沖縄県赤十字血液センター献血推進課 野原 康功
はじめに
平成23 年3 月11 日に起きた東日本大震災で 被災された方へ深くお見舞いを申し上げます。
災害発生直後から各地で義援金の募集に加 え、全国の献血ルームや移動献血バス等におい て大変多くの方の献血へのご協力を頂きまして ありがとうございました。東北地方の血液セン ターの業務は今現在も完全復旧とはいかない状 況にあります。県民の皆様へは引き続き東北地 方への支援を含めてのご協力をお願い申し上げ ます。
今回は日頃から皆様にご協力頂いている献血 業務について少しばかりお話したいと思います。
献血基準改正
まず、献血の種類についてお話したいと思い ますが、献血には大きく分けて全血献血と成分 献血の2 種類があります。全血献血とは血液を 2 0 0 m L 若しくは4 0 0 m L 採血するもので、 200mL 献血は16 歳からご協力頂く事ができま す。主に移動献血バスで行っているのは 400mL 献血です。400mL 献血はこの4 月に献 血基準の改正があり、これまでは18 歳以上の 男女から献血可能としておりましたが、17 歳 の男子についても採血が可能となりました。成 分献血は沖縄県では那覇市久茂地にある久茂地 献血ルームで受け付けており、血小板や血漿と いう血液中の特定成分のみを献血頂くもので、 献血者の体への負担が少ない献血となっており ます。また成分献血の基準についても改正があ り、これまで血小板献血については男女とも 54 歳までしかご協力頂けなかったのですが、男 性については69 歳までに延長されました。(但し、60 歳から64 歳の間に献血経験がある方に 限ります。)
献血推進課業務(日程調整)
沖縄県での献血は久茂地献血ルームか移動献 血バスでのいずれかでのご協力になりますが、 私の業務は、移動採血バスの配車の日程調整を 主に行っております。
バスの日程調整を行う際、手当たり次第にご 協力頂けそうな団体を探して調整するのではな く、年間で不足する時期や、協力団体の献血を 頂き易い時期等も考慮し、バス1 台を1 日稼働 して400mL 献血で50 名のご協力を目標として おります。
献血協力団体は企業、学校関係、地域など 様々あり、前年同月頃に献血ご協力を頂いた団 体へ電話で都合を伺いながら日程調整を行いま す。沖縄県の移動献血バスが伺うエリアは、北 は国頭村から南は石垣市まで及び、献血協力依 頼は、献血協力団体の要望を極力反映できるよ うに調整します。しかし、1 団体で400mL 献 血で50 名達成が可能であれば良いのですが、1 か所で10 名程の献血協力者などの場合、2 〜 4 か所の団体を組み合わせ目標である50 名を達 成できるように調整します。そのため全ての協 力団体の日程について希望の日時で調整ができ ないという心苦しい場面が多々あります。目標 を達成する事によって県内の医療機関に安定的 に血液を供給する事が出来るという事になりま すので、予定人数がきちんと採血できるかどう かという事が重要であり、それを考慮の上、献 血現場においての機材の設置時間、撤去時間等 また、各所間の移動に無理が無い様団体の献血実施時間を設定します。日程調整を行う上での 沖縄特有な事は、旧正や旧盆など旧暦の行事に 当たる日は会社自体が休みか、業種によっては 忙しくバスを配車してもほとんど協力が得られ ないので、配慮が必要です。
献血推進課業務(事前推進)
日程調整後は団体担当者に面会し、職員への 周知用のポスター・チラシをお届けします。そ の時には近隣の事業所などにもポスターやチラ シを配布し、より多くの方が当日献血にご協力 頂けるように広報を行います。献血協力が初め ての団体については実際にバスの駐車スペース の確認と、そこに行き着くまでのルートを確認 します。ありがちなのが協力団体の駐車場は広 くて大型バスの駐車が可能ではあるが、そこに 行き着くまでの道路で街路樹や障害物がありそ こに行き着く事が出来ないという事があります ので、現場まで大型バスが本当に通行が可能か を確認します。このような調整を実施日の1 か 月から2 か月前に行い、実施日の2、3 日前に 協力団体の近隣事業所等へ最後の献血協力の呼 びかけをして回ります。献血当日に1 人でも多 くの方が献血現場に来て頂けるように直前ま で、広報をする事が目標を達成し、血液の安定 供給に繋がります。その後、実際に現場に向か う移動班へと引き継ぎます。私の主な業務はこ こまでになりますが、その後の実際の献血にて 事前に呼び掛けを行った近隣からの協力や前回 より周知活動を徹底する事により献血実績が上 がったりした時などが、とてもこの業務にやり がいを感じます。
献血推進課業務(移動現場)
移動班は事務員、看護師、医師で構成され1 班6 名〜 8 名体制になります。移動献血バスは 基本的に自己完結型で業務を行えるようにでき ております。現在、献血は全国統一システムを 導入しており、いつ、どこで誰がどのような献 血をしたのか等の情報がオンラインで全国どこでも照会が可能です。そのパソコン等の電源も バスには発電機が搭載されており、外部電源を 引かずに業務を行う事ができます。移動班は毎 朝早くに当日の必要物資をバスに積み込み出発 します。年に2 回、宮古・石垣へもバスと共に 渡り約一ヵ月間献血を行いますが、その期間中 は職員が宿泊し1 週間交代で業務を行います。 沖縄といえども真冬の外での献血業務は大変厳 しく、また真夏は日陰にいたとしても汗が止ま らないという大変な業務ですが、そのような状 況でも血液が必要な方の為にと献血に来て下さ る皆様には大変感謝する次第です。沖縄センタ ーとしても少しでも皆様に良い環境でご協力頂 けるように、できる限りの基盤整備できたらと 思います。
おわりに
ご承知のとおり近年は少子高齢化で、血液の 使用状況は年々増加し続けております。しかし ながら献血協力者は年々減少し続けておりま す。その中でも特に10 代・20 代の献血協力者 の減少が著しく、沖縄県で使う血液量を平成 10 年頃から自県で確保ができない状況にありま す。血液不足が生じた際は、九州各県から貰い 受け医療機関に供給している状況ですが、沖縄 県は離島県ですので、血液搬送には航空便を使 用します。本土であれば陸続きですので、いつ でも近隣県から不足血液を陸送可能ですが、沖 縄では夜間にそのような事態になった場合、患 者さんの命を危険にさらしてしまう可能性がよ り高くなります。そのような事から沖縄県はこ の慢性的な血液の輸入県から脱却し、自県で使 用する血液は自県で確保しなければならないと いう事をより多くの方に知って頂き、特に若い 方々の献血への参加が広がればと思います。ま た、医療機関にて実際に血液を扱う医療関係者 各位におかれましては、輸血を受ける患者への インフォームドコンセント(輸血の必要性の説 明)の際に献血のしくみと献血者の善意につい てもお話下さいますようお願い申し上げます。