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平成22 年度女性医師の勤務環境整備に関する
病院長等との懇談会

沖縄県医師会女性医師部会委員 大湾 勤子

去る9 月9 日(木)沖縄県医師会館に於いて 標記懇談会を開催した。公的・民間病院を含 めた施設の代表者や事務長、女性医師等が多数 参加し、女性医師が抱える諸問題の解決や働き やすい勤務環境整備に向けて、意見交換が行わ れた。

参加者は病院代表者が26 名、事務方15 名、 その他県庁職員3 名、女性医師部会役員10 名 の計54 名であった。その概要について次のと おり報告する。

はじめに、玉城信光沖縄県医師会副会長より 開会の挨拶があり、続いて、参加施設代表より それぞれ自己紹介が行なわれたあと、依光部会 長よりこれまでの報告も兼ねて挨拶があった。

挨拶&活動報告

沖縄県医師会女性医師部会長 依光たみ枝

依光たみ枝

本懇談会の経緯につ いては、2007年2月に、 玉城副会長から「女性 医師の勤務環境の整備 に関する病院長等への 講習会」としてプレ懇 談会(参加者17 名)を 開催し、(1)院内保育の設置状況や(2)沖縄 県が施行した女性医師へのアンケート調査結果 報告、(3)今後の女性医師バンク事業の推進に ついて情報提供を行なうと共に意見交換を行な ってきた。同年8 月に女性医師部会が発足し、 翌2008 年9 月に、第1 回病院長等との懇談会 (参加者40 名)を開催し、県内94 病院(公的 病院を含む)を対象に実施したアンケート調査(院内保育所の設置状況、設置した事による効 果、病児・夜間保育の設置状況、実施している 就労支援)結果について報告を行なった。

2009 年9 月に、第2 回同懇談会(参加者49 名)を開催し、仁井田りち委員から「全国女性 医師の勤務環境報告」「県内女性医師への個別 聞き取り調査報告」を踏まえて、意見交換を行 なった。本日3 回目の懇談会(参加者54 名) を開催することが出来た。年々参加者数も増加 しており、有意義な懇談会となるよう期待して いる。

また、2010 年5 月から沖縄県女性医師バン クホームページを開設し、医師の再就業支援や 再研修支援、育児支援など、様々な情報提供を 行なっている。8 月迄の活動状況として、再就 業・再研修については、再就業成立が3 件、再 研修1 件(問い合わせが1 件あり、琉大専門研 修センターへ紹介した。)である。その他、育 児・生活支援については、県内各地域の保育 所、幼稚園、学童クラブ、ファミリー・サポー ト・センター、シルバー人材センター等の紹介 を行なう。

今後の課題としては、医師側の休職における 登録者数が少ないので、周知方法を考えていき たい。

医師会員でなくとも、また男性医師でも必要 な情報を随時提供していくので是非ご活用いた だきたい。沖縄県の医療界に少しでもお役に立 つ事を祈願して私の挨拶とする。

報 告

「休職医師の状況把握に関するアンケートについて」結果報告
沖縄県医師会女性医師部会委員
涌波 淳子

本年5 月下旬より県内94 病院(公的病院含 む)を対象に「休職医師の状況把握に関する」 アンケート調査を実施した。( 回答率は 89.4 %)

今回、調査では「平成22 年4 月1 日時点に おける各施設の休職医師の状況」や「今後復職の見込みが決定している医師数」、「復職後、休 職前より負担を軽減した医師数」等について現 状を伺った。

アンケートの結果から休職医師の状況につい て次のことが分かった。

・4 月1 日時点で完全に休職中の医師数は20 人(女性13 人、男性7 人)で、65 %が女性 医師であった。

・そのうち、今後復職の見込みが決定している 医師数は15 名(女性12 人、男性3 人)で、 休職中の女性医師13 人のうち12 人が復職予 定である。休職の理由は、産休・育休休暇取 得が11 人と回答している背景から、その殆 どが復職見込みになっていると想定される。

・男性医師は7 人のうち3 人しか復職見込みが ないとの結果からすると、健康上の問題と回 答したことと関係があるのではないかと予想 される。

・また、復職後、外来・検査などを中心とし、 休職前より負担軽減を図った医師数は7 人 (女性5 人、男性2 人)で、負担軽減措置が 復職に繋がったのではないかと思う。

