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開業16年を振り返って

平田清司

平田内科医院 平田 清司

最近、医院の新規開業の新聞広告を拝見する 事が多くなりましたが、ふと、小生の開業時の 事を思い出しました。

10 年程の勤務医を経て、平成7 年4 月に現在 地(旧大里村字稲嶺→現南城市)に開業しまし た。それまで、1 年程色々リサーチ等をした後 に、大丈夫と判断して開業し、診療初日、夢と 希望とやる気満々で診療に臨みました。しか し、来院患者数12 名、1 週間後も変化なく「ま あ、1 週間しか経過してないのでしょうがない か」と自らを慰めていましたが、1 ヶ月、2 ヶ 月、さらに6 ヶ月経過しても、患者さんは増え る気配はなく、いよいよ、不安と焦りが交錯し ました。新聞のチラシ等も配りましたが、なか なか状況は好転せず、毎日の様に医院の玄関に 立って、患者さんの来院を待っている事も度々 ありました。開業前に、あれこれ思い描いた夢 は完全に打ち砕かれ、「これから先、患者さん は増えていくのだろうか」等、現実の厳しさを 思い知らされる日が続きました。反面、患者さ んとの診療時間を長く持つことが出来、病気の 話しや世間話等を交えながら診療する事が出来 ました。その後、患者さん同士の口コミ等で、 2 年目は患者さんの数も増え、3 年目からは順 風満帆に経過しました。勤務医時代にはなかっ た患者さんとの距離が、より身近になり、又、 風邪で受診した患者さんから「先生の顔を見た ら、風邪は治ったみたい」。「先生に会いに来た よ」等々、お世辞だとわかっていても内心、嬉 しいものです。時々、手作りのパン、サーター アンダーギー、天麩羅、取立ての野菜等の差し 入れ等もあり、「少しは、地域の皆さんのお役 に立っているのかな」と、ちょっと誇らしげに 思ったものです。しかし、よい事ばかりではあ りません。数年前より、後発品が発売された時 に、当院は、後発品の処方が他院より数ヶ月遅 れた事が、一部の患者さんから「当院の処方薬 が高い」という噂が広がり、まして地方は横の 繋がりが強いので、診療にも大きく影響する事 が多いという話を聞いていたので、心配しまし たが、大事に至りませんでした。地方では、こ ういう事も肝に銘じておかないといけない様で す。又、「スタッフの○○さんは、最近愛想が 悪い」「診療までの待ち時間が長い」「採血した ら大きな皮下出血になっている」等、電話でお 叱りを受けたり、色々な事が起こります。

腰痛、膝関節炎等で受診する患者さんもお り、専門性が要求される時は、整形外科を紹介 したり、明らかに深い切傷を認めるのに当院を 受診し、再度外科を紹介したり、地方では都会 と違って専門性よりは、総合的な医療が要求さ れる事もあります。

又、地方の医療は景気の動向にも左右される 様に思われます(最近の不景気で、検査を拒否 する患者さんが増えている様に思われる)。い ずれにしても、これからの医療はサービス業の 一面もあるので、その事についても考えないと いけないのではないでしょうか。

小生の医院も、開業16 年を迎える事が出来 ましたが、これは地域の皆様、スタッフ、その 他関係者各位のお陰だと感謝しております。今 後も微力ながら地域医療に貢献出来る様に頑張 っていきたいと思います。