副会長 玉城 信光
常任理事 安里 哲好
協 議
協議事項(1)、(2)は一括協議。
<提案要旨>
平成21 年消防法改正に基づき、都道府県ご とに地域の実情に応じた「傷病者の搬送及び受 入れの実施に関する基準」について、速やかに 各都道府県で策定するように求められており、 実施基準に関する協議会を設置することとなっ ている。また、消防機関には実施基準の遵守義 務、医療機関には実施基準の尊重の努力規定を 設置している。
本県の状況については、当初、宮崎県メディ カルコントロール協議会で実施基準を策定する としていたが、平成22 年5 月に「宮崎県救急 搬送受入れ対策協議会」を設置して、平成22 年12 月の公表を目途に、対象疾病を10(重 篤、脳疾患疑い、心疾患疑い、外傷、熱傷、中 毒、小児、妊産婦、消化管出血、精神疾患)に 絞り、観察基準や選定・伝達基準の検討を毎月 行っており、宮崎県メディカルコントロール協 議会とも連携して、実施基準を策定することになっている。
ついては、九州各県の傷病者の搬送及び受入 れに関する実施基準策定について、各県医師会 の対応状況並びに各郡市医師会との連携につい ても含めて、各県の進捗状況や問題点について お尋ねする。
<提案要旨>
消防法の改正に伴い、各県ごとに搬送・受入 れに関する実施基準(以下、「実施基準」とい う)の策定が義務付けられており、佐賀県で は、ようやくメディカルコントロール協議会の 組織改編が行われ、8 月に実施基準策定のため の第1 回メディカルコントロール協議会が開催 される見込みである。九州では鹿児島県が実施 基準を既に策定されているが、各県の進捗状況 をご教示いただきたい。
<各県回答>
各県ともに、受入れ拒否の問題は発生して いないとの回答で、鹿児島県(策定済み)を除 き現在策定中との事である。宮崎県に関して は、受入れ病院に関して苦慮しているとの事で あった。
実際に策定済で運用を行っている鹿児島県よ り実情が述べられた。
<鹿児島県>
鹿児島県医師会では、昨年5 月に独自に医療 機関へアンケート調査を実施し取組みをスター トした。17 郡市医師会に対し各段階でどのよ うな状況にあるか昼と夜の状況で各疾患に出来 るような事をアンケートで取りまとめた。これ まで、消防がどこの医療機関にどのぐらいの症 例を搬送しているかどうかという情報がなく、 受入れ側の医療機関と搬送側の消防機関とのデ ータの突き合わせが行われていなかった。今後 の救急医療の促進には医療機関同士の連携が不 可欠であり、消防と医療機関が情報を共有する 事に加え、医療機関同士がお互いの情報を共有 する事は大きなメリットがあると考えている。 各県実施基準策定にあたり、医療機関リストの 作成が最もネックになると思われるが、本県で は消防の搬送状況に加え医療サイドの情報に加 味するためにアンケートを実施しミックスさせ て出来た医療機関リストを各地域MC 協議会に て検討いただいている。その後、対象医療機関 に県MC 協議会長名で実施基準への記載につい ての承諾についての確認文書を発送し最終案を 作成している。次に半年が経過した運用上の課 題については、実施基準策定を受けて今年4 月 に本会が事務局を務める鹿児島県救急医学会で 消防と医療機関の連携をテーマにシンポジウム を開催し、医師部門、看護部門、救急部門の3 部門から県内2 つの地域の現状報告があり検討 を行っている。また、救急搬送連携に関しては 医師、看護師、救急隊員の顔の見える関係が重 要な要素となることから、各地域の消防隊員、 看護師、医師の顔の見える連携、懇親の場とし て鹿児島臨床救急研究会を立ち上げ、140 名の 参加をいただき新たな連携の一歩を踏み出し た。これまで市町村の地域単位であった消防組 織が県下統一の基準で救急業務に取り組めるこ と、消防と医療の有効な連携が促進されること を期待しているところである。今後、実施基準 については定期的な見直しをすることになって おり、運用状況を踏まえながら県MC 協議会等 で検討を加え実りあるものにして行きたい。
【主な質疑等】
佐賀県:最終受入れのルールはどういう風に決 めたか。
