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九州医師会連合会平成22年度 第1回各種協議会

2.介護保険対策協議会

副会長 小渡 敬

挨 拶

鹿児島県医師会の鉾乃原大助常任理事より、 概ね以下の通り挨拶があった。

先般、長妻前厚生労働大臣が介護療養病床を 2011 年度末には廃止しない方針を固めた内容 の報道がなされた。これは、厚労省が実施した 転換意向調査で、転換先を「未定」とした介護 療養病床が6 割以上であった結果を受けてのも のである。

この療養病床の再編に関しては、本協議会で も数回にわたり、介護療養病床の存続、受け皿 の問題等について熱心に議論いただき、現場の 生の声を日本医師会を通じ国へ届けた結果が、 この度の国の方針転換に繋がったものと考えて いる。また本件に関しては、本日お越しの三上 常任理事に多大なご尽力をいただいたことは皆 様ご承知の通りであり、この場を借りて厚くお 礼申し上げたい。

本日もその療養病床再編の問題を踏まえ、各 県から介護保険の諸問題に関する10 の協議事 項をいただいている。皆様の忌憚のないご意見 をいただきたい。

日本医師会の三上裕司常任理事より、概ね以 下の通り挨拶があった。

介護保険関係に関しては、ご存知の通り、非 常に頻回に介護保険部会あるいは介護給付費分 科会、その他、喀痰吸引の問題や精神保健の方 で、認知症の患者様を精神科病床でどう受け入 れるかということも併せて議論している。非常 に頻回に会議が開かれており、いろいろなこと が変わってきている。本日は皆様のご意見を伺 った上で、今後のそういった会議での発言の参 考にさせていただきたい。

○座長選出

慣例により、担当県の鉾乃原常任理事が座長 に選出され会が進行された。

協 議

(1)療養病床転換意向アンケートに基づく 介護療養病床廃止撤廃に向けて(大分県)

<提案要旨>

民主党は昨年の総選挙前の政策集に「療養病 床を削減する介護療養病床再編計画を中止」す ると明記。さらにマニフェストにも「療養病床 削減計画を凍結」と記載した。しかし、1 月27 日の参院予算委員会で長妻厚労相は「基本的に (介護療養病床の)廃止というような方向性は 変わりません」と答弁した。その後、介護療養 病床について「いま実態調査を詳細にしてい る。夏頃までに結果が出るので、結果を踏まえ て今後の方針を決める」と述べ、計画の見直し 案を夏以降に出す考えを示したが、方針は不透 明のままであり、多くの医療機関は将来への方 向性を見いだせずにいる。

本年1 月と4 月、2 回の療養病床転換以降の アンケート調査が行われたが、厚労省の分析結 果が出る前に医師会として会員の意向を把握し ておく必要があると考え、集計・分析を行った。

各県で同様の検討をされていれば、ご教示い ただきたい。また、日医の見解及び各県のご意 見を伺いたい。

(2)療養病床転換施策の見通しについて (佐賀県)

<提案要旨>

介護療養病床の廃止の凍結、療養病床転換施 策の方針変更など報道がなされているが、確た る情報や正式な通知は出されていない状況で、 現場サイドでも困惑しているので、療養病床転 換施策の今後の見通しについて、日医の見解を お伺いしたい。

また、大幅な方針変更がなされる場合には、 既に療養病床を介護施設等に転換した医療機関 は、希望すれば特に縛りもなく転換前の療養及 び病床数に戻れる措置をもうけていただくよ う、日医に要望したい。

協議事項(1)(2)は一括協議

<各県回答>

協議事項(1)における大分県と同様のアン ケート調査を医師会独自で行っている県は無か ったが、県行政が行った調査によると、各県と もに、介護療養病床の転換先を「未定」として いる施設が大半を占めていることが報告され た。( 沖縄県: 未定4 9 . 6 % 、医療養病床 30.3 %、老健等13.3 %)

協議事項(2)における療養病床転換施策の 見通しが不透明であることに対しては、各県と もに、転換施策に係る情報が錯綜し、また医療 必要度の高い患者の受け皿が整理されていない 状況において現場が混乱していると報告があ り、日医から厚労省への働きかけを期待したい とする回答が各県より示された。

