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九州医師会連合会平成22年度 第1回各種協議会

去る9 月25 日(土)、城山観光ホテルにおいて開催された標記協議会(医 療保険対策協議会、介護保険対策協議会、地域医療対策協議会)について、 以下の通り報告する。

1.医療保険対策協議会

理事 平安 明

挨 拶

○鹿児島県医師会 三宅副会長

九州各県から医療保険担当の先生並びに事 務局の方々に、お忙しいなかご参集いただき感 謝申し上げる。また日医鈴木常任理事には大変 ご多忙のなかお越しいただき重ねて感謝申し上 げる。

さて、本年の診療報酬改定では診療所の再診 料の引き下げや地域医療貢献加算の新設、入院 中の患者の他医療機関の受診についての取扱い の変更が行われる等、様々な問題が顕著化して いる。同じく保険指導についても本年4 月から 平準化の名のもとに指導時間の延長や対象レセ プトの件数が増えるなど、指導の内容も厳しく なってきたとの印象を持っている。日医でも指 導の見直しについて本格的に着手しておられる ので、平成8 年に定められた指導大綱が少しで も改善されることを期待申し上げる次第であ る。本日は大変多くの提案事項が出されている が忌憚のないご意見を出していただき、実りあ る会議になるよう祈念申し上げる。

○日医・鈴木常任理事

医療保険協議会へお招きいただき感謝申し上 げる。

事前に資料を見させていただいたが皆さんが 懸念されているところは重なっていると感じ た。皆さんのご意見を伺いながら、日医の考え 方、現時点での対応についてご説明させていた だきたい。

協 議

(1)地域医療貢献加算の算定について (沖縄県)

今回の診療報酬改定で新設された地域医療貢 献加算について、当初医療側としては診療所の 再診料を補完する意味合いで持ってきたもの が、ふたを開けてみると官僚に縛りをつけられ ただけでなく、地域医療を担ってきた医療機関 に対し、差別的とも言える発想を盛り込んだも のとなってしまっている。現時点では、利用者 である患者等の認識が十分には広まっていない ため、それほど算定されていないと思われる が、今後この加算のことが周知されるに伴い、 場合によっては通常診療に大きな支障が出てく ることが予想される。また、対応如何では医療 機関に対するクレームや厚生局の保険指導でも 問題が生じてくる可能性もあることから、本県 ではこの加算に関しては積極的に進めるもので はなく、各医療機関にあっては今後の動向を見 ながら慎重に判断していただきたいとしている が、各県並びに日医の見解をお伺いしたい。

(2)地域医療貢献加算について(佐賀県)

地域医療貢献加算は本年度の診療報酬改定に おいて、診療所再診料の減額を補う形で新設さ れた加算だが、文言上、24 時間、365 日、常時 対応が絶対条件の印象を受け、申請をためらう 先生方も多くみられる。

まずは、各県の申請の状況と、医師会として 医療機関に向けて、この加算の申請に対して何 らかの働きかけをされているかをお伺いしたい。

また、この加算は、再診料より分離させ、施設間に差をつけるような形で設けられている が、人的基準や設備的基準がある訳ではなく、 悪く言えば、書面上で形を作れば認可される可 能性のある基準であり、非常に曖昧さが残り、 実態とかけ離れたところが生じそうな気がす る。また、加算という設定からは、いずれ外さ れる可能性も秘めている。

本来、地域に貢献をしていない医療機関は皆 無に等しいと考えている立場からは、このよう な曖昧で不安定な加算は廃止し、従来の再診料 に戻すべきと考えるが、各県、日医の見解をお 伺いしたい。

(3)地域医療貢献加算の撤廃について:日 医への要望(長崎県)

今回の診療報酬改定で、休日、夜間の診療や 電話対応を行う診療所に対して、地域医療貢献 加算として再診料に3 点の加算が新設された。 再診料2 点引き下げの穴埋めと、診療所を時間 外診療へ誘導する狙いがあると思われる。

従来、多くの診療所が自発的に休日、時間外 診療を行ってきた。わずか3 点の加算により、 休日、時間外診療や電話対応が義務化されるこ とになり、診療所医師の精神的、肉体的な負担 は大きいと思われる。地域医療貢献加算を算定 するには、煩雑な施設基準の申請と患者への周 知も必要となる。地域医療貢献加算は本来、再 診料に組み入れるべきで、加算による政策誘導 に反対すべきと考える。

診療報酬改定のたびに増える加算により、診 療報酬はますます複雑になり、施設基準の申請 等の事務量の増加は医療機関の疲弊を招いてい る。地域医療貢献加算をはじめとする加算はな るべく基本診療料に組み入れ、診療報酬体系を 分かり易く、明解なものにすべきと考えるが、 日医の見解をお伺いしたい。

(4)地域医療貢献加算を巡る問題の今後に ついて(大分県)

地域医療貢献加算は、平成22 年度診療報酬 改定により、基本診療料である診療所再診料引き下げの穴埋めのような形で始まったが、この 加算は24 時間の電話対応や連携を義務付ける など、日々地域で診療を続けている医療機関に は実に不愉快な内容だった。この加算に関し て、当初政務官は定刻を過ぎれば留守番電話し か応対しないような医療機関に対し、地域に根 ざした時間外診療なども引き受ける医療機関は 救急病院の負担軽減に貢献しているとして、加 算を認めるということであった。

しかし、蓋を開けてみると、24 時間の電話 対応、医師の携帯へ転送、留守番電話は速やか にコールバック、それでも出来ない場合は連携 医療機関への対応体制などを届出書に記入しな ければならないのである。(後に電話対応は準 夜帯程度と緩和された)

ここで問題にしたいのは下記の2 点である。

1)地域医療を行っている開業医は、学校医、予 防接種、地域住民健診その他諸々の形で貢献 しており、国は開業医の地域医療への貢献が 単なる電話サービス程度の価値しかないと見 ていないのではないか。本加算の名前の由来 から明らかである。

2)仮に電話応答サービスが地域貢献の一つであ ったとしても、当初の趣旨を勝手に拡大して ハードルを高くしてしまう現場役人の姑息な 手法があった。日医は、新たな診療報酬点数 や加算点数などを設立する際に点数の多少の みならず、その趣旨や背景に十分注意し、実 際に適用される際に細部を役人の都合の良い 形に変えられないよう、最後まで注意して目 配りをお願いしたい。

