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平成22 年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会

理事 宮里 善次

去る11 月19 日(金)日本医師会館に於いて 標記連絡協議会が開催された。

協議会では、栃木県医師会から去る10 月8 日(土)栃木県宇都宮市において開催された全 国医師会勤務医部会連絡協議会について報告が あり、続いて、次期担当県の富山県医師会より 開催の概要について説明があった。また、日本 医師会より、勤務医の健康支援に関するプロジ ェクト委員会活動報告があった。その後、「勤 務医の視点からの医師会改革」をテーマに3 県 医師会(1)秋田県、2)新潟県、3)宮崎県)より 勤務医活動の取り組み状況について報告が行わ れた後、事前に寄せられた質問や要望について 意見交換を行った。

平成22 年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会

次 第

日 時 平成22 年11 月19 日(金)午後2 時〜 4 時
場 所 日本医師会3 階小講堂

  • 1.開  会
  • 2.会長挨拶
  • 3.議  事

【報告】

(1)全国医師会勤務医部会連絡協議会について

  • 1)平成22 年度報告(栃木県医師会)
  • 2)平成23 年度担当医師会挨拶(富山県医師会)

(2)勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会活動報告

【協議】

テーマ:「勤務医の視点からの医師会改革」

(1)都道府県医師会からの勤務医活動報告

  • 1)秋田県 2)新潟県 3)宮崎県

(2)協議(日医、各都道府県医師会からの提案協議等について意見交換)

  • 4.閉 会

○会長挨拶 原中勝征日本医師会長
(代読:中川俊男副会長)

当連絡協議会は、日本医師会が勤務医に関わ る諸問題に取り組む大きな柱の一つである。長 年にわたる医療費抑制が地域医療の崩壊という 事態を生み、勤務医の過酷な労働環境を招き、 医師不足、偏在も深刻化している。根本原因が 医療費の抑制である以上、医療費の大幅活用、 全体的な引き上げを求めていく事が不可欠であ る。地域医療を再生し、勤務医の労働環境を改 善していくためには、全体的な診療報酬の引き 上げが不可欠な事を次期診療報酬及び介護報酬 の同時改定にむけて、強く主張していきたいと 考えている。

また、現在、国へ医師養成数の増加に向け て、医学部の新設を求める声がある。ご存じの とおり、日本医師会は医学部の新設ではなく、 既存医学部の定員数の調整、増加によって対応 すべきと考えている。過去3 年間で、医学部の 定員数は約1,200 名増加しており、各医学部の 定員数が100 名とすれば、12 大学の医学部が 新設された事になる。2020 年頃には人口1,000 名あたりの医師数は2.8 人程度まで増えていき、 その時、医師の必要数は厚生労働省の実態調査 で1.1 〜 1.2 倍という結論がでた。これは毎年 見合わせていくべきだと考える。医師の仕事 量、仕事内容は年と共に変わっていく事も学習 した。また、医療ツーリズムに代表されるよう に、医療を営利産業化しようとする動きも政府 内で強くなっている。国民皆保険制度を支持す る立場から、日本医師会は強く反対するつもり である。

このように、医療を巡る環境が厳しくなる中、日本医師会がより強力なメッセージを出す ためにも、勤務医、開業医の枠を超え、日本医 師会が一致団結し、強い組織力を示す必要があ ると考える。

本日の協議テーマは「勤務医の視点からの医 師会改革」であり、多くのご意見と、ご提案、 ご質問を頂いている。幅広い十分な討議を頂 き、貴重な意見を賜りたい。

議 事

(1)全国医師会勤務医部会連絡協議会について

1)平成22 年度について(栃木県医師会)

栃木県医師会福田健常任理事より、報告があ った。

栃木宣言

小泉政権以来の医療費抑制政策は政権交代により転 換されたが、現状と乖離した医療介護政策では国民が 安心できる医療体制は構築できない。国内外の現状を 正確に分析したevidence-based の政策の立案を切に願 う。また、現代の医療、社会とマッチしない旧態依然 たる医師法、医療法も勤務医の労働環境を悪化させて いる一因であることは否めない。我々、勤務医は、こ のような厳しい現状の変革を希求しつつも、限られた 医療資源を最大に活かし、国民が望む最善の医療を提 供する使命がある。