鹿児島県:一番問題となったのは受入れ機関な ので、各地区では中核病院を決め、市内におい ては疾患毎の中核病院を決めて打合せを行って いる段階。問題となったのは救急隊員が運んで 行った時に次に運べる場合の問題が生じるとい う事で、それを顔の見える形で医療機関同士で 連絡を取り合っていただければ、断られても次の 医療機関が決められるという形。そのモデルとなったのは、産科のたらい回しが一例もないという 事で調べると、大学と今給黎病院と市立病院と でいつも連携をとっており、断る時は必ず次の病 院からOK が出たときのみとなっている。他の疾 患にも構築していきたいと考えている。
宮崎県:公表する事になっているが、県のHP のみに公表するのか。
県民から公表されているが故に医療機関に応 召の義務があるというトラブルの発生はないか。
鹿児島県:現在、県のHP に公表しているが、 各機関に公表していいかどうか問合せをしてお り、ほとんどの医療機関より公表には問題ない という回答をいただいている。現段階でトラブ ルは発生していない。
沖縄県:沖縄県の救急医療はスムーズな連携が 取れておりたらい回し等はない。沖縄県の場合 は本島の中の救急医療の連携は問題ない。離島 もドクターヘリとNPO 法人のヘリ、海上自衛 隊ヘリ等で連携はスムーズに行っている。法制 度が施行されるにあたり、鹿児島を参考に進め ていく。医師会と大学、県立病院、救急救命士 との勉強会を多く実施し、既にface to face の リレーションが出来ている。また、救急蘇生法 に関しても4 者一体となってNPO 法人を立ち 上げ、県民への啓発等を進めている。
熊本県:鹿児島県ではかなり進んでいるが、熊 本県もたらい回しはないが、群部から中央に一 気に患者が集中するというトラブルがないか。 また、かかりつけ医の問題があって、傷病者を 別に医療機関に搬送する時の問題点はないか。
鹿児島県:地域の中核病院の医師の引き上げが 行われ、中核病院で経由して対応出来ていたも のが出来ない状況若しくはそれをどうするか 等、ヘリの導入を要するのではないかというこ と、地域の中核医療一つでなく複数でシステム を動かそうという事を模索しいる段階。地域の 中核機関の崩壊を防がなければいけないという 問題が発生している。
≪高杉常任理事コメント≫
受入れ拒否、たらい回しをなくそうという事 で、傷病者の搬送及び受入れに関する実施基準 を策定する事になっている。
石井担当理事は当件に積極的に関わりなが ら、一年ごとに見直しを行うという文言を入れ ている。現在、受入れ実施基準に関しては、7 都県が策定済みで、今年中に20 県、来年3 月 までに20 県で策定予定との事である。
ただし、医療機関リスト作成で合意形成に苦 慮している、あるいは二次救急病院の医師不足 等、様々な問題が生じている。また、アクセス が変わってきているので二次医療圏を越えた搬 送が出てくる可能性もある。九州では受入れ拒 否がないとのことだが、現場の苦労を中央に伝 え、国との議論を展開できればと考えている。 顔の見える関係は非常に重要で、救急災害訓練 等の人が沢山集まる場などが、その一歩となる のではないか。
<提案要旨>
行政はがんや脳卒中など、地域連携パスの構 築により医療の効率化を推進しようとしている が、基礎疾患を多く抱える高齢者にとって、急 性期医療を終えた後も引き続き入院治療が必要 なことが多く、容易に在宅復帰は実現しない。 機能分化のもと、療養病床が大幅に削減されれ ば、特に過疎地での後方体制は立ち行かなくな り、急性期病院への患者の受入れが困難となる 状況も予想される。本県では、過去4 年間に療 養病床が14 %も減少しており、これ以上の療養 病床減少は地域内の医療連携体制の崩壊につな がると危惧している。各県の療養病床再編の現 状と対応並びに日医の見解について伺いたい。
<各県回答>
各県ともに、殆どの医療機関が転換を考えて いないとの回答である。
≪高杉常任理事コメント≫
療養病床の必要性が高まることがあっても減ることは絶対にない。救急患者の後方受入れを 回転させるためにも療養病床が必要である。厚 労省の調査でも医療療養病床では7 割が現状維 持、介護療養病床では6 割が転換先未定と回答 している。
