常任理事 安里 哲好
去る3 月30 日(水)、県庁3 階第2 会議室に おいて標記連絡会議が行われたので以下のとお り報告する。
議 題
<提案要旨>
琉球大学医学部地域枠の学生を対象とした、 地域医療従事医師確保修学資金は効果的に運営 されていて、今後、大きな期待を寄せている。 一方、指定診療科医師確保修学資金(5 〜 6 年 生)及び特定診療科医師確保研修資金(不足し ている科の専門研修)の現状(対象者と各科の 実数も含め)および今後も継続していく予定な のか。また、広報は充分に行われているのか、 ご教示いただきたい。
なお、長崎県では小児科・産婦人科医確保の ため研修資金を貸与し、平成20 年度より2 年間 で小児科14 名、産科12 名が対象となっている。
<医務課より回答>
1.指定診療科医師確保修学資金について
琉球大学医学科の5 〜 6 年次で、将来、産科、 脳神経外科、麻酔科の医師として県の定める指 定医療機関に勤務する意志のある学生を対象に 貸与している修学資金であり、専門研修修了後 に指定医療機関に1 年間勤務することで貸与さ れた修学資金の返還が免除される制度である。
平成19 年度から22 年度まで、産科4 名、麻 酔科4 名の計8 名に対して貸与実績がある。こ れまで一年度での貸与者数は最高で4 名であっ たが、平成23 年度には、産科2 名、麻酔科1 名、脳神経外科2 名の計5 名へ貸与予定である。
2.特定診療科医師確保研修資金について
県の定める指定臨床研修病院の産科、脳神経 外科、麻酔科の専門研修で、将来、同診療科の 医師として県の定める指定医療機関に勤務する 意志のある者に対し、研修資金を貸与し、専門 研修修了後に指定医療機関で貸与期間に応じた 1 年から2 年間勤務することで、貸与された研 修資金の返還が免除される制度である。
県では指定臨床研修病院での専門研修医の給 与条件及び指定医療機関での勤務を終えるまで の研修医の人事管理の課題から、現時点では琉 球大学医学部附属病院の専門研修医のみを対象 にして、同制度を運用しているところである。
平成20 年度から22 年度まで、産科2 名、麻 酔科1 名の計3 名に対して貸与実績がある。な お、平成23 年度には麻酔科1 名、産科2 名の計 3 名へ貸与予定であり、こちらも一年度中の貸 与者数としてはこれまでで最多数となっている。
3.募集と広報について
被貸与者の募集については、対象者を琉球大 学・同附属病院としていることから、毎年度琉 球大学に依頼して申請書類の配布・受付やポス ターの掲示などを行っているところであり、ま た琉球大学医学部のホームページにも掲載され ており、地域枠学生以外の応募も確実に増加し ているところである。
今後も引き続き、広くPR して貸与者の確保 に努めたい。
<主な意見等>
□毎年何名ぐらいを予定しているのか(県医師会)。
■琉球大学の地域枠は12 名、指定診療科医師
確保修学資金は毎年3 〜 4 名(1 名当たり
130 万円)、特定診療科医師確保研修資金は
毎年2 〜 3 名(180 万円)を予定している。
指定診療科医師確保修学資金を貸与した後、
特定診療科医師確保研修資金を貸与すること
も可能(福祉保健部)。
□ 23 年度の見込み人数は比較的良いが、大学以 外への対象者も考慮願いたい。また、どこに 勤務することになっているのか(県医師会)。
■勤務先は、県立北部、宮古、八重山、久米島 病院、離島診療所となっている。また、長崎 県が県外を対象とした際に、貸与者の行き先 が不明になっていると聞いたので、本県は現 段階では琉球大学に絞っている状況である (福祉保健部)。
□もっと枠を広げるべきである。また、実際に 離島等に勤務している方はいるのか(県医 師会)。
■実際に勤務される対象者はこれから出てくる ことになる(福祉保健部)。
□各科の教授から学生に対してアプローチする ようにした方が良い(県医師会)。
□医師会報へ定期的に掲載しては如何か(県医 師会)。
■ 1 枚紙でHP に載せているのがあるので、お 願いしたい(福祉保健部)。
□本会で行われる研修医の歓迎レセプションに 配布しては如何か(県医師会)。
■将来的には対象者を群星まで広げていきたい と考えているが、行き先不明になると困るの で状況を見ながら検討していきたい(福祉保 健部)。
<提案要旨>
病院船は主に以下の3 点から沖縄振興に役立 つと考えるが如何か。
<医務課より回答>
病院船については、新たな沖縄振興に関する 県の要望として、「アジア・太平洋地域の災害 救助拠点の形成による国際貢献」の中で、国の 事業として実施するよう、国に提案していると ころである。