よって、我々は以下の宣言をする。

一、医療の高度化、加速する高齢者増に見合った医 療・介護予算の増額を求める。

一、勤務医の労働時間をOECD 加盟国の平均水準に できる医師数の実現を求める。

一、活力ある男女共同参画を推進するために、支援  体制のさらなる整備を求める。

一、勤務医が患者のための医療に専念できる医師法、 医療法の改正を求める。

一、勤務医は、地域のすべての医師との連携を強化 し、地域住民と協働して医療再生に取り組む。

一、勤務医は医療・介護行政の改善を要求すると共 に、自らも、常に向上心を持ち己を律し献身的に 医療に従事する。

平成22 年10 月9 日
全国医師会勤務医部会連絡協議会・栃木

平成22 年10 月9 日、栃木県宇都宮市(ホテル東日本宇都宮大和)において平成22 年全国 医師会勤務医部会連絡協議会を開催した。

当日は、全国より414 名の参加があり、今回 から初めて一般公開として、50 名の市民の参 加があった。

また、本連絡協議会の総意として提案した 「栃木宣言」については、一部文言の修正を求 める意見があった為、後日、栃木県医師会と日 本医師会勤務医委員会で協議の上、次のとおり 「栃木宣言」を取り纏めた。

2)平成23 年度について(富山県医師会)

次期担当県である富山県医師会南里理事よ り、来年の開催日時等について説明があった。

日時は、平成23 年10 月29 日(土)、富山県 富山市のANA クラウンプラザホテル富山にて 開催を予定している。

近年、医療を取り巻く環境の急速な変化や勤 務医の労働環境が悪化し、その疲弊は極限であ り、これらを考慮し、来年度の協議会のテーマ を「今後の勤務医の在り方−今、医師は何をな すべきか−」とし、基調講演ではチーム医療に ついてと、特別講演は原中日本医師会長の講演 を予定している。シンポジウムはテーマをしぼ り、多くの先生方からの意見を頂き、フロアか らも幅広いディスカッションができるよう1 つ とさせていただく。

アンケート報告は、女性医師に向けたアンケ ート調査を予定している。富山県医師会は会長 をはじめ、役員19 名の内、女性役員が4 名と 割合が高く、女性医師の活動にも積極的に支援 を行っている。

来年度の勤務医部会連絡協議会に続き、再来 年度の男女共同参画フォーラムも富山県で開催 する事が決定しており、男女共同参画フォーラ ムでも共用できる内容で女性医師部会を中心に 作業を進めている。勤務医部会にとって、女性 医師の役割は特に重要であり、今後、女性医師 を抜きにしてこの問題を解決する事は無理だと 考える。男女共同参画の橋渡しの現段階として も、来年度の勤務医部会連絡協議会は意義あるものにしたいと考えている。

来年も多くの先生方のご参加を心からお待ち している。

(2)勤務医の健康支援に関するプロジェク ト委員会活動報告

日本医師会今村聡常任理事より報告があった。

始めに、勤務医の健康支援に関するプロジェ クト委員会発足の背景には、勤務医の勤務条件 や労働環境は想像を絶すること、勤務条件の影 響で健康を害した医師が多数いること、医師の 健康確保は患者の安全につながること、医師の 健康支援は医療再生に不可欠との視点から同委 員会(勤務医のみで構成)を立ち上げた。

委員会では、平成21 年2 月20 日〜 3 月6 日 の期間に「勤務医の健康の現状と支援のあり方 に関するアンケート調査」を実施した。調査対 象者は、日本医師会会員で勤務医(約75,000 人)から1 万人(男性8,000 人、女性2,000 人) を無作為に抽出し、4,055 人から回答を得た。 (有効回答率40.6 %)

○アンケート調査の結果から

・休日に関しては、2 人に1 人が月に4 日以下

・平均睡眠時間は6 時間未満が41 %

・自宅待機が多い

・クレームに関しては、2 人に1 人は半年以内 に1 回以上のクレームの経験有

・2 人に1 人が自身の体調不良を他人に相談で きない

・メンタル面でのサポートについては、9 %が 必要と回答、7 %が自身を否定的にみてい る、6 %が1 週間に数回以上、死や自殺につ いて考える等の深刻な状況が分かった