・復職に当たって調整したことで、勤務時間の 減が最も多く(5 0 %)、次いで当直免除 (36 %)、勤務時間(フレックス制など)の 調整(7 %)、ハード面(休憩室、授乳室) の整備(7 %)であった。

まとめ

結果として、県内の病院の中で女性医師に対 する支援体制が進んできたと思われるが、一方 では実際には続けられないとの理由で退職して しまったケースは調査結果に反映されていない ため細かい分析は出来ないと結論付けた。

しかしながら3 年前に女性医師部会を立ち上 げた時よりも各施設のサポート体制が成果とし て表れてきたのではないかと予想する。

また、女性医師側へのアプローチを目的に、 本年5 月から行なっている出前事業(プチ・フ ォーラム)について、仁井田りち副部会長より 概要の紹介を行った。

出前事業は、今回初めての試みで本年5 月か ら県内病院を個別に訪問(5 月:県立中部病 院、6 月:浦添総合病院、7 月:豊見城中央病 院、8 月:那覇市立病院、今後2 施設予定)し、 施設に勤務する女性医師との意見交換を行って おり、その中で見えてきた課題等について、内 容を取り纏めた上、今後、フィードバックした いと考えている。

意見交換

女性医師を支援するにあたっての課題

フリートーキングに入る前に、涌波淳子委員 から「私の拙い経験から」と題し、自身の経験 の中から女性医師の視点、管理者の視点から感 じたことなどを通じ、見えて来たことについて 報告を行った。

今管理者になって感じることは、「医療」を 守るとは、「患者を守る」事であり、「医師を始 め医療スタッフを守る」事であるという原点に 帰り、本末転倒にならないよう、それぞれが、 自分の役割を見極め、果たさなければいけな い。その為には、システムも、管理者も、女性 医師も、男性医師もそれぞれ成熟する過程で行 う必要があるとし、最後に、金子みすゞ氏の詩 を引用し、「みんなちがって、みんないい」お 互いに理解し合えるような環境が作られたら良 いと結んだ。

また、懇談会の開催に向けて、事前に施設か らいただいた女性医師支援への取り組みについ て報告を行なったあと、女性医師を支援するに あたっての課題や悩み等について、意見交換を 行った。

1)国立病院機構・琉球病院 院長 村上優

当院では女性医師のキャリアアップと家庭生 活の支援を考えているが、それは男女問わず、 若い医師のキャリアアップと家庭生活の支援と いう視点が必要である。育児休業は期限の長短 はあるが、女性医師だけでなく男性医師も取る ことを勧めている(現在では多くの男性医師も 1、2 ヵ月取得している)。

現在、院長・副院長・診療部長以外の11 名 の医師は未婚の3 名を除き、全てキャリアアッ プと子育ての期間にある。女性医師の所属はこ の秋より8 名で、現在、産休や育児休業、短時 間勤務、妊娠での勤務の緩和を行なっている女 性医師は6 名いる。これで病院が運営できるか という危惧も抱かれる関係者も多いと思うの で、雑感を述べたいと思う。

1)精神科病院は救急医療以外では比較的に時 間から時間までの勤務を行いやすく、その意 味では女性医師は勤務が行いやすい。

2)多職種(看護師・臨床心理土・作業療法 士・精神保健福祉士など)によるチーム医療 が協働して、負担の配分ができている。

3)女性の特性を尊重する勤務環境(当直室・ 休憩室・更衣室・保育園など)を整備する。

4)専門の医療分野を持ち、時間をかけてキャ リアアップを行う。沖縄だけでなく全国に通 用するネットワークへの参加を子育てしなが らも支援する。

5)若い医師に相互に「キャリアアップと家庭生 活= 育児」への互助の精神を持ち、医師のチ ームワークを作っていく。これには女性だけ でなく男女参画という視点が大切で、男性医 師だけに負担が来ることは避けるべきである。

6)苦しくても支援するという「旗」は降ろさ ないことで、若手のチームワークが形成され る。その意味では管理者の理念は大切である。

7)この体制で医療を組み立てるには工夫が必 要であり、専門医療分野を作り上げること で、そのメニューを増やすことである。その 意味ではどのような医療を提供するのか、ど のような病院にするのかという基本戦略が問 われ、それを若手医師と共有できるかが、施 設の意思の決定過程(若手も参加しての)が チームワークを強くする。

