沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 8月号

平成23年度第1回沖縄県・沖縄県医師会連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る5 月26 日(木)、県庁3 階第1 会議室に おいて標記連絡会議が行われたので以下のとお り報告する(出席者は以下のとおり)。

出席者:宮里部長、国吉保健衛生統括監、垣花 福祉企画統括監、里村参事、国吉健康 増進課長、仲村国民健康保険課長、平 医務課長(以上、県福祉保健部)
伊江病院事業局長(以上、病院事業局) 宮城会長、真栄田常任理事、安里常任 理事、大山常任理事(以上、医師会)

議 題

1.災害への対応について(沖縄県医師会)

<提案要旨>

沖縄県医師会では、去る3 月11 日の東日本 大震災の発生を受けて、被災地へ医療救護班を 派遣することについて、検討会議を開催し早急 に派遣すること、派遣費用を捻出するため、会 員より支援金を募ることを決定した。その後、 日本医師会等、岩手県医師会、岩手医科大学の 指示により、大槌町城山体育館に救護所を設置 して診療を続けており、5 月8 日までに57 名を 派遣し、延べ4,297 名の診療に当たっている。

他県医師会より、今回の震災に対する医療救 護派遣を行うに当たっては、当初から県行政と 連携をとり、法律に基づき活動を行い、経費も すべて公費でまかなわれていると伺っている。

ついては、今後、地震等により被災した地域 での医療救護活動に当たっては、他県同様活動 ができるよう沖縄県と沖縄県医師会とで災害時 派遣協定を締結することについて、ご検討いた だきたい。

また、今回の震災に関して、県・医師会・看 護協会・各病院等、多くの関係者がばらばらに 救護活動に参加しているが、沖縄県として一体 となった活動することができないか、医療班が 先に入った後でも後日、行政の派遣という体制 がとれるようなシステムを構築できないか、ご 検討をいただきたい。

今後、沖縄県や他県において災害が起こった ときに医療救護班の派遣等、沖縄県としての対 応について速やかに協議を行うための会議を開 催していただき、医療専門団体として沖縄県医 師会も参加できるようご配慮いただきたい。

<沖縄県回答>

◇提案の趣旨は理解できるので、改善すべきは 改善したい。今回は医療チームを早く派遣し たい思いがあったが、厚生労働省からの指示 まちという行政的な課題があった。一番大き かったのは車が手配ができなかった。医師会は 全国組織なので、医師会の独自のルートの力 が、行政の力よりも強かった。前倒しができた ことは、高く評価されることである。また、看 護協会は、県の派遣でもよいと情報提供した が、やはり日本看護協会としての立場で活動 するという話があった。なお、沖縄県精神病 院協会は、沖縄県からの派遣として7 月中はま だ活動を続けていく。いずれにしても、医師会 の協力を得ないと派遣は困難になると思うの で、引き続きご協力をお願いしたい。

◇医師会とは、県内の災害時については既に協 定があるが、県外についてはまだないので、 協議を行っていきたい。看護協会等とも検討 していきたい。県として動くときは、災害派遣法に基づき派遣することになっているが、 今回被災3 県からの法に基づく依頼が遅かっ た。九ブロでも議題があがっているようなの で、被災県が動けなくても災害派遣を迅速 に行える方法についてもそこで議論していき たい。

沖縄県においては、現在、沖縄県災害派遣医 療チーム(沖縄DMAT)の緊急時の派遣体制 を整えるべく、県内のMAT チームを有する各 病院と派遣協定の締結を目指し、DMAT 病院 および県の関係部局と調整して、準備作業を加 速させたいと考えているところである。

今回の貴会からのご提案についても、他県等 で締結されている標準的なDMAT 派遣協定の 内容と方向性を同じくするものであり、県内外 における災害時医療活動を行うにあたり、大き な力になるものと考えている。