○勤務医の半数以上が勤務医の健康支援のため に必要だと考える健康支援アクション項目

・必要な休日(少なくとも週1 日)と年次有給 休暇がとれるようにする

・必要な休憩時間・仮眠時間を取れる体制を整 える

・医療事故に関する訴えがあった際には必ず組 織的に対応し、関係者が参加して医師個人の 責任に固執しない再発防止策を進める

・記録や書類作成の簡素化、診療補助者の導入 等を進め、医師が診療に専念できる様にする

・院内で発生する患者・利用者による暴言・暴 力の防止対策を進める

・女性医師の就労継続のため、産休・育休の保 障や代替医師を確保し、時短勤務制度の導 入、妊娠・育児中の勤務軽減、育休明けの研 修等を充実させる

結論として、勤務医の就業環境や生活習慣に は改善の余地があり、医師自身の意識改革も必 要であるが、医療機関としての組織的な取り組 みも求められる。当然そのためには財源の問題 等の環境整備があり、それについては、日医と しても全力で取り組みたいと考えているが、 各々の病院の勤務医に何ができるか考えていた だきたい。

また、産業医の活動が最も遅れている現場が 医療機関である事ははっきりしている事から、 「医師が元気に働くための7 カ条」と「勤務医 の健康を守る病院7 カ条」を提案し、全ての病 院へ配布した経緯がある。委員会では、勤務医 の健康支援のための健康相談も受け付けている が、このままのやり方では機能しないと改めて 確認した。そこで、昨年紹介した「医師の職場 環境改善ワークショップ研修」を平成22 年3 月に行った。

研修会では病院内の産業医、院長、管理者を 対象に、病院の職場環境を改善する方法を議論 し提案を行った。

内容としては、医療現場の実例に近いケース スタディを通してグループワークを行い、勤務 医の健康支援・労働環境改善の課題を整理し、 自らの職場・医療機関の今後の活動計画を作成 して頂いた。また、職場改善チェックリストを 活用し、3 つのケースについて各グループで討 論を行い、その後、各グループの代表者による 事例検討会・発表を行った。

日医だけではなく、職場環境改善の意識をも ってもらう意味でも、各都道府県でこういう活 動を行っていただきたい。その際は、日医から 補助をさせていただきたいと考えている。その 他、日医として日本医学会分科会へ勤務医の健 康支援に関するシンポジウム・ワークショップ の開催をお願いしている。

協 議

テーマ:「勤務医の視点からの医師会改革」

(1)都道府県医師会からの勤務医活動報告

1)秋田県医師会 副会長 坂本哲也

秋田県医師会は、昭和55 年に代議員会にお いて会長が勤務医部会の設立を表明した。昭和 57 年に勤務医部会に代わり、勤務医委員会が 発足した。

平成5 年に秋田県が勤務医部会を必要としな い理由について、「県や郡市区医師会の役員や 委員会に多数の勤務医が参加しており、医師会 活動も勤務医、開業医の区別なく行っている」 と報告した。

平成14 年から勤務医勉強会等の活動を行っ ている。最初は、勤務医の資質向上を目的とし て行っていたが、時代の流れから医師不足問題 やその対策等について講演を行った。平成21 年には、秋田大学医師会と話し合いを行い、翌 22 年、秋田県における勤務医の環境を整える アクションプラン作成ため「メディカルクラー クを導入して」と題し勉強会を開催し、「県内 メディカルクラークの現状」についてアンケー ト調査を行った。

秋田県の勤務医は12 〜 13 年前までは1,280 名であり、勤務医が占める割合は平成16 年に は58 %であった。しかし、公務員医師の会費 の病院負担に問題があることから、医師会退会 となり、勤務医の加入率が下がっていった。

秋田県の役員及び代議員はともに36 %が勤 務医で構成されている。

昭和61 年、平成15 年、平成20 年にアンケ ートを行い、比較すると勤務医の状況が次のよ うに変化していることが分かる。

・勤務医の給与、施設の充実、病気等による 休業時の保障も下がってきている。

・勤務時間の改善については、要望が増えて おり、医事紛争時の保障についても増加し ている。

・昭和61 年にはまったくなかった「医師数 を増やして欲しい」という要望が増えてき ている。

・昭和61 年には、医師会に加入している割 合が7 2 %であったが、平成2 0 年には 55.3 %と大幅に減少している。

・昭和61 年には67.7 %が医師会活動に関心 があると回答しているが、平成20 年には 37.6 %にとどまり医師会活動に関心を持っ ていない状況が顕著になっている。