8)私たちの病院は研修教育病院としての使命 を果たすことを求められている。その期間は 若手医師にとってはキャリアアップと同時に育児という基本的な家庭生活を育む時期に重 なる。次世代にバトンタッチするためにも、 普通の生活感覚で医師を育成することが必要 だと感じる。また県や国の単位で、全体とし て医師を育てるという役割分担を図るべきで ある。全ての病院が同じようにはできないの で、特微を持ちつつ共存する全体図(ロード マップ)を医療関係者が共有することが大切 と感じる。

9)個人的には私自身がこの対極の医師生活を 送り、また医師となった子ども達がまた同様 な過酷な生活を送っていることを見るにつ け、自戒と反省より琉球病院で考えたことで ある。「医師は社会の共有財産である」こと を社会も、医師自身も認識することが理想を 共有できることにつながる。医師も社会より 育てられ、自分の力だけで成り上がったので ないという自覚が大切であると、今の私は考 えることができるようになった。そういう想 いで共に働き育っていくことは、働いてい て、支援していて幸せを感じる時である。

2)琉球大学医学部附属病院病院長
須加原一博

女性医師支援は、病院長就任時から強く進め ていることで、夫の育休を含め全面的に支援し ている。

3)琉球大学医学部附属病院卒後臨床研修センターセンター長
久木田一朗

琉大卒後臨床研修センターとしての取り組み

1)既婚医師(研修医)の生活状況に応じた 研修ローテーション調整。

2)子育て中の医師(研修医)の積極的休暇 取得。男女を問わず希望があれば、無理の ない研修を進めている。

3)妊娠女性医師(研修医)に対する柔軟な 休暇取得。

4)手当・育児休暇後のスムーズな復職ロー テーション調整。

5)子育て・育児相談等

6)研修修了した医師からの育児相談等も個 別に相談がある場合は行っている。

困っていること・今後の課題

1)グループ制でなく、主治医制の診療科が多 く、細切れの休みが取りにくいことがある。

2)復職後のシステムとして、診療科のバッ クアップ体制の強化が今後の課題である。 (診療科内の相談窓口・メンター(チュー ター)制の確立)

要望等

女性医師は、特殊な環境下にあるので、夜 間保育者の手配や病児保育についてのサポー ト体制は必要だと思われるが、県全体の体制 として確立されていない現状があるため、医 師会が中心となりサポートして頂けると、県 内の女性医師(研修医)はよりよい環境で業 務を行うことができる。(例:夜間保育可能 な保育園(又は個人)や病児保育可能な施設 等の一覧及び料金一覧などが取り纏められた パンフレット等の配付)

フリートーキング

琉球病院 福治康秀副院長

男性医師が率先して子育て支援に取り組んで いる。なかでも院長が支援する姿勢を貫かれて いることが大きいと思う。皆でやっていこうと いう雰囲気づくりが肝要である。

浦添総合病院 宮城恵子副院長

当院では子育て支援の一環として、院内保育 所と小児デイケアを有している。現在は週1 回 の24 時間保育を行なっている。また、最近の 取り組みとしては、育児休暇1 年取得しないス タッフのために、乳児を中心とした保育施設を 作ることについて理事会の承認を得た。医師と いう職種を考えた場合、若い先生方は技術を取 得するために他の職種よりも早く現場復帰する ことが予測されるので、乳児が預けられるよう な保育施設の計画を進めている。

オンコール時に一時的に預かるような体制づ くりについては、保育士の人件費等の問題も含 め、費用対効果の面で今後検討が必要である。

保育所運営は経営的に成り立たないのが現 状である。当院でも設置の際、他の保育施設 も訪問したが何れも持ち出しがあるのが現状 であった。

現在小児デイケアの助成を受けるも如何に赤 字幅を縮めるかが課題である。また、保育料は 職種が多様で高い料金が設定できない実情が ある。

Q :昨年から今年にかけて、新たな女性医 師支援(院内保育、病児保育、ワークシェ アリング等)対策を講じた施設はあるか。

北部地区医師会 諸喜田林院長

当院では、オンコールや夜間にかかった場合 の対処策として、シッターコール(2 名の看護 師がシフトの中で交代で対応)を設け、オンコ ール時には子供を預けるシステムを作り、病院 から看護師に対し手当てを支給しており非常に 上手くいっている。

