲載された当日、4 病院団体に今後注 意するよう申し出たところである。

現在、国と与党の中で社会保障と税の一体改 革の議論が進められ、消費税の引き上げが必要 という事になっている。このままの仕組みで は、医療機関は消費税で倒れてしまうことにな りかねない。多くの国会議員もこの問題を解決 しなければならないとの認識を持っているよう である。政府税調の答申書を見ても、消費税率 を上げると言う総論の中で、個別の問題として 医療の対応が取り上げられており、また、仙石 氏もゼロ税率と言っているようであり、気運は 高まっている。日医としても、今後とも関係団 体と一致協力して要望を続けていきたいと考え ている。

また、日医としては、患者の負担を増やさな いよう主張しているが、ゼロ税率であれ、軽減 税率であれ課税の仕組みになると、医療機関は 控除のための事務手続きや患者への説明等負担 が出てくる。消費税問題については、広く会員 の意見を聞いて対応したいと考えており、近々 日医からアンケートを行うのでご協力頂きたい。

(6)改めて診療報酬、介護報酬の同時改定論議について[静岡県]

<提案要旨(抜粋)>

未曾有の東日本大震災に遭遇し、国は、復 旧・復興には大きな財源が必要であるが、崩壊 の危機に晒されている地域医療や介護の現場で は、今回の診療報酬・介護報酬同時改定に期待 している関係者が数多くいるのは歴然たる事実 である。

例え引き下げになってもいいから、改定論議 を通じて現状を訴え、不合理な制度は是正して ほしいということが会員の正直な気持ちではな いか。このまま、同時改定の見送りを主張し続 ければ、日医だけが蚊帳の外に置かれるのでは と危惧している。今一度日医執行部のお考えを お聞きしたい。

(7)2012 年度の診療報酬・介護保険同時改定についての日本医師会の申し入れ(要請)について[福岡県]

<提案要旨(抜粋)>

診療報酬の改定は、今後の医療保険制度に与 える影響は非常に大きく、真剣かつ慎重に対応 すべきであるが、医師会が国家の財源問題を理由に、地域医療を崩壊に導いている診療報酬問 題を避けることが日本の医療を望ましい方向に 導くとは思えない。日医の申し入れ(要請)が 理事会で前もって協議されていないようだが、 その検討及び意思決定がどうなされたのか。ま た、医療介護の崩壊への道を歩まないように 2012 年度の診療報酬・介護報酬の改定に取り 組む考えはないか。

*(6)、(7)については関連していることか ら、一括して回答があった。

回答:中川俊男副会長

本会の同時改定見送りの意思決定について は、4 月24 日に第124 回代議員会で、診療報 酬・介護報酬についての代表質問で、被災地の 復興に全力を注ぎ、一日も早く被災地の医療を 再生させるため、2012 年度の同時改定を見送 ることを提案した。しかし、静岡県医師会がお っしゃるように、2012 年度の改定では全体的 かつ大幅な引き上げは不可欠であり、本会執行 部もそのことを熱望し、今度こそ財源の配分を 正し、地域医療を救わなければならないため に、社会保険報酬検討委員会、有床診療所の在 り方に関するプロジェクト委員会、同時改定に 向けたプロジェクト委員会を新たに設置し、エ ネルギッシュに改定に向けた準備を怠りなく進 めてきた。しかし、東日本大震災が発生し、福 島原子力発電事故は今なお進行中である。

本会では、JMAT の被災地への医師派遣をは じめとする被災地の方々の生命を守る活動、厚 生労働省をはじめとする行政との交渉等が山積 みであり、一刻の猶予も許されず、全身全霊を 捧げなければならないことから、我々は苦渋の 決断を行った。