日医グランドデザイン2007 では医療療養病 床33.5 万床、介護療養病床を別の形或いは老 健を機能強化したものとして18.7 万床、合わ せて51.3 万床が必要であると出している。
従って、国に対して療養病床削減方針につい ては撤回、明確な方向転換を求めてきた。廃止 を猶予し新たな期限を設けるか、廃止そのもの を撤回し介護療養病床を存続させるか。年末ま でに結論を出すという事だが、9 月8 日に長妻 厚労大臣は厚生労働委員会で23 年度末の介護 療養病床施設の廃止を撤回すると表明した。猶 予するか廃止そのものを撤回するかについては 今年度末と考える。
医療と介護保険の同時改定があるので、日医 はプロジェクト委員会を設置し報酬改定にも対 応していくこととしている。
<提案要旨>
鹿児島県鹿屋市では、現在夜間急病センター 設置に向けて準備をすすめている。急病センタ ーの医師の確保も困難で開業医が交代で詰める ことになるが、更に大きな問題は、二次・三次 を引き受ける後方病院の存在があいまいなこと である。基幹病院が医師不足で充分機能してい ないと思われる。
九州各県、特に地方の医師会の取組みについ てお伺いしたい。
<各県回答>
佐賀県:佐賀県は5 医療圏あり、夜間の急病セ ンター(時間外)等では、成人の場合は告示病 院で間に合っているが、小児の場合は4 医療圏 で時間外診療を行っており、1 医療圏で構築中 である。特殊な状況として東部の医療圏で救急 搬送、高次搬送も年間1,000 件と相当な高い割 合で福岡県にお世話になっている。
宮崎県:医師会の急病センターも医師不足で困 っているが、穴埋めとして開業医が輪番制で行 っている。しかし、高齢化しており破綻が来は じめている。宮崎市は比較的医師は充足してい るが、消化管出血に関しては三次救急の医師が いなくなり、市内の内科の医師が8 人で輪番制 を余儀なくされている。群市医師会病院は4 つ あるが、西都市・西児湯医師会が会員の高齢化 や後継者不足を背景に、公設民営型で運営して いた西都市医師会病院の運営から今年の3 月末 で撤退した。
対策としては、地域医療再生計画等で宮崎大 学医学部附属病院に寄附講座地域医療科を設置 し医師確保に努めようとしているところだが、 困難な状況である。
沖縄県:小児の救急医療が問題となっており、 県立病院の小児科医師不足が原因として小児救 急の受入れが制限されるという現状であり、地 区医師会から県行政に医師の補充等を要望して いるところである。
対策としては、9 時から17 時までの救急搬送 や紹介の無い小児科医の救急受診を抑制してい る。また、小児科医育成の観点から後期研修を する枠を制限なく受け入れて欲しいと要望して いる。
#8000 事業を全国最後に実施し効果をあげて いるが、数が少ないので全体的に充分な成果と はなってない。小児救急を中心とした医療連携 の充実が今後とも望まれる。
大分県:一般の休日夜間急患センターは無い。 小児については、大分県小児科医会や関係郡市 医師会が在宅当番制をとって行っている。大分 市においては固定輪番制をとっている。問題と なっているのは一次救急で、二次三次に関して は棲み分けと連携体制は出来ている。小児に関 して休日夜間センターを設置、運営しているの は別府市を含む東部医療圏で医療圏に3 つの群 市医師会の小児科医が急患センターに勤務して いる。時間帯は19 時から23 時までで、深夜帯は二次救急病院が担うか大部分が大分市に流れ ている。
長崎県:夜間急患センターは長崎市と佐世保市 のみに設置。いずれの地区も救急二次輪番制が とられており、後方病院の連携に特段の問題は ない。ただし、非常に地域差があり離島域や県 北に関しては医療機関が少ないので救急体制は 崩壊しかかっている。現実に二次輪番の疲弊が 進んでいると思われるが、医師の数が揃わない 事やスタッフが揃ない等、消防庁の受入れ基準 の中に救急医師・施設の確保について特別交付 税を出すという話があったと思われる。受入れ 困難を解消するためにベッドを確保するための 予算化はどうなっているのか知りたい(後ほど 高杉常任理事回答)。
熊本県:現在のところ受入れ拒否はない。来年 度からドクターヘリの導入が決定した。中心部 に医療が集中し群部の医療がおろそかになるこ とを懸念している。今度の法改正を上手く利用 し、群部は群部で完結型の医療を進めていけれ ばと思っている。
