辺野喜内科・小児科 辺野喜 英夫
3 年前のあの日もいつものように愛車にて職 場に向かっていました。天気のとても良い日 で、ふと見上げた青空に糸くずのような物が1 本見えます、あわてて目を擦っても消えず目の 動きに合わせてふわふわと移動します。片方ず つ目を閉じてチェックするとその物は右目に在 ることが判り、私の頭の中で飛蚊症という言葉 がひらめく。そうすると急に気がかりなことが 浮かび、職場に着くと現像用の暗室に飛び込む、一瞬視野の片隅にピカット光が走る。やは りある、光視症の症状だ、飛蚊症と光視症の症 状が揃うと高頻度に網膜裂孔がみられるのであ わててインターネットにて調べる。英国の眼科 救急病院のデーターでは両症状がある場合 24.6 %に網膜裂孔がみられたとある、私の頭の 中を網膜裂孔、網膜剥離との言葉がグルグルと 駆け巡る。診療が午前中だけの日を待って早速 眼科を受診する。医学生の時、眼科実習の際片 眼に散瞳剤を点眼し自宅に帰る途中、妙に眩し く最初は片方の手のひらで眩しい方の目を覆い ながら歩いていたが、バランスが悪くどうにも 歩きずらい、しかたがないのでそれ以降片目を 閉じながら歩いてアパート迄帰ったのを思い出 し、今回眼科へはタクシーにて行く。受付を済 ませ待合室で待つも、職業柄病院待合室には慣 れているはずなのにどうにも落ち着かない、し かたがないので月遅れの雑誌を手にするも活字 が目に入らず、写真だけを目で追う。やがて若 い男性スタッフから呼ばれ問診を受ける。私の 話を表情も変えず淡々と記録してゆく、糸くず や、暗闇で光が見える話をしても無表情に記録 しているので、ここは大事なポイントだぞちゃ んと書ているのかと気になる。続いて視力検査 など診察前検査を受ける。その後中待合でしば らく待っているとベテランらしき看護婦さんが 来て手際よく散瞳剤と思われる物を両目に点眼 する。やっと診察室に呼ばれ中に入ると、中堅 らしき女医さんがいて小難しそうに私のカルテ を読んでいる。女医さんは顔を上げると「辺野 喜さん視力は随分良いようですね」と話しだし た、そう視力は私の自慢の一つで、自院で診療 中も度々患者さんから「先生よくそんな細かい 字が読めますね」などと褒められる。しかし軽 い乱視があり安全運転のため、運転中はなるべ く眼鏡を使用するようにしていた、しかも日中 は度付サングラスを使用し目の保護には気を付 けていた、なのにどうしてという気分になる。 次に眼底検査、顎を検査台に置き顔を固定さ れ、後はまな板の鯉状態である。7 分程度で検 査終了。じっと女医さんの顔を見る、女医さん は「後部硝子体剥離ですね」と明るい口調で話 す。あわてて網膜裂孔と網膜剥離はないか確認 すると、「ありませんよ」との返事、全身の緊 張がとけていくのがわかる。診療終了後ベテラ ン看護婦さん再度登場し縮瞳剤らしきものを要 領よく点眼しその日の診療終了。しかしその後 帰りのタクシーの中で原因を考えると加齢ぐら いしか思いあたらず少し落ち込む。自院に戻り 点眼薬の影響がなくなる迄2 時間程仮眠した後 帰宅し、私の長い1 日はやっと終わる。その後 2 回ほど経過観察のため受診し、「なにか異常 があったら早めに又いらして下さい」と言われ 通院終了。
通院終了後一か月ぐらいで暗闇の光は見えな くなる、網膜と硝子体の癒着がなくなった為な ら網膜裂孔の可能性が減りうれしいなと思う。 糸くずはその後3 か月ぐらいはほぼ毎日チェッ クしていたが変化なく、そのうちあまり気にな らなくなり、気が付くと1 年半前より糸くずは 見えなくなっている、不純物が吸収されて消失 したのならうれしいが、剥離した硝子体後方の 膜が眼球の前方へ移動し網膜から遠くなり、単 に影が薄くなり気にならなくなっているせいか もしれないので手放しでは喜べない。
一年前通販にて白内障予防のため開発された との宣伝文句の偏光レンズ付きのサングラスを 見つけ早速購入する。オーバーサングラスで眼 鏡上からも使用でき、サングラス横のテンプル の部分も幅広く作られて横からの光が遮断でき る優れ物だ。かなり気に入っており日中の通勤 時に使用している、これで有害な紫外線や青色 光が防げ今後少しでも加齢性変化が防げたら良 いと期待している。
食事もカロリーオーバーに気を付けつつ、ビ タミンC、E、βカロチン、ポリフェノール、ル テイン等を積極的に摂っていこうと思っている。
老化は最初に目から来るとの言葉は良く聞きま すが、加齢に伴う目の変化の多彩さには改め驚か され、目の大切さを痛感しているところです。