代議員会に提出された同時改定の見送りを含 む決議案は、結果的に取りまとめには至らなか ったが、我々執行部は、日本の医療を守りたい という思いは一致しているとものと受け止め、 その後、常任役員間で熟慮を重ね、5 月10 日 の常任理事会で政府に対して、2012 年度診療 報酬・介護報酬同時改定の見送りを申し入れる ことをあらためて諮り、承認を受けた。

また、5 月12 日の定例記者会見で、急いで 同時改定見送りを重ねて主張した件について は、第一に、被災地の方々に安心していただけ るメッセージを早く示したかったこと、第二 に、他の病院団体を含め医療界に対して、本会 の方針を明確にかつ速やかに伝えるべきである と判断したためである。

5 月17 日の理事会、それに先立つ理事打合 会にて、経緯を説明申し上げた。5 月19 日には 原中会長が、細川厚生労働大臣に直接同時改定 の見送り等の5 項目の要請を申し入れた。

次に、あらためて同時改定の日本医師会の考 えを申し上げる。同時改定の見送りを要請し、 併せて不合理な診療報酬・介護報酬について は、留意事項通知や施設基準要件の見直しを要 請した。

まず、全面改定の見送りということを明確に 示した。不合理な診療報酬については、静岡県 医師会のご指摘のとおり、診療報酬上の評価に 他ならないが、過去にも、期中改定、部分改定 が行われた事例がある。例年の決まった時期に おける改定率の決定を伴う大掛かりな改定を行 うべきではないが、部分改定は不可避であると 考える。地域医療の崩壊はなんとしてでも食い 止める。

医療経済実態調査については、6 月3 日の中 医協総会で医療実態調査を行うこと自体が、診 療報酬改定を行うことを意味することではない こと、本会の調査の取り扱いが従来と異なるも のであることが確認され、理解を示した。但 し、当実態調査は改定年を挟んだ平成21 ・22 年度の調査である。現在進行中に大震災の影響 が全国的に波及する平成23 年度の実態もきち んと把握するよう強く求めている。

次に、細川厚生労働大臣の会見のご指摘につ いては、中医協で当実態調査を実施することが 同意された6 月3 日の記者会見では、「改定は 延期しない」と発言したとの報道があった。発 言内容を詳細に検討すると、大臣は「医療経済 実態調査は進めていくということで、今のところ、それを延期することについては考えていな い」と発言している。この時の記者の質問が、 「来年の診療報酬改定をやるべきか」との内容 だった。延期しないと回答したのは、実態調査 のことであったのにもかかわらず、改定を延期 しないと誤って報道があった。

この後、厚生労働省が実調を行ったことや改 定を行うことを意味するものではないと発言し ている。なお、原中会長が、細川大臣に5 項目 を申し入れた翌日の5 月20 日、枝野官房長官 は記者会見で、本会が改定見送りを要請してい ることを問われ、「厚生労働省限りで判断いた だける話ではなく、制度全体に係る問題であ り、厚労省から相談が上がれば慎重に検討した い」と述べ、明確な方針は示していない。

日本医師会は同時全面改定の見送りの主張を 続けつつ、被災地を最優先に、そして日本の医 療全体の再生のために万全の態勢で取り組む。

最後に、例えマイナス改定になっても、診療 報酬改定を粛々と進めるべきとのご指摘につい ては、本日敢えて踏み込んだ形でお答えした い。復興は遅々として進まず、原子力発電所事 故は進行中である。この国難の混乱期において は現行制度の弾力的な運用で乗り切るべきであ り、国の根幹を揺るがす制度改革である全面改 定は行うべきではないと考えている。

執行部としては、日本医師会の地域医療を再 生したいという思いは、他のどの団体にも負け ず、その為に、絶対にマイナス改定は阻止しな ければならない。しかし、財務省は、第二次、 第三次補正予算編成に向けて、財源不足を表明 している。さらに、改定率が決まる年末の 2012 年度予算編成においては、財政状況はさ らに悪化したというだろう。現政権では財務省 がますます強大化しており、復興を建前に、本 来あるべき改定財源を奪い取り、医療界を徹底 的に裁くだろう。更に社会保障費2200 億円削 減の実質的な復活まで目論んでいる。