救命センターは受入れだけでは駄目である。 救命センターのマンパワーの問題もある他、救 命センターからドレナージを行う病院も作らな ければ中央でも疲弊する。なるべく重症者を中 心部へ軽症者をは群部で完結するというシステ ムを作ることが効率的で地域住民のためにも良 いと思う。今回のMC への医師会の積極的関与 により、顔の見える連携の構築、病院と病院の システム構築が可能と思う。MC の活発化によ り地域医療の活発が図られると期待する。
福岡県:福岡県救急医学会があり、救急医療に 携わる医師、看護師、救急救命士、消防隊の学 会がある。十数年の歴史がある。この度の設置 基準に関しては、たらい回しをなくそうという ものであり、消防庁のお膝元の問題となった県 のみ策定し、全国一律で行う必要はないのでは といった専門家の意見もある。
ただし、悪いことではないので基準を消防隊 員が利用しやすいよう熊本県の回答のようにア ンチョコ的なものが良いのではないかと考え る。現場では心臓疾患や脳疾患を間違えるので なく、現場で時間を取らないように判断できる ものを作ろうという考えで進めている。また、 精神科救急を消防からも救命センターからも指 摘を受けているところである。
各地区の休日・夜間急患センター、病院群輪 番制等と4 大学医学部付属病院、救急救命セン ター、各ブロックに設置された救命救急センタ ー及び告示病院等の連携はスムーズに行われて いるが、北九州市においてコンビニ医療が問題 となっており、県民市民への教育活動について も知恵が必要である。
≪高杉常任理事コメント≫
来年度予算要望書において、地区医師会の初 期救急医療への取り組み支援、夜間急病センタ ーに医師会員が交代で勤める方式への補助を求 めている。また、二次が崩壊するとのことだが、 とりわけ二次救急は7 割ぐらいが1 〜 2 名の体 制となっており、医師確保の予算要望も行って いる。三次は本来の機能がなくなるという事 で、新しい評価方法となると三次の地域の重要 な役割が果たせないという事もあり得るので、 この評価が医師不足という事で逆に少なくて評 価が低くなる事が無いように要望している。
救急が終わった後の受入れ体制については一 つの視点として持っている。医療に関しては今 度の政権は聞く耳を持っており、以前の政権よ り風通しがよい。
長崎県の特別交付税の件に関しては、担当理 事が把握していると思われるので日医へ持ち帰 って回答したい。
【主な質疑等】
沖縄県:平成22 年度から卒後研修制度が幾分 か変わり、20 名の研修医を採用するところは 小児科コースは2 名、産婦人科コース2 名の増 員が可能であるという現状であるが、これを少 なくし10 名前後の研修医を採用できる小児科 コース1 名、産婦人科コース1 名増やせるよう な背景づくりを日医から厚労省に行っていただきたい。
高杉常任理事:重々承知しており、地域偏在・ 科偏在は大きなテーマなので日医としても充分 に考えていきたい。
熊本県:かかりつけ医の問題について、搬送先 はリストで決まっているが、患者がかかりつけ 医を要望する場合の問題等は起こっていないか。
高杉常任理事:地域特性や病院の診療内容等で 様態は変わると思うが、患者が病院を選定して 医師がいなければ困るしその辺りで連携が途切れ ると加算になると思われる。かかりつけ医と患者 との連携が取れていれば問題ないと思われる。
福岡県:熊本県の意見はご尤もで、福岡県内も 都会部では外傷に対し医師から何故搬送しなか ったという意見もある。福岡県では、選定基準 に明文化し傷病者又は家族等からかかりつけ医 療機関等の特定の医療機関へ搬送依頼された場 合は傷病者の症状、病態等並びに救急業務上の 支障の有無を判断し傷病者本人又は家族等の関 係者等と協議のうえ、可能な範囲において依頼 された医療機関へ搬送することとしている。
宮崎県:宮崎県も同様でリストアップされた医 療機関以外への搬送を否定するものではないと 明文化している。
鹿児島県:上記に加え、救急隊は原則として患 者が指定した病院に運ばねばならないというも のを決めている。そこをクリアしなければ次の 医療機関へ行かない事になっている。
<提案要旨>
