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平成22 年度第1回沖縄県産業医研修連絡協議会

金城忠雄

理事 金城 忠雄

平成22 年8 月5 日(木)平成22 年度第1 回 沖縄県産業医研修連絡協議会をサザンプラザ海 邦にて開催したのでその概要を報告する。

沖縄県産業医研修連絡協議会の目的は、産業 医研修事業の円滑で効果的な実施を図り、産業 医活動の活性化に寄与すること。1 年間の産業 医研修計画等について協議することである。と ころで、昨年の労働安全衛生法の見直しに伴い、 資格単位の取れる基礎研修実施者は、国から指 定を受けた日医・県医師会になり、これまで資 格単位を認められていた労働者健康福祉機構 (産業保健推進センター)の受講は、認定されな くなり、生涯研修単位だけとなってしまった。

1.沖縄県産業医連絡協議会委員について

委員:平成22 年度委員会委員数は18 名

沖縄労働局2 名、沖縄県医師会10 名(各地 区医師会代表と県医師会理事)、沖縄県労働基 準協会5 名、労働者健康福祉機構(産業保健推 進センター)1 名(資料1)。

2.平成22 年度産業医研修会計画について

沖縄県医師会

沖縄県医師会では、今年度7 回研修会を計画 している。

4 月と6 月に未認定医を対象に基本研修会、 5 月と7 月に未認定医・認定医を対象にリフレ ッシャー及び特定科目専門研修会を開催してい る。8 月に実施研修として「メンタルヘルス対 策」9 月と10 月にも研修会を計画している。

沖縄産業保健推進センター

沖縄産業保健推進センター主催は、15 回企 画されている。

資料1

資料1

政権交代による産業医研修の見直しにより、 今年から産業医資格申請単位としては、基礎研 修単位は申請ができなくなり、研修単位申請が 出来るのは、全て生涯研修のみとなった。

未認定医が産業医の資格を取るには、50 単 位が必要である。

(前期14単位 後期26単位 実地10単位 合計50 単位)

未認定医は、2 年半で産業医単位取得可能と なる。

日本医師会認定産業医資格は、5 年間であり その後は更新が必要である。
資格更新には、5 年以内に20 単位研修取得と 資格更新手続きを行う。

特に実地研修について、県内では大きな企業 がなく産業医実地研修の医師が大勢なので、職 場研修の確保に非常に苦労しているが、工夫を して実地時間数を増やしたい。国からの委託事 業であり、限られた予算なので県医師会からの 持ち出しが危惧されるが産業医養成には努力す る必要がある。

労働者健康福祉機構(産業保健推進センター)
松野豊副所長のコメント

沖縄産業保健推進センターにおいては、平成 22 年度は、年間15 回の産業医研修を計画をし ているが、平成22 年度より基礎の資格単位が 取れなくなったこともあり、既に終わった3 つ の研修会は、実地研修であったにもかかわら ず、受講者数は例年に比べ低調であった。

沖縄県内では、産業医が不足している地域も 見受けられることから、今後も産業医を増やす 必要があり、基礎の単位が取れる産業医研修を 増やすことや、産業保健センターにおいても基 礎研修ができる制度への見直しなどを関係機関 に働きかけることも必要と考えられる。

また、1 人で多くの事業所と産業医契約をさ れておられる医師もおり、その負担軽減や適正 な職務の遂行という面からも産業医が増えるこ とが求められている。

既に、産業医をなされておられる委員から は、産業医1 人で職場の産業保健活動を全てを 見るのは無理であり、職場に産業看護師や産業 保健師を配置できれば、もっと職場の産業保健 活動がスムーズに、かつ、活発になるとの意見 もあった。