海邦病院 富名腰徹理事長

2 年程前に、女医の獲得に力を入れるという 方針で、女性医局を作ったが、残念ながら常勤 医は確保できていないが、引き続き、いろいろ な工夫を行なっていきたい。

大浜第一病院 知念弘病院長

当院は、常勤女医が2 名いるが未婚であるため 育児等のサポートは未だ経験はない。新しい病院 を作る際、ナースの確保も含め保育所を検討し たが、敷地の中に同一法人で保育所を作る許可 が下りなかった。今日は、当院でもこれから女性 医師は増えていくことを想定して、各施設の取 り組み等を伺い対策を立てるべく参加した。

沖縄協同病院 上原昌義副院長

当院は、比較的女性医師が多い施設で、女医 の会があり女医専用のブースもある。今回新し い病院を作った際にも、ロッカールームと併設 したシャワー、トイレ、ベッドを完備し、評判 が良い。子育て中の医師のために、時間短縮の 勤務形態を採用している。20 時間以上働けば 常勤と同じ条件になる。通勤や医師手当ても殆 ど同じ様に支給している。今日は各施設の取り 組みを聞いて、充実した取り組みが出来ればと 考えている。

沖縄赤十字病院 良英一院長

当院では女医が9 名勤務しており、育休明け で勤務する女医に対しては、働きやすい時間帯 を設け当直を制限しないよう個人にあった形態 を取っている。生活リズムに併せて勤務形態が 組める。その場合、給与は関係する。

恐らくどの病院でも働く形態は沢山あるかと 思うので、女医は具体的に率直に話して欲し い。その方が対応しやすいと思う。

豊見城中央病院 城間寛副院長

当院でも、保育所(40 人)を有しているが 看護師の子供が多く満杯の状態である。女性医 師の優先は難しい。現在不足の状況であるが、 補助金の見込みが無いなか、赤字覚悟で新たに 設けるべきか検討中である。

また、育休明けの女医に対しては、朝から5 時まで勤務して貰い、それ以後は当直も時間外 勤務も無しの勤務形態を取っている。どういう 状況の支援が必要なのか具体的な相談があれ ば、状況の変化に応じた話し合いが持てると思 う。人事部も設けており、働き方や待遇に関し てもオーダーメイドで作っていく状況になると 思う。働ける環境については病院としてもケー スバイケースで柔軟に対応できると思う。

参考までに、珍しいケースであるが、当院の バリバリの男性外科医も病棟患者を持たない体 制にして欲しいとの要望があり、外来に専念し てもらい、1 ヶ月の育休を取得した。

南部徳洲会病院 赤崎満院長

第1 回目の会に参加したときに、保育所を設けておらず、その改善に取り組もうと去年院内 保育所を開設した。やはり看護師の子供が多い。 また、家族の事情や本人が体調を崩された時な ど、その時の状況をみて、当直やオンコールな どを外し何らかの負担軽減に努めている。男性 医師に対して3 年間時間制限をしたケースがあ る。また、子供が生まれた男性医師に対し時間 外を外した。そういう雰囲気作りをしている。 各ドクターの家族を守ることが院長の仕事だと 考えているので、出来る限りドクターとよく話 し合うことを心がけ、家族、家庭の状況をどう にか把握するようにしている。周りの医師へ協 力を求めていけば、皆で乗り切れると思う。

県立中部病院 宮城良充副院長

病院としては何もやっていないが、この3 年 間で大きく変わった点は県立病院が全適になっ たことであり、院長の権限で嘱託・非常勤を雇 用できるようになった。これまで県では正職員 だった女医が復帰しようとした時、正職員だと 当直しなければならなかったが、全適になった ことで勤務形態変えて採用できるようになった ことは良かった。

また、環境整備の一環として、常日頃から院 内保育所を設けたいと考えており、今後取り組 んでいきたい。

県立南部医療センター・こども医療センター 
當銘正彦副院長

昨年組合から院内保育所を作って欲しいと要 望があり、沖縄県・沖縄県医師会連絡会議で提 案したところ、県からは調査し返答するとの説 明であったが、梨の礫で実現されていない状況 である。