<日医コメント>

この問題は非常に長く戦ってきた結果であ る。横断調査ができたということが非常に良か った。これまでは、保険局医療課や老健局老人 保健課が単独で調査を実施しており、これでは 本当の意味で必要な病床がどうなのかが分から ないということで、以前から横断調査を実施し ていただきたいということを申し入れていた。 つい最近になり、担当課長が代わったりという ことで横断調査ができるようになった。

その結果、介護療養病床の廃止という方針が 決まった平成17 年10 月の中医協で出された資 料と全く違うデータが示された。

当時は、2,200 億円削減のために病床を減ら すということで、なるべく減らすという理由付 けになるような調査の方法、あるいはそういう 発表の仕方をしていた。また、実際のデータの 文言を変える等の情報操作が行われていた。そ の結果、医療療養病床と介護療養病床にはほと んど同じ状態の患者さんがおり、その内の大半 が社会的入院として在宅に帰れるような人達が 入っているという結果が示された。

しかし、今回の横断調査については、保険局 医療課と老健局老人保健課が同時に実施してい るため、そういった思惑が働かず、アンケートの内容も我々が申し入れた形で調査を実施した ということで、介護療養と医療療養には全く違 う患者特性の人が入っており、転換老健と従来 老健も全く違っているということ、転換老健と 介護療養型医療施設の患者特性は全く変わって いないということ、なおかつ医療が必要な人達 が多いということが示された。

当然なことと考えるが、老健にせよ特養にせ よ介護療養型医療施設にせよ、医療の必要度の 高い方、あるいは要介護度の重い方がますます 増えてきているという状況の中で、療養病床を 減らして良いはずがなく、社会的入院が多いと いう結果を出した17 年の調査は、非常に恣意 的な結果であったと思っている。

今回の結果は詳細分析が未だ済んでいない。 これは非常に細かい設問をしているので、その 辺りがもう少しで出てくると思う。最終的に は、中医協の下にある診療報酬調査検討組織の 慢性期入院医療の評価分科会の中で検討される 訳だが、予想としては、介護療養型医療施設を そのまま存続させるということに持っていきた いと考えている。しかし、それには法改正が必 要となる。タイムスケジュールとしては、年末 までの3 ヶ月位の間に詳細調査を検討し、その 結果、来年の春には法案を出す。そして23 年 末までにその法案を施行する。介護療養を廃止 するという法案を廃止する法律を作るというこ とになる。

介護療養型の転換について、介護療養が廃止 されるということで、やむなく医療療養に変わ った、あるいは老健に変わったという施設があ り、それが廃止されないとなった場合にどうす るかということが非常に大きな問題になろうか と思う。そういった場合に、戻れる施設は元に 戻れるようにすべきではないかという意見があ り、介護保険部会でその意見を申し上げた。老 人保健課長からは、制度的には戻れないことは ないが、老健に戻った時には人員配置を手薄く しているので、それをまた人を雇用し介護療養 に戻れるような形にできるのかということにつ いては別であり、また患者特性が少し変わった 施設があるかもしれない。特に介護療養から介 護施設に転換した施設では、一部は患者特性の 問題や人材の確保の問題で転換されたと聞いて いるので、そういうところは元に戻ることは難 しいと考えるが、変わる必要はそう大きくなか ったが変わられた施設については、元に戻れる ような手立てができるよう、これから交渉して いきたいと考えている。

有床診については、今「お泊まりデイサービ ス」というものを聞かれたことがあると思う が、いわゆる馴染みの関係のところで、緊急の お泊まりが良いのではないかという話が当時の 政務官からあり、それが介護保険部会でも出て きた。これは東京都の認知症対応力のモデル事 業で行われていた介護保険とは関係のない介護 保険外のサービスとして出されたものだが、そ ういったものが良いのではないかということで あった。日医としては、有床診療所の空きベッ ドを緊急ショートステイに使えるようにお願い したい。それには今現在、一般病床でも6.4 平 米という基準があるが、介護におけるショート ステイが可能になったという経緯があるので、 老健に転換されるよりは一般病床に6.4 平米の まま一般病床にされて、緊急ショートステイを 受けられるという条件が整えば、在宅医療の支 援という形で有床診のベッドが活用されること が一番良いのではないかと考えている。有床診 の中でもこの話をさせていただいており、保険 局医療課の方にも出向き説明を行っている。