(5)地域医療貢献加算について(福岡県)

地域医療貢献加算は、「病院勤務医の支援」 と「時間外での診療所の対応」を評価したもの としていますが、再診料を引き下げ、加算に置 き換えた内容で、従来から地域医療を守ってき た診療所の犠牲を強いる結果となっています。 本加算を算定しないよう呼びかけておられる医 師会もあると聞きますが、本県では内容に不満 ではありますが、加算をできるだけ可能な範囲 で算定していただけるよう対応しています。各 県の現状をお知らせいただきたい。

(6)地域医療貢献加算について(熊本県)

診療所の再診料引き下げと同時に新設された 「地域医療貢献加算(3 点)」は、社会保険診療 報酬設定の理念を欠いた場当たり的なものであ るとの批判が多い。従来から、地域に根ざした 医療機関は往診や在宅医療など、この加算の趣 旨に沿った医療活動を何の違和感もなく行って いる。しかも、「その実績は問わない」とされ ているが、これは未だかつてない奇異的な診療 報酬項目となっている。

熊本県では、一応遠慮なく「算定する」よう 広報しているが、対象医療機関の約35 %に止 まっている。次期診療報酬改定では、この加算 を廃止した上で医療機関や患者側からも納得の ゆく合理的な設定がなされるよう要望したい。

各県の状況とご意見及び日医の見解をお伺い したい。

上記の6 題については一括協議された。

<各県の回答状況>

各県からは地域医療貢献加算を従来の再診料 に戻すべきであるとの意見が大半を占めた。

なお同加算の届出に関する医師会の対応につ いて、福岡県と熊本県では「奨励する」、佐賀 県、大分県、長崎県、鹿児島県では「医療機関 の判断に任せる」、宮崎県、沖縄県では「慎重 に判断する」となっている。

<追加意見>

■沖縄県:地域医療貢献加算の取扱いについて は九医連として取り纏めて何らかの方向性を出 すのか、それとも運用を工夫しながら活用して いくのか、どちらの方向に向かっていくのか各 県並びに日医のご意見をお聞きしたい。

■佐賀県:佐賀市においてアンケート調査を行 ったところ、有床診療所では60 %程度の届出 があった。入院があるので24 時間対応可能というのが大きな理由と思われる。無床診療所で は20 %の届出となっている。同加算について、 佐賀県医師会ではFAX 等で周知を図ったが、 現状は4 割弱の届出となっている。佐賀市のア ンケート調査によると、この加算を「積極的に 取るべき」と考えている先生方は3 割にすぎな い。やはり元の再診療に組み込まれるべきもの との考え方が強い。

■大分県:決まった時間しか対応しないビル診 のようなところに比べ、地域に根ざした診療を されている先生を評価し点数を付けたものと思 っていたが、実際は24 時間、365 日対応等、厳 しい算定要件となっている。算定要件が後付け で厳しくなることは過去にもあったが、今後も 同じことの繰り返しにならないか懸念される。

届出については会員の判断に任せており、4 割を超える程度の医療機関が算定している。

■福岡県:先ほど算定要件を厳しくし、ハード ルが高くなったとの話があったが、厚労省では 算定件数を増やすため、逆にハードルを下げて いる動きがある。このような加算は今後、診療 報酬の格差を生じさせる布石にならないか危惧 されるところもあり実際は反対だが、この加算 も実績がなければいずれは無くなるものと思わ れ、無駄にすることはないとの考えもあり、福 岡県では可能な範囲で算定するよう情報を流し ている。8 月の時点で約23.5 %の算定となって いる。

■熊本県:再診料が引き下げされたことで遠慮 なく算定するよう呼びかけたが、届出件数は 1,217 の対象医療機関のうち444 の医療機関、 36.5 %にとどまっている。

■宮崎県:公式ではないが厚生局と話した際、 同加算の要件である24 時間対応について、患者 からのクレームがあった場合には、指導等につ いて検討せざるをえないとの答えであった。や はり、算定は慎重にした方か良いと思われる。

□日医・鈴木常任理事コメント

地域貢献加算については6 県より提案されて おり、その関心の高さをあらためて認識した。 マスコミが4 月1 日付の届出件数について35 都 道府県で調査した結果、「届出数の割合は平均 21.2 %となっている。また都道府県毎の届出状 況はバラつきがあり、九州・中国四国地方では 高い数値が出ているが、関東・東北地方では 10 %台に留まっている県もあるなど低い数値と なっており、全体的にみると西高東低の傾向が みられた」と報道がされた。調査による各県の 割合を見てみると、最も高いのが石川県49 % となっている。同県ではつい最近50 %を超え たと聞いている。次いで大分県41.1 %、鹿児島 県37.8 %、広島県37.4 %、佐賀県が35.4 %と なっている。一方低い県は千葉10.3 %、青森 県が1 1 . 1 %、東京都1 2 . 2 %、神奈川県が 12.6 %、埼玉県が14.4 %となっている。

日医のレセ調査(6 月現在の届出状況)によ ると、届出した診療所は29.2 %となっており、 先ほどもお話があったが有床診療所では60 % と高く、無床診療所では24.5 %であった。中 医協における診療報酬改定議論のなかで、厚労 省では3 割程度の診療所が算定すると予測して いたが、全体でみると現時点ではこれを下回っ ている。加算を届出ていない診療所にその理由 を尋ねたところ、「時間外対応をしてない」が 52.9 %と最も多い。「標榜時間外の対応を行っ ているが、算定要件が厳しい」として、届出し ていないところもあり、その割合は24.2 %で あった。その他、「算定要件を満たすが、届出 を周知することによる時間外負担を懸念して届 出しない」が1 2 . 7 %、「様子をみている」 4.8 %、「そもそも加算の考え方に同意できな い」等の意見が5.4 %あった。これらの調査結 果については8 月26 日に日医総研ホームペー ジで公表している。

