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沖縄県女性医師部会発足からの歩み

仁井田りち

女性医師部会副会長 仁井田 りち

平成19 年、女性医師部会の立ち上げは10 月 の「女性医師フォーラム」から始まった。100 人近くの参加者という成功を経て今後の女性医 師部会活動に多くの期待と関心が寄せられた。 その後、日本医師会「女性医師バンク事業」と 連動するように全国的な「女性医師支援センタ ー事業」が始まり、現在では九州各県医師会に 女性医師を支援する窓口等が置かれ、情報交換 が行われている。また、支援事業に対して、国 から「女性医師等就労支援事業」等の予算が得 られる展開となった。

わずか3 年半の間に確かな活動基盤を作った 沖縄県女性医師部会のこれまでの活動報告と、 今後の方向性についてまとめてみた。

※医師の勤務環境整備事業の中の女性医師バンク事業の位置づけ

1)沖縄女性医師バンク事業(沖縄県の委託事業)

 出産及び育児等により医療現場を離れた医 師の就業を支援することを目的とし、職場 復帰に向けた支援を行い、医療全体の労働 環境の改善に繋げ、地域の医師確保対策に 資する事業である。また、医師の就労継続 を支援するため保育支援等も行っていく。

2)女性医師フォーラム

 女性医師を取り巻く現状や諸問題の解決に 向けて、さまざまなテーマを取り上げ、フ ォーラムを企画開催する。

3)女性医師環境整備に関する病院長等との懇談会

 各施設の女性医師の働きやすい環境を目指 し意見交換を行い、より良い勤務環境整備 や環境改善等に繋がることを図る。

4)女性医師部会役員会

 女性医師会員を中心に構成され、上記1)〜3)の事業を遂行するために検討を行い、男 女共同参画社会の実現等に資する。

《沖縄県女性医師部会の特徴》

1)本部会メーリングリスト登録件数は、平成 23 年4 月末時点で217 件となっている。

これは県内に在住する約500 人の女性医師の およそ4 割が登録していることになり、全国 にも誇れるネットワークを構築している。

2)平成22 年度に本部会初の試みとして「女性 医師部会出張ミニフォーラム」を企画した。

当事業では、女性医師バンクの積極的な活用 を推進すると共に、医師としてのキャリアア ップやキャリアパス形成・女性医師の勤務環 境の現況・今後必要となる対策等を説明しな がら、そこに勤務する女性医師等と意見交換 を行ってきた。これにより、顔の見える太い 繋がりを得られたものと考えている。

【1】これまでの活動内容

(1)沖縄県女性医師フォーラム(計4 回)

・平成19年10月 第1回「頑張ろう!女性医師」・・・・・・・・・・・・・参加者95名

・平成20年10月 第2回「女性医師支援の流れと私達の取り組み・・・・・・参加者34名

・平成21年10月 第3回「女性医師バンク設立に向けて」・・・・・・・・・参加者84名

・平成22年10月 第4回「医師を続けていく為に必要な事とは・・・・・・・参加者64名

(2)女性医師の勤務環境整備に関する病院長等との懇談会(計3 回)

・平成20年9月 第1回・・・参加者40名

・平成21年9月 第2回・・・参加者49名

・平成22年9月 第3回・・・参加者54名

(3)平成22年度 女性医師部会出張ミニフォーラム(計4回)

・5月 県立中部病院・・・参加者22名

・6月 浦添総合病院・・・参加者11名

・7月 豊見城中央病院・・・参加者18名

・8月 那覇市立病院・・・参加者30名

(4)その他

・平成20 年8 月、女性医師支援のため の相談窓口を沖縄県医師会に設置。

・平成21 年4 月、厚生労働大臣より 「有料職業紹介事業」許可。

・平成21 年5 月、沖縄県女性医師バ ンクホームページを開設。

・育児、生活支援策として、ファミ リーサポートセンター及びシルバー 人材センターにサポート内容の調査 を行い、女性医師に対する育児・ 生活支援のための連携を図る。