秋田県医師会では、勤務医委員会活動目標を 掲げ、平成21 年度は「勤務医労働環境改善の ためにメディカルクラークの積極的導入と複数 主治医制」についてアンケート調査を行い、報 告会と講演会を行った。また、平成22 年10 月 には導入状況の再調査を行った。18 地域の中 核病院78 病院中18 病院について調査を行い、 昨年度は13 病院が導入していたが、1 年後には 残りの病院すべてが導入し、加算している。メ ディカルクラークの作業内容は、各種診断書の 入力、主治医意見書の入力等、診療記録の代行 入力等である。

近年、最も大事なことは、女性医師について の問題である。秋田大学では多い時は50 %近 くの女性医師がおり、80 %の女子学生が入学 している状況である。秋田県の医師不足は女性 医師と大きくかかわっていると考える。来年男 女共同参画フォーラムを秋田県で開催する。テ ーマは「育てる」〜男女共同参画の為の意識改 革から実践へ〜と題し秋田県の途中経過を報告 したいと考えている。

2)新潟県医師会 理事 塚田芳久

新潟県医師会は、病院部会の中に勤務医委員 会がある。現在、A 会員が1,300 名、B 会員が1,665 名、C 会員が244 名と約6 割が勤務医と なっている。病院勤務医だけで約半数を占めて いる。県医師会の役員構成でも18 名中11 名が 病院勤務医となっており、医師会の中から勤務 医の意見が発信できる体制が整えられている背 景から、勤務医部会が設立されていない理由の 一つでもある。

県の理事会では、常に勤務医問題について話 し合われており、非難がでないか心配であった が、勤務医、開業医が分け隔てなく意見交換を 行っている。

新潟県医師会の病院・勤務医のサポートで は、講演会開催や勤務医ニュース発行(年4 回 発行)、アンケート調査「勤務医の現況と将来」 を行っている。また、ドクターバンク(県医師 会無料就職紹介)では、就職の斡旋・マッチン グを行い、42 件成立した。更に、ドクターシ ョートサポートバンク(医師不足病院の連休・ 休祝日の日直医斡旋(6 病院: 4 医師))、女性 医師ネット支援(新潟県、新潟県医師会、新潟 県病院協会)を展開している。

また、今年の研修・地域医療再生事業とし て、医療メディエーター育成事業(クレーム、 紛争対策)を行う予定である。各病院に医療メ ディエータ−を配置しようと試みているが、な かなか資格が取れない状況であり、新潟県とメ ディエーター協会との共催により、平成23 年 1 月29 日・30 日にメディエーター育成講習会 を開催する予定である。

また、医師確保対策として、研修医を対象に 新潟県医師会T&A コースを行う予定である。 当コースは救急災害に備えたテクニックを身に つけるという利点もあり、研修医にとって非常 に評判の高いコースとなっている。この様な活 動を通じて研修医の県内定着、医師負担軽減、 医師不足解消につながればと考えている。

今後は、緩和ケア研修事業、地域医療連携協 議会(郡市医師会、地域病院、自治体の距離を 縮める目的として)も予定している。

アンケート調査(勤務医の現況と将来)の結 果から、病院勤務医は医師会から遠い存在であ ることが見えてきた。また、勤務医は大病院に 集中し、高齢化している。病院勤務医や開業医 という枠組みではなく、若手医師の対応をどう すべきかが課題である。また、労働環境改善に も医師会として関わっていくべきであり、勤務 医の代弁者となる医師会でなければならないの ではないかと考える。

3)宮崎県医師会 理事 上田章

宮崎県医師は昭和58 年に勤務医委員会を設 立し、昭和62 年に勤務医部会を設立した。全 国で15 番目である。

宮崎県医師会の勤務医数は803 名であり、年 会費は2,000 円、宮崎県医師会から100 万円の 補助金をもらい運営している。勤務医は全医師 の2/3 を占める。会員数は1,693 名で宮崎県全 体の医師数は現在2,700 名程度であり、1,000 名程度が非会員である。非会員の先生方は若手 医師だと考えられる。

宮崎県の特徴は、若手医師が少なく、研修医 数も全国最下位であった。12 年前と比較して、 400 名増加しているが、30 歳未満は49 %減少、 30 〜 39 歳は19 %減少しており、逆に50 〜 60 歳代の先生方が増加し、地域医療、救急医療は 困難な状況である。役員の比率は勤務医理事が 23 %であり、日医代議員は0 %である。