私は昨年10 月に中医協委員となったので、 今回の改定にも途中から関わっているが、地域 医療貢献加算という名称は、全国的に評判が非 常に悪いのは事実である。この名称についてで あるが、中医協において当初「かかりつけ医加 算」との名称で事務局から提案があった。しか し、後期高齢者診療料の廃止に伴い高齢者のかかりつけ医制度も廃止した後で、「かかりつけ 医」という名称を用いるのはおかしいと私が話 をし、名称を考えようということになった。そ の場での議論の結果、「地域医療貢献加算」の 名称になったという経緯がある。名称に特に深 い意味はなく、この点数を算定しないからとい って、地域医療に貢献していないというわけで は決してない。この加算は各診療所の先生方が これまでやってこられたことを評価した点数で ある。足立前政務官も「時間外対応をしてくれ る先生方と、対応していない先生方に何とか差 をつけたい」と強く主張されていた。

また、いわゆる“日医外し”として中医協か ら3 名の先生方が交代となったが、新しく委員 となった我々3 名も「医療は一体である」との 考えの上、一致団結し、どこかを上げるために どこかを下げるといった分断策に乗らない姿勢 を最後まで貫いたつもりである。本来は再診料 をもっと下げ、加算の比重をもっと増したいと の意向もあったようだが、我々としてはこれ以 上下げないと協力に働きかけたところ、最終的 に厚労省は名を取り、我々は実を取った形にな り、最小限の引き下げと、地域医療貢献加算3 点を算定すれば実質プラスの形となった。これ については、当時の原中茨城県会長が強力に働 きかけをして何とか持ってきた経緯もある。

この地域医療貢献加算であるが、地域の身近 な診療所で、患者さんからの休日、夜間等の問 い合わせや受診に対応することで、休日・夜間 に病院を受診する軽傷の患者さんの減少、ひい ては病院勤務医の負担の軽減につながる取り組 みを評価した点数である。先に紹介したアンケ ート結果にもあったように、先生方の中には時 間外の対応を見合わせているケースもあると思 うので、そのような方々には負担を増やしてま で無理をして算定する必要はないとする設定で ある。名称については評判が非常に悪いので、 変更について次回の改定で検討したいと考えて いる。

算定要件は2 転3 転しており、当初は「何ら かの対応で可」ということで緩い条件であった が、その後、「24 時間、365 日対応」と厳しい 内容が示され、我々も驚いた。しかし最終的に は条件はまた緩くなっており、ハードルは下が っている。患者さんからの電話対応については 医師は勿論のことだが、看護師や医療機関の職 員が対応したり、或いは留守番電話の対応でも よくなった。ただし準夜帯については、できれ ば先生方本人が対応していただきたいと思うが、 その準夜帯が何時から何時までとは示されてい ない。この時間を追及すると逆に縛られて算定 しにくくなることも考えられることから、曖昧 で非常に緩やかなものとご理解いただきたい。

また再診料そのものについてであるが、今回 の改定で診療所が2 点引き下げられたことはゆ ゆしき問題と認識している。基本診療料は医師 の技術料であり、簡単に引き下げられることが あってはならない。次期改定に向け、基本診療 料のあり方についてしっかり議論を行うため、 去る15 日より社会保険診療報酬検討委員会と は別に基本診療料に関するプロジェクトチーム を作り、議論を開始したところである。今回、 中医協では様々な調査を予定している。事務局 や支払い側は、調査を行わなくても議論は可能 として、基本診療料や医療と介護の連携につい て早く議論を始めたいとしているが、我々とし ては内部でしっかり議論を固めたうえで、話し 合いたいとの考えである。今、議論として出て いるのは、病院と診療所のそれぞれのコスト分 析し、積み上げ方式でどの程度のコストがかか っているのかを一度分析しようと考えている。 分析についてはDPC 病院に関してはコスト分 科会の中で分析されたデータがあるが、それ以 外の病院ついては検討しなければならない。診 療所等については日医総研等の活用を考えてい る。まずは基本診療料のあり方についてしっか り議論したうえで、次回は再診料の引き上げを 主張していきたい。

<日医コメントに対する追加意見・質疑応答>

■熊本県:小児科の場合は全国では8.6 %しか 届出てない。

時間外診療は小児科医が一番診ていると思う が、何故手を挙げなかったか。それは、患者さ んとのトラブルがいかに多かったかということ を身に染みて分かっているからである。その辺 を認識して欲しい。ただ名称を変えるだけでは 意味がない。

□日医 鈴木常任理事:名称に問題があるので あれば、それを変更するということであり、そ の点数自体に問題があるのなら、基本診療料を 検討していくなかで、再度検証していくつもり である。

■長崎県:休日、深夜加算に組み入れるのも一 つの方法と考える。

□日医 鈴木常任理事:懸念しているのは、事 務局が当初“かかりつけ医加算”として名称を 提案してきたのは、次回の改定でかかりつけ医 的なものを何らかの形で取り入れたいと考えて いるのではないかということである。この動き に支払い側も同調しており、我々としては先生 方のご意見を聞きながら今後の方針を決めてい きたいと考えているが、かかりつけ医に対する 先生方の考え方をお聞かせ願いたい。

■大分県:人頭制を念頭におかれていると思う が、診療科や診療形態で算定率が異なるので、 医師全体として統一した見解は難しいのではな いか。

地域医療貢献加算のように曖昧なものはとに かく廃止すべきである。逆に時間外加算等にし っかり点数を付けた方がよいのではないか。患 者さんもコスト意識が高いので、コンビニ受診 等も抑えられるかもしれない。

■福岡県:地域医療貢献加算は小児科では殆ど 取らないというか取れない状況である。そのよ うな加算は意味がないと思う。本当に貢献して いる人たちが算定できるような点数にすべきだ と考える。しかし、基本診療料を削ることは考 え方が間違っている。

登録医制度については、イギリスのような人 頭払い・かかりつけ医制度につながるファース トステップにならないように反対する。

■熊本県:名称をいかに変更しても意味がない と考える。いびつな診療加算は廃止し、再診料 で手当てすることが一番妥当である。かかりつ け医については反対である。

■佐賀県:地域医療貢献加算は現場を知らない 官僚が考えたもので、日医はこのような話が出 た場合には声を大きくして国民に伝えていただ きたい。

行政と我々との間では様々な会議がもたれて いるが、その場に患者さんが入っておらず、国 民の理解が足りないと思われる。また、点数が 単に上がればいいというのではない。点数が上 がれば必然的に患者さんの負担は増えるので、 国費をもっと充当するよう日医は要望すべきで ある。