本県では、今般、胃がんと大腸がんのクリテ ィカルパスを策定し、運用を開始するところで あるが、各県の状況をお尋ねする。
また、九州各県の女性特有のがんの無料クー ポンの利用状況並びに受診率について併せてお 尋ねする。
<各県回答>
佐賀県では、平成22 年6 月より県下統一の 肝がん、肺がん、胃がん、大腸がんの運用を開 始している。沖縄県では、平成21 年度に沖縄 県版5 大がん(肺がん、胃がん、肝臓がん、大 腸がん、乳がん)のパスを策定済みで運用を開 始している。また、離島の患者が本島で手術を 受ける際の展開として有用としている。熊本県 では、平成22 年4 月より各がん診療連携拠点 病院と地域医療機関間で「私のカルテ」として パスの使用を開始している。県の予算で熊本県 「私のカルテ」がん診療センターに連携パスコ ーディネータを3 名配置しカルテの運用を行っ ている。運用開始から5 ヶ月で5 大がん合計 116 件の使用実績がある。その他の県に関して は平成23 年度中に整備するとの回答であった。
【主な質疑等】
長崎県:MLを作成して公表の諾否を確認して いる。来月の協議会でパスノート、手帳の具体 案を検討する。
佐賀県:パスの管理はどこで行うかといった問 題点はないか。
福岡県:がん登録は県と交渉中で進んでいない。
熊本県:県から予算が付き大学病院に委託して 人が派遣されている。連携パスコーディネータ ーによりがん登録やパスの管理が行われている。
沖縄県:連携パスは病院と診療所1 対1 になる と思われるが、大学で市民病院や民間病院との パスも管理されるのか。
熊本県:そのとおり。
≪高杉常任理事コメント≫
がん対策基本計画で5 年間で全ての拠点病院 において5 大がんパスの整備する事を目標とし ている。地域連携は面で行われる必要があるの で、当然、地域全体で医療機関が参画できるも のであると考える。
広島県を例にとると、データ管理は県が主体 で行われている。
<提案要旨>
本県では、2 医療圏で地域医療再生計画を策 定し事業を行っているところであるが、各県に おける進捗状況をお尋ねする。
<各県回答>
佐賀県:北部医療圏を対象とした計画、西部医 療圏と県全体を対象とした計画の2 つを策定し 実施している。
北部医療圏では救急・周産期・小児医療等 に重点を置き、西部医療圏では、救急医療体制 の充実・公立病院の再編・統合を重点に置い ている。
県全体で取り組む事業として、ICT を活用し た地域医療連携ネットワークの構築(佐賀県診 療録地域連携システム(pica pica LINK)の 拡充)を行う。内容は基幹病院にサーバーを置 き画像情報等を共有する。一般の診療所等は認 証局を通して参照する。
宮崎県:北部医療圏と都城北諸医療圏の2 計画 を策定。北部医療圏では延岡市の夜間急病セン ターの医師確保、医療機器の整備。宮崎大学に 地域医療学講座を設置をはじめ、ドクターヘリ を導入し、大学の急病センターを充実させる。
都城北諸医療圏は国立都城病院の口腔外科や 周産期医療機能の強化、都城市群市医師会病院 の移転整備が計画されている。
沖縄県:宮古・八重山医療圏と北部医療圏を対 象としている。
県医師会或いは地区医師会が関わっている領 域で、1)IT を活用した地域医療連携システムの 構築(8.45 億円)として県立病院と地区医師会 とのIT の医療連携を図ること、2)県医師会を実 施主体に地域医療連携体制総合調整事業とし て、生活習慣病(糖尿病、脳卒中、急性心筋梗 塞等)を中心としたIT の医療連携を整備する。
また、琉球大学を実施主体とし、県全体の共 同利用施設として、シミュレータを用いた医 学・医療教育を行う研修施設を作っていくこと とし、県医師会も中心的な役割を担っている。
大分県:北部医療圏と中部医療圏を対象として いる。
北部医療圏は救急医療に不可欠な内科・外 科・小児科医だけでなく、脳神経外科・整形外 科・ハイリスク分娩等を含め、総合的に対応で きる医療機関が整備されていない。また、小児 救急医療支援事業を実施している中津市民病院 の小児科医の負担が大きい事。