日本医師会認定産業医制度における産業医数の推移

沖縄県では、平成2 年度から平成22 年3 月 現在まで598 名の産業医登録されているが、現 在5 年毎の更新をしている産業医は340 名程で ある。

平均すると新規産業医は、1 年間に30 名の 申請登録している。

3.その他

1)沖縄県地域産業保健センター事業について

地域産業保健センター事業は、産業医の選任 義務のない50 人未満の事業所の労働者の産業 保健サービスを充実させることを目的に、これ まで各地区医師会が担っていたが国からの委託 事業でもあり、今年度から企画競争入札の形で 県医師会が受託する事業になった。約3,700 万 円の事業予算が組まれている。

2)沖縄労働局

与那嶺茂良安全衛生課長の報告

1 沖縄県における産業医の選任率について

平成22 年6 月末現在の選任率は、83.23 %

2 沖縄県における定期健康診断有所見率について

平成21 年の有所見率は、62.44 %

沖縄県内の定期健康診断の結果において、脳 血管疾患及び虚血性心疾患等(以下「脳・心臓疾患」という。)関係の主な検査項目のうち血 中脂質検査、血圧測定、血糖検査等の有所見率 が高い状況にあり、何れも全国平均を上回って いる。また、脳・心臓疾患による労災支給決定 件数も増加傾向にある。

定期健康診断有所見率の推移 表2.

表2.

以上のような現状に鑑み、沖縄労働局におい ては、平成22 年度を初年度とする「脳・心臓 疾患関係有所見率改善3 カ年計画」を策定し、 事業者等における脳・心臓疾患関係有所見率改 善対策の促進を図るため、本計画による自主点 検等による周知啓発、指導等に取り組むことと している。

正式決定後は、広報することにしている(8 月中旬〜下旬)。沖縄県医師会様はじめ、皆様 のご支援をお願い申し上げる。

具体的な取り組みは、

(1)広範な周知啓発のための取り組み

平成22 年度全国労働衛生週間の初日である 10 月1 日に、那覇第2 地方合同庁舎1 号館2 階 において、事業者、健康管理担当者、労働者等 を対象として、脳・心臓疾患関係有所見率改善 対策の周知啓発等を主な目的とする「心とから だの健康づくりセミナー」を開催する(沖縄労 働局、沖縄産業保健推進センター及び労働災害 防止団体等による共催)。

(2)個別事業場に対する取り組み

1)自主点検による周知啓発及び実態把握

常時50 人以上100 人未満の労働者を使用す る事業場に対し、脳・心臓疾患関係有所見率改 善対策の周知啓発及び実態把握を図るため、自 主点検の実施を要請する。

2)監督指導又は集団指導等による取り組みの要請書交付

3)監督指導及び個別指導による周知啓発

4)各種機会を捉えた周知啓発

5)各労働災害防止団体等に対する要請

6)地域産業保健センターの利用勧奨

常時使用する労働者が50 人未満である事業 場に対し、必要に応じて、地域産業保健センタ ーの利用を勧奨する。等について取り組みを展 開することとしている。

参考:「定期健康診断有所見率の推移(平成4年〜平成21 年)」
   「沖縄県と全国の業種別、検診項目別有所見率(平成21 年)」
   *8月中旬〜下旬に発表の予定をしている。

産業保健担当理事としてコメント

労働者健康福祉機構(沖縄産業保健推進セン ター)が、未認定医の基礎研修単位が修得可能 になるよう、松野豊副所長に協力も必要だ。

実施研修時間を確保することについては、会 員からの要望もあり、産業保健センターが無理 であれば、県医師会がカリキュラムを編成考慮 せねばならない。

実地の具体的な方法として、職場巡視・作業 環境測定の実際、じん肺エックス線検査とその 読影、救急処置、AED,ACLS の実技等実地研 修の確保、職場の過重労働・メンタルヘルスの 評価などがあると考えられる。

産業医養成は国からの委託事業とはいえ、日 医会長が主張しているように、「国民の健康と 生命を守る」のは医師会の使命であり、これら の計画を実施するには県医師会からの予算の持 ち出しも予想されるが受託したいものである。

以上、平成22 年度の産業医研修事情につい てその概要を報告した。