□日医 鈴木常任理事:世界に冠たる「国民皆 保険制度」が施行され今年で50 年になる。こ れは先生方が昼夜を問わず対応していただき築 かれたものだが、ここにきて限界にきていると 思う。諸外国を見ると24 時間対応は無くなっ てきている。イギリスのGP(一般開業医)も かつては1 人で24 時間対応をしていたが、サ ッチャー政権時に医療崩壊を招き、その後のブ レア政権時では「基本は昼間だけの対応とし、 夜は選択制で夜間専門のクリニックで対応する こと」になった。しかしながら夜間専門クリニ ックの勤務希望者は殆どいない。24 時間対応 のクリニックは余程の地方に残るのみである。 普通のクリニックでは平均4、5 名のグループ で診療を行う形態となっているが、現在の人頭 制はクリニック内の特定の医師に登録するので はなく、クリニック自体に登録するので、そこ に勤務している医師であれば誰でも診ることが できるように形態が変わってきている。

また、デンマークでは一般的な病気は自分の かかりつけの“家庭医”で診てもらう家庭医制 度がある。夜間も対応することにはなってはい るが、連絡が取れないことも多い。日本の医療 制度の中で24 時間対応がこれからも残ってい くのなら、今後も先生方には一般の社会とかけ 離れた負担を強いるような形になると思うの で、どのように解決できるかを考えていきたい。また、国民には日本の医療制度がいかに優 れているかを理解していただけるよう広報を進 めていくべきと考えているので、その時には先 生方のご協力もよろしくお願いしたい。

(7)入院患者の他医療機関への受診の取扱 いについて(宮崎県)

入院中の患者が、他医療機関を受診した場 合、初診料や再診料等しか算定できないという 制限があります。

これらは通常の外来患者と同様に、全ての責 任を伴う医療行為ですが、その対価が一部支払 われないという制度は極めて不合理です。労働 に対する当然の対価であり、正当に評価される 事が必要と思われますがいかがでしょうか。

また、入院中の患者に対して行った対診等 は、診療報酬の分配は相互の合議に委ねるもの とすると規定されており、その他でも同様の文 言がしばしば出てきます。他の業種であればと てもあり得ない話ですが、医療界では当然の事 のように点数制度の中で決められてきます。

このような算定の在り方について、各県医師 会では如何お考えでしょうか。

(8)入院中の他医療機関受診について (福岡県)

平成22 年6 月4 日付けの厚生労働省保険局 医療課長通知により入院中の他医療機関受診に 関する取扱いが一部改正され、投薬のみは認め られるようになりましたが、会員からは病診連 携、病病連携を阻害するということで、この取 扱いを早急に撤回するよう未だに多くの要望が あっております。

今回の制度は、出来高病棟でも包括病棟で も、一人の患者のために複数の医療機関が協 力・連携して支える地域医療を否定するもので す。入院医療機関には基本診療料の減算、他医 療機関での医療行為の制限は撤回されるべきで す。日本医師会に対して中医協で早急に改定前 の内容に戻していただくよう要望いたします。

(9)他医療機関受診時の入院基本料の減算 の撤廃について:日医への要望(長崎県)

今回の診療報酬改定で、入院中の患者が他医 療機関を受診すると、他医療機関における投薬 が制限され、入院医療機関の入院基本料が減算 されるという通達が出された。医療界の抗議を 受け、投薬制限は緩和されたが、入院基本料の 減算はそのまま残っている。

様々な合併症を有する患者に対して専門医に よる良質な医療を提供することは、医療機関の 義務であり、患者の権利でもある。しかし広範 囲の疾患を治療できる医療機関は少なく、とく に療養病床の医療範囲は限られている。入院基 本料の減算による医療機関の経済的損失と、他 医療機関への対診の制限により患者が受ける医 療の質の低下には無視できないものがある。

入院基本料の減算による他医療機関の受診制 限は、どこでも、誰でも良質の医療を受けるこ とができるという、国民皆保険の精神に反して いる。日医は、入院中の患者の他医療機関受診 時の入院基本料減算の早期の撤廃に向けて努力 すべきと思うが、日医の見解をお伺いしたい。

(10)出来高病棟に入院中の患者の他医療機 関受診について(熊本県)

「入院先の入院基本料を30 %減算する」、 「専門的な診療に特有な薬剤を用いた受信日に 限って外来受診先で算定し、残りは入院先医療 機関で算定した上で、外来受診先と合議する」 等は、周知の如く大混乱を招いた。

都道府県や地区医師会、精神病院や有床診の 団体から強い反対運動が起こり、厚労省は急遽 6 月4 日付の通知でこれを訂正した。

この案件は、果たして「中医協」で十分議論 されていたのか疑問視する意見が多い。厚労省 はDPC 病院や療養病棟等の包括医療との整合 性を確保するためとして「中医協」に提出した が、議事録にも十分な意見交換が行われていた との確証はない。

このように、「中医協」を素通りする案件や 留意事項、通知文やQ & A など拡大解釈される傾向について、各県のご意見と日医の見解を お伺いしたい。

(11)入院患者の他医療機関受診の取扱いに ついて(鹿児島県)

本件については、平成22 年5 月22 日付で、 九医連から日本医師会へ是正を求める要望書を 提出し、6 月4 日付の厚労省通知により一般病 棟の専門的薬剤の投薬の取扱いについて緩和措 置が出されたが、療養病棟入院基本料をはじめ とする特定入院料等については、この取扱いか ら除外する旨明記された。

特定入院料等医療機関は、今年4 月の診療報 酬改定前は、入院基本料を70 %減額した場合、 専門的薬剤については、他院において保険請求 が認められていたにも拘わらず、今回の通知に より、入院基本料を30 %又は70 %減額した上 に、専門的な診療科に特有の薬剤まで、自己調 達しなければならなくなった。

地域医療連携の推進という観点から、最終的 には、入院基本料減算措置の早期撤回を求める ものであるが、当面、特定入院料等医療機関に おける投薬の取扱いにかかる不合理を早急に是 正して欲しい。

上記の5 題については一括協議された。

<各県の回答状況>

各県からは、入院中の患者に対しても専門的 な医療は提供されるべきであり、入院基本料の 減算や外来先での診療報酬算定の制限等の縛り を設ける等については、医療費の抑制だけを考 えたものであることから、早期の改善を要望す るとの意見が出された。