病院船を県内に配備し、国際緊急援助隊医療
チームの被災地での効果的な医療活動に活用す
るとともに、あわせて県内の離島の巡回診療等
にも活用することを求めているところである。
「アジア・太平洋地域の災害援助拠点の形成による国際貢献」について
(要望目的)
沖縄県をアジア・太平洋地域の災害拠点病院 として位置づけ、国内の防災・医療分野の人 材、施設等を沖縄県に一体的に集積し、国際緊 急援助隊を県内に常設配備するなど災害援助、 周辺諸国の人材育成、防災・医療技術の供与等 を通して、アジア・太平洋地域の平和と安全に 貢献する。
(要望内容)
<主な意見等>
■昭和50 年初頭までは医務課で船を配備していた。当時は琉球大学医学部も無く、韓国か ら医師を招いて診療してもらっていたほど医 師不足であったため、離島の診療所に医師を 置くこともできず、船に医師、看護師、検査 技師を乗船させ、巡回診療を行っていた。そ の後幸いにも診療所に医師を確保できたこと から昭和50 年代後半に終了した経緯がある。
病院船については、県独自で所有すること は財政的に厳しいため、新振計への要望とし て「アジア・太平洋地域の災害援助拠点の形 成による国際貢献」の中で、国の事業として 実施するよう提案している。
通常は訓練を兼ねて離島を巡回診療し、ア ジアで災害が起きた場合に派遣できるような 仕組みとしたい。
なお、要望6 の“国際医療協力等を担う看 護師等の育成事業を中心として人材育成制度 の創出”については、看護師が語学留学や、 感染症対策先進国、在宅医療先進国への留学 が出来る制度の創設を要望している。
ドクターヘリについても2 機目を要望した い。例えば、宮古の下地島空港であれば 3,000 メートル急の滑走路があるため、ドク ターヘリ、ドクタープレーンを配備でき、ア ジアにも近い。
□国際的な災害医療・救急医療の基幹医療施設 とはどういった施設か?(県医師会)
■東京の国際医療研究センターのサテライト的 な役割を持つ施設を考えている。国際緊急援 助隊を常設整備するため、その活動の基幹医 療施設と位置づけたい。ただ、本件について は国に同じような施設が2 つ必要なのかとの 疑問もあり調整中である(福祉保健部)。
□船に図書室を設けると離島のこども達の教 育にも繋がると思う。最初は規模が小さく ても良いので何とか走らせてもらいたい(県 医師会)。
□病院を建設することは難しい。医療スタッフ を無駄に常時待機させておくこともできな い。沖縄から物資等を供給できる基地でも構 わないのではないか。那覇空港の側に設置して、台風時に飛行機に乗れなくなった観光客 のための収容施設にしてはどうかとの話もあ る(県医師会)。
□空港の近くにそういった施設を置き、普段は 違った利用をしながら災害が起こった時には 多くの人達を収容できるような施設としても 良いのではないか。いざというときのために 非常食も常備しておけば国際貢献にもつなが る(県医師会)。
■県もイメージを固めているわけではない。自 衛隊病院が十分活用されていないこともあ り、今後検討していきたい(福祉保健部)。
□アドベンチスト・メディカルセンターでは国 との契約によって、米国のドクターが日本語 で診療を行っているが、場合によってはその 先生方が県立北部病院産婦人科の応援に行っ て、代わりに米国からアドベンチスト・メデ ィカルセンターに医師を連れてくることが可 能か検討してもらいたい(県医師会)。
■災害支援として海外からドクターが来るが、 日本の医療法で医療に携われないしばりがあ る。もし、特区として沖縄で出来るようにし てもらうと産婦人科にしても指導医が付いた 応援が可能となるのではないか(病院事業局)。
<提案要旨>
このことについて、県では新たな沖縄振興に 関する沖縄県の要望において、次のとおり要望 している。
1.目的
離島の医療提供体制を整備することにより、離島における定住を促進する。
2.要望内容
離島診療所で専門医の派遣を受け、巡回診 療、遠隔医療が行われる際にこれにかかる財政 支援を行う。
3.要望の必要性
離島地域の医療は、依然として沖縄本島に比べると医師の確保が困難で、医療資源が乏しい 状況である。離島地域は、国境・海域・資源の 保持等において国益に貢献しており、離島の定 住性を高めるためには、医療の充実を図る必要 がある。
4.県医師会への協力依頼
この要望において、今後、事業スキーム、協 力病院の検討、必要経費の積算等、詳細な事業 内容を検討する必要があり、その際には、県医 師会の協力をお願いしたい。
<説明>
