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出会いに感謝

野中公子

琉球大学医学部附属病院 野中 公子

このたび、県医師会会報に寄稿するという晴 れがましい機会を得た。内容は自由とのことだ がこれまでの先生方はいずれもしっかりした文 章を書いておられる。私のような者が何かを書 くのは恥ずかしいが、読んで下さる方の暇つぶ しにでもなれば幸いである。

子供の頃、将来結婚して母親になったら、い わゆる専業主婦になって家のことをしっかりし て、子供の帰りを待つようになるのだと思って いた。子供と一緒に料理したり、雨の日は傘を 持って迎えに行ったり・・・。それは最も身近 な大人の女性のモデルである自分の母親をみ て、漠然と思い描いていた将来像であった。

ところが人生は色々あるもので、思いがけず 医学部に進学して医者になり、大学院に進学し て基礎研究の道が開かれた。更に思いがけず結 婚、出産が叶った。多くの恩師や先輩後輩、友 人に恵まれて現在の私がある。家族にも助けら れている。本当に感謝、感謝である。

まだ若輩であるが、今までの人生の中で一番 大きな出来事は現在進行形の育児である。今ま では自分が頑張れば何とかなることが殆どであ ったが、子供のことではどうにもならない時が あることが分かった。世間のお母さんたちの大 変さを実感するとともに、我が身のことになる まで思い至らなかった自分の器量のなさを恥 じ、反省している。

私は産休明けすぐに職場に復帰した。体調が 安定していたことや、親の助けがあったのもあ るが、妊娠中から出産後の自分の生活を具体的 に考え、職場復帰の意思を強く持っていたこと が大きかったと思う。育児をしながらの仕事は 大変ではあるが、働いていることで生活のリズ ムが出来、社会とつながり所属がある安定感、そして収入がある安心感が得られている。私に とって仕事はとても大切なものである。

おかげさまで我が子は健康な方だと思うが、 それでも今まで色々な病気をした。一般的な風 邪はもちろん、突発性発疹、マイコプラズマ感 染症、中耳炎、水痘など。その度に職場に迷惑 をかけ、小児科や耳鼻科の先生にお世話になっ ている。disease-free な期間は2 ヶ月もたないの が現状である。突然の子供の体調不良のため、 週単位で進めていた研究を中断しなければなら ないこともあった。最近はペースが掴めて来たこ ともあり、家人の勤務予定をにらみながらスケ ジュールを組めるようになった。それでも時には 仕事をつめこみすぎて結局やり直しになったり もしている。また、子供の健康に少しでも懸念 があったら早いうちに医療機関を受診するよう にしている。そのことで軽く済ませることが出来 るし、自分の負担も減る。現在も軽い鼻汁程度 であるが週2 回、定期的に耳鼻科受診中である。 家事は家電をフル活用。家庭と仕事の両立なん て無理と思っていたがやりようはきっと見つか る。そして何より子供の笑顔に励まされている。

今は第一線の臨床医と言う訳ではないが、そ れでも子供の急な病気で突然仕事を休まなけれ ばならなくなった時はつらい。その分の負担を かぶる同僚が必ず出るからである。その分どこ かでお返ししたいのだが、それを果たす前に次 の迷惑をかけてしまう。こういう気持ちが積み 重なって、出産を機に休職、退職に至る人が出 るのだろうと思う。私も、いっそ辞めた方が良 いのかと迷ったことがある。でも、今だけ、一 時だけと周囲に手を合わせ、自分を励ましてい る。先日、久しぶりに研修医時代を共にした同 期女医さんと会う機会をもてた。同時期に育児 をしており、悩みも共通するものがあった。話 して全てが解決する訳ではないが、なんだかす っきりした。

最後になるが、職場復帰にとても大切な保育 園探しについて、個人の経験だが参考になれば と思い、記載する。

保育園探し1 :殆どの保育園は早くても生後3 ヶ月から受け入れだった。子供のことを考えるとそ の方が良いだろうが、私の場合は時間がかかるほ ど職場復帰しにくくなると思ったので、随時入園 可、生後2 ヶ月から預かってくれて、授乳にも通 える職場の保育園にお願いすることにした。自分 だけでなく育児の専門家にもみてもらっていると いう安心感があり、乳幼児に関する様々なこと を教えてもらって非常に助かった。とても家庭的 な保育園で、子供も喜んで通っていた。

保育園探し2 :上記保育園が3 歳までなので、 引き継いで預けられる所を子供が1 歳半を過ぎ る頃から探し始めた。自宅または職場の近く で、送り迎えしやすく、場所が分かりやすい所 (両親以外にお迎えを頼む可能性がある為)、出 来れば認可保育所という基準で探した。インタ ーネットを活用したり、直接評判を聞いたりし て、休日を利用して3 〜 4 カ所下見をし、最終 的に2 カ所に希望を絞った。1 回目の申し込み で入るのは難しいと思い、1 年の猶予を持って 2 歳の時点で必要書類を揃えて役場の保育課に 提出したところ、幸運にも認可保育所へ入園で きた。子供の方は、当初は泣いたり後追いがあ ったりしたが、現在では楽しそうに通っている。

子供を持ったことで作業は増えたが、その分 世界が広がったと思う。これからどんなことが あるか分からないが、我が子が一人前の社会人 として巣立つことが出来るように、まだまだ頑 張らねばならないと健康長寿を目指している。