<追加意見>

■佐賀県:最終的には患者さんに迷惑がかか る。大学病院等の多科のところはいいが、単科 のところは困る。これは現場を知らない人が作 ったものだと思われる。

□日医 鈴木常任理事コメント:私もどうして このようなことになったのか、どこで議論され たのか分からない。実際はDPC 病棟における 取扱いについて検討したいとして出されたもの である。中医協の議論では図を用いて説明され たが、このような結果が分かるようなものでは なく、議論が済んだ後で出来高病棟、或いは包 括病棟におけるものは非常に厳しく制限される 結果になってしまった。改定後、すぐに地域医 療貢献加算と共に大きな問題となった。改定が 終わると、医療課の担当職員は4 月末には殆ど が人事異動となるので、出来ればその前に何と か改善して欲しいと申し入れ、薬の部分に関し ては6 月4 日の通知で改善された。入院基本料 の30 %減、70 %減の問題についても、引続き 改善して欲しいと申し入れているところであ る。一方、病院団体からは入院基本料の引き上 げと複数科受診について要望が上がっている。 200 床未満の再診料は上がったが、200 床以上 の外来診療料は現状のままということになって しまった。当初は2 科目に限って2 分の1 を認 めるとの話もあったが、財源がなくなってしま い、実現しなかったということもあるので、こ の件について併せて今後とも強力に申し入れて いきたい。

厚労省の担当事務局のメンバーは一新された が、この件は地域医療貢献加算とともに全国的 に大きな問題となっていると申し入れているの で、出来れば次期改定前に改善されるよう強力 に働きかけていきたいので、もう少しお時間を いただきたい。

<日医コメントに対する追加意見・質疑応答>

■佐賀県:療養病床の他科受診の減額がそもそ もベースにあって、それから一般病床まで派生 したものだと思うが、療養病床が現状のままだ と、またこのような問題が出てくるものと考えら れる。これを機に療養病床自体の他科受診減額 も見直していただけるようご検討いただきたい。

□日医 鈴木常任理事:そのとおりだと思う が、支払い側としては同一人物の二重請求につ いて議論されているので、そのような議論にも対抗させつつ、我々の現場の問題を解決できる ように病院側の委員とも議論をすり合わせなが ら一致させた意見を出したい。診療側が議論で 対立することがないような形にして何とか一歩 でも進めたいと考えている。

■大分県:「中医協の中で解説図が出てきたが 見逃した」とのお話があったが、このような重 大な問題が新たに出てきたときには中医協でし っかり議論して欲しい。前参議院の共産党の小 池晃議員が国会で見直しについて質問したとこ ろ、政府の答弁として「中医協で認められてお り、見直すつもりはない」との発言であった。 問題があるものは、中医協で再議論して是非改 善していただきたい

□日医 鈴木常任理事:見逃したのではなく、 その図をいくら見ても、そのような結論が出て こないものであった。議論をしっかりしたいと 思う。中医協では答申が出た後に一ヶ月ぐらい 休みがあるが、その間に進められてしまう悪い 慣例があるようなので、その辺も何とかした い。先生方からはチームを作って検討して欲し いとの意見もあるので検討したいと思う。

■福岡県:改定の議論の際、中医協の中で再診 料が1 点下がると財源がいくらになると試算が 示されていたと思うが、この件に関しても財源 が示されたのか。そのために元に戻せないの か。それとも期中で戻す可能性もあるのか。

□日医 鈴木常任理事:財源の話は出なかっ た。おそらく事務局は知っていると思うが、そ のような話は我々には届いていない。

(12)地域連携小児夜間・休日診療料の算定 について(大分県)

「地域連携小児夜間・休日診療料T」は、中 核病院に集中しがちな休日、夜間の小児医療に 対し、地域の医師と連携して小児科の初期医療 体制を充実することを目的に設定され、診療報 酬上で評価されている。

本県では、病院小児科勤務医の負担軽減、地 域における質の高い小児医療を提供する観点か ら、中核病院、地域の小児科診療所の医師が連 携し、「地域連携小児夜間休日診療」を実施し、 病院の二次機能を活かすためにあえて中核病院 に開業医が出向くことを避け、自院で初期救急 を行っている。地域によっては、病院と小児科 開業医1 名のような地区も連携体制をとり、夜 間、休日も含め365 日診療体制を維持している。

しかしながら、今回の診療報酬改定で「在宅 当番医制で行う夜間・休日診療においては算定 できない」との一文が算定要件に追加されたこ とにより、小児科医独自で行っている夜間・休 日診療が当番医制とみなされ算定できなくなっ てしまった。このままでは小児科医は意気消沈 してしまい、地域連携小児夜間休日診療体制が 継続できないのではないかと危惧される。

中核病院勤務医の負担軽減はもとより、地域 小児科開業医が自院で初期救急を行う方法も是 非とも認めていただきたく、算定要件の緩和を 要望します。

<各県の回答状況>

いずれの県からも、算定要件である「在宅当 番制度で行う夜間・休日診療においては算定で きない」を緩和していただきたいとの意見が出 された。

<追加意見>

■熊本県:中核病院に開業医が出向くことがで きる地域とできない地域があるので、地域特性 を踏まえながら小児医療を守るための点数、算 定要件を検討しなければ、ますます地域医療は 崩壊していくものと思われる。

□日医 鈴木常任理事:先生方のおっしゃると おりだと思う。やはり夜間診療が出来る体制が あるかどうかが大事であって、それが病院なの か、在宅なのかというのはどちらでも同じだと 思う。ただ学会では集中化、集約化の方向にあ るようなので、恐らくそれに対応した流れなの かもしれない。先ほど大分県の藤本先生から直 接お話をお伺いしたが、今年の3 月に当時の佐 藤医療課長から「在宅当番制については名称を 換えて対応できればよいのではないか。」と話があったとお聞きした。私どもは承知していな かったが、実際に地域の小児科医療が守られて いることが重要なことなので、厚労省に確認し て改善できるような方向で働きかけていきたい と考えている。

(13)診療報酬改定時の疑義解釈や施設基準 について(熊本県)