現在、離島の診療所の先生方は耳鼻咽喉科、 眼科等の専門的な分野について非常に不安を抱 えて日常の診療にあたっている。そのようなこ とから、専門医を離島に巡回させ、診療所の先 生と一緒に検診を行うことによって診療所医師 の技術を向上させ、プライマリ・ケア医療の充 実を図るべく、新振計に盛り込むよう要望して いる。
更に、現在、各県立附属診療所については、 妊婦検診における超音波診断装置を配備しては いるものの、遠隔地において画像を診断できる 体制が出来ていない。
そのため、専門医による巡回検診を行い診療 所医師への技術移転を図りたい。また、現在は 離島から送られた超音波画像を本島内の医療機 関で読影して診療所医師にアドバイスしても診 療報酬が出来ないことから、国の支援を要望し たい。なお、超音波画像診断支援については琉 大附属病院を中心とした地域医療支援グループ を設置する考えであり、その際には県医師会に もご協力頂きたい(福祉保健部)。
<主な意見等>
■昨年、診療所会議において、二人の命を預か る妊婦検診はリスクが高くやりたくないとの 意見があった。産婦人科医に伺ったところ、 もし妊婦検診をするのではあれば2 年間産婦 人科でトレーニングしてから離島診療所に就 いてもらったほうが良いとの意見であった。 そのため、本件については検討が必要ではな いかと思っている(病院事業局)。
□香川県には、X 線やCT などの患者データを 通信回線により伝送して専門医の助言を受け ながら診療できるシステムK − MIX(かが わ遠隔医療ネットワーク)がある。岩手県で は、岩手医大がこのシステムを活用して岩手 県域全てのお産のコントロールをできるよう になっている。
普段は診療所から主治医に対して情報提供 としてデータを送り、数ヶ月に一度主治医が 実際に診ている。是非このシステムを参考に していただきたい(県医師会)。
■画像診断だけでは不安もあるかと思うので、 専門医も派遣して研修ができるようにしたい (福祉保健部)。
印象記
常任理事 安里 哲好
平成22 年度最後の連絡会議で、会の終わりに、2 年間務められた奥村啓子部長が定年退職され るとのことで、在任中の感想と医師会への感謝の意が述べられた。次年度は久方ぶり(7 年ぶり) に、医師の宮里達也先生が福祉保健部長になられるので、大いに期待したい。医師会は連携を密 にし、全面的にバックアップをして行きたいと強く感じている。
議題は当会から2 題、福祉保健部から1 題であった。議題1「指定診療科医師確保修学資金(産 科、脳神経外科、麻酔科)及び特定診療科医師確保研修資金(産科、脳神経外科、麻酔科)の対 象者と各科の現状について」医務課よりの回答があった。指定診療科医師確保修学資金は平成23 年度産科2 名、麻酔科1 名、脳神経外科2 名の計5 名で好ましい方向にあることを確認した。特定 診療科医師確保研修資金は平成23 年度麻酔科1 名、産科2 名の計3 名への貸与予定とのこと。今 後、琉球大学地域枠は12 名、修学資金は3 〜 4 名、研修資金は2 〜 3 名を予定しているとのこと。 勤務先は、県立北部、宮古、八重山、久米島病院、離島診療所となっている。
議題2「病院船の新振計への提案について」は大きな、時として荒唐無稽な提案かなと感ずる ところも無きにしも有らずと思っていたが、大いに話に花が咲いた。昭和50 年代初頭に、医務課 は船を配置し、離島の巡回診療・検診を行っており、昭和50 年代後半には、離島診療所の医師確 保ができ、船による巡回診療は終了したと述べていた。くしくも、県は病院船を、新たな沖縄振 興に関する県の要望として、「アジア・太平洋地域の災害拠点の形成による国際貢献」の中で、国 の事業として実施するよう国に提案しており、要望は国際的な災害・救急医療の拠点病院を県内 に設置することも含め夢のある内容である。実現の可能性に期待したいが、公的保険診療か、自 由診療か、混合診療か、それとも国際貢献だから無料となるか、局在性の医療特区になるのか、 ちょっと懸念するところがある。
議題3「新たな沖縄振興における離島診療所での専門医派遣による巡回診療及び遠隔医療につ いて」の主旨は、離島地域は国境・海域・資源の保持等において国益に貢献しており、離島にお ける人々の定住性を高めるために医療の充実を図る必要がある。離島診療所の医師確保とその支 援として、眼科・耳鼻科等の専門医の離島巡回診療や画像伝送診断支援を新振計として国に要望 する予定で、県医師会や琉球大学病院に協力を頂きたいと述べていた。慢性疾患に対する巡回診 療は可能であろうが、産科領域の支援や画像伝送診断支援等の現状を再度確認する必要があるの ではと感ずるも、可能な限り前に進めて行きたいものだ。