医療界の中で財源の奪い合いになるのは必定 である。病院対診療所、勤務医対開業医の対立 構造が作られる。我々の主張が正しいとして も、診療報酬引き上げの要求はマスメディアの 格好の批判材料になり、それこそが財務省の思 うつぼである。

日本医師会は、国民と国民の医療を守る責務 がある。我が国の将来にも責任を負う立場があ る。将来に希望ある医療を残すため、我々は徹 底してあるべき医療の姿を示し、国民に理解を いただく努力をしていきたい。

大震災からの復興は一刻の猶予もないが、今 は、復興と原子力発電所事故の終息に全国民が 全身全霊を傾けるべきである。全国の医療再生 もまったなしであるが、将来も持続する医療を 思った時、我々は復興の為にすべきことを優先 しないわけにはいかない。我々は医療再生にも 必死の思いで取り組む所存である。どうぞ、ご 理解のほどお願いしたい。

(8)医療・介護制度の改革案について[埼玉県]

<提案要旨(抜粋)>

社会保障国民会議において出された、非効率 な資源利用・非最適化の現状を、充実・強力か つ効率的な資源利用にかえる将来像とするとい う考えの流れから社会保障改革案が出来上がっ ているが、効率化と言うものは、医療費特性の 意味があるように思われる。

改革案には多くの問題点があると思われる が、大きな問題点についてご教示いただきたい。

回答:鈴木邦彦常任理事

政府の社会保障改革案は、本会の社会保障改 革案も医療介護に人的資源及び財源を投入する 方向性を打ち出したことは評価できるが、そこ に効率化を盛り込みさらなる患者負担を強いる ことは、断固として反対である。今回の社会保 障改革案の大きな問題点は以下のとおりである。

第一に、財源確保のために受診時定額負担や 70 〜 74 歳の患者の一部負担割合の引き上げな ど患者にさらに経済的負担を求めていることで ある。わが国では自己負担割合は最高3 割とす でに公的介護保険のある先進各国中、最も高く、限界に達しており、これ以上の患者負担が 増加すれば、受診を控え重篤化するケースが生 じかねない。

公的保険財源は、患者の負担に求めるもので はなく、保険料や公費に求めるべきである。

第二に、さらなる急性期医療の強化を通じた 平均在院日数の短縮化を打ち出していることで ある。日本が先進各国に比べて、平均在院日数 が長く、受診回数が多いと指摘されているが、 国民医療費が低く抑えられている中で、国民の 健康度は極めて高く、海外からも注目されてい る。平均在院日数の短縮化は、高齢者の増加や 医療の安心・安全確保の面からも限界である。

第三に、急性期医療とその集約化及び在宅医 療に偏重していることである。医療介護につい ては、「切れ目のない医療・介護」という視点 を持つべきであり、亜急性期医療や慢性期医療 を含めた全体的な機能強化が必要である。ま た、政府案では、医療介護の提供体制の将来像 の例として、小・中学校区レベルなど地域単位 を切り口に、それぞれに機能を持たせている が、地域の実情はさまざまである。日本医師会 は一定の地域に限定せず、幅を持たせて都市や 地方の実情や、家族の在り方も考慮した多様な 提供体制を柔軟に活用できる仕組みを提案して いる。

第四に、医療や介護の質の低下を招きかねな い強引な業務分担を前提にしていることであ る。政府は人的資源を投入するとはしている が、その前提として医師については他の職種と の役割分担により、20 %業務が減ることを見 込んだとある。医療の質が低下し、国民の健康 が損なわれる恐れがある業務分担を安易にする べきではない。