今後、災害時の医療提供体制を構築していく にあたり、貴会をはじめDMAT 病院及び関係 団体と、次のような観点から協議を進めていき たいと考えている。

(1)DMAT との関わり

(2)災害対策基本法等の対象となる医療救護活動

(3)沖縄県医師会、沖縄県看護協会ほか各関係団体の災害発生時から復興までの役割

<意見>

□九州各県の県境では、近隣であっても他県市 町村に行くことはできないのか。被災県が全 滅のときには、今回のように派遣を依頼した くてもできない。被災した地域からすぐに依 頼があった場合も行けるようにできないのか (県医師会)。

□九州で災害が起きたときには、医師会が独自 に派遣しても後で追認し、県の派遣とすると の取り決めがあったはずなので確認いただき たい。指示を待っていては遅いので、先に派 遣してもよいことになっている。

県医師会の派遣は、どこからも依頼がな い。阪神の震災の経験医師の意見を伺い動いた。行政・日医からの指示を待っていては遅 いので、車・ガソリン・医薬品すべて自前で 手配した。保険(二次被害)も医師会で独自 に保険をかけた。後で日医の保険ができるよ うになったが、全部後になって動いてくる。 先に動いても追認できるようシステムを作っ ていただきたい。

阪神大震災のときの神戸協定などは、最初 から県で医療チームを構成し、そこに医師 会・看護協会、すべての医療チームは県派遣 としている。災害を受けた県はそういう対応 をしている。沖縄県でもそうなるようにご検 討いただきたい(県医師会)

□県が中心となって方針を出していただき医師 会は協力する形がよい。協議会を作って、協 定を結び一体となって行政としての派遣がで きるようご検討いただきたい(県医師会)。

2.東日本大震災の被災者にかかる被保険者 証及び一部負担金等の取扱いの変更につ いて(県国民健康保険課)

<提案要旨>

○現在、震災に伴い被災者が被保険者証を紛失 したこと等により、医療機関の窓口で提示で きない場合には、氏名、生年月日等を申し出 ることにより、保険診療を受けられる取扱い とされているが、平成23 年7 月1 日からは、 保険診療を受ける際には被保険者証等の提示 が必要となる。

○また、一部負担金等の免除についても、被災 者が災害救助法の適用地域等の住民であり、 住家が全半壊したこと等を医療機関の窓ロに おいて申し出た場合には、免除を受ける取扱 いとされているが、同日からは一部の市町村 を除き、加入する医療保険の保険者が発行す る一部負担金等の免除証明書の提示が必要と なる。

○以上取扱いの変更について、避難に伴い県内 医療機関へ通院等している被災者の方々へ周 知が図られるよう、ご協力をお願いしたい。

【これまでの県の取り組み】

・本県の支援策等により、県内のホテルや公営 住宅等に居住している被災者の方々へは、被 災者受入対策チーム又は県や市町村の公営住 宅所管課を通して、別添チラシ「医療機関を 受診された被災者の方々へ」を配布し周知し ている。

・現在、市町村社会福祉協議会へ相談に訪れた 被災者へも上記チラシを配布するよう県福 祉・援護課と調整中。

※今後、県の広報媒体を通して周知すること を検討中。

<主な意見>

□国からの通知は日本医師会を通して本会へ 届くので、その都度、各地区医師会へ情報 を提供し、各地区より所属会員へ周知を図 っている。

また、国や県、各関係団体からの通知関係 を掲載した沖縄県医師会報付録(号外)を毎 月発行し会員へ配布すると共に、本会ホーム ページにも掲載して周知徹底を図っている。

なお、今回の提案事項である「東日本大震 災の被災者にかかる被保険者証及び一部負担 金等の取扱いの変更」についても、沖縄県医 師会報号外6 月号に掲載して通知するほか、 周知用のポスターをA3 版に拡大し、医療機 関内に掲示できるように手配を整えていると ころである(県医師会)

■九州管内における被災者の避難先について、 本県が最多であるとの記事を朝日新聞で読ん だ覚えがある。我々も特別チームを編成し、 被災者支援の窓口を作っているので、窓口を 通して被災者の方々に周知を図る予定である が、貴会には今後ともご協力をよろしくお願 いしたい(県福祉保健部)。