・復職研修、専門医取得希望者のた め、琉球大学研修センターの紹介。

・メーリングリストによる求人募集や フォーラム開催等の情報提供。

【2】平成22 年度女性医師部会ミニフォーラムのアンケート結果

平成22 年5 月より県内4 ヵ所の病院を訪問した際に、施設に勤務する女性医師を 対象に行ったアンケート調査結果について報告 する。

ミニフォーラムで明らかとなった のは、医局制度廃止後の新臨床研修 医制度におけるキャリアパス支援の 甘さと、各研修医に対するキャリア 形成の情報不足であった。女性医師 の再就職及び、育児、生活支援だけ ではなく、医師と医療機関関係者双 方が育休、産休の取得などの福利厚 生等に対する関心をもっと高めてい かなければ医師不足の歯止めになら ないとの状況が見えてきた。また研 修医との直接の意見を収集できる機 会を得たことより、研修医が将来の 展望を見いだせないまま、日々の勤 務をこなしている実態が掴めた。

《具体的問題点》

1)専門医を取るための指導がなされ ていない(専門医がとれない)。

2)専門を決めきれず経過し、その後、 結婚出産の為退職。連絡が途絶え る。(その後のキャリア形成の為に 自分で道を開こうにも、受け皿と なる窓口などの情報がない)

若い新臨床研修医制度の先生方 は、日々の現実の臨床の忙しさの 中、自分の将来を考える時間がな い。または情報が偏り、難民のよう に移動しているだけの先生も見受け られた。

3)今後の課題

A)教育学習支援プログラムの構築

現在、日本でモデルになるのは東 京女子医大のe-ラーニングである。 本プログラムは結婚、育児、介護な ど様々なライフイベントが原因で臨 床を離れた女性医師の復職支援、ま た現役の女性医師の離職支援防止 を目的とした社会貢献活動で、文科 省の「社会人の学び直しニーズ対応 教育推進委託事業」に採択されてい る。利用される方の年齢、出身大学、所属、地域を問わず、また、開業医の先生 方の専門外学習にも役立てるよう広く門戸が開 かれている。沖縄県では琉球大学に支援プログ ラムがあり、今後の研修医支援として、一人一 人への具体的な支援、指導が必要と思われた。 B)臨床研修制度の見直し等を踏まえた医学教 育の改善について

2009 年5 月に文科省の医学教育カリキュラ ム検討会が公表した見解によると、基礎と臨床 の有機的連携による研究マインドの滋養とし て、「まとまった期間、研究に関わり、論文や レポートなどを発表させるなど研究者養成を目 的とした重点コースや、MD-PhD コース等の 設定や研究室配属など、実際の研究に携わる機 会の拡充を一層促進する」、「基礎医学と臨床医 学間を関連付けた横断的、統合的な教育の導 入」が検討されている。モデル・コア・カリキ ュラムについては生物学等の基礎科学教育に関 する内容の組み込み、近年の生命科学の進展を 踏まえた改訂、研究に関連した選択制カリキュ ラムの例の記載を行うことになっている。ま た、医師の地域偏在や診療科偏在を是正するた めに、臨床研修制度が見直され、医学部の定員 が増加した。しかし、臨床研修の到達目標は見 直されず、医学研究に対しては「臨床研究の意 義を理解し、研究や学会活動に関心をもつ」と いう評価のしようのない目標があるのみで、こ のままでは学会発表や論文を一つも書くことの ない医師も今後増えるであろう。プロフェッシ ョナリズムに裏打ちされた良き臨床医となるた めには、卒後5 〜 10 年大事な時期にキャリア 形成プランを医学教育に組み込み、また、プラ ンを繰り返し提示するなど、大学と研修医を受 け入れる各医療機関が共同で「若手を育てる」 という使命を改めて確認することが大事と思わ れる。

【3】今年度の女性医師部会事業

(1)第5 回女性医師フォーラム→平成23 年7 月23 日(土)開催予定。

これまでと同じく、世代を超えた女性医師の 連携を図ることはもとより、ミニフォーラムで の状況を踏まえ、沖縄県内の各科専門医を修得 した女性医師に参加をお願いし、研修医に対し て各科の専門医の取り方や具体的な方向性のア ドバイスを行うことを予定している。男性医師 も是非ご参加ください。(P88 参照)

(2)女性医師の勤務環境整備に関する病院長等との懇談会→平成23 年9 月22 日(木)開催予定。

女性医師フォーラムの報告と国の予算支援に 関しての最新情報をお伝えする予定である。