現行の保助看法の下でも、一定の対応は可能 である。その範囲で業務分担を検討し、チーム 医療を強化していくべきである。

去る5 月17 日に、今回の政府案について三 師会の要望を取りまとめた意見書を、与謝野社 会保障税一体改革担当大臣、岡田民主党幹事 長、細川厚労大臣宛に提出したところである。また、政権与党である民主党及び国民新党の関 係国会議員に問題点の説明を行い、理解を求め てまいった。

超高齢社会の医療介護制度の見直しにあたっ ては、今後も世界的にも極めて評価の高い我が 国の医療介護制度を、既存資源を活用し、超高 齢社会に対応した日本型モデルとして進化でき るように、国に対してさまざまな提案をしてい きたいと思う。

(9)監査の立会について[岡山県]

<提案要旨(抜粋)>

監査の立会については、医療機関擁護の観点 から担当役員が積極的に対応してきた。これに 対して医師会の旅費日当は、わずかにあるもの の、調書一枚ごとに署名捺印を求めるなど事務 作業が大きく、1 医療機関に数日かかり、1 月 に3、4 日も監査があり負担が大きい。

監査立会会の担当者の負担について、厚労省 と協議して負担軽減を図っていただきたい。

回答:鈴木邦彦常任理事

監査の際の学識経験者の立会については、昭 和55 年12 月の健康保険法改正に於いて定めら れたものであり、これにより指導監査の更なる 円滑な実施を図る事を目的とし、立会について は、三師会からの働きかけにより改正された経 緯がある。

行政としても公平・公正な指導監査を行うた めにも、医師会が指定した学識経験者を立ち会 わせることが大切と理解している。なお、本会 が学識経験者を指定しない場合は、例外として 基金か国保の審査員に立ち合いが依頼されるこ ととなっている。

ご指摘のように、最近の監査案件は複雑にな っており、弁護士が帯同する場合も多く、時間 がかかる傾向にある。特に病院では事情聴取な どに時間がかかる。監査の結果により、取り消 しなどの行政上の措置が行われるため、開設管 理者、保険医、医療施設の従業員等に対する調 書が作られ、確認の為、最後のページに聴取された人から署名捺印をいただくことになってい る。この作業は大変なものだと拝察する。

監査立会者の負担軽減については、出来るだ け一人の先生のご負担にならぬよう、都道府 県、地区医師会の担当の先生方で交代する等工 夫して対応いただきたい。

(10)日本医師会の代議員の任期及び届け出期限の変更について(要望)[宮崎県]

<提案要旨(抜粋)>

公益法人制度改革関連三法の施行により法人 の役員任期が規定されることから、日医代議員 と都道府県医師会の役員選出の時期にずれが生 じることになる。

ついては、日医代議員の任期及び届出期限の 変更を要望したい。

回答:今村聡常任理事

従来、都道府県医師会では役員改選年の2 月 に代議員会を開催し、役員と日医代議員を選出 している。しかし、新制度移行後は、役員の任 期は、就任日ではなく選任日から起算されると いう新たな法律の縛りを受けることになること から、これまでどおり役員任期2 年で運営して いくためには、新年度開始後の4 月以降に役員 を選任する必要が出てくる。

一方、日医の代議員の任期は、前期の定款諸 規程改定検討委員会で4 月1 日からスタートす るという答申を纏めている。本会では4 月に代 議員会を招集し、予算、事業計画の報告を行う こととし、6 月の代議員会で役員選挙と決算の 承認を得るという段取りを組んでいる。

このことを受け、宮崎県では、日医代議員の 任期を4 月1 日にすると、都道府県医は日医代 議員を前年度の2 月ないし3 月に選出し、ま た、都道府県医師会の役員は新年度の4 月以降 に選出しなければならないことになり、いろい ろ不都合が生じる。日医代議員の任期を4 月1 日から5 月1 日に変更することにより、各都道 府県医師会では、新年度の4 月に都道府県医師 会の役員と日医代議員を同時に選任できるのではないかと言う具体的な提案をしてきたもので あると考えている。