3.麻しん・風しん予防接種済証の無料発行 について(依頼)(県健康増進課)

<提案趣旨>

国は平成24 年度を目標として『麻しん排除 計画』を策定し、平成20 年4 月から5 年間に 限り、中学1 年生の年齢に相当するもの(第3 期)及び高校3 年生の年齢に相当するもの(第 4 期)の麻しん・風しん(MR)定期予防接種 が実施されている。

しかし、3 期、4 期の予防接種率がかなり低 い状態であること、及び全国的に麻しんの発生 は減少しているものの、先月4 月には東京都、 神奈川県で麻しん発生患者の増加が見られ、注 意喚起が行われた。

3 期、4 期の定期予防接種は後2 年となって いることから、このままでは、未接種者への接 種勧奨が容易となる方法として、被接種者から 求められた場合については、接種済み証を無料 交付していただけるよう貴会員のご協力をお願 いしたい。

なお、中部保健所では、管内の医療機関で無 料で既に了解いただいている。

交付における考え方

1)本証明書は学校から生徒へ配布してもらう。

2)接種時に病院へ提出し、記載してもらうこと を原則とすること。

3)学校における、既に接種済みの生徒の確認に ついては、母子手帳の写し、生徒本人等によ る役場・医療機関への電話確認により、何月 何日にどこで接種したかを口頭による報告で も可能とすること。→改めて医療機関に行き 既接種の証明書を発行してもらうことは生 徒・医療機関にも過度の負担となるため不要。

<県医師会回答・意見>

□ご提案については、早速予防接種担当理事と 一緒に検討していく。予防接種済みのひとは ほとんど母子手帳に書いてある。去年はイン ターハイがあったので学校側は非常に協力的 であったが、従来学校側はあまり予防接種に 熱心ではなかった。今回、学校現場は勧奨していただけるのかどうか。そうすれば、接種 済証も意味が出てくる。アメリカ方式で予防 接種していない子は入学できない等強く指導 していただければこういうことは起こらない (県医師会)。

■ 6 月に校長会があるので、そこできちんと説 明したい(県福祉保健部)。

その他「離島医療サービス確保支援制度」について(医務課情報提供)

沖縄振興審議会福祉保健部会で、現在新たな 振興計画で離島医療について検討しているので 情報提供する。

○目的:離島過疎地域における医師不足や急患 搬送に対応するため、財政支援措置を行う。

○制度要望:財政要望1)ヘリコプター添乗医師派遣病院に対する財政支援

その他2)ドクターヘリ事業実施病院に対する財政支援
     3)離島等中核病院へ医師を派遣する沖縄本島内の医療機関に対する財政支援
     4)離島での治療等が困難な患者等に沖縄本島等の医療機関で受診する際、交通費を助成
     5)離島診療所において遠隔医療や専門医の派遣を受け巡回診療を行う場合、財政支援を行う。

以上の他に、知事公室を通して、国際貢献と いうことで国際医療センターを作れないか、要 請している。先日知事が下地島空港を活用し て、ドクターフレンド・ドクターヘリ・病院船 等について話しており、知事公室と一緒になっ て検討していく。

なお、巡回診療を行う際には、本島内の専門 医の医療支援グループを琉球大学・医師会等に もご参加いただいて組織したいと考えているの でご協力をお願いしたい。

□国際医療センターについて、本会理事会で は、南部医療センターのこども部門を国際こ ども医療センターに大きく発展させて貢献で きるような体系づくりはどうかとの意見が出 た(県医師会)。

□病院船について、今回の震災で議員が集まっ て病院船を提案しようという話が出た。病院 船については、以前この連絡会でも議題とな った。巡回診療に使うことと、アジアで災害 が起こったときに活用できるくらいの規模、 動く病院が作れないかとも提案としてある (県医師会)。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

