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今年の抱負「セレンディピティと運」

長田光司

ながた内科クリニック 長田 光司

新年明けましておめでとうございます。昨年 7 月、那覇新都心天久に「ながた内科クリニッ ク」を開院いたしました。開院に際しましては 多くの先生方に御祝意をいただき、誠にありが とうございました。あらためて御礼申し上げま す。さて、今年は卯年ということで私も年男になりました。よく考えてみると、今年の年男は 私にとって、人生の折り返し点を気付かせるも のでした。次回の卯年は還暦の60 歳、その後 は70 歳を超えてしまいます。自分が干支を迎 えるのも、平均寿命からいってあと3 回程度に なってしましました。人生は長いようで、干支 が巡ってくる回数は少ないですね。人生の後半 戦をどう過ごすかを考えてしまいます。やりた いことはいっぱいありますが、残りの年数を考 えると若い時のように一つのことに多くの時間 はかけられません。そこで、私が最近興味があ るのがセレンディピティ(serendipity)と運 です。セレンディピティは“当てもしていない ものを偶然にうまく発見する能力”と言い換え ることができます。セレンディピティの語源は 「セレンディップの三人の王子」という寓話か ら来ています。セレンディップ(セイロン、今 のスリランカ)国の王様が、3 人の王子達をイ ンドへ修行に行かせる話です。インドでの旅の 途中、行く先々で事件が起こりますが、機転を 効かして問題を解決していくうちに、そこで出 会った出来事が結果的に王子達に幸運をもたら し、人間として成長して国に戻る話です。この 話を読んだ18 世紀のイギリスの作家ウォルポ ールが、思いがけない幸運を見つけ出す能力を セレンディピティ(serendipity)と名づけま した。誰もが、これまで生きてきた人生の中で 心当たりのあることだと思います。ノーベル賞 を受賞した歴史上の画期的な発見や発明にもセ レンディピティが大きく関わっています。抗生 物質、X 線、ラジウムの発見など。またノーベ ル賞を制定したノーベルでさえもダイナマイト の発明にセレンディピティが関連しています。 セレンディピティは、偶然と察知力の2 つを要 素にしています。常識にとらわれず、あらゆる 現象に敏感になることが大事で、専門外と思わ れるところに、突破口が見いだせます。専門分 野と他の分野のバランスを見直すことが大事で す。また、運も人生を左右します。運は待って いるだけでなく、自ら呼び込むことが大事で す。運はすべての人に平等にやってきます。ただ、その運に気付くか気付かないかの違いで す。運を呼び込むにはまず、人のネットワーク を広げることが重要な様です。自ら行動して人 に会うなどして情報を手に入れることです。努 力することも大事ですが、自分1 人でできるこ とには限界があります。人の力を借りることも 必要です。また、間違った努力は時間の無駄で す。エジソンも言っています。「発明には、 99 %の努力と1 %のインスピレーションが必要 だ。」この言葉の本質は、1 %のインスピレーシ ョンがなければ99 %の努力は無駄になるとも 言えます。常にいろいろなことに興味をもちア ンテナを広げましょう。身の回りに起こること に敏感になり、運を捕まえれば物事が思いのほ かスムーズに運びます。世の中には無限に運が 転がっています。この運を生かすことが、これ からの人生に重要になってくると思います。私 は現在、偶然の出会いから自分のラジオ番組を もっています。医学以外の方面にも能力を生か してみるのはどうでしょう。専門バカになら ず、芸術、音楽、文学など多方面に関心を持 ち、自分の感性に合うものを探してもう一つの 自分の世界をつくるのもいいのではないでしょ うか。私もセレンディピティを高めて、今後も いろいろなことにチャレンジしていきたいと思 います。