女性医師問題は、医療界の医師不足の中で起 きている側面と、働く女性の一般的な雇用の問 題として捉える側面がある。両方を結びつけて 考えないと片手落ちになる。

県立八重山病院 松本廣嗣院長

中部病院の宮城副院長のコメントにもあったように、県立病院が全適になって良かったの は、院長の権限で非常勤スタッフを雇用できる ことは非常に大きい。専門研修途中で離島診療 所に来た医師の奥さんを非常勤スタッフとして 雇い入れ、当院を専門研修の場として活用いた だいている。

那覇市立病院 久高弘志副院長

当院は、創立30 週年を迎えるが当時から敷 地内保育所を有しており、看護師専用となって いる。厚生会から毎年2 千万円ほど繰り入れて いる。

女性医師のための当直室や仮眠室をしっかり 分けている。また、今年女性医師が妊娠された ことを受け、琉大からの派遣医師2 名をワーク シェアリングで受け入れ助かっている。

今後、フルで働けない医師のための給与体系 や福利厚生、社会保険面等の整備を図っていき たい。

玉寄真紀委員(琉球大学医学部附属病院専門 研修センター特命助教)

当研修センターでは、昨年から今年にかけて 復職研修医師を新規で3 名受け入れた。うち2 名が県出身者で1 名が県外出身であった。なお 何れの3 名も琉大卒ではなかった。どの様な勤 務形態で働けるか、何処までのキャリアアップ を目指しているか等、オーダーメイドに近い形 で復職研修プログラムを作成し、診療科へ依頼 している。

研修内容については、補助事業の助成金で購 入したシュミレーターを用いて、復職研修のトレ ーニングとして活用している。(院内のみで使用)

また、知識のアップデートや基礎的内容の見 直しのために、e-learning を始めた。内容とし ては講演会やレクチャーの内容を収めたものや 手術・カテーテル手技を収めたものを、いつで も何度でも見直せるよう学習教材として整えた。

その他の取り組みとしては、復職したドクタ ーへ先輩からのエールとして、復職過程につい て発信する仕組みを整えている。

琉球大学医学部附属病院 村山貞之副院長

女性医師が復帰し易いようにパート医師とい う制度を設けている。大学の特徴としては、産 休や育休で休む場合のサポートがし易い点だと 思う。門戸を開いているので是非大学を活用頂 きたい。また、復職のための制度を各種設けて いるので是非活用頂きたい。

※情報提供

勤務医等環境整備事業実施要綱(女性医師等 就労支援事業)について

沖縄県福祉保健部医務課より、標記補助金の 活用について紹介があった。

これまで県では、厚生労働省等から出される 種々補助事業に関しては、県の予算確保の面か ら活用が難しかったが、今回、地域医療再生基 金を活用し検討できるとの説明があった。当該 予算に関する詳細については、来週中には各病 院へ通知するとのことであった。

Q :研修医の最中で育児等に関わってしま う女医に対して、キャリアップを図るた めのサポート体制は如何か。また、スー パーローテーの中で従来医局が担ってき たメンター的な要素が薄くなってきてい るのではないかと心配しているが施設の 取り組みは如何か。

琉球大学医学部附属病院卒後臨床研修センター
久木田一朗センター長

当センターの取り組みについては、説明したと おりであり、出産・育児等の研修医が出来るだ け継続していけるよう柔軟に対応していきたい。

浦添総合病院 棚田文雄院長

メンター制度はあるがあまり機能していない のが実情であり、機能するようにきめ細かなマ ネジメントが必要であると反省している。

豊見城中央病院 城間寛副院長

初期研修医に関しては研修医委員会があり、 チューター制度等、きめ細かなに関わっている。また、後期研修医も研修医委員会に所属す るようにしており、何かあった場合はバックア ップする体制を整えている。

玉城信光副会長(女性医師部会担当理事)

各病院でキャリアアップに向けた様々研修を 展開しているが情報交換の場が少ない。それぞ れの情報を網羅したかたちで、情報の活用が出 来ればより充実したキャリアアップ形成を提供 できると考えている。