中部医療圏では圏域内の受療率が約70 %と 県内では最も低い地域で地域の方が大分市等に かかっているという事で、二次医療圏で完結で きるように機能強化を図り、大分地域との役割 分担と連携体制の強化を図る必要があるとして 計画を立てている。地域医療を担う医師及び看 護師の確保として、県立病院に地域医療部を設 置し地域の医師を派遣する。その他、専門・認 定看護師の育成、後期研修医に対する研修資金 の貸与などを計画。
長崎県:離島地域及び佐世保・県北地域の2 計 画を対象としている。
離島地域は、対馬と上五島地域の医療体制を 整備しようと考えており、対馬の2 病院を統合 し管制塔機能をもたせる。ある程度統合と集中 化し、医師の有効活用をしようと考えている。
佐世保・県北地域も医師不足が深刻で地域の 医療機能が低下し、佐世保地域へ救命救急セン ターを整備し基幹病院、周辺医療機関が役割分 担と連携を図り、両圏域内で医療が完結できる 安定した医療提供体制の構築を目指す。
熊本県:天草医療圏と阿蘇医療圏を対象として いる。
天草医療圏では、医師確保対策として熊大病 院ん医寄附講座を新設し専門医を派遣、また、 熊大医学部に修学資金貸与制度を新設した。そ の他、院内保育所の設置や医師住宅の支援等を 行っている。
阿蘇医療圏では、脳卒中と心筋梗塞、小児・ 周産期を中心とした急性期医療を再生・確立す ることとし、中核病院が1 ヶ所なので、その中 核病院の移転改築に10 億円充てられている。
鹿児島県:鹿児島医療圏を県医師会中心に奄美 医療圏を県行政を中心に2 つを対象としている。
鹿児島医療圏では救急医療体制として、大隅 地区の夜間急病センターが完成間近である。ま た、画像搬送システムの委員会を立ち上げ、 「救急医療遠隔画像診断センター(仮称)」を作 り、各地域の二次救急医療の中核的役割を果た している医療機関等の患者診療支援を行う。ま た、医師不足対策基金で地域医療再生基金に先 駆けて県医師会独自で7 千万円の基金を集め、 臨床研修医の支援を行った。これを基盤として 総合臨床研修センターと地域医療支援センター に振り替えていくこととしている。
≪高杉常任理事コメント≫
日本医師会では地域医療再生の本来の意義は 地域医療の再構築に寄与するもので、国主導で なく地域主導による医療体制の確立を支援する ものと捉えている。
ただし、非常に短期間で計画するという制 限、また二次医療圏2 ヶ所といった制限等いろ いろな制限があり有効活用に至ってないのでは と考える。
有識者会議によるヒアリング調査が行われて いる。ヒアリングの際は医師会も参加する事を 厚労省に申しているので、是非参加し意見を反 映させていただきたい。
大風呂敷を広げて作る事もいいが、基金終了 後の維持をどうするか。いいものが出来ても続 かなければ意味がないので、医療の再生に繋が るような仕組みを作っていただきたい。
<提案趣旨>
地域医療崩壊の発端となったのは、その地域 の24 時間救急医療体制を担っている急性期病 院の医師確保が困難になった事から始まったと 思っている。新臨床研修医制度にあげられる医 療政策改革によることは何度も指摘されてきた が、そういう医師不足のなかで医療機能の集約 化(拠点病院化)が進められている。集約化の 必要性はある程度理解できるところではある が、症例数・施設基準などによって、大都市に 拠点病院が集中していく傾向を危惧する。それ は県境に存在する2 次救急基幹病院の医師確保 がますます困難になってきている現実があるか らである。
これは、現在の医療計画が県単位で検討され ていることが大きな原因であると考える。県境 を越えた生活圏での医療機能充実を検討しない と、その地域はお互い県中心方向へ引きはがさ れていく危険性を実感している。地域医療再生 計画も県単位で進められており、県境を越えた 医療連携に関しては想定外の感がある。
今まさに、九州医師会連合会でこの問題を議 論し、その生活圏内の医療崩壊だけでなく、地 域崩壊を防ぐような実行案を検討していかねば ならないと思う。
各県医師会において県境を越えた医療連携 についての好例や具体策を持っておられればご 教示願いたい。併せて日本医師会の意見を伺 いたい。
<各県の回答>
各県ともに県境を越えた連携にドクターヘリ の活用があげられ、その実績等についても回答 された。
