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年頭所感

原中勝征

日本医師会長 原中 勝征

新年明けましておめでとうございます。

会員の皆様におかれましては、健やかに新年 をお迎えになられましたことと、お慶び申し上 げます。

さて、新執行部が4 月に発足してから9 ヶ月 が過ぎました。この間、会員の皆様の温かいご 支援とご指導のおかげで、国民医療の改善と我 が国の医療制度の未来に向けての行動を始める ことができました。長年続いた医療費抑制政策 により引き起こされた地域医療の崩壊により、 医療の現場は荒廃の危機にさらされています。 ご承知のように自由経済の我が国において、医 療をはじめとする社会保障制度は相互扶助を基 盤とした制度になっております。したがって、 この荒廃した地域医療のおかれた環境の修復に は公的医療保険への公的財源の投入なくしては 不可能であります。

医師は、人の命を苦痛から救う聖職でありま す。しかしながら、市場経済を中心とした米国 の医療では、保険会社によって経済的視点から 医療内容が指示されることが日常的にあると言 われています。

国際的にみると日本は廉価な医療費で、すべ ての人が望んでいる健康長寿を達成しました。 インフルエンザ流行時にも最小限の死者数にと どめました。これは我が国の国民皆保険制度が 大きな役割を発揮したよい例だと思います。

厳しい時代であるからこそ、我が国の英知を 結集し、我が国にふさわしい医療制度の再構築 に向かわなければなりません。そのためにも、 医療費削減のために医師を悪人と決めつけるよ うな指導・監査の制度や、病院勤務医と診療所 医師を分断するような政策を改め、また、現場 を熟知していない学者などによる審議会等の在 り方を見直し、本当に現場からの声を聞き、共 に苦労を分かち合いながら国民を守る政治に変 える必要があります。

一方、私たち医師も医道倫理と学術に基づい た医療を行い、医学教育、医師不足、医師の診 療科と地域の偏在、専門医の在り方、臨床研修 制度、女性医師の職場復帰、基礎医学者の不 足、医師の労働環境、医療事故調査、医療監 査・指導の在り方、消費税や事業税、療養病床 や有床診療所の在り方の問題などを克服し、国 民医療を守らなければなりません。

2055 年には人口が今より約4,000 万人減少 し、65 歳以上人口が労働人口とほぼ同一にな るといわれております。すべての医師が医師会 に入会し、都道府県行政を基本とした知事と都 道府県医師会が地域の実情にあった医療と介護 の制度を策定し、国民が安心して生涯を送れる 日本を作り上げなければならないと考えます。

新年が明るい未来の礎の年になりますことを 祈り、合わせて会員の皆様のご多幸の年になり ますことをお祈り申し上げます。