豊見城中央病院 城間寛副院長

ご存知のとおり沖縄県にシュミレーションセ ンターが出来る。県医師会の後期研修委員会等 で、琉大、県立、群星が一緒になり、それぞれ の垣根を越えた専門医研修をサポートする体制 の構築を目指しており、引いては女性医師の就 業支援にも活用されるようなものになると考え ている。

仁井田りち副部会長(南斗クリニック院長)

各県とも大学に戻り始めている。都会の福岡 あたりは、大学に戻り専門医を取ろうという状 況が見えている。プチフォーラムでは、キャリ アアップが出来る良い病院は何処かという話題 が出てきた。

県立八重山病院 松本廣嗣院長

県医師会へのお願いだが、女医を受け入れて 自ら首を絞めることが無いよう国に対してしっ かり財政面でのサポート支援を求めて頂きたい。

宮城信雄沖縄県医師会長

1/3 が女性であるという実態がある。女性が 医療の現場に出てこないと日本の医療は支えら れない。医療機関では、経営的に成り立たない 保育所を作ってでも女医を確保しようと努力し ている。そういうところに負担にならないよう な医療政策が図られるように、日医を通じて提 案していきたい。

玉寄真紀委員(琉球大学医学部附属病院専門 研修センター特命助教)

琉大が復職支援にかなり取り組んでいるの は、復職を希望する医師自身のキャリアアップ のみならず、女医を取り込むことで勤務環境を 良くすることが一つと、医師が増えキャリアア ップが進み、専門医が増えた場合に地域に離島 に還元する役割を担っているので十分ご利用頂 きたい。

涌波淳子委員(北中城若松病院院長)

自分がやるべきところ、部会がやるべきとこ ろ、医師会がやるべきところ、少しずつ課題が 見えてきたと思う。

活発な意見交換が行われたあと、最後に玉城 副会長から、会を重ねる毎にだんだん良くなっ てきた。この様な会を重ねることはよその病院 が実施していることを直に聞くことにより、自 身の病院で不足している部分をどう補っていく か、病院そのもののキャリアアップに繋がると 思う。本日はたくさんの方々に参加いただき感 謝申し上げる。来年度も同じ様に会を企画した いと思うので、先生方のご協力をお願いした い。また、女性医師バンクではホームページも 開設しているので、是非ご覧頂きバンクに対す るご意見ご要望等頂ければ幸いである。

印象記

大湾勤子

沖縄県医師会女性医師部会委員
大湾 勤子

病院長との懇談会に参加して

第3 回目の懇談会は、前回よりさらに参加者が増え、各医療機関において、女性医師を含めた 勤務医の環境整備が進んできていることを知る良い機会となった。

今回は特に、琉球大学医学部附属病院卒後臨床研修センターの取り組みが紹介され、沖縄県内 で、医療機関独自の研修に加えて、共同で医師を育て、支援していく体制づくりがこれから進ん でいくことへの期待が高まった。

さて、懇談会の参加者は、実際は「身を削って働いて」きた医師たちであり、話し合っている 環境整備はまだ足りない部分があるにせよ、男女を問わず働きやすい環境になってきたことは皆、 実感しているに違いない。未だに財政的な問題は残っているが・・・。

システムや環境整備の充実が、働きやすさに寄与したとしても、果たして医師自身が、使命感 や責任感を持って働き続けられているのか、実際には融通の効く条件でも、働かない?または働 けない医師がいるのではないだろうか?管理者が働く環境を守る努力をすすめている一方、働き 手はどのように応えているのか。涌波委員が、自ら一女性医師として歩んできた経験と管理者の 立場で彼らをサポートする場面で葛藤なさっている話を伺いながら、医師自身の意識改革も必要 であると思った。

多数の医療機関の参加もあって、十分な意見交換の時間を確保するのが難しかったことを反省 点として、次回はさらに建設的な懇談会にしていきたい。

女性医師部会としては、多くの病院長・事務長が、女性医師支援、男女共同参画について検討 する場に参加してくださった事を感謝し、これらを受けて、実際に働く女性医師&男性医師の現 状との橋渡しを続けていきたいと思う。

なお、今回の報告書を纏めるにあたり、沖縄県医師会事務局崎原靖様のご協力に感謝いたします。