転換については、都道府県による差が非常に 大きい。広島県や青森県は介護療養から老健に 転換した比率が非常に高い。これは都道府県の 説明の中で、非常に不安を煽るような言われ方 をして焦って転換を進めた県と、全く転換しな い県と二通りに非常に分かれている。そういう 意味で、不安を煽られて嫌々に変わられたとこ ろを何とか元に戻れるような形にしていかなけ ればならないと思っている。

(3)介護保険施設全体のあり方について (鹿児島県)

<提案要旨>

介護保険施行後、既に10 年以上が経過して おり、介護療養病床のみならず、介護保険施設 全体のあり方について見直しが必要な時期に来 たのではないか。

特に医療のあり方等、外出しについての議論 も必要。平成24 年度医療保険・介護保険報酬 同時改訂に向けて議論を始める必要がある。

<各県回答>

各県ともに、平成24 年の同時改定に向けて、 介護保険施設における医療提供体制等の抜本的 な見直しや、医療保険との整合性を図る必要が あるとの意見が示された。また、現在、要介護 度の重症化により利用者と施設とがマッチして いない状況が多々あることから、大分県より、 必要な医療がかかりつけ医等から制約なく提供 される形が望ましいとした意見が示されるとと もに、長崎県より、全ての介護施設で、外付け の医療サービスが提供できるような形はどうか 等の意見が提示された。

<日医コメント>

医療の外出しについては以前から議論されて いる。これは非常に微妙な問題がある。もとも と施設については、内付けの医療と介護の密度 それぞれの濃淡があり、介護療養型医療施設の 密度が一番濃い。介護保険の創設当初は、そう いった介護と医療の密度の違いによる施設の特 性に合わせ、利用者がその施設間を移動すると いう考え方で、いろいろなサービスがあるとい う形で作られた。現在そういったものが、施設 の入所待ちが多くなったために施設間の移動が できず、適切なケアマネジメントが提供できな いというミスマッチが起こっている。そのため に、例えば特養の介護職員に医療行為をさせな ければ成り立たないのではないかという話が今 現在出てきている訳である。

そういう意味では、介護療養が廃止にならない ということは現状としては良いが、重度化した要 介護者、医療の必要な方が多い状況にあり、介護 療養以外にも施設の整備が必要になってくる。

現在、高専賃のような居住系サービスでは、 医療や介護が全て外付けとなっている。逆に老 健等は医療が内付けになっている分、外付けの 医療がしにくく、一番医療から遠いのが老健だ と言われることもある。それは今後の課題であ ろうと考えている。

個人的な意見だが、医師会の共同利用施設の 委員会で、地域包括ケア研究会の話を少しさせ ていただいたが、この時に私から高専賃という 居住系のところへの外付けの医療を、医師会と しては十分に考えできるようにしなければなら ない、積極的に取り組もうという話をしたとこ ろ、居住系サービスに生活支援サービスや訪問 診療等を付けていくという考え方を医師会とし て言うのはどうなのか、ご自宅で生活できるこ とを目指して頑張るということが医師会の本来 の姿ではないのかと指摘された。これから生産 年齢人口が減り、家族介護力が無くなる中で、 高専賃のような、いわゆる恰も施設のよう高齢 者住宅に高齢者の方に住んでいただき、そこに 効率良く医療や介護を提供するという形が、ど こまで良いのか積極的に進めるべきなのかを、 今現在悩んでいるところである。

外付けをどうするかという話になると、介護 保険施設は全て一本化され、全て外付けという ことにもなりかねないので、慎重に議論をして いただきたいと考えている。

(4)特養入居者に係る医療行為について(宮崎県)

<提案要旨>

本県では、6 月1 日付けで県福祉保健部国 保・援護課から特養嘱託医に「特別養護老人ホ ーム等入所者にかかる診療報酬の算定等につい て」と題する文書が通知された。その内容は以 下の通りである(抜粋)。