従来、日医役員の選挙事務は代議員会の議事 運営委員会で担っているが、この度、「会長選挙 制度に関する検討委員会」の答申を受けた。答 申の内容を「定款諸規程改定検討委員会」で検 討していただいたところ、次期役員選挙(平成 24 年度)から、代議員会から離れた形の選挙管 理委員会を設置することが提言されている。

従って、役員選挙事務が代議員会から離れる ことになると、代議員の任期を4 月1 日から5 月1 日に変更しても何ら問題はないことにな る。ついては、宮崎県からのご提案の代議員の 任期変更については、今後「定款諸規程改定検 討委員会」で検討させていただきたい。

(11)日本医師会定款施行細則改正(選挙管理委員会関連)[日医]

説明:今村聡常任理事

本件については、先ほどの宮崎県からのご提 案に対する回答でも説明したが、平成23 年3 月25 日に「会長選挙制度に関する検討委員会」 の答申が提出された。

その中で、代議員以外の会員を以って組織す る選挙管理委員会を、次回選挙(平成24 年度) から設置することが提言されている。これを受 け、4 月13 日の第3 回定款諸規程改定検討委員 会で次回役員選挙までに、代議員会以外の会員 で組織する選挙管理委員会を設置することを合 意した。そして6 月11 日の第4 回委員会で、 選挙管理委員会に関する定款施行細則の改正案 を検討し、本日当委員会の蒔本委員長(長崎県 医師会長)から原中会長宛て中間報告として答 申された。

当該施行細則の改正案については、今後、都 道府県医師会と全代議員会へ送付し内容をご確 認いただくと共に、来月の理事会で協議した上 で、来る10 月の日医代議員会で承認を得、来 年4 月の役員選挙から実施する運びとしたい。

(12)特定看護師(仮称)について[日医]

説明:藤川常任理事

チーム医療推進会議の議論における日本医師 会の考えとして、チーム医療の推進については 本会としても賛成の立場である。

しかし、厚労省は、専門看護師、認定看護師 を特定看護師という位置づけにして、医師が行 うべき医行為の中で、侵襲性の高い行為例えリ スクがあっても、研修を受けていれば良いとい う流れが作られつつあり、患者の医療安全の立 場からも反対の立場をとっている。

医療界、特に救急救命センターや心臓外科等 からの要望が強いようであり、厚労省と看護協 会が動いているが、あくまでも医師不足の医行 為については医師が行うべきである。

研修医や学生にきちんと指導し医師を育てる ことが、医師不足の解消につながる道であろう と主張しているのでご理解いただき、各県に於 いても看護協会や大学病院、救急病院からきち んと同意を得て、世論形成をお願いしたい。

印象記

副会長 小渡 敬

平成23 年6 月21 日、第1 回都道府県医師会長協議会が行われ参加した。今回も各県より10 題、日医より2 題の議題が提出された。どの議題もそれぞれ重要な議題であると思われるが、特 に母体保護法については従来通り医師会で行えるように議院立法で整備された。これについては 執行部の話ではかなりの政治力を駆使して立法化する事が出来たという話をしていた。次に診療 報酬・介護報酬の同時改訂議論については、代議員会で執行部一任になったにもかかわらず、ま た蒸し返すような意見が聞かれた。それに対して原中会長の答えは、震災を理由に延期すべきだ と力説しており、理にかなっていない部分もあるが会長の話は妙に説得力があり、反論する者は いなかった。

政府の社会保障改革案の問題点を日医が4 項目上げているので、それについて詳しくは本文に 目を通して頂きたい。第1 の問題は財源確保のために受診時の定額負担や患者の一部負担割合を 引き上げようとしていること、第2 に急性期医療の平均在院日数の短縮化を図ろうとしているこ と、第3 は急性期医療および在宅医療に偏重していること、第4 は特定看護師の問題である。

今回はそれほど活発な議論はなく時間内に終わることができた。