今回の診療報酬改定に伴う疑義解釈や施設基 準の届出には種々の問題点が発生し、医療現場 に多大な混乱をもたらした。

入院基本料の改定に伴う有床診療所の施設基 準の提出期限の延長、療養病棟入院基本料に係 る医療区分2 以上の算定要件の問題や救急医療 管理加算の届出延長、特に、「後発医薬品使用 体制加算」は施設基準の留意事項にある「有床 診の場合では、薬剤部門又は薬剤師が…」の解 釈をめぐり、一旦受理された施設基準が、4 月 29 日付け厚労省Q & A で一変したことである。 また、「明細書発行体制加算」の届出は、厚労 省Q & A では様式2 − 2 以外の添付書類は不要 とされていたが、熊本県では更に電子請求がわ かるもの、明細書の写しや院内提示物の提出が 求められた。

このように、診療報酬改定時には数多くの疑 問点が発生し会員への説明に困惑する。日医は 疑義解釈や施設基準等で医療現場に混乱を招来 しないよう、即座に対応して問題解決に当る 「特別チーム」の編成をお願いしたい。

各県のご意見と日医の見解をお伺いしたい。

<各県の回答状況>

各県からは、診療報酬改定時には施設基準の 届出等で現場が大変混乱していることから、日 医と厚労省が統一した見解を迅速に提供できる 体制作りが必要である。また年々複雑化してい る診療報酬体系や施設基準については簡素化を 検討して欲しいとの意見が出された。

□日医 鈴木常任理事コメント:先生のおっし ゃるとおりだと思う。たまたま私が10 月に中 医協委員に選出され、4 月から日医の常任委員 となり、社会保険担当となったので経緯がわか る。例えば日医の選挙が行われ、メンバーが変 わってしまった場合には、事務局は理解してい るが、新しい先生方の理解が得られる前に次々 に決められてしまう。この辺りが課題だと思う ので、いかに素早く対応していくかについて検 討しなければならない。今回、中医協委員にな って初めての改定に当たったわけだが、3 月に 答申を出した後、次回の会議開催が4 月末とな り、その間に通知等が次々に出されてしまった ことから、その当時、私がすぐに対応できなか った部分としての反省点である。次回の改定時 には何らかの体制を作りたいが、あまり先走っ て細かい対応を全て確認する体制にしてしまう と、なかなか現場の意向が伝わらないものにな ると思う。問題点等があればご意見を素早くお 寄せいただければ、対応できると思うので、日 医だけというよりも先生方と共同で作業を行い ながら、現場からの意見として対応していきた いと思うのでご協力をお願いしたい。

(14)医療費の技術料・材料費等部門別の公 表について(佐賀県)

医療費は総額で公表され、あたかもそのすべ てが医療機関の収入であるように捉えられがち だが、純粋な技術料、ホスピタルフィーはその 一部であり、薬剤費、医療材料費など、本来の 医療スタッフによる収入以外の占める割合も無 視出来ない。また、調剤薬局の普及はこれに拍 車をかけ、さらに、諸外国に比べ数倍高いとさ れる薬剤費や医療材料費などの要素が医療費増 加に与えている影響などは未だ十分に検討され ているとは言えない。

今後の医療費の公表にあたっては、これらを 明確に区別し、各部門別の純粋な値での年次変 化の比較を望むが、各県、日医の見解をお伺い したい。

<各県の回答状況>

各県とも提案県と概ね同様の意見であった。

<追加意見>

■大分県:保団連の話ではあるが、薬剤費の膨 張がこのような医療費の増加に繋がっていると 公表していた。データで物を言うことは大事で ある。厚労省のデータが必ずしも正しいとは言 えないので、日医はORCA 等を活用していた だき、しっかりと物が言えるようなエビデンス を作っていただきたい。

■長崎県:レセプトオンライン化で、厚労省に 膨大なデータが集積されるが、このデータの処 理及び解析をどのように行うのか。厚労省で分 析するのか、或いは第三者が入り厚労省から分 離した形でオープンに行うのか。これに日医も 加わることができるのか。これは今後の日本の 医療にとって、非常に大切な問題だと思うので お伺いしたい。

□日医 鈴木常任理事コメント:医療費、薬剤 費の話が出たが、国民医療費に占める薬剤費並 びに材料費については中医協でも公表されてい る。例えば薬剤料は6 月23 日の中医協の薬価 専門部会の中で19 年度までの推移が示されて おり、国民医療費34 兆円にうち、7.4 兆円と推 計されている。

但し、包括点数に含まれる薬剤費は含まれて いない。材料費についてはもっと漠然としてお り、材料費は診療報酬点数に含まれていること が多いことから、厚労省も正確には把握されて いないということで医療機器の精算額で代用し ている。これが1.5 兆円ぐらいである。部門別 のコスト計算については、医療提供に関する標 準的な各種の必要コストの調査を行い、それら を積み上げることでコストを適正に反映した診 療報酬体系の構築を目指すべきであるとして、 中医協で議論を持ちかけているところである。

オンライン化については、我々にとってのメ リットは診療報酬の支払いの早期化である。こ れは主に病院団体からの要望であるが、1 週間 から10 日程度支払いが早まる方向で動いてい る。また、支払基金に集積されたデータの活用 については、レセプトの突合や縦覧点検等のチ ェックを的確に行うことができないか検討され ている。電子化されたことで、先ほど話のあっ た入院中の他科受診についてもチェックされる し、今回の改定で義務化となった明細書発行も そのような流れの一つである。電子化にはプラ スとマイナスの面があるが、決して手をこまね いて見ているだけではなく、それに関わってい る先生方については地域の意見を吸い上げなが ら現実的な対応を行うよう働きかけていきたい と思う。

ORCA は日医独自のデータを出すためのも のだが、なかなか件数が増えないということ と、また、データの提供が任意となっているこ とから協力する医療機関が少ないので、日医と しては厚労省に対抗するデータとして活用しに くい状況である。ORCA を沢山の医療機関に 活用してもらい、併せてデータの提供について も是非ご協力いただい。

<日医コメントに対する追加意見・質疑応答>

■大分県:国民医療費についてもっと広報して いただきたい。先ほど国民医療費は34 兆円と の話があったが、全て税金で賄っていると勘違 いしている国民もいると思う。実際には8 〜 9 兆円が公費(税金)である。国民医療費の内訳 を理解していただけると診療報酬を上げる際に も国民に納得してもらえるのではないか。