2)施設内(特別養護老人ホーム等)に配置している職員が行った医療行為については、算定 できません。したがって、点滴注射等(手技 料、薬剤料)の算定はできません。

3)医療機関(自院)の看護師等が医師の指示に より単独で施設に赴き、点滴注射等を行った 場合でも、手技料はもちろん薬剤料も算定で きません。

国は高齢者を病院から追い出し、在宅や特養 等高齢者施設での終末医療、看とり介護を勧め ているにも関わらず、一方で施設嘱託医の医療 行為を萎縮させるような指導は、矛盾している と考える。もとより、特養の嘱託医は初診料、 再診料、諸加算は算定できない。その上点滴の 薬剤料も算定できないということになれば特養 の嘱託医にとって由々しき問題である。

そこで、本会では7 月に「特養入居者に係る 医療行為について」を施設と嘱託医にアンケー ト調査したので報告したい。

またこのような通達は各県で出されているの か、各県のご意見、さらに日医の考えもお聞き したい。

<各県回答>

宮崎県以外では、同様の通知は出されていな いとの回答であった。しかし、各県より、特養 での医療ニーズの増大等が求められる現状にお いて、実態にそぐわない現行制度の指導強化を 行うのではなく、制度そのものの改善の論議が 必要ではないかとの意見が提起された。

<日医コメント>

厚生労働省の医療課に確認したところ、昨年 のQ&A では、「特養入所者が診療により、特養 内で点滴の必要性を認め2、3 日実施した場合」 という問いに対し、「配置医師の場合、初診料、 往診料は算定できないが、使用した手技料、薬 剤料等は算定可能。」、「配置医師以外の場合、 (配置医師以外の診療の必要性はある)往診料 等の算定及び、その医師が診療した日に実施し た点滴等に係る手技料、薬剤料の算定は可能。」、 「配置医師以外の場合で診療は1 日で、特養の 看護師に1、2 日後の指示をしてきた場合は、 医師は当日の往診料、当日の手技料の算定は可 能。薬剤料に関しては、医師が処方or 投与し た分に関しては算定可能。ただし、特養の看護 師は保険医療機関の看護職員ではなく当該施設 の職員であるため、その看護師が行った処置等 に関しては算定できない。」という回答が示さ れている。

従って、診療所の職員が行えば当然取れると いうことになる。診察があり、処方した分の薬 剤料も算定が可能ということである。例えば、 慢性疾患があった場合に、2 週間分の投薬を配 置医師あるいは配置医師以外の方がされた場合 にも、薬剤料2 週間分はその診療所から請求で きる。電話で配置薬を出された場合は算定でき ないが、それぞれの診療所が診察の上、処方さ れ出された分については算定できるということ である。いずれも診察は必要となる。

(5)居宅療養管理指導費の算定について (福岡県)

<提案要旨>

福岡県では、居宅療養管理指導費の算定に当 たり、契約書や同意書、重点事項説明書等につ いて不適切事例が多く見受けられることから、 昨年度、県行政と共同で「居宅療養管理指導費 に関する説明会」を実施している。また、本年 度については、県行政より居宅療養管理指導費 に関して、「集団指導」という位置付けで実施 する旨の申し入れがなされ、これについて本会 でも検討したところである。

九州各県における、居宅療養管理指導費の不 適切事例の状況、また県行政との関わり方につ いてご教示いただきたい。

<各県回答>

福岡県以外の各県においては、居宅療養管理 指導費に関する集団指導は実施されておらず、 現時点で不適切な事例は報告されていないとの 回答が示された。

<日医コメント>

居宅療養管理指導費は、介護保険に入ってい る唯一の医療系サービスである。

介護保険の基本は、利用者が選択し契約を結 ぶということであり、その辺が医療保険と全く 違う。そこを理解されないと、こういう事例が 起こる可能性があると考える。

(6)維持期リハビリテーションについて (長崎県)

<提案要旨>

急性期及び回復期リハビリについては、現 在、医療保険で手厚いサービスが保障されてい るが、維持期リハビリについては、医学的に必 要性が認められているにも関わらず介護保険に 組み込まれてしまい、ケアマネの知識不足や所 属施設の囲い込み、及び制度による複雑な制限 からニーズに十分に対応できているとは言えな い状況である。生活支援目的の介護保険に医療 行為を組み込むこと自体に無理があり、現場で は様々な問題が起こっている。

