理事 金城 忠雄
平成23 年3 月18 日(金)沖縄県庁において 標記協議会が開催され、小渡副会長の代理で 小生が出席したのでその概要を報告する。
今回の協議会は、「沖縄県周産期保健医療体 制整備計画案」に議論を盛り込んで今年度中に 国に報告することになっている。今後5 年計画 の基礎になる資料の協議会である。
開 会
奥村啓子沖縄県福祉保健部長挨拶
本協議会は「沖縄県における周産期に関する 効果的な地域ケアシステムを構築しつつ、妊娠、 出産から新生児に至る高度な専門的な周産期医 療体制の整備を図り、本県の実情に応じた総合 的な周産期保健医療を確保することにある」
議 事
1)沖縄県の母子保健の現状
早速、議事に入り、沖縄県の周産期医療体制 について、国保・健康増進課の島袋富美子母子 保健班長から母子保健の現状が報告された。
1)出生数及び出生率の推移
沖縄県の出生数は、平成元年から2 万人を割 り、平成21 年には1 万6,744 人ではあるが、出 生率を比較すると全国(8.6)に対し、沖縄県 は12.2 で全国一高い状況にある。
2)低出生体重児(2,500g 未満児)の出生率
実数1,930 人、出生率11.5、全国は9.6 と比 較して、低出生体重児(2,500g 未満児)の出 生率が高い割合になる。
その他、10 代の出産率も高い。
3)周産期・乳児・新生児死亡率
周産期死亡率は、昭和47 年は13.2 から減少 し現在は3.5、全国平均は4.3 である。
乳児死亡率は、昭和47 年復帰のころに比較 してかなり改善され、沖縄県は2.5 に対して、 全国2.6 である。
新生児死亡率も、沖縄県は、0.9 に対し全国 は1.2 である。
4)妊産婦死亡率
妊産婦死亡率(出生万対)は、昭和47 年沖 縄県6.0(2 人)全国平均4.0 から平成19 年は 0.6(1 人)、全国平均0.3 となっている。
母子保健の課題を総括すると、出生率、低出 生体重児の出生率、10 代の出生率、全国一高 い。周産期・乳児・新生児死亡率は、全国平均 より低く良い傾向にある。妊産婦死亡率は、全 国平均より高く、毎年1 人の妊産婦を失ってい る現状である。
2)県立中部病院
県立中部病院小濱守安小児科部長から以下の 通り報告があった。
以上、小濱守安小児科部長は、医師の不足、 NICU 病床の不足、臨床心理士の不在等の諸問 題を厳しく指摘し、県立中部病院NICU につい て報告した。
3)県立南部医療センター・こども医療センター
村尾寛産婦人科部長から同院の現状について報告があった。
1.分娩実績の紹介
2.折角、ハイリスクとして紹介され受け入れ たのにベットが満床のため、一時預かりで逆 搬送したのが42 例あった。
3.問題点の指摘
4.産婦人科医師の退職者の増加により、当直 2 名体制が維持困難になった。
以下は、他府県における解決策を紹介し意見 を述べた。
1.女性医師の環境整備
2.産科医師の収入改善策
3.勤務環境の改善策
4.産婦人科の収益改善のために
5.県庁と大学医局が協力して周産期の地域医 療システムを抜本的に変更した。
6.助産師のマンパワーの活用
結論として、上記他府県の対策と努力を沖縄 県では採用してないと説明した。
村尾寛産婦人科部長は、以上のように県立 病院の産婦人科医がやめていく状況を厳しく指 摘し反省し努力のなさを嘆いている。
事務局からは「沖縄県周産期保健医療体制整 備計画」について国保・健康増進課島袋富美子 母子保健班長が説明した。
本日は、今年度中に策定し、国に報告するこ とになっている「周産期保健医療体制整備計 画」について議論をしていただきたい。
今回、平成22 年1 月に国が示した「周産期 医療体制整備指針」に基づき、本県のこれまで の取り組みを見直し、県民が安心して子どもを 生み育てることができる環境を整備するため 「沖縄県周産期保健医療体制整備計画」を策定 した。
沖縄県の周産期保健医療体制を安定的に確保 するために、沖縄県の周産期医療計画を策定す ることについて検討することを目的として、沖 縄県周産期保健医療体制整備検討委員会を設 置した。
