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指導医に求めるもの

丸山和典

浦添総合病院後期研修医1年目 丸山 和典

私は現在後期研修1 年目であり、研修医の指 導にあたる立場になりました。現在の私の仕事 量は研修医時代より更に増えており、自分の仕 事で精一杯というのが本音です。その様な環境 で、研修医に指導をしていらっしゃった上級医 の先生方のご苦労が想像できるようになりまし た。私はまだ指導医としての一歩を踏み出した ばかりですが、初期研修医時に出会った素晴ら しい指導医の先生方を頭に思い浮かべながら述 べたいと思います。

指導医に求めるものといっても一言では表現 できません。また、指導を受ける側が研修医なの か、後期研修医または専門医レベルなのかで求 めるものは変わると思います。私の意見ですが、

1.人として尊敬できる

2.医学的な知識や技術を惜しみなく指導できる

3.人生の道しるべとなり、医師人生の具体例を示すことができる

研修医に必要な指導は1 の様な側面が強く、 後期研修医以降では3 の様な要素がより求めら れるのではないでしょうか。

初期研修医は社会人の駆け出しですから、社 会性や責任感など医師としてまず身に付けるべ き事が多くあります。私は大学時代に、ラグビ ー部でこれらのことを学んだと自負しておりま した。しかし、社会に出ると、自分が学生時代 に培ってきたものだけでは通用しないことを実 感させられることが多くあり、指導医に多くを 教わりました。また、プライベートでも時間を 共にすることを通じて仕事・生活のバランスの とり方や、幅の広い人間性を身につける事を学 びました。医師として大事な人格形成の時期に そのような先生方に出会えたことを今では非常 に感謝しています。初期研修中には学生時代あ まり勤勉でなかった私に一から臨床を教えてく ださったのも指導医の先生でした。多忙な業務 の中、限られた時間でより多くの研修医に指導 をと院内勉強会を頻繁に開いてくださり、業務 の後の時間を使い個人的にフィードバックをい ただきました。また、teaching is learning を 実践すべく研修医と同じ目線で疑問を解決して いただいたおかげで、私は耳学問から始め自分 で調べるという習慣が自然と身に付きました。

研修医の後半になると自分の将来の医師像に ついて悩むことも多くなります。その時、同じ 悩みを抱えた経験のある指導医こそ最も頼りに なる存在です。指導医はより広い視野を持って おり、多くの選択肢や具体例を示すことができ ます。そして、時に研修医の考えを後押しした り、考えもしなかった新しいアイデアも提示し てくれたります。

しかし、何より指導医に求められるものは熱 意ではないでしょうか。自分より経験のある先 生方のアドバイスは貴重なものですが、中でも 熱意のこもった指導は今も鮮明に私の記憶に残 っています。それらは自分の目指す医師像にも 影響を与えていると振り返って思います。現在 は医者の道としても多くの選択肢がある時代で すので、研修医が自分の力だけで将来を決定す るのは非常に難しいと思います。研修医は常に 自分の将来を、出会った多くの指導医に投影し て考えていると思います。その中で、自分に情 熱を持って関わってくださる指導医に導かれ自 分の将来を決めるのだと思います。

以上、私の浅はかな経験に基づいた私見です が、これを機に自分も良き指導医を目指して精 進しようと思います。