また、グループホームや老人ホーム等のいわ ゆる居宅系施設においても、リハビリが必要な 方に提供する方法がないのが現状である。少な くとも介護認定を受けるレベルの利用者には、 必要に応じて外付けの医療サービスが提供でき るシステムの構築が望まれるが、日医の見解を 伺いたい。

<各県回答>

各県ともに、利用者の状態に応じたリハビリ テーションを提供する体制づくりは必須である との見解が示された。

各県より、リハビリは本来医療で行うべきで あり、介護保険の限度額でリハビリより生活支 援を優先しなければならない状況の改善は必要 であるとした意見(宮崎県)や、健康寿命延伸 のため維持期リハは医療保険が望ましく、通所 リハを行っている方でも外来リハを認めるべき であるという意見(熊本県)、リハ等で機能が 向上し介護認定が改善された場合、事業所に対 する「評価加算」の仕組みを日医から厚労省に 働きかけていただきたいとする意見(鹿児島 県)等が示された。

<日医コメント>

デイサービスとデイケア、通所介護と通所リ ハの問題だが、介護保険部会における厚労省の 資料の中に、これらはあまり変わらないという 資料が出され、大いに盛り上がった議論となっ た。基本的な預かり時間がデイサービスと同じ 部分があるのではないかということで一緒にし てはどうかという形で厚労省の資料が出され た。全老健等が違うということを発言し、今の ところ、それはそういう形にはならないと考え ている。

維持期リハについては、確かに非常に大きな 問題であり、回数制限云々等の問題もあり、必 要なリハができない状態ということがあちこち で起こっているということも聞いている。

今度の同時改定に向けての一番大きな検討事 項と考えている。

現在、日医の診療報酬検討委員会の下に、基 本診療料のプロジェクト委員会、と同時改定に 向けたプロジェクト委員会が設置されている。 同時改定に向けたプロジェクト委員会には非常 にプロフェッショナルな方々が入っており、リ ハビリの専門の先生も入っておられ、これをど うするかということを検討している。問題は基 本診療料との兼ね合いがあり、整形の再診料の 部分と、維持期リハの部分の再診料をどうする かということが絡まってくると非常に複雑にな るため、頭を悩ませているところである。これ から半年間をかけてじっくり検討していこうと いうことになっている。

急性期のリハと維持期のリハの違いがよく話 題になる。リハビリは、基本的には障害があり その機能が落ちた部分を元に戻していくための 作業となるが、維持期リハや介護保険で行って いるリハは、悪くならないようにずっと頑張り 続けている状態のリハである。そこが十分に理解されず、評価されていないと考える。今後そ れが評価されるよう、いろいろと意見を言って いきたいと考える。

(7)介護認定審査会の審査員と調査員の人 員の確保について(長崎県)

<提案要旨>

介護認定審査会における審査員や調査員の質 的・量的な充足は、介護保険発足当初よりの課 題であるが、近年長崎県内において切実な問題 となりつつある。特に長崎市においては、申請 数の増加と末期癌等の重傷事例の増加に伴い調 査員の不足が介護認定の遅延を来しつつあり、 ひいては介護サービス事業者への影響も懸念さ れる状態である。

これは、調査員の質的なレベルを維持するた め、高い資格制限を設けたり(長崎市は看護師 に限定)、給与レベルの引き上げが容易でない といった理由が挙げられており、なかなか有効 な対策が見出せない状況にある。

また、審査員に関して現在は問題ないが、審 査案件の増加に伴い今後の補充・増員が困難に なることが予測される。

各県における、審査員・調査員の確保のた めの対策や、有効と思われる手段があれば伺い たい。

<各県回答>

調査員については、本県、佐賀県、鹿児島県 で人材の確保に苦慮しているとの回答が示され た。その他の県においては、社会福祉協議会等 の外部機関への委託や、市のホームページやハ ローワーク等で人員募集を行うことで、人材を 確保しているとの回答が示された。