なかでも、福岡県医師会では、大分県の中津 市民病院での乳幼児医療費現物給付化を行って おり、周辺市町村の応分負担もあるとのこと。
【主な質疑】
長崎県:年間の県外搬送件数は数件だが、7 月 に3 週間ほどベッドが無くなった時期があり、 4 件ほどお願いしたが、その際は国立長崎、国 立佐賀、久留米の医師で連携いただき、なんと か県内の産婦人科医療のパニックを救った。や はり顔の見える連携は必要。県は県内の完結を 目指すのでなかなか上手くいかない。
鹿児島県:新幹線が出来た際、新生児搬送につ いて話しが纏まりつつあるので、県境を越えた連携の手段として使えるのではないか。
佐賀県:県の保健医療計画に県外の連携医療機 関を掲載し位置付けている。
≪高杉常任理事コメント≫
集約・重点化は切り捨てでもあるので、そこ の機能を上手くやらなければならない。中津市 の場合も周辺の市町村が応分の負担をするとい うことで、新しい取り組みでこうした再編も必 要になると思われる。連携にはいろいろある が、地区の住民を守るという視点があれば何で もできると思う。
<提案趣旨>
HPV(ヒトパピローマウイルス)、Hib(イン フルエンザb 型菌)、小児用肺炎球菌の各ワクチ ンがこの数年で相次いで承認された。接種により 高い効果が期待されるが、ワクチン自体が比較 的高価であるため、接種率はそれほど高くない。
ワクチン接種で発症を予防することにより医 療費の抑制に繋がることは勿論だが、経済的な 理由により救える命が救えないことが大きな問 題と考える。また、子宮頸がんは近年20 〜 30 代の若年層で増加傾向にあるが、HPV ワクチ ン接種により発症を防ぐことは少子化対策にも 大きく寄与できると思われる。
長崎県では行政との交渉で、3 種の新しいワ クチン全体の助成が必要と考えており、助成額 の大きさから先延ばしされ、全くどのワクチン にも手がついていないのが現状である。
各県の現状と今後の対応についてお伺いし たい。
<各県の回答>
紙面回答のみ
<質疑内容等>
宮崎県:紙面に回答しているとおりだが、国は 指示を出すだけで、実務は市区町村(長)に丸 投げされている現状が、我が国の予防接種の混 乱を招いている。各自治体の政治格差、経済格 差、親の経済格差が子どもの健康格差をもたら さない様に、必要な予防接種は早急に定期接種 とし、国内均一の接種体制が確立されるよう日 医から強く働きかけていただきたい。
大分県:定期予防接種であっても料金はまちま ちである。予防接種が交付税に組まれているこ と自体がおかしい。全部統一する必要はない が、あまりにも料金の差が大きい。日医として 何らかの対策を講じて欲しい。また、インフル エンザも同様に統一する必要はないが、ある程 度の基準を提示していただきたい。
佐賀県:サーベーランスシステムの充実、ワク チンに関する専門家による諮問委員会の設置を 日医に要望する。
<高杉常任理事コメント>
当件は保坂常任理事が担当しており、現在、 予防接種法の抜本的見直しを行っているところ である。子を救うという観点から、公費を使う 事は非常に重要な事である。
日医では、予防接種キャンペーンを行ってお り、署名運動を展開している。1,000 万人の署 名を集めて国を動かしていきたい。目的の無い こども手当を支給するより予防接種に公費を充 てる事が妥当である。
印象記
副会長 玉城 信光
各種協議会は多くの議題が議論されるが、その多くは九医連のみでの解決は難しく日医への要 望が多くなる。
消防法改正により急患の受け入れ基準の策定が求められているが、この出発は急患のたらい回 しがマスコミでも話題になり各県でのシステム作りを目指したものだと考える。沖縄県ではその ようのことがなく、うまくいっているので本来なら改めて策定の必要はないと考える。全国一律 ではなく、各地域の状況に合わせた体制構築で良いのではないかと考えた。
療養病床は国が待ったをかけたので模様眺めになっている。沖縄県でも現在議論がストップし ている状態である。
がん診療地域医療連携クリティカルパスは沖縄県では琉大が中心になり策定され、多くの診療 所の先生方が受け入れに手を挙げていることが皆さんの目に止まったようである。これらがスム ーズに運用される様になると離島県でのがん診療がすすんでいく様に思われた。