周産期保健医療体制整備検討委員会がまとめ た「周産期保健医療体制整備計画」案につい て、策定の体制・本計画の位置付け、計画策定 の経緯計画の内容を説明した。
1.計画の位置づけ及び期間
本計画は、医療法に基づき策定している「沖 縄県保健医療計画」に位置づけられ、その他の 関連計画との整合性を図りながら、本県における「周産期保健医療体制」の整備方針とするも のである。本計画の計画期間は平成23 年度か ら5 年間とし、必要に応じて見直しを行うこと とする。
検討事項は
1.本県の周産期保健医療の現状の把握
2.本県の周産期保健医療体制の整備
以上のことを検討した結果、今後の方向性と しては、医療を担う医師、助産師、看護師の人 材育成が大きな課題である。次に、ハイリスク 妊産婦や新生児の医療を円滑に行うためには、 周産期母子医療センターの産科・新生児科医師 の確保が出来る体制の構築が必要になっている。
周産期医療施設の対策
低出生体重児が、全国平均に比べ高いし、入 院日数が約4 ヶ月と長期になり新生児死亡率が 改善され、更に重症心疾患についても県内で手 術等治療が可能になり、NICU の増床を考慮す べきである。
NICU は常に緊急への対応と、常時濃密な看 護が求められる。また24 時間体制で患者の初 期対応の受け入れも行うことから、現在の3 : 1 の看護配置では慢性的なマンパワー不足とな っている。NICU の看護師を重症度に応じた配 置基準とすることが必要である。
平成21 年現在のNICU 病床数が42 床である が、指針に基づく基準必要病床数は58 床にな り、沖縄県は、少なくともあと16 床以上の増 床が必要であるあることを国に要望する。
重症心身障害児施設の現状と課題
沖縄県には、重症心身障害児施設が4 施設 (沖縄療育園、名護療育園、若夏愛育園、周和 園)と琉球病院の1 病棟の400 床がある。
県内の施設は、ほぼ満床状態にあり、入所の 定員に対し看護師の不足等定数通りに受け入れ られない状態にある。周産期の後方支援施設と して新規の入所の受け入れがより困難になって いる。在宅の重症心身障害児の実数はかなりの 数になると思うがその把握は困難である。
重症心身障害は、知的障害と肢体不自由が重 度であるだけでなく、合併症に対する医療も必 要である。家族にとっては、24 時間、365 日の 自宅介護は非常に困難であり、休息がないと燃 え尽きてしまう。
対策として、医療費、維 持費や人材を確保して、訪 問看護ステーション制度や レスパイト入院いわゆる病 院や施設に患者を1 週間前 後の一時的入院、介護休暇 目的制度などの政策改善が 必要である。その為には、 現在の配置に対する補助を 見直し、各県の実情に応じ、 各県が制度を活用しやすい 内容とすること。
重症心身障害児施設については、医 療度の高い児を受け入れる新たな病床 や訪問看護について人工呼吸器装着児 の看護加算、未熟児や新生児等の発達 の評価を行える専門性を持った臨床心 理士の養成等対策が必要である。
以上は、詳細な多岐にわたる問題点 が列挙された「沖縄県周産期保健医療 体制整備計画」(案)を要約しその概 略を報告した。
最後のディスカッションの場で玉 那覇榮一沖縄県小児保健協会長(中頭 病院理事)が、今日の報告では中部地 区はNICU のベットが足りない、中頭病院が公 益法人に移行するのを機会にNICU のベットを 増設したい。沖縄県として国に増床を強力に進 言して欲しい。平安山英盛中部病院長は、ナー スがおれば県立中部病院のNICU ベッドも稼動 できるとコメントした。
厚生労働省には、NICU の増床を提案し、沖 縄県としても強力にバックアップして欲しい 等、活発な討論になった。
田頭妙子委員からは、新聞記事を示して、望まない妊娠を防ぐためにも、子供たちに性教育 や親になる教育に取り込んで欲しい旨要望があ った。
事務局から国への要請事項
国保・健康増進課の島袋富美子母子保健班 長が、これまでの現状・課題・討論や皆様から 頂いた貴重なご意見は、沖縄県保健医療協議会 の手続きを経て、国に強く要望し今後5 年間の 計画に沖縄県の周産期保健医療体制の充実に反 映させていきたいと締めくくった。