審査員については、各県ともに人材の確保に 苦慮しているとの回答が示された。審査員を確 保するための方策として、大分県から、審査員 の所属する医療機関に何らかのインセンティブ 付与を検討してはどうかと提起され、また鹿児 島県からは、審査員の確保が困難なため介護保 険制度の運用に支障を来しかねず、認定制度の 仕組み自体の見直しが急務ではないかとの意見 が示された。

<日医コメント>

この問題は、今月9 日に介護保険委員会が日 医で開催され、その際、鉾乃原先生から詳しく ご報告いただき問題点として十分認識している。

確かに審査員の資質は非常に問題であり、実 際に研修を十分やられているところの方が成績 が良いという報告もあり、是非そういったこと もやっていただきたい。審査員と調査員の質の 問題については、認定の信頼性に繋がるという ことで、今後どうするかということについては 介護保険部会等でも問題提起をしていきたいと 思うが、この人材確保の問題については、処遇 の問題も含め、財源が必要ということもあり難 しいとも考える。

(8)認知症疾患医療センター整備の進捗状 況について(佐賀県)

<提案要旨>

認知症支援体制については、平成21 年度の 本協議会でも協議され、各県の認知症疾患医療 センターの整備状況等情報提供いただいたとこ ろである。

佐賀県では、認知症疾患医療センターの整備 については、医療の実態や患者の利便性等を勘 案し熊本モデルを参考に県行政と調整を行って いるが、センターの整備要件や県の財政の問題 等から、なかなか全体像がまとまらない状況に ある。

その後の各県の認知症疾患医療センター整備 の進捗状況について、お伺いしたい。

<各県回答>

提案県の佐賀県、宮崎県、本県においては、 未だ認知症疾患医療センターは整備されていな い状況にあるとの回答が示された(宮崎県は候 補となる施設は内定)。整備されない理由とし て、3 県ともに、県の財政の問題となっている ことが報告された。

大分県では基幹型1 カ所を選定、協力医療機 関3、連携医療機関13。長崎県では長崎と佐世 保に1 カ所ずつ指定。熊本県では基幹型1 カ 所、地域型7 カ所。福岡県では福岡市、北九州 市に1 カ所ずつ。鹿児島県では4 カ所を指定。 との回答が示された。

(9)消費税の非課税制度について(沖縄県)

<提案要旨>

医療や介護等の社会保障政策に係る安定した 財源確保を論じる上で消費税引き上げの必要性 が指摘されることはやむを得ないところだが、 消費税については、社会保険診療等に係る控除 対象外消費税のゼロ税率や軽減税率化等も論点 として挙げられているところである。

介護サービスについても、その多くが消費税 は非課税として取り扱われており、今後、医療 と介護の一体的な検討が求められていることを 考えれば、介護保険に係る消費税の取り扱いに ついても何らかの議論の場が必要となるのでは ないかと考える。

日医及び各県のご意見をお伺いしたい。

<各県回答>

各県ともに、介護保険に係る消費税について も、医療保険と同様の議論が必要であるとの見 解が示され、日医の考えを伺いたいとの意見が 出された。

<日医コメント>

医療機関と介護施設の消費税の負担について は、従来から非課税ということがネックとなり 大きな問題となっていた。

平成21 年度の厚労省の税制改正要望では、 税体制の抜本的改革を行う際に検討するという ことにされているが、そのためには所管官庁の 厚労省が取り上げることが第一歩となる。

平成21 年12 月の医療部会で、今村常任理事 が発言しているが、診療報酬の消費税の上乗せ 分を改めて検討すべきであるという問題提起を している。介護報酬についても、これまでの要 望では社会保険診療報酬等という形でずっと要 望してきており、介護報酬もその「等」の中に 入っていると理解していただきたいと考えてい る。23 年度の要望では、昨年12 月に閣議決定 された税制改正大綱において、消費税の複数税 率は否定的な形での方針が明記されていたた め、今回は、これまではゼロ税率や軽減税率と いうことの要望を出していたが、今回は仕入れ 税控除が可能な課税制度として、患者負担を増 やさない制度とする要望に改めた。ゼロ税率も 軽減税率もあるが、別のやり方もあると、柔軟 に対応していただきたいという要望である。