宮里達也福祉保健部長そして伊江朝次病院事業局長の同席のもとに、今年度第1 回沖縄県・沖 縄県医師会連絡会議が行われた。

議題1、「災害への対応について」は当会から提案した。県内の災害時における派遣等について はすでに協定がある。今回の東日本大震災(3 月11 日)においては、当初、県行政と県医師会と の間に災害時医療救護派遣の協定が結ばれておらず、また、協議を行う場も無かった。沖縄県は 災害救助法に基づき派遣することになっているが、被災3 県からの正式な派遣要請が遅く、県行 政と連携している(締結は今後)DMAT をも派遣できずにいた。DMAT に比べ、充分な訓練も 受けていない医療従事者の参加が多い沖縄県医師会のJMAT は3 月15 日より岩手県大槌町に医 療救護班(医師32 名、総計79 名)を派遣した(5 月31 日撤退)。県行政は岩手県の要請を受け DMAT を、3 月22 より岩手県宮古市に派遣した(4 月30 日撤退)。沖縄県医師会のJMAT は会 員からの医療活動支援金(平成23 年6 月14 日現在、282 件、14,463,069 円)に基づき、派遣・ 医療備品費用と保険費用等を全て支出することにしていたが、その後県福祉保健部との調整で5 月以降は、沖縄県からの派遣という事で公費で賄われることになった。なお、県行政のDMAT の 費用は全部公費とのことである。

協議会を作って、県・医師会・看護協会・各病院等、多くの医療関係者が一体となって「オー ル沖縄」で活動することができ、また、緊急時対応(24 時間以内に方針が出る)もできる環境づ くりが望まれる(全国的に評価の高かった新型インフルエンザ対策のように、オール沖縄で)。そ して、他府県よりの災害救助法に基づく要請の前に派遣した時も、今回のように1 陣の派遣地域 と要請後の派遣地域が別々でも、後日、県行政からの派遣という体制づくりが喫緊の課題と考え る。災害時救急医療は48 〜 72 時間と言われており、その時間帯に対応することがまず重要であ ろう。しかし、災害救助法等にて、県行政が即時の対応が出来なければ、緊急に協議会を開き受 け入れ先を決め、すぐにDMAT を派遣しJMAT につないで行くことが十分に可能と思われ、必 要なら最初から2 チーム、県内や九州域なら3 チームをも派遣できる実績が出来たのではと、頼 もしく思っていると同時に、その実績が今後も生かせるように、早急に協議会の開設と協定の締 結を切望する。また、県医師会の中に、広域災害に関する担当部門(担当理事)はあるも、委員 会は無く、各地区医師会との連携をどうするか、医療救護班派遣時の体制や医薬品・医療備品等 に関する検証と更なる充実が望まれる。

議題2、「東日本大震災の被災者にかかる被保険者証及び一部負担金等の取り扱いの変更につい て」は、県国民健康保険課からの協力依頼であった。平成23 年7 月1 日からは、保険診療を受け る際には被保険者証等の提示が必要となり、一部負担金等の免除についても加入する医療保険の 保険者が発行する一部負担金等の免除証明書の提示が必要となることを、県内医療機関へ通院し ている被災地の方々への周知が図られるよう協力依頼があった。当会では、医師会報附録、医師 会報号外6 月号や周知用のポスターを医療機関内に掲示できるよう手配している。

議題3、「麻しん・風しん予防接種済証の無料発行について」は、県健康増進課からの提案があった。第3 期(中学1 年生)、第4 期(高校3 年生)の予防接種率がかなり低く、未接種者への接 種勧奨を容易にするため、被接種者から求められた場合については、接種済証を無料交付への依 頼協力であった。当会では、早速予防接種担当理事と一緒に検討して行くと述べ、学校側への協 力も提案した。

その他、医務課から振興計画への提案として、「離島医療サービス確保支援制度」についての情 報提供があった。加えて、県医師会からは再度病院船の件と、アジアの医療への貢献を鑑み、県 立こども医療センターを国際こども医療センターに発展させる件についても意見を述べた。