新しいワクチン接種に関しても国の補助が国会で議論されているので期待をしたいところである。
日医の高杉常任理事には、地域医療再生計画で沖縄県のシミュレーションセンターの構築に関 心を示して頂いた。先日のメディファックスによると桜井財務副大臣も地域医療再生基金は病院 改築などに使用するのではなく地域医療を再生させるために県、県医師会などの協議のもとに医 療連携などを勧めるべきだと述べており沖縄県はモデルケースになるかもしれない。日医高杉常 任理事に対しても地域医療再生基金を検証して、有意義に事業が軌道に乗りつつあるものに対し ては26 年度以降も基金増設をお願いした。
先日全国医師会勤務医部会連絡協議会で伺った話しでは石川県もシミュレーションセンターを 構築したが金沢大学のみに基金が与えられ医師会の関与は全くできないとのことであった。沖縄 県の様に全県的にすすめる事業は次の年度においても優位になるかもしれないと思った。地域医 療は沖縄県がすすんでいるようである。
印象記
常任理事 安里 哲好
日本医師会高杉敬久常任理事参加のもと、鹿児島県医師会江畑浩之副会長の座長により協議会 が進められた。
(1)「消防法改正に伴う(傷病者の搬送及び受け入れの実施に関する基準)について」と(2) 「傷病者の搬送・受け入れ実施基準策定の進捗状態について」は、現在、各県とも受け入れ拒否や たらい回しは無く、比較的スムーズに連携がなされているとの報告であったが、法改正により来 年3 月までに、既に終了している鹿児島県を参考に策定して行きたいと述べていた。鹿児島県は 各地区で中核病院を決め、市内においては疾患別中核病院を決めて、断る時は必ず次の病院から OK が出た時のみとなっている産科の例を参考にして行くとのこと。
(3)「療養病床再編と急性期・慢性期の医療連携体制について」は高杉常任理事コメントより、 9 月8 日に長妻厚労大臣は厚生労働委員会で23 年度末の介護療養病床施設の廃止を撤回すると表 明し、猶予するか廃止そのものを撤回するかについては今年度末に検討すると述べていた。
(4)「急病センターと後方支援病院の存在について」は、特に小児において、大分県小児科医 会や関係郡市医師会が在宅当番制をとり、また、3 つの郡市医師会の小児科医が救急センターに 19 時から23 時まで勤務していると現状を報告していた。
(5)「各県におけるがん診療地域連携クリティカルパス策定状況について」はがん登録や連携 パスの管理は大学病院や県行政でなされているようだ。沖縄県でも、がんは大学病院、生活習慣 病は医師会を中心に進めている現状である。
(6)「各県における地域医療再生計画の進捗状況について」は、病院統合や移転、小児・周産 期・救急医療の充実、IT 連携そして研修支援等を中心に再生計画が策定されていた。当県の報告 したシミュレーションセンターは強い印象を与えたようだ。
(7)「県境を越えた医療連携構築について」は九州の多くの県で、県域を越えた医療連携を行 っているようだ。小児科領域の大分県と福岡県、産科領域の長崎県と佐賀県・福岡県。鹿児島県 では、新幹線が出来た際の新生児搬送の件が検討されているとのこと。その他、県域を越えた医 療連携にドクターヘリの活用があげられた。地域の住民を守る連携であるので、創意工夫をしな がら積極的に進めて欲しいものだ。
(8)「新しいワクチン(HPV、Hib、肺炎球菌)への公費助成に対する各県の現状と今後の対 応について」は接種により高い効果が期待されるが、ワクチン自体が高価であるため、接種率が 高くない現状を報告し、日医の意見を伺った。高杉常任理事は、予防接種キャンペーンを行って おり、署名運動で1,000 万人の署名を集めて、国を動かしていきたいと述べていた。
地区医師会の医療体制の問題、県レベルの課題、県域を越えた医療連携や国家・国民レベルの 諸問題が短時間で意見交換がなされ、実りある協議会であった。一方、医療特区や医療ツーリズ ムと言った国境を越えたテーマについての提案はなされなかった。今年は、プライベートな件も 含め4 回目の鹿児島県訪問になるが、過去3 回は大雨だったり、霧がかかったりして視界不明瞭 であった。今回は、錦江湾と青空を背景に見事な景観を醸し出した桜島がくっきりとその雄姿を 見せ、心を高ぶらせた。