勤務医部会の具体的な活動として、年に2 回 の定期講演会を開催し、全国で活躍している先 生方を招き講演頂いている。

また、地域・支部でも勤務医講演会を行って おり、延岡市では平成20 年1 月に「SiCKO 上 映会」、都城市では「地域医療を考える」等、 市民参加型の講演会を行っている。

また、研修医に対しての具体的な活動とし て、(1)新研修医保険診療等説明会・祝賀会 の開催、(2)宮崎県臨床研修運営協議会の開 催、(3)研修医の勉強会を共催し、医師会およ び勤務医部会の説明および入会の案内、(4)勤 務医の為の宮崎県医師会入会手引きのパンフレ ットの配布等を行っている。

また、女性医師支援として、平成16 年に女性医師委員会を設立し、平成21 年には、女性 医師相談窓口の設置、研修会での無料託児所を 設けるなどのサービスを提供している。

現在の問題点としては、医師会の組織率が低 く、おおよそ半分である。主な理由として、「医 師会に入会するメリットがない」、「A、B 会員 などの区別がある」、「会費が高い」等が挙がっ ている。また、役員、代議員制度があり、勤務 医の意見が通りにくいという点も挙がっている。

勤務医部会の問題点としては、「忙しく活動 に参加できない」、「主治医制度なので、なかな か医師会活動の為にぬけることができない」が 挙がっている。

また、地域医療・救急医療確保の問題もあ り、地域医療の崩壊は地方病院の崩壊、病院勤 務医の不足であると考えられる。勤務医・女性 医師が勤務医を続けるためにはどうすれば良い のかという問題があげられるが、一次救急を引 き受ける医師の確保を行い、主治医制ではな く、グループ診療を行う体制に移行していかな ければいけないと考える。救急医療についても 労働基準法に反し行っている状況であり、24 時間働き、次の外来をこなすという状況では勤 務医を続けていく事が難しい。

また、医療事故も大きな問題点であるが、ク レーム対策の解決も必要である。そういった問 題を解決すれば、勤務医を続けていく事は問題 ではないかと考える。日本医師会でも改善に努 めていただきたい。

協 議(意見交換)

1.日本医師会に若手勤務医のための広域会 員制度の創設を <岡山県医師会>

勤務医の入会が進まない理由は、大きく二つ あると思う。一つ目は、日医が勤務医にとって 魅力ある組織になっていないことである。二つ 目は、医師会への入会手順に問題がある。そこ で、都道府県の圏域を超え移動しても、医師会 員資格が維持できる若い勤務医のための広域会 員の創設を提案したい。

具体的には卒後2 年間は登録制で入会して頂 き、会費を徴収しない研修医会員を創設し、医 師全員が医師会へ入会するシステムを作る。3 年目以降は、会員を継続するか選択できる制度 を考えてほしい。

2.医師会三層構造 <栃木県医師会>

若い勤務医の先生方が入会しづらい理由とし て、医師会の三層構造(地区医師会、県医師会 及び、日本医師会)が挙げられる。従って、以 下の2 点を提案したい。

提案1.大学から派遣される医師に関しては、 大学医師会に入会すれば、どこに移動しようと も書類上で処理を行い、派遣先の医師会でその 都度入会する必要はないのではないか。

提案2.病院に就職した医師に関しては、そ の地域の医師会へ入会しなくてはならないが、 都道府県医師会に入会していれば、大学医師会 と同様な安い入会金、年会費で会員になっても らう等の工夫が必要ではないか。

医師数の少ない医師会では事務局の人件費だ けでも相当な費用を必要とするので、郡市区医 師会をなくし、県医師会に地域課をつくると費 用は簡略化できると思う。

根本的に改革するには医師会入会の窓口を日 本医師会のみとして、県医師会、郡市区医師会 は下部組織とし、その移動は書類のみで可能に し、必要に応じて年会費の徴収を行う組織と改 めた方が、勤務医、開業医の区別なく医師会活 動が行われるのではないか。よって、三層構造 は改める必要があると考える。

3.勤務医が医師会に加入し、医師の大同団 結を図るために <石川県医師会>

会員を増やすためにいろいろな事を行ってき たが殆ど増えていないのが現状である。逆転の 発想だが、医師になると日医へ入会している事 を条件に保険医登録をする。各県医師会、郡市 区医師会へは任意で入会してもらうシステムに してはどうかと考える。

メリットについては、若い医師達に関心がな いのはメリットが無いからだと思う。若い医師の一番の関心事は自分の技術を磨き、専門医に なる事である。日医が専門医制度についてしっ かりリーダーシップを取れば、一番のメリット になると思う。