□日医 鈴木常任理事:確かに全てが税金で賄 われていると思っている方もいるかもしれな い。実際は保険料がかなり占めている。日本の 国民皆保険制度は世界的にも非常に優れた制度 であり、これを維持していくためには応分の負 担も必要であることについて、今後も広報、啓 発に努めていきたい。

(15)指導・監査について(福岡県)

日本医師会より平成22 年6 月4 日付け(保 44)「指導の取扱いについて」において、指導 の基礎的な部分の取扱いに関する厚生労働省と の合意事項について通知がありましたが、その 中で(3)自主返還の取扱い3)個別指導の中に 「ただし、施設基準の返還の場合は最大5 年とする。」とあります。

この件について、従来、厚生労働省や他都道 府県での取扱いがどうなっていたか把握してい ませんが、本県では、施設基準に関するもの含 め返還は、原則1 年ということで合意しており ました。ところが、今般、九州厚生局より日医 と厚労省が合意したので、この部分を変更する 旨の申出がありました。

本会としては、九州厚生局と従来通りという ことで交渉いたしておりますが、日医との合意 事項と言われれば従わざるをえません。

日本医師会としては、要件を満たさない月が 5 年以上である場合にそれ以上遡らないよう、 書類の保存期間から最大5 年とされたのではな いかと思いますが、5 年というのは監査と同様 で非常に厳しいと思われますが、いかがでしょ うか。

また、厚生労働省において指導の標準化が行 われており、指導について交渉を行うと、常に 「本省からの指導なので」と言われます。日本 医師会より厚生労働省へ従来からの合意事項で 実施しているものについては、合意事項を尊重 して実施するよう要望していただけないでしょ うか。

<各県の回答状況>

各県とも「施設基準の返還の場合は最大5 年」について、強い不満と厚労省へ見直しを求 める意見が出された。

□日医 鈴木常任理事コメント:平成22 年6 月4 日付け(保44)「指導の取扱いについて」 は、結論的に言うと前執行部との間で合意され たものが、まだ各県に伝達されていなかったの で、これを伝達したものである。交渉というよ りも既に合意されていたというのが事実である。

<日医コメントに対する追加意見・質疑応答>

■福岡県:当県の場合、施設基準の返還につい ては1 年と合意されていたのに、5 年分返還さ れるようになったのは納得できない。5 年分の 返還を求められたら医療機関は潰れてしまう。

前執行部の時に合意されたものということで あるが、事前に指導に関するアンケート等を取 られたこともなく、前執行部でどのようなコン センサスを取ったのかよく分からない。

□日医 鈴木常任理事:施設基準の返還は、 「施設基準の適時調査の取扱い」と同様に届出 時に遡るか、もしくは要件を満たさない月まで に遡っての返還となるが、書類の保存期間の関 係から最大5 年としている。日医では、適時調 査で実際そのような運用になっているというこ とで、合意した経緯がある。現在、「指導の見 直し」として全国からお寄せいただいた意見を 取り纏めているので、この結果を見て対応した いと考えている。

(16)新規個別指導における指導結果につい て(沖縄県)

本県では、開業(開設)から概ね1 年以内の 医療機関に対して、九州厚生局による新規個別 指導が実施されているが、指導の結果、「再指 導」となった場合には新規といえどもあらため て一般個別指導を受けねばならず、医療機関に 与える心理的重圧は大きなものと考えられる。 九州厚生局沖縄事務所、県、医師会の3 者で開 催する定例保険連絡会議の際、厚生局へ問い合 わせたところ、「新規個別指導の指導結果につ いては全国的に同様の取扱いである。また、 『再指導』となった医療機関でも次回の個別指 導時には改善されているものと考える」との回 答であった。各県の状況についてご教示いただ きたい。

<各県の回答状況>

新規個別指導について提案県と同じ取扱い は、佐賀県、宮崎県、大分県、福岡県、鹿児島 県であった。そのほか県では、

○長崎県 医療機関の内容に問題がなければ、 新規集団指導の概ね半年後に新規 個別指導を受けた段階で一連の指 導は終了する。

○熊本県 新規開設及び管理者交代の医療機関に対し、年度末3 月に講義形式 の「集団的個別指導」、更に直後の 5 〜 7 月に「個別指導」が行われ、 その際、保険診療の理解が乏しい と判定された医療機関は次年度に 「再指導」が実施される。

上記のとおり報告があった。

また、新規個別指導は教育的指導が本来の目 的であり、返還等を求めるべきではないとの意 見が出された。

<追加意見>

■沖縄県:昨年度の指導実績は新規個別25 件、 一般個別が27 件、合計52 件であった。指導結 果として「概ね妥当」は1 件のみ、後は「経過 観察」もしくは「再指導」となっている。

現在の新規個別指導はフォローアップよりも 一般個別に向かってかなり束縛された状況にな っており、開業された先生方は大きな負担を強 いられている。集団的個別指導と同様に新規個 別についても、指導を1 度きりで終わらせる等、 何らかの取り決めが必要ではないかと考える。

■福岡県:指導は健康保険法に基づいて行われ る。一方、行政手続法での指導は、あくまでも 相手方の任意の協力によって行われるものとあ る。また同法32 条には行政指導に携わる者は その相手方が行政指導に従わないことを理由に 不利益なことをしてはいけないとあるが、日医 はこれについてどのように考えているのか。

□日医 鈴木常任理事コメント:新規個別指導 について、現時点では、再指導となった場合に は個別指導になる。しかし具体的な事例を見て みると悪意はなく、殆どが保険診療に関する知 識不足というのが実情である。新規開業医療機 関に対し、保険診療のルールや請求方法をレク チャーしている医師会もあり、非常に効果を上 げているとのことであるが、厚生局になった後 は医師会の自主指導も実施出来にくくなってい ると聞いている。そもそも開業したばかりの医 療機関に対する指導は教育的なものであるべき で、通常の個別指導の扱いとするのではなく、 まずは医師会と行政が協力をして新規指定時に 保険診療や請求事務の講習などを行う等の対応 が必要だと考えているので、この観点から厚労 省と折衝していきたいと考えている。またご存 知だとは思うが、新規個別指導は指導大綱に明 記されたものではなく、後付けされたものなの で、その点も含めて折衝したいと思う。