この介護報酬に関する、介護種別における消 費税負担、損税の問題はデータも示されてい る。全老健の方から23 年度の要望として出さ れており、具体的な数字も出ている。そこで は、60 床以下で365 万円、61 〜 80 床で507 万 円、150 床以上では905 万円の消費税の損税が あるということが示されている。こういったこ とも含め、税率がアップするとこのような負担 が非常に大きくなるということから、課税性に 改めてもらえるよう、今後も要望を続けていき たいと考えている。

この問題については、日医としても十分に認 識している。

(10)グループ化した有限会社(居宅支援事 業所、訪問介護、訪問看護ステーション 等併設した)による有料老人ホーム(高 専賃等)の問題点について(熊本県)

<提案要旨>

2005 年介護保険制度改正により、総量規制 に、それまでの介護保険三施設とグループホー ム、特定施設が加えられ37 %以下に抑えられ ることになった。

その後、住まい系の有料老人ホームが激増し ている。特に居宅支援事業所、訪問介護、訪 問看護ステーション等グループ化した有限会社 による有料老人ホームに問題点が多いと考えて いる。

1)介護給付限度額の上限いっぱいのケアプレン作成による介護サービスの提供

2)一般有床診の入院1 人あたりの診療報酬に比 べ、かなり高額の1 ヶ月間の報酬を訪問介 護、訪問看護ステーションのサービスを提供 して得ている。有床診は三食、投薬、リハビ リ等の医療行為、入浴、24 時間の看護体制 を行い、医療施設監査、人員体制監査等厳し い監査を毎年パスしているのに低い報酬しか 得られない等、誠に不合理である。

3)有料老人ホームで介護保険の理念の「高齢者 の尊厳性を尊んだ介護」ができているのであ ろうか、大いに疑問である。

4)現在、整形外科医にとって、柔整師問題が重 要な課題となっているが、近い将来、医師会 にとって、有料老人ホームもまた、同様な課 題となることは必至である。 以上のようなことから、この有料老人ホーム (高専賃)等も行政の許認可が当然必要とされ なければならないと考える。

日医の見解と各県のご意見を伺いたい。

<各県回答>

各県ともに、グループ化した事業所間でのサ ービス提供が見受けられるとの回答が示され、 適切なサービスを実施していただくための指導 監査等の規定は必要であるとの意見が提起され た。また、佐賀県、長崎県、鹿児島県では、提 案県の熊本県同様に、行政の許認可制を検討す べきであるとした意見が示された。

<日医コメント>

こういったものは玉石混淆である。どなたが されているか、どういう理念でされているかに より素晴らしいところもあるし、とんでもない ところもあるということだと思う。

介護保険が市場開放ということで営利団体も 入れるということで、基本的には法令の中でや られている限りは違法ではないので摘発するこ とはできない。重要なことは、どういうニーズ が高齢者や地域にあり、それに答えているかと いうことである。地域の特性に合わせた基盤整 備が必要である。

基本的には都道府県が指定権者で、保険者で ある市町村と医師会等が協力し、ケアマネジメ ントがきちっとされているかどうか規約等をチ ェックしていく等、本当に必要なサービスが実 施されているかどうかをチェックするというこ とが必要と考える。

印象記

小渡敬

副会長 小渡 敬

平成22 年9 月25 日に九州医師会連合会の平成22 年度第1 回各種協議会が鹿児島県で開催さ れ、日本医師会からは三上常任理事が参加しておりました。

介護保険対策協議会においては、各県から10 の議題が提出され、療養病床の転換施策について の議題が多く出されていましたが、議題を提出後に療養病床の廃止を見直すということが決まっ たため大きな議論にはなりませんでした。

三上先生は今後、すでに転換したものを元に戻すことが可能になるような議論を進めていきた いと話していました。ほかの議題では特に新しいものはないので本文を参照していただきたいと 思います。

民主党政権に変わり1 年が経過しましたが、介護保険の分野では今後どのようになるのか方針 が示されておらず、介護施設の方向性や24 年の介護報酬改定等についても政府が無策なために現 場としてはまだまだ暗中模索の状態が続きそうです。