<愛知県医師会からの質問>

上記の意見に関連して、医師会の下に医学会 があり、各学会が独立して入っている。生涯教 育の点数が専門医の点数には反映されない。学 会の専門医の点数は生涯教育の点数に反映され るが、医師会の生涯教育の点数が学会に反映さ れないのは、あきらかに構造が逆転しており、見 直す必要があると考えている。学会の点数が生 涯教育に反映されるのであれば、ほとんどの勤務 医が日医へ入会するのではないかと考えている。

<日本医師会・今村常任理事>

専門医の件はご指摘の通りである。専門医制 度については、日医が外れたところで第三者機 関が議論し決める動きがある。日本医師会では その点を問題視しており、日医が参加した形で 専門医制度を広くしていく事を原中会長を中心 に進めている。

専門医制度の中にどの様な日医の生涯教育制 度を組み込むのかが課題であり、今後議論して いきたいと考えている。

もう一点、開業医はなぜ日医に入会するのか という事については、私自身が感じた事は、法 律や各種制度は国の中で決められている。国に 意見が言えるのは医師会であり、医師会に加入 して活動することが大事だと感じている。日医 の役員が国の委員会へ参画し、政治家に訴えて いるが、制度や法律を変えていく時に、いくら 正論を言っても戦うことができない。その為に は、多くの医師の団結が必要であり、28 万人 の医師が応援してくれている事が必要である。 是非その点をご理解頂き、医師会に入会して欲 しいと申し上げている。

<日本医師会・中川副会長>

私の個人的な見解として、発言の場がある事 だと思う。医師会に参加する事は、医療政策に ついて、現場の実情を踏まえた上で意見を述べ る場が担保されているという一点だと思う。こ のことを知らせるには、日医は日医なりに、都 道府県は都道府県なりに、郡市区は郡市区なり にそれぞれ周知活動を図っていくべきだと思う。

4.日本医師会常任理事に勤務医を複数名入 れるべきである <石川県医師会>

日医常任理事に、勤務医を入れてほしい。勤 務医の権利向上、過重労働対策、女性医師やワ ークシェア問題、病院の適正な診療報酬問題、 医師の生涯教育および専門医制度等を勤務医が 担当して欲しい。勤務医が常任理事を担当する 事は、仕事の面でも大変だとは思うが、幹部ク ラスの勤務医の先生方が2 年程理事を務めて も、病院の幹部として戻る場所はあるのではな いかと考える。

5.代議員制度の見直し/日医会長の直接選 挙制について <熊本県医師会>

原中会長の挨拶の中に、日医会長の直接選挙 制の話があった。勤務医を含むすべての医師は 日医まではとはいかなくとも、都道府県医師会 へ入会するべきだと言われている。医師会活動 の見返りがほしい勤務医が大半だと思う。日医 は、勤務医に対して新たな活動支援を考えてい るのか伺いたい。

6.研修医を含む若手勤務医への日医の対応 について <三重県医師会>

日医は勤務医にも入ってもらえる状況を作 り、勤務医の意見が反映される方向性を打ち出 してほしい。研修医を含む若手勤務医がこぞっ て加入し、積極的に活動してもらえるような魅 力ある医師会づくりについて、日医がどのよう に考えているか知りたい。

ホームページについても、入会の方法等が掲 載されていない。そういった情報が少ないの で、一般の勤務医にとって、医師会抜きで仕事 をしていても何の問題もない状況がある。

7.女性医師の希望に応える支援プロジェク ト− Gender Equality −
<大阪府医師会>

大阪府医師会は、女性医師支援に関しても、 スローガンだけではなく、実際に問題を解決で きるような実行性のあるプロジェクトを立ち上 げようという事で、男女共同参画検討委員会、 勤務医部会、郡市区等医師会が連携して「大阪 府医師会女性医師支援プロジェクト− Gender Equality −」に取り組んでいる。

大阪府医師会員の約17,000 人の内1 万人が 勤務医である。すでに20 代の医師会員の45 % が女性医師である。女性医師が子供を産みなが ら仕事を続けていくことを実現しないかぎり、 病院が大変な思いをする状況になっている。そ のためには、医師会が中心となり、地域の開業 医、勤務医が一緒に自分たちの病院で女性医師 が子供を産みながら仕事を続けられるよう支援 していく方向性が重要である。そのためには、 医師会活動が大事であると考えている。郡市区 医師会も含み、府内で11 ブロックに分け、女 性医師支援のワーキンググループを設置する。 それぞれ、勤務医部会の役員、郡市区医師会の 会長からの推薦をいただき、ワーキンググルー プの委員を募っている最中である。