行政指導に対して従う必要はないのではな いかとのご意見であるが、これは私が判断でき る域を越えているので何とも言えないが、訴訟 等の方法もあると思う。「指導の見直しについ て」、今回の寄せられたご意見については分 析・整理がまだ済んでおらず、詳しくは申し 上げられない。

<日医コメントに対する追加意見・質疑応答>

■熊本県:新規個別指導に関しては、教育的指 導が重点であると思う。厚生局に確認したが、 「保険診療は契約であり、契約違反は当然返還 となる。新規だろうがなかろうが関係ない。」 との回答であった。情熱を持って開業した人達 が最初で挫折してしまうことは、地域医療にと って非常にマイナスになるので、新規開業に関 しては教育的指導を充実すべきとして交渉して いただきたい。

■大分県:勤務医が保険診療の知識を持つこ とは地域で開業される時に非常に役立つものだ と思うので、勤務医の先生方の教育も大事だと 思う。

■沖縄県:日医には、是非、医師会の医療機関 に対する指導について、各県の厚生局事務所レ ベルで協力的に行えるよう厚労省に協力を求め ていただきたい。

■福岡県:自主返還とは医療機関が自ら返還す るものであって、行政から求められるものでは ないと考えているが、厚労省では年度当初から 返還について予算化されているようである。日 医は自主返還についてどのように考えているの かご教示いただきたい。

□日医 鈴木常任理事:特定共同指導や共同 指導でいくつかの都道府県を回っている。特定共同指導は500 床以上クラスの特定機能病院や 大学病院が主になるが、指導では勤務医の先生 方に今のうちに保険診療について理解していた だきたいと主旨を説明しながら、最終的には自 主返還という話を我々が去った後に出している ようで、そういうものが結び付いている現状だ と思う。この辺は非常に巧妙である。指導官の 人道的に解せない言動等については、直接ご連 絡いただければ強力に指導することもできる が、自主返還については、本来は有ってはなら ないとは思うが、現実的には存在することを現 時点では認めざるをえない。

(17)在宅患者訪問診療料の算定の矛盾につ いて(日医への要望)(長崎県)

在宅患者訪問診療料は、平成22 年度診療報 酬改定で「1 同一建物居住者以外の場合 830 点」と「2 同一建物居住者の場合 200 点」となった。

改定後は、居住系施設入居者等(有料老人ホ ーム、グループホーム等)とされていたものが 同一建物居住者とされ、この中にはマンション 等の居住者も含まれることとなったが、その算 定方法には矛盾がある。

例えば、マンションに訪問診療を行った場合、

1)101 号室の「A さん1 人」の場合 830 点

2)101 号室の「A さん」+ 501 号室の「C さ ん」計2 人の場合 200 点× 2

3)101 号室の「A さんとB さん2 人」+ 501 号室の「C さん」計3 人の場合 200 点× 3

4)101 号室の「A さんとB さん」2 人の場合 830 点+再診料(一戸建てと同様)

となり、在宅患者訪問診療料のみであれば、 世帯(居室)の異なる2 人以上の訪問診療を行 うと、1 人の訪問診療を行った場合より点数が 低くなる。

明確な根拠がなく、医療費抑制のみを目的と したと考えられる矛盾した点数、算定方法につ いては、速やかに改定するよう日医から要望し ていただきたい。

□日医 鈴木常任理事コメント:在宅訪問診療 料の算定方法については、中医協でもいろいろ 議論になった。先生方の中には医療機関の近く にアパートを建てて患者さんを住まわせ、集中 的に訪問診療を行って非常に高点数を得ていた 事例があった。普通に訪問診療を行う先生方と 差をつけたいとする事務局の意向がその辺に見 える。都会の訪問診療は、離れているといって も徒歩や自転車で移動することができる。私は 茨城の過疎地で診療しているが、我々の訪問看 護は5 キロ、10 キロ、15 キロ離れたところを 回る。むしろそのようなところにも加算が欲し いと思う。結局はそのような議論の末、厳密に は矛盾が出てくるのは事実であるが、何らかの 形での取り決めをしたいということから、この ように決まった経緯があるので、現実的に見て 非常に不整合な部分が多々あるということであ れば、次回の改定に向けて改善できるよう要望 を出していきたい。

印象記

平安明

理事 平安 明

平成22 年9 月25 日鹿児島県城山観光ホテルにて平成22 年度第1 回医療保険対策協議会が開催 された。今年は診療報酬の改定があったためその関連として、地域医療貢献加算を巡る問題、入 院患者の他医療機関の受診、地域連携小児夜間・休日診療料の算定について、診療報酬時の疑義 解釈や施設基準について、医療費の技術料・材料費等部門別の公表について、さらに、指導・監 査に関することが協議事項として取り上げられた。

診療報酬改定時に既に問題となることがわかっていたようなことが取り上げられたため、各県と も同じような問題意識を持っており、改めて意見の取りまとめに難渋するようなことはなく、明確 に問題となっていることをきちんと日医に対応してもらうことを再確認したような会議であった。

日医からは鈴木邦彦常任理事が出席されたが、議事録を見ていただいても分かるとおり、現時 点で特に目新しいことは述べていない。指導監査に対しては日医から8 月12 日付けで都道府県医 師会宛てに指導監査の見直しについての意見を募っており、国に要望していくために取りまとめ ている段階である。また、地域医療貢献加算については算定を進めているところとそうでないと ころと若干温度差があるように見えるが、この点数が不可解な経緯で出てきたもので、原則論と してこれは再診料に戻すべきものとの認識では各県とも一致している。日医からもはっきりとそ のような方向で見直しを行っていく旨の発言が聞かれるかと思ったが、今一つ歯切れが悪かった。 再診料等基本診療料の議論は中医協ですでに始まっているようだが、地域医療崩壊を阻止するた めにも鈴木常任理事には是非とも中医協で頑張っていただきたい。その他の事項についても問題 点を整理し国に持ち上げていく旨述べていたので、まずは今後の日医の動きを見守っていこうと 思う。

協議会の後、医療保険、介護保険、地域医療の3 協議会の報告会があり、その後懇親会が催さ れた。鹿児島の郷土料理と焼酎に舌鼓を打ち、前回(平成22 年1 月)福岡でこの協議会があった 時は、ウイルス性腸炎に罹患した後で食事が全く取れなかったことを思い出し、健康に感謝しつ つ、料理とお酒を堪能させてもらった。