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卯年に因んで

山入端敦

ハートライフ病院血液科 山入端 敦

沖縄県医師会会員の皆様、いかがお過ごしで しょうか?

時間が経つのは早いものですね・・。自分が 生まれてから3 回も干支が巡ってしまいまし た。学生時代は、今の自分自身を想像すらでき ませんでしたが・・。

そして、自分が医師になってからも10 年が経 過しました。右も左もわからず、ただ上級医に 言われるがままに、朝から晩まで働き続けてい た研修医時代はつい最近の事のように思えます。

今回、どういう理由なのか全くわからないの ですが、新春の随筆の執筆依頼が私に来まし た。何を書いていいのか正直迷いましたが、おそらく普段皆様があまり接する事がないであろ う血液内科の事を書いてみたいと思います。

近年医師不足の問題が良く取り挙げられます が、血液内科も例外ではなく、特に沖縄県は不 足しています。ぶっちゃけた事を言いますと、 沖縄県内の血液内科医で、自分は下から数えて 1,2 番目です。もうそれほど若くはないのです が、いつまでも若手と言われる状況が続いてい ます。血液内科といえば・・、難しい、重症が 多い、病気が治らない、など一般的にあまり良 いイメージが浮かんでこない事が原因なのかも しれません。「どうして血液内科医になろうと 思ったんですか?」とよく周囲の方に聞かれま す。正直なところ、自分自身にもその答えはは っきりとはわかりません。進路が初めから決ま っていたわけではなく、何となく全身を診れる 内科を選び、まず琉大の第2 内科に入局しまし た。そこでは、血液、代謝・内分泌、循環器を 学びましたが、1 番忙しくてたくさんの患者さ んが亡くなったにも関わらず、何となく血液内 科っていいなと感じたのを覚えています。

血液内科は、その大部分が白血病・リンパ腫 など悪性疾患が大部分を占めます。そして、こ れらは治療に難渋する事も多く、自分よりも若 い方が発症する事も稀ではありません。「何で よりによって自分が・・」とやりきれない気持 ちの患者さんが殆どだと思います。ただ、私的 な印象かもしれませんが、血液疾患の患者さん は非常に素直で頑張り屋さんが多く、患者さん との信頼関係は他のどの診療科よりも強いと常 日頃から思っています。年中休みもなく、時間 外・休日もよく携帯電話が鳴りますが、それで も少ない人数の中で私が頑張れているのは、患 者さんのおかげかなと思います。

治療と言えば、抗癌剤治療、放射線治療が主 流ですが、一部の患者様には、造血幹細胞移植 が必要な事があります。これには、自家移植 (骨髄機能が破綻する程の大量抗癌剤の後に前 もって採取した自分の幹細胞を戻してレスキュ ー)と同種移植(大量抗癌剤や放射線での抗腫 瘍効果に加え、HLA が一致or 類似したドナー の幹細胞を移植して、その免疫効果に期待した 治療)があります。皆さん御存知かと思います が、同種移植に関しては、血縁でHLA 一致者 がいない場合、県外で移植せざるを得ない状況 が昨年から続いていました。私は昨年、特に移 植の勉強のため福岡県の病院に行っていました が、そこには沖縄から移植のために来た患者さ んが5 〜 6 人いました。移植は、身体的にも高 熱、嘔吐・下痢などできつい事が殆どですが、 県外という不安や孤独感など精神的なつらさを 訴える患者さんも多く、無菌室でずっと泣いて いる方もいました。「沖縄の血液内科はこのま まではいけないな・・」と痛感したものでした。

その問題を少しでも解消するべく、ハートラ イフ病院では、2010 年11 月から骨髄バンクド ナーからの移植が出来るようになりました。県 内の血液疾患の患者さんは、県内で全ての治療 を完結できるよう、今後も微力ながら貢献でき ればと思っております。もし身近で血液疾患か な?という方がいらっしゃいましたら、お気軽 に御紹介していただければと思います。