この様な活動が医師会が医師の集まりという キーワードの基に皆で問題を解決してく事にな るのではないかと考えている。日医も女性医師 支援に関して、スローガンだけではなく、実際 に問題を解決できるプロジェクトを支援して欲 しい。

<日本医師会・泉委員長>

原中会長が都道府県医師会に医師が加入する 事、直接選挙制という事を話しているが、それ はこれからの医師会活動に対して負になるはず がないと思っている。

今日参加している先生方は、医師会活動に触 れて、その必要性を感じているからこそ勤務医 の組織化に大いなる思いを期待しているだろう と思う。日医代議員会の質問の中で、定款につ いて触れているが、いつまでたっても変えられ ない定款はないだろうと考えている。その事も 含め、日医勤務医委員会として提言していきた いので、具体的な行動に繋がるような提案をお 願いしたい。

<日本医師会・今村常任理事>

さまざまな意見をいただいた。もっともな意見 だと思うが、現状ですぐに解決する事が困難な事 もある。議論だけを行っていても何も変わらない ので、できる事はきちっとやっていきたい。

定款修正の話も出たが、今日出た提案は委員 会の中で提案したい。本件は日医の役員だけで 決めている事ではなく、都道府県医師会の役員 が参加の上、決めていることなので、その点は ご了承いただきたい。いつも代議員に勤務医を 増やさないのかと質問があるが、これは県医師 会で選出していただければ済む話である。県医 師会でできること、日医がやらなくてはいけな いことをお互いに連携しながら、勤務医の先生 方が働きやすい環境を作っていくための医師会 活動を行っていきたい。

研修医の先生方が全員医師会に加入すること には賛成であるが、会費と権利の関係が生じる ので、例えば、準会員制度を作り、全員に日医 ニュースを読んでいただき、医師会の活動を理 解して頂く等も考えている。

印象記

宮里善次

理事 宮里 善次

平成22 年11 月19 日、日本医師会において都道府県医師会勤務医担当理事・連絡協議会が開催 された。

始めに会長挨拶の代読があったが、日本医師会として二つのことが強調された。第一に医師不 足対策のために医学部を新設することに反対である。既存の医学部が増員することで対応可能で ある。第二に皆保険制度堅持の観点から医療ツーリズムに反対である。

続いて行われた報告では“栃木宣言”と日本医師会の今村常任理事から“勤務医の健康支援に 関するプロジェクト委員会活動”報告がされた。詳細は本文をご参照頂きたい。

当日のテーマ「勤務医の視点からの医師会改革」と題して、秋田、新潟、宮崎県から発表があ り、協議に入った。

参加者の8 〜 9 割が勤務医ということもあり、白熱した議論が交わされた。 曰く、1)現在の日本医師会の入会率は6 割を切っており、勤務医の入会率が低い。その為日本医 師会が勤務医を含めた医師全体の代表団体とは言い難いのではないか。

2)勤務医の中でも特に若い医師の入会率が低い。三層構造(地区医師会、県医師会、日本医師会) が障害になっていると思われる。地区医師会に入会したら、日本医師会まで手続きできるように ならないか。

3)日本医師会のホームページを開いても入会方法の案内がない。

4)勤務医が医師会に入会するメリットが分かりにくい。開業すると直ぐに入会するのは開業医に とってどんなメリットがあるのか正直に教えて欲しい。

5)各医師会の理事に勤務医を入れるべき。日本医師会の常任理事にも複数名いれるべき

6)ただし、外科系の場合、医師会活動に時間をとられて、技術が落ちる心配がある。理事を退任 した時、技術力が落ちた状態で職場に居場所があるかも心配である。

7)医師の自由開業医制、専門医の選択の自由に対して制限を。等々の意見がだされた。

勤務医側の視点から出された意見なので、“対医師会”の側面が強くでているように思う。

最後に日本医師会の担当理事から「もはや議論の時は終わった。日本の医師集団の代表団体と なるべく、各地区医師会で勤務医の医師会入会に全力をあげて取り組んで欲しい。」